5-6月、日当たりのよい芝生や草地を観察していると、思いがけない楽しみに出会うことがあります。昨年のこと、青い小さな花の群生を見つけ、目を見張りました。
その花の名は、ニワゼキショウ(庭石菖)です。花の大きさは一センチぐらい、草丈十五センチほどでしょうか。青い小花がたくさん、ふわりとレ-スをかけたように広がっていました。ところどころに、赤紫色の花も混じっていて、とてもきれいです。摘んできてコップに差しておくと、翌日は、もう萎み、つやつやの玉実(さく果)になっていました。一日花ですが、つぎつぎと咲きます。
草姿が石菖(サトイモ科)に似ていることから、付けられた名だそうですが、アヤメ科です。北アメリカ原産の帰化植物で、明治時代に渡来し、今では都市近郊のいたるところに野性化しています。青や紫の、筋の入った六弁の淡い色で、花の中心部の黄色とのコントラストも愛らしく、なるほど、アヤメの姿をしています。
初夏から夏にかけて日当たりのよい草地には、小さな花々の世界が織りこまれています。つんつんとよじれた花穂を立てて、ピンクのモジズリが咲きだしたり、マンテマが風船のような袋を付けていたり……。
朝顔、ヒマワリ、芙蓉、サルスベリと、夏を彩る代表的な花の華やかさは、ないけれど、可憐な花を愛でるのも、この季節のささやかな喜びです。
さて、芝生で出会ったニワゼキショウですが、翌日、花好きの友だちを誘って見に行きましたら、跡形もありませんでした。何と刈り取られていたのです。とてもがっかりしました。こうした花は、あまり手入れの行き届いたところで見るのは無理です。管理の少し緩やかなのがいいようです。 今年もまた、草地や芝生でニワゼキショウの青いレ-スが見られるかもしれません。
http://www.hana300.com/niwaze.html