黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

志免鉱業所竪坑櫓 #03

2012-01-18 06:42:12 | 産業遺産
福岡県の福岡空港にほど近い、
糟屋郡志免町にある旧志免鉱業所竪坑櫓。
コンクリートのロボットの様なルックスとともに、
激動の20世紀を今に伝える炭鉱の巨大竪坑櫓を、
シリーズでお送りします。

今回は櫓を登りながら実際に中を見てみようと思います。

志免炭鉱竪坑櫓
志免炭鉱竪坑櫓/低層階段

実際に稼働していた時は、
上層階との行き来はエレベーターが使われていたので、
階段は非常用。そのためかそれほど幅は広くありません。

この先しばらく進むと、
安全のために閉山後コンクリートで塞がれていた部分が、
近年の内部調査の為に壊され、
そこを通過して上層階へと進めるようになっていました。





志免炭鉱竪坑櫓
志免炭鉱竪坑櫓/1階から見る櫓内部

下から櫓を見上げると、
ずっしりとした幾本ものコンクリートの梁が、
幾何学模様の様に並び、
その隙間から柔らかい日差しが降り注ぎます。





志免炭鉱竪坑櫓
志免炭鉱竪坑櫓/2階X梁

櫓の脚は基本的に縦横の梁だけですが、
2階部分だけXの梁が追加されているのは、
補強の力学からでしょうか。
台風の激しい九州という気象条件を考慮して、
櫓の脚はことのほか頑丈に造られたようです。

また、植物が絡み付くコンクリートの橋脚は、
とても魅力的な、摩訶不思議な光景ですが、
同時にコンクリートの強度を弱める働きもあるとも聞きます。





志免炭鉱竪坑櫓
志免炭鉱竪坑櫓/露出する鉄筋

閉山から約50年、
表面のコンクリートは至る所で剝落し、
内部の鉄筋が剥き出しになっているところが沢山あります。
しかし、この鉄筋の太さと間隔は半端なく、
敗戦間近の日本において、ここまで頑丈な建造物を造れたのは、
やはり海軍が国の威信をかけて取り組んだ証だと思います。

台風によってコンクリート片が飛び散り、
一時は危険構造物として解体の危機にさらされた櫓でしたが、
その後の調査によって表面のコンクリが多少はがれようとも、
躯体が崩れる事はまず考えられない程頑丈に造られている事が判明。
その結果も手伝って、保存の方向へ進んだと説明を頂きました。





志免炭鉱竪坑櫓/ガイドプーリー跡 志免炭鉱竪坑櫓図
志免炭鉱竪坑櫓/ガイドプーリー跡

撮影場所の図も付けました。

実は志免炭鉱の竪坑櫓には階数があります。
ただし1階~5階はすでに見て来た様に脚部分なので、
横に梁がある場所を階数と数えているようです。
最初に床がある階は6階で、ここはガイドプーリーと呼ばれる、
直径4mの滑車があった階です。
現在では櫓内の装置は完全に撤去されていますが、
その溝の大きさからも、滑車の迫力が目に浮かびます。
穴を覗き込むと、25m下の坑道の入口が遠くに見えます。





志免炭鉱竪坑櫓/ブレーキ施設跡 志免炭鉱竪坑櫓図
志免炭鉱竪坑櫓/ブレーキ施設跡か?

7階は一部分が中6階的な構造にもなっていていますが、
その端にあるのは、位置と形からして、
おそらくひとつ上の階のメインプーリのための、
ブレーキ関連施設だと思います。
(確かではないので、いずれ調べてみようと思います。)






志免炭鉱竪坑櫓/メインプーリー室 志免炭鉱竪坑櫓図
志免炭鉱竪坑櫓/メインプーリー室

いよいよ櫓の心臓部。、メインプーリーのあった8階です。
外からは四角い窓が並んでいるとしか見えませんが、
5段分ある窓の上3段がブチ抜きで天井の高いスペースだとは、
想いもしませんでした。
しかしそう思って改めて外観を見てみると、
確かに、上部の四角い窓の下2段と上3段の間隔が違い、
上3段の方が間隔が狭くなっているのに気がつきます。

志免炭鉱竪坑櫓外観
参考:志免炭鉱竪坑櫓外観

メインプーリー室の話に戻って、
一つ前の画像の床、中央の穴が、
直径5mのメインプーリーが設置されていた溝、
そしてその左隣の直角に拮抗する穴が、
東芝製のモーターが設置されていた場所です。
また左奥が運転室、中央奥がエレベーターホール。





志免炭鉱竪坑櫓/運転室 志免炭鉱竪坑櫓図
志免炭鉱竪坑櫓/運転室

運転室は、これだけの規模の竪坑を操るには、
いささか小さい気もしますが、
おそらく操業時は最新鋭のコンソールが置かれて、
操作していたんだと思います。
ただし図でもお分かりの様に、外にはみ出した部屋なので、
ちょっと不安は感じたかもしれませんね。





志免炭鉱竪坑櫓/エレベーター 志免炭鉱竪坑櫓図
志免炭鉱竪坑櫓/エレベーター

蛇腹式開閉ドアと針式階数板が郷愁を誘うエレベーターは、
主に人員の移動に使われたようです。
コンクリートの脚は一見均等のようにみえますが、
建物の南の隅だけ他の脚より太く、
その太い部分がエレベーターシャフトになっています。

志免炭鉱竪坑櫓/エレベーターシャフト

右側の太い柱がエレベーターシャフト。
その隣に、1~6階の非常階段も見えます。

ところでこの画像は櫓の南西面、
また前出の画像は反対側の北東面の姿で、
櫓はどこから見ても魅力的に見えるかと思いきや、
これら2面の幅が17mなのに対して、
北西面と南東面の幅は13mと、
平面は長方形の形をしていて、
13mの南東面はこんな感じ。

志免炭鉱竪坑櫓/エレベーターシャフト

かなりいただけないっすorz
「志免炭鉱竪坑櫓」で画像検索しても、
この面だけを撮影した画像は殆どアップされていません。
やはりみなさん、アップするのを止めるのでしょうか…



★ ワンダーJAPAN _ vol. 11★

  

志免炭鉱竪坑櫓内部レポート 地上50mの《異空間》
オープロジェクトによる志免炭鉱竪坑櫓のリポート。
このブログに掲載中の画像以外の画像を含め、
オープロ全員の画像と詳しい解説を掲載。

★ オープロジェクト DVD ★

  

『鉄道廃線浪漫 ~風の声・時の音~』
国鉄専用の炭鉱だったことから、
鉄道廃墟としてのアプローチで、
志免炭鉱のパートを収録。


最新の画像もっと見る

post a comment