黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

酉の市

2012-11-14 14:53:06 | 東京 URBEX
学生時代から毎年足を運んでいる、
花園神社@新宿の酉の市。
毎年、たいがい三の酉あるいは二の酉に行くが、
今年はスケジュールの都合上一の酉へ行くことにした。



熊手の飾り物を買って、主に商売繁盛を祈願する酉の市。
境内には100を越える熊手屋が軒を連ね、
購入者に贈られる、拍子木による三三七拍子が、
そこかしこから聴こえてくる。
場所柄客層は歌舞伎町界隈での店の経営者や従業員が多く、
境内は野外のホストクラブとキャバクラといった様相になる。







熊手を買わず、お祭り気分だけを味わいに来た客も、
参拝だけはしていくので、拝殿の前はいつも長蛇の列。
奉納金に応じて掲げられた行灯には、
伊勢丹や花園饅頭など、新宿で知られた店舗のものが並ぶ。







ごったがえす参拝客とせめぎあう様に、
露天も半端ない数が軒を連ねる。
焼きゾバやお好み焼きなどの定番の露天も多いが、
中にはここでしかお目にかかれない不思議な露天も出る。
20年以上ずっと同じ場所で営業する「フライ」と書かれた暖簾の店。
フライ…果たしてなんのフライなのだろうか?
一本100円の串カツの様なものだが、
100円で提供出来るフライの肉とは…
と、よからぬ想像を張り巡らせてしまう。







着席して飲食出来る居酒屋仕様の店も、
これまた沢山の数がひしめきあう。
ご祝儀の千円札を簪状に刺した粋な姉ちゃんがいる店など、
日常ではなかなか味わえない体験ができるのも、
また酉の市の魅力。







様々な出店が並ぶ花園神社の酉の市の中で、
ひときわ異彩を放つのは見世物小屋だ。
現在、国内で唯一定期興行をしている「大寅興行社」
こびとの方が太鼓を叩く呼び込みから、
鏡を使ったトリックによる首だけの生きた犬の展示、
そして大蛇や牛女の演目。
80年代の初頭に、初めて見た見世物小屋に、
それまで味わったことのない衝撃を受けたのを覚えている。
特に牛女と呼ばれる、膝の関節が逆に曲がる病気の方が、
舞台を徘徊する出し物の記憶は、
しばらくの間トラウマになっていた。







いつの頃からか牛女は出演しなくなった。
身体障害者の出演に規制がかかったのか、
また亡くなったのかはわからないが、
その後、ヘビ女と呼ばれるお峰さんがメインを勤めていた。
「好きで食べるのか病で食べるのか」のナレとともに、
生きたヘビを食べる演目は前座で、
本命は束ねた蝋燭の蝋を口にためて一気に火炎噴射する、
「口中火炎のうつし」
近年では、小雪さんという若い方が後継者として活躍されている。
また、牛女の時代からいて、当時は黒子的な役割をし、
牛女亡き後、ヘビの鼻通しの芸を一生懸命マスターし、
小雪さんが登場するまでの時代を繋いだ、
はるちゃんも重要なキャストだ。(今もいいるのかな)

かつて唐十郎の赤テントが掛かったことで知られる花園神社。
今では酉の市の時だけだが、大寅興行の見世物小屋が掛かる。
国内で唯一の異空間を、是非体験して欲しい。

大寅興行社の見世物小屋は、
毎年11月の酉の市@新宿花園神社で掛かる。
今年は11/20が二の酉。