蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

トレチャコフ美術館  (bon)

2019-01-24 | 日々雑感、散策、旅行

 渋谷の午後も凄い人出でした。 昨日(1/23)は、友人からチケットをいただいていた
ので、渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムに行ってきました。
 Bunkamura30周年記念「ロマンティック・ロシア」(国立トレテャコフ美術館)の会期末
(1/27)近くで、館内はそれなりに混みあっていましたが、比較的静かな雰囲気でゆったり
と鑑賞することができました。美しいものに触れ、心が豊かになった気分で館を出ました。

 有名な、「忘れえぬ女(ひと)」(イワン・クラムスコイ1883年)は、これまで何度か
日本で展示されてきましたが、私は今回、初めて実画を眼前にして、その大きなカンヴァス
に、馬車に座る下目がちの小悪魔的な女性の、その姿に、ただ者ではない? 吸引力を持った
印象を受けました。
 原題は「Unknown Lady」とありましたが、そんなはずはないと思いました。 解説にも、
トルストイの「アンナ・カレーニア」がそのモデルでは? との噂があったそうですが、
本当はそうではなかったとありました。

      忘れえぬ女(ひと)(ミュージアム入り口にて)
       

 

 作者が「Unknown Lady」としたのは、単なる行きずりの見知らぬ人であったとは、この
絵からは想像できなく、むしろ何か秘密を持った刺戟を意識したのではないか?と思われ、
本当は よほど心を寄せたとみえることから「忘れえぬ女(ひと)」の和題はまさに言い当て
た題名だと納得した次第です。

 同作者の更に大きな(179×135)「月明かりの夜」は、深い美意識の極地?の思いが
よぎりますが、老木繁る深い森の奥深い中に、月明かりにくっきりと浮かびあがった真っ
白なドレス姿の女性を中心に一つの抒情詩的画面が展開されていました。女性の座るまだ
奥の方にもうっすらと月の明かりが差し込んでいる部分があり、一段と絵の奥行きと深み
を与えているようでした。

 大平原に動物と遊ぶ子供たちと、鳥たちが遠くに群れ飛ぶスケールの大きい「鶴が飛ん
でゆく」(アレクセイ・ステパーノフ1891年)の平和な世界や、田舎のセカンドハウスで
老夫婦が睦まじく楽しんでいる「ジャム作り」(ウラジーミル・マコフスキー1876年)な
ども、その日常の一幕が穏やかで豊かな生活を表現しているのでした。

 19世紀後半は、これらの絵とは反比例的で、ロシア革命に向けての激動の時代であった
と思われます。 人民主義の活動が活発化し、労働条件改善、国民議会開催など反政府
運動が展開される中、文豪ドストエフスキーの「罪と罰」、トルストイの「戦争と平和」
に代表される文学や 音楽では、チャイコフスキー、ラフマニノフ、ムソルグスキーなどが
活躍しているのですね。
 そして、これらに呼応して美術の世界では、今回展示に代表される、イワン・クラムス
コイを始めイワン・シーシキンなど数々の画家が活躍したのです。時代の制約に反発した
彼らは、移動展覧会協会を結成して、広い地域に絵画の普及啓もうを図るとともに、この
ようなすぐれた作品を残していたのです。

 今回の展覧会では、広大な自然、森、肖像画、子どもたち、農村、女性たちを グルーピ
ングした構成は、単に美術作品を展示した域を超え、それらを通して、余すところなく
「ロマンチック・ロシア」を演出していたと思いました。

 
 それに引き換え、折しも、モスクワでは、平和条約交渉 首脳会談が行われています。
昨年11月から3か月連続して計25回にわたる、1956年の日ソ共同宣言を巡って、綱引き状態
が続き、実り少ない時が流れているばかりです。 北方領土に関して、ロシアでは激しい
デモが連日繰り広げられています。 あぁ、この現実!

       

 道玄坂、東急本店付近は、もう随分昔の想い出しかありませんが、この辺を歩いていると
薄ぼんやりと若かった頃の思いが蘇り、ひとときタイムスリップしてしまいました。

      道玄坂方面へ
       

 

 

 

 「ロマンティック・ロシア」見どころ 
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/point.html

 

ムソルグスキー 『展覧会の絵』 【編=R・コルサコフ版】アンドレーエ/N響

 

 

 


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