蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

枕草子  (bon)

2023-02-11 | 日々雑感、散策、旅行

 突然「枕草子」なんですね!

 昔、学校で習った程度ですが、『春はあけぼの やうやう白くなりゆく、やまぎは
すこしあかりて、むらさきだちたる雲の・・』どこか懐かしい感じもする、清少納言
のあの随筆「枕草子」です。

 1000年以上も昔の平安時代によくもまあこのような、身近な事柄に、精緻な観察力
からことの細やかな部分を書き表せたものと改めて感心させられます。知的な面白さ、
感覚を見事に捉えて表現されているのには現代でも頷けるところも多く、また当時
の宮中における生活や風習なども読み取れてきます。

                  清少納言
          (ネット画像より)

 清少納言は、一条天皇の后、中宮定子に仕えている女房でしたが、一条天皇は、
わずか七歳で即位し、定子が入内したときは元服したばかりの十一歳とまだ若く、
定子は天皇より三つ年上だったそうでまだこれからという若い存在だったのですね。
              

 『枕草子』の内容は、写本を重ねてきたことから伝本によって相違しているという。
現在ではそれら伝本は、三巻本、能因本など4つに分かれているそうです。私たちが
知っている枕草子は、三巻本によっているとか。 章立ての順序が違っていたり本文
内容も違う部分があったりもしているそうです。

 これまで多くの研究者がこれらの分類を試みたり、それらの意味に焦点を当てる
などしてそれぞれの見解が示されています。

 手元の会報に「『枕草子』研究の現在」(上方洋一氏、青山学院大学教授)と題
した投稿記事がありました。上方氏の研究では、「枕草子」は単なる随筆ではなく
そこにある目的が存在していたとの論調です。当時には、当然「随筆」なる概念も
なかったし、清少納言一個人の「発信」ではなく、一条天皇の中宮定子に仕えている
女房として、中宮定子の後宮で醸成されつつある斬新な文化や美意識を宮廷世界全体
へ発信する目的で書かれたのではないかと論じられています。

 一条天皇の曽祖父に当たる醍醐天皇の時代には「古今和歌集」、祖父の村上天皇の
時代は「御撰和歌集」と、それぞれの王朝の文化の高さを顕彰する意味などが意識
されていたのではないか。 そうした所に中宮定子の意図があったとして、これを
清少納言が強く意識していたと考えられると述べられています。

 現存する写本の末尾に、この枕草子の制作動機になったとも思われる出来事が記
されているというのです。
 ある時、一条天皇と中宮定子に高級な料紙が献上され、天皇方では司馬遷の『史記』
を書かせることになったが、こちら(中宮方)では何を書こうか? と中宮に諮問
された清少納言が「枕にこそははべらめ」(「枕」がよろしいでしょう)と返答し
たため、「ではお前が書きなさい」とその料紙を下げ渡されたという逸話があるの
です。

 つまり、中宮定子の命によって、清少納言が執筆したいわば「公務」として書か
れたものではなかったか。そして、従来の規範にとらわれない斬新な「詠歌便覧」
の制作が提案されたのではないか。定子後宮でそうしたものが制作されることが
宮廷社会にインパクトを与えるはずとの暗黙の認識であったと思われる。

「春はあけぼの」 当時の伝統としては、漢詩文以来「春は宵」であったところに、
「あけぼの」の美しさを述べ、当時の貴族たちは意外な驚きを感じたはずではない
か。それまで彼らが気付いていなかった新しい美の発見であるのですね。
「夏は夜」
「秋は夕暮れ」「冬はつとめて(早朝)」など、それまでの貴族の感覚
としては意外性のある提言だったと思われる。

              (ネット画像より)

 清少納言は中宮定子後宮を代表する形で、「公務」として発信しており、一条朝
という時代の美意識を変革するとの大きな意味合いを持っているのではないか。

 上方洋一氏によれば、このような解釈をされており、さもありなんと思われるの
です。上方氏は、さらに追加して、以下のようにも述べられていました。

  中宮定子は、宮廷の文化を主導していましたが、1000年にお産がもとで急逝し、その
後に入ったのが藤原道長の長女彰子で、その女房として仕えたのが紫式部でした。
「紫式部日記」には、清少納言をあからさまに批判している下りがあるとして、この
頃の後宮における意識のほどが伺えるのです。そうして、紫式部により「源氏物語」
が制作されているのです。

         (ネット画像より)

 枕草子における知性的な「をかし」に対して、源氏物語の心情的な「もののあはれ」
の美的世界を現出させたのですね。1000年以上も前に、二人の才女が・・。

                 

 ネット調べで、枕草子について、追記しました。

 枕草子は、短文で親しみやすい文体で書かれており、全部で323段あるとされ、
その第1弾が「春はあけぼの」で始まる四季の美しい時刻を中心に取り上げられて
います。このほか「虫は」「木の花は」「すさまじきもの」「うつくしきもの」・・
などなど新しい美の発見をしたためているのです。

 以下に、2つばかり現代語訳のものを記してみました。

第72段 「ありがたきもの」

めったにないもの。
舅にほめられる婿。また、姑にほめられるお嫁さん。
毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない使用人。

全然欠点のない人。顔立ち・心・ふるまいも優れていて、ずっと世間で人付き合い
をしてきて、ほんの少しの非難も受けない人。

同じ仕事場で働いている人で、互いに礼をつくし、少しの油断もなく気を遣い合っ
ている人が、最後まで本当のところを見せないままというのもめったにない。

物語や和歌集などを書き写す時、元の本に墨を付けないこと。
上等な本などはとても気を付けて写すのだけれど、必ずといっていいほど汚してし
まうようだ。

男と女とはいうまい、女同士でも、関係が深くて親しくしている人で、最後まで仲
が良いことはめったにない。

第151段 「うつくしきもの」

かわいらしいもの。
ウリに描いた子どもの顔。スズメの子がチュッチュッというと跳ねて来る。
二つか三つの幼児が、急いで這ってくる途中に、ほんの小さなごみがあったのを
めざとく見つけて、ふっくらと小さな指でつまんで、大人などに見せているしぐさ。

おかっぱ頭の子どもが、目に前髪がかかるのをかき上げないで、ちょっと頭をかし
げてものを見たりしているしぐさ。

それほど大きくはない公卿の子息が、美しい衣装を着せられて歩く姿。
きれいな赤ん坊が、ちょっと抱いてあやしてかわいがっているうちに、抱きついて
寝てしまったようす。・・・

 

 

 

【朗読】枕草子/清少納言 <1>

 

 

 


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