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ラグランジュ・ポイント

日記帳です。トップページからは写真も見られます。全て私個人の見解で、所属団体の立場・戦略・意見ではありません。

鋼の錬金術師

2018-01-01 12:56:32 | まんが・アニメ

敵味方をはっきり線引きすることなく、主義主張の違う相手とも
うまく利用、協力してやっていくという所が戦国時代のようだと感じた。
作者の故郷北海道は、銀の匙でも描かれていた通り、自然環境が厳しく、
各々が最大限に働き努力し、かつ他人の力も借りなければ生存が難しい
という土地柄である。当然、そりの合わない他人ともうまく工夫して
やっていく事が求められる。

嘘と本音を巧みに使い分けて、他人の協力を仰ぎ難題に立ち向かっていく。
こういう描写は少年漫画にしては珍しいと感じた。

本作はSFであるが、作者の最も描きたかったものは、そのような
様々に異なる人間の生き様、群像劇だったのだろうと思う。

キャラクター達は、割合多くの名言めいたセリフを残す。
初期ガンダムのようでもある。印象的なセリフのシーンが
漫画をより印象的なものにしている。

14巻末の、ありし日のエルリック家の漫画、超良い。

23巻の家計図を見ると、世界を巻き込んだ壮大な話のようで、
実はエルリック家内の内輪もめなのかよって気づかされて面白かった。


グリーン インフェルノ

2017-12-03 17:04:39 | まんが・アニメ

観た。映画の内容自体は、グロい事を除けば普通の出来。
ところで、人食い部族に対して食人は文化だから彼らは悪くないと言って擁護する
意見がある。しかしこれにどうも違和感を覚えるのは、それが食べるという行為
以前に殺人だからだと思う。

例えば、たまたま近くを通りかかった人を襲い、殺して金を奪い、その金で
豪華なディナーを食べるという行為と根本的に性質が同じである。
食人族だって当然普段は別のものを食べているはずで、人を殺して食べるのは
非日常である祭りのごちそうみたいな感覚だろうと考えられる。
別に他人を殺して食べなくても生活はやっていけるわけである。
つまり、両者とも特別に配慮すべき理由もなく、強盗殺人と評価できる点で
一致する。違法性のある人殺し、とも言える。

しかし、食人という風習が古来から世界中の様々な地域で存在したらしいのは
どういう理由によるのだろう。食べ物に困ってやむを得ず、という事では
文化として定着しないはずだし、もっと別の理由があるとすれば、
やっぱり宗教的、儀式的な意味合いだろうか。


HOTEL R.I.P.

2017-12-02 00:07:14 | まんが・アニメ

作者の西倉新久は新人さんらしいが
良いものを持ってる。
話の設定としてはオーソドックスやけど、見せ方が上手い。
打算抜きに純粋にまごころから、他者を慈しむ描写が随所に見られる。
作者は人間の感情というものをよく観察していると思う。
まだ荒削りながら、伸び代を感じる作品。

http://tap.akitashoten.co.jp/comics/hotelrip


花とアリス殺人事件

2017-11-25 00:31:18 | まんが・アニメ

奇才道満晴明と天才岩井俊二がタッグを組んだ
贅沢な一冊。欲を言えば、もう少し量があっても良かった。
単行本1冊では、原作の内容を表現するにはやや駆け足に
なってしまう。原作のストーリーは原案と呼んだほうが良いくらい、
道満節により大幅にアレンジされている。
飄々としているが人間同士の絆を感じさせる道満氏の作風は
不思議なほど岩井俊二の物語にフィットする。

ルート225もそうだが、思春期まっただ中の等身大の中学生が
ちょっと大人になる話、大好物だ。いわゆる死にキャラクターが
ほとんど居なくて、全てが綺麗につながっているのも良い。
単なる映画のコミカライズと侮らずに、広く読まれるべき作品だと思う。


君たちはどう生きるか

2017-11-10 21:15:18 | まんが・アニメ

宮崎駿の次回作に登場するというので気になって読んでみた。
中学生でもすらすら読めるほど表現が平易で、かつ格調を失っていない。
まっすぐに優しく読者を導くような作者の眼差しを感じた。
本当に賢く、年齢を重ねた人だけがこういう雰囲気を出せるのだと思う。

若者には、自らの頭脳でとことんまで悩み抜くことと、導き手となる良き大人
の両方が必要だ。しかし、両方の条件を満たした少年時代を過ごす人は案外
少ないかもしれない。幸運にも両方が与えられている人は、まさに有難いと
言える。

いかに大きな業績を為すかより、いかに大勢の人間を幸せにするかの方が大事、
という一節が心に響いた。確かにそういうものの見方もあるなあと。

この本は、一般市民の青少年に向けた啓蒙書という立場であるが、同時に
帝王学の本でもある。主人公コペル君にように才気に満ちて、将来人々を
導くような家柄に生まれたものが持つべき人倫を教えている。ノブレス・
オブ・リージュという言葉があるように、本来人より恵まれて生まれてきた
人は、それを無為に遊ばせておかないで有効に活用する努力をすべきである。
そうでなかったら、人類トータルで見たときにマイナスになる、と思う。

現実社会では、持つものも持たざるものも変わりなく競争と無限の欲望に苛まれて
いるが、本来はそうではないというド正論を本書は示していて、そこに読者は
ハッとさせられる。

戦前に書かれたとは思えないほど、新鮮で生々しいのは、そういう普遍的な
人間のジレンマを抉り取っているからだろう。


アウトレイジ最終章

2017-10-14 17:22:25 | まんが・アニメ

アウトレイジシリーズ最終作。
メインキャスト陣の老いが色濃い。
ヤクザは虚勢を張ってなんぼの所があるから
やはり滑舌が良くないと様にならない。

今作は全体的に憂いというか滅びの美学みたいな
ものを特に感じた。主人公大友は、勝ちでも信念でもなく
最後はただ悪夢のような現実を終わらせたい一心だった
のではないかと。
あまりに大勢の死に立ち会ったことで
だんだんと人間が壊れていったのだと思う。


本が好き子さん

2017-09-25 21:28:49 | まんが・アニメ

なるあすく著。
読書中毒の女の子が
いろいろなシチュエーションで本を読み、
あれこれ考えるという単純な話。
設定がシンプルな分、四コマ漫画には向いていると言える。
中高生を意識してか、全編通じてとても易しい展開を見せるが
話の骨組みはしっかりしている。

登場人物は皆、変人である事に気後れする事無く、胸を張っている。
社会に出れば、多くの者が何かしら拘りや他人と違った所を持っており、
そこに正解はない。各々が何を為すかだけである。
小さな自信を手に入れた「好き子」さんが
少し成長する物語、と捉えれば王道的作品だ。

ただ、1ページに四コマ1本だけというのは
どう考えても手抜き。ページ数が同じならば
単純に漫画の量は半分ということになる。
それなのに値段が据え置きなのは、単純にボッタクリ。

作者はまだ駆け出しながら、良いものを持っていると思うので
注目したい。


パルスプラザ

2017-09-18 23:10:32 | まんが・アニメ

パルスプラザに同人誌即売会を見に行ってきた。
漫画を読み、その作品にある程度情が湧くと、次に作者に
興味が出てくる。面白いもので、好きな作品の作者の人となりは
作品同様、共感できることが多い。

同人誌即売会は、漫画を読む所であると同時に、
漫画家(あるいは同人作家)を見に行く所でもある。

ネット上では舌鋒鋭く万の事を議論しているあの作者が
実際会ってみると、虫も殺さないような大人しい人だったりして
なかなか楽しい。

漫画は最終成果物であり、その原料は作者のこれまでの人生である。
例えばワインが好きな人が、素材の産地や製法といった製品に至る過程を
楽しむのに近いのではないかと思う。

昨今は、漫画家と読み手の距離が近い。これほど漫画好きにとって
恵まれた時代はないと思う。


終物語

2017-08-13 23:24:35 | まんが・アニメ

約8年に及ぶアニメシリーズの最終章だそうだが、
これだけ続くと、はい今日で終わりですと言われても
俄かには信じられない。作者が小説家として健在な限り
永遠にメディアミックスも続きそうな気がする。
趣味ではなく商売やから、金になる以上は終わらせてくれないだろう。

清々しいまでのハーレムエンドやった。
偽善も突き詰めれば善となる、というか
意思を貫き通す物語だと感じた。
これほど優柔不断な主人公をヒロイン達が受け入れるのは
その人格にほだされたからに違いない。
浮気性でどうしようもない奴だが腐れ縁だから放ってはおけない、
という気持ち。
人たらしの物語。


マンガの話

2017-07-15 23:46:34 | まんが・アニメ

重版出来というマンガについての座談会があった。
その作品に登場する安井というキャラクターは
組織の汚れ仕事を一身に引き受けるポジションなのだが、
それについて多面的な評価がなされるべきという意見が相次ぎ、
興味深かった。安井を通じて、仕事談義に発展したのは
社会人の集まりらしいなと感じた。

個人的には、結果として人から憎まれるような業務が存在する事自体は仕方ない
としても、それを一人に負わすのは酷で、長期的な視点では当該社員が潰れて
システムが立ち行かなくなるのが目に見えているため、悪手だと思っている。
また、そのように極端に評判が悪い社員を放っておくのは組織のイメージを
貶めることになり危険。さらに、取引相手を鬱病にまで追い込むようなやりかたは
幾らなんでも失策だ。

少年誌の発行部数、一時マガジンが首位だった時代があったが、
近年ではまた少年ジャンプがマガジン、サンデーをぶっち切っているらしい。
自分の中では、ジャンプは有名どころではあるが落ち目の雑誌という印象
だったので、大変驚いた。思い込みは恐ろしい。しかしそれにしては、
どこのコンビニでもジャンプの影が薄いように感じるのは何故か。


メイドインアビス

2017-07-08 14:44:43 | まんが・アニメ

ずっと興味ないと言ってきたけど
とうとう読んでしまった。

エロ、グロ、ナンセンスという言葉があるが
この漫画は要素が多い。間口が広いので
結果として多くの読者を惹きつける。
物語を通して、作者の特殊な性癖を
押し売りされているような複雑な気分。

大穴の深部を目指すことは、人間の内なる世界、
精神世界に迫ることでもあるのだと思う。
メイドインアビスは、作者のライフワークであり、
作者の心の最も深い部分を訪ねる旅と同義だろう。

作品世界は何となく、AKIRAの鉄雄のシーンに通じるものがある。
人間こそが、世界で最も謎に満ちたフロンティアだ。


おもいで停留所

2017-06-25 23:35:11 | まんが・アニメ

強引なオチもあったし、
年齢を考えると無理があると
思われる展開もあったけど、
概ねよく出来ていると思う。

しばしば、作中で描かれているセリフや仕草は
建前で本音が別のところにあったり、或いは
本音と建前が入り混じった心理になっていると
思われるシーンが見られた。作者は、そういう人間の
一筋縄ではない複雑な感情を描くのが上手い。

それにしても登場人物は皆、
ことごとく不幸な人ばっかりで、
作者氏は本作にそういう呪いでもかけてんのかと思った。

老若男女が目を見開いて、生きることに懸命になっていた
時代の事が偲ばれた。
筆者の作品の中では頭一つ抜きん出ていると思う。


ハケンの麻生さん

2017-06-25 21:15:28 | まんが・アニメ

虫の飼育をするOLの話。
絵柄はちょっと つばな に似ている。
やろうとしている事自体は面白い。
突き詰めていけば、生きるとは何かというような
壮大で哲学的な問いになってしまうテーマであり、
それに明確な答えを示せるほどの力量を
作者が持っているとは思えない。
総合的な筆力はまずまずだと思うが、傑作になるためには
あと一歩足りないような気もする。

失意のうちに打ち切りとなってしまった
ようだが、まあ大多数にウケる内容とも
思わないし、それは仕方ない。

殻を破り、一皮剥けることがもし出来るならば
人気作家も夢ではないと思う。