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Real Jeans & McCOYSTA Millennium Special

今週の一枚:「Gaucho」1980,「The Nightfly」1982

2007年01月22日 | Fuku-music
【Fuku】

グラミー賞通算9度受賞の人気、実力ともにナンバー・ワン・テナー・サックス・プレイヤー、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)氏が、13日に亡くなりました。まだ57歳という若さで、これからさらに熟練味を増したプレイが聴けると思っていただけにかなりショックでした。今回は、ジャズ・フュージョンのみならず、数々のセッションプレイでロックの分野、はたまた日本のミュージック・シーンにも影響を与えた偉大なるプレイヤーを追悼しての、この2枚です。

彼の正式デビューは1970年だそうですが、日本で知られるようになったのは兄でトランペッターのランディと伝説的なフュージョン・バンドの"ブレッカー・ブラザーズ"を結成してからで、自身のバンドだけでなく、マイク・マイニエリ、スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメスらと組んだスーパーバンド"ステップス(・アヘッド)"に始まる1979年から80年代全般のフュージョン(クロスオーバーとも言われましたね)ブームでその人気とプレイは頂点に達し、数々のセッションプレイで、この時期の売れ線のフュージョン系のアルバムでは殆ど顔を出していたほどの超売れっ子サックスプレイヤーとして、当時はトム・スコット、デヴィッド・サンボーンと並んでサックス三羽ガラスと言われて日本でも数多くの素晴らしい来日ステージを魅せてくれました。

当然のことながら、当時はロックやポピュラー畑からのお声がかりもすごくて、ポール・サイモン、アート・ガーファンクル、ジョニ・ミッチェル、マイケル・フランクス、ジェームス・テイラーなど、数多くの超有名アルバムでその素晴らしいプレイを聴かせてくれました。

というわけで、私のレコード棚を見ても、彼が参加したアルバムはかなりの数ありますが、私はやはりロック畑からということで、やはりこの2枚を最初に取り出しました。

共に音の魔術師こと"スティーリー・ダン"のドナルド・フェイゲンものですが、ロック畑のマイケルのプレイでは一番印象的に残っている2枚です。

「Gaucho」は、スティーリー・ダンの7番目のアルバム。1981年7月から1991年10月までの10年間の活動停止以前に発表された実質的にはスティーリー・ダン前期の最後のアルバムで、レコーディングエンジニアのミスによる全トラックの誤消去や相棒のウォルター・ベッカーの交通事故など様々な困難があったものの、この前作の「彩(Aja)」から続く緻密な音の積み上げによる非常に洗練されたサウンドは高く評価されたものです。

「The Nightfly」は、スティーリー・ダンのメンバー、ドナルド・フェイゲンが1982年にリリースした初のソロ・アルバム。初めて完全にデジタル録音で収録されたポピュラー音楽作品のひとつとして有名で、収録曲のうちいくつかは1950年代以降の出来事や情勢に関する楽曲となっていて、歌詞を含めた楽曲は全て非常に高いクオリティを誇り、「I.G.Y.」は国際地球観測年に対する楽観主義についての歌、「ニュー・フロンティア」は核シェルターの中で行われるパーティーの歌、そして「グッドバイ・ルック」はカリブ海の島(おそらくキューバ)で起きた革命についての歌で、ドナルド自身のアメリカ社会やその歴史に対する思考の深さを示す作品がならんでいます。また、このアルバムは、当時の最高のレコーディングセットを長期間に渡って駆使して、緻密な音の積み上げと寸分の狂いも許さない音質の精巧さにより、当時最も巧みに製作されたアルバムの一つとして広く認識されています。

共に、全曲ではないですが、キーとなる曲では必ずマイケル・ブレッカーのテナーサックスが時には炸裂し、時には静かに浸透し、この2枚の非常に優れたアルバムの影の功労者として前面に使われています。

近年には、再びジャズシーンに舞い戻り、彼が尊敬するジョン・コルトレーンの影響を強く感じさせるマッコイ・タイナー、エルビン・ジョーンズとの素晴らしい競演や、ハービー・ハンコックと組んで、コルトレーンやマイルス・デイビスというジャズの至宝をトリビュートするなど、これからジャズ界をリードしていく役割を担っていただけに、今回の訃報は本当に残念です。

Michael Brecker マイケル・ブレッカー
1949年3月29日- 2006年1月13日

Gaucho Steely Dan 1980/11
The Nightfly Donald Fagen 1982/10

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