りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“フランチェスコ” ―全14場― 3

2011年12月20日 21時02分00秒 | 未発表脚本


  フランチェスコ「(振り返ってカロリーネを見る。)如何しました?
            楽しくありませんか?」
  カロリーネ「いいえ!!(大きく首を振る。)」
  フランチェスコ「さっきから、余り話しをされないのですね?」
  カロリーネ「(恥ずかしそうに下を向く。)それは・・・何度、お会
         いしても・・・フランチェスコ様の前に出ると、とても
         緊張してしまって、お顔を見ることすら儘ならないん
         ですもの・・・。ほら・・・、こうしてあなたに見詰められ
         ていると感じるだけで、心臓がもうこんなに・・・。(自
         分の胸を押さえる。)」
  フランチェスコ「(微笑んで。)あなたにそんな風に言ってもらえ
           るとは光栄ですね。」

         2人、中央に置かれているベンチの側へ。
         フランチェスコ、カロリーネに座るよう勧める。
         カロリーネ、軽く頷いて、腰を下ろす。
         カロリーネが座ってから、フランチェスコ、
         カロリーネの横へ腰を下ろす。

  カロリーネ「如何ですか?馬術大会・・・。私、とても楽しみにし
         ていますの。フランチェスコ様の勇姿が見られるから
         と・・・。」
  フランチェスコ「ええ・・・必ず勝ちますよ!!愛馬のシーザーの
           調子もぐんぐん上がってきていますからね。今の
           シーザーに敵う馬は、そうはいないでしょう。大会
           では屹度、素晴らしい走りを見せてくれると、私も
           楽しみにしているのです。」
  カロリーネ「そうですわね。それにシーザーに劣らず、騎手も手
         綱捌きでは右に出る者がいないと、噂されている程
         の、フランチェスコ様ですものね。」
  フランチェスコ「兎角、人の噂と言うものは、あてにはならないも
           のです・・・。だが、今回ばかりはその噂を信じて
           下さっても結構ですよ。」

         その時、下手よりカロリーネの侍女、登場。

  侍女「お嬢様、お屋敷からお迎えの馬車が参りました。」
  カロリーネ「(侍女を認め。)分かりました。(立ち上がる。)フラン
         チェスコ様、今日はとても楽しい時間を、私の為に作
         って下さって、ありがとうございました・・・。それでは
         これで失礼致します。(スカートをつまんで、お辞儀を
         する。)」
  フランチェスコ「(立ち上がって礼をする。)気をつけて・・・。」

         侍女、下手へ去る。カロリーネ、侍女に続いて
         去る。フランチェスコ、カロリーネが去るのを
         見計らって、再びベンチへドッカと腰を下ろす。

  フランチェスコ「(溜め息を吐いて。)必ず・・・勝つ・・・!!」

         そこへ家臣、下手より登場。

  家臣「フランチェスコ様、ただ今、門の所にフランチェスコ様に頼
      まれたからと、花売り娘が来ておりますが・・・。如何致し
      ましょう・・・?(少し困惑したように。)」
  フランチェスコ「(幾分、嬉しそうに。)そうか。私の客だ。ここへ
           通してくれ。」
  家臣「はい・・・。(首を傾げて、下手へ去る。)」

         フランチェスコ、立ち上がり呟くように歌う。

         “たった一輪で咲く野花のごとく
         君は我にほんの少しの安らぎを与える・・・”

         一時置いて、下手よりジェシカ、回りを見回し
         ながら、心細げに花籠を手に登場。
         フランチェスコ、ジェシカのそんな様子を楽し気に
         見詰める。

  フランチェスコ「やぁ・・・。」
  ジェシカ「(フランチェスコを認め。)こんにちは・・・。」
  フランチェスコ「約束、忘れなかったようだな。(微笑む。)」
  ジェシカ「だって、あんな大金・・・ただで貰えないから・・・。(少
        し興奮ぎみに。)それよりでっかい家ね!!こんなお
        屋敷に入ったの、生まれて初めて・・・。この庭に出る
        までに、一体幾つの部屋を通ったかしら?一体何回
        長い廊下の曲がり角を曲がって来たのかしら?屹度
        同じ来た道を通って、一人で帰れと言われても、私、
        迷って一生このお屋敷から出られないかも知れない
        !!」
  フランチェスコ「面白いことを言うんだな。(笑う。)誰も一人で帰
           れとは言わないよ。」
  ジェシカ「(フランチェスコに近寄り、花を差し出す。)はい、約束
        の花・・・。何も態々、私なんかの野花を買わなくても、
        あなたならどんな花でもより取り見取りでしょうに・・・。
        現にほら、あそこに花壇だって・・・。(上手方にあった
        花壇を指差す。)」
  フランチェスコ「あれは母が趣味で育てているもので、私の花
           ではない・・・。(ジェシカから籠を受け取る。)この
           花は私の部屋に飾る為に買うんだ。」
  ジェシカ「へ・・・ぇ・・・。私、貴族の奴らって、争いごとが好きで
        ・・・野蛮で・・・血を見るのを何とも思わない冷血人間
        ・・・そんな風に考えてたから、少し意外ね・・・。況して
        男の人なのに・・・。(何か思い出したように、クスクス
        笑う。)昨日は・・・ごめんなさい・・・。助けてもらったの
        に、酷いこと言っちゃって・・・。」
  フランチェスコ「いや・・・いいんだ。君の言ったことは、本当のこ
           となんだから・・・。」
  ジェシカ「(意外な面持ちで、フランチェスコを見詰め、微笑む。)
        私達ね・・・とても期待していたの。新しい国王になって
        、これで住み易い世の中にんるんじゃないかって・・・。
        なのに景気は一向に回復しないし、それどころか益々
        物価は高くなって、段々生活が苦しくなる・・・。仕事は
        ないし・・・。そこへきて馬術大会でしょ?ついカッとなっ
        ちゃって・・・。」
  フランチェスコ「昨日、一緒にいた娘は妹かい?」
  ジェシカ「ええ。私のたった一人の肉親・・・。」
  フランチェスコ「具合が悪そうだったけど・・・。」
  ジェシカ「あの子・・・生まれつき体が弱くて・・・。ここ暫く、じゃが
        いものスープ以外、食事らしい食事もしてなかったし
        ・・・。」
  フランチェスコ「(驚いたように。)じゃがいも・・・の・・・?」
  ジェシカ「けど、昨日あなたのお陰で、久しぶりにパンを食べさ
        せてあげることができたの!!ありがとう・・・。」
  フランチェスコ「(微笑んで。)それはよかった・・・。」
  ジェシカ「あの子が美味しそうにパンを食べるのを見て、とても
        嬉しかったの!!嬉しかったの・・・美しい花々は心を
        満たしてくれるけど、お腹は一杯にならないもの・・・。
        私は元気だから、少しくらい食べなくても全然平気だ
        けど、リーザはね・・・。あの子には、うんと栄養のある
        ものを食べさせてやりたかったから・・・。」
  フランチェスコ「(微笑ましくジェシカを見詰めたまま。)おまえの
           名前は・・・?」
  ジェシカ「ジェシカ・・・」
  フランチェスコ「ジェシカ・・・いい名前だ・・・。」
  
         ジェシカ、恥ずかしそうに下を向く。
         その時、美しいバイオリンの音が流れてくる。

  ジェシカ「(その音に気付いて。)この音楽は・・・?」
  フランチェスコ「ヴィクトールだ・・・。昨日、私と一緒にいた男、覚
           えているか?」
  ジェシカ「(頷く。)」
  フランチェスコ「あいつは毎晩、こうしてバイオリンを楽しむのが
           趣味なんだ。」
  ジェシカ「へぇ・・・。」
  フランチェスコ「(微笑んで、手を差し出す。)一曲・・・お相手願え
           ますか・・・?」
  ジェシカ「(驚いた面持ちで。)私・・・そんな・・・ダンスなんて・・・
        (恥ずかしそうに下を向く。)」」
  フランチェスコ「(ジェシカの手を取る。)大丈夫・・・」

         バイオリンだけだった音楽、豪華に盛り上がる。
         フランチェスコ、優しく微笑む。
         戸惑い気味のジェシカ、フランチェスコのリードに
         身を任せ、その音楽に乗って、嬉しそうにデュエット
         ダンスを踊る。
         一踊りし終えた時、中央2人、手を取り合ったまま
         見詰め合う。(音楽流れたまま。)
         ジェシカ、フランチェスコの瞳に堪えられないように
         視線を捥ぎ取り、下手へ走り去る。
         フランチェスコ、呆然とその方を見詰めたまま、
         立ち尽くす。
         フェード・アウト。(紗幕閉まる。)       ※

    ――――― 第 6 場 ―――――

         紗幕前。
         音楽で、上手スポットにヴィクトール浮かび上がる。
         (フェード・インする。)
         ゆっくり歌いながら中央へ。

         “生まれた時から今日まで
         何の疑いもなく
         何時も共にいた・・・
         主従の関係を越え
         心から分かり合える
         唯一の友のように
         俺はおまえのことなら何でも分かる
         そう信じていたのは
         ついこの間までのこと・・・
         なのに今は
         おまえの心が余所にあるようで
         理解しようとすれば尚のこと
         俺の心は迷路を迷い
         抜け出すことは不可能に思える程・・・
         その迷いに自分自身も分からなくなる・・・”

         そこへ、上手よりフランチェスコ登場。    
         ヴィクトールを認め、幾分早足に近寄る。

  フランチェスコ「おい、ヴィクトール!!出掛けるぞ!!」
  ヴィクトール「(フランチェスコを認める。)フランチェスコ・・・。出
          掛けるって、こんな時間から何処へ・・・?」
  フランチェスコ「ジェシカの家を捜しに行く!!」
  ヴィクトール「(驚いたように。)ジェシカの・・・家・・・?」
  フランチェスコ「彼女に花を届けるように頼んで一週間、今日ま
           で一度だって約束の時間を違えたことはないん
           だ!!その彼女が、今日に限って来ないなんて
           可笑しいと思わないか!?」
  ヴィクトール「そりゃあ・・・そうだが・・・。だけど何故態々・・・」
  フランチェスコ「何故・・・?愚問だな。」
  ヴィクトール「フランチェスコ・・・」
  フランチェスコ「行くぞ!!(下手へ去る。)」

         ヴィクトール、困惑気味な面持ちでフランチェスコ
         に続いて下手へ去る。
         静かな音楽で紗幕開く。
         と、ジェシカの家。
         中央に設えられたベットの上に、リーザ横になって
         いる。その横のテーブルの上に、フランチェスコに
         持って行く筈の花籠が置いてある。
         一時置いて、奥の扉よりパンを持ったジェシカ登場。

  ジェシカ「(リーザの枕元に跪いて。)リーザ・・・、パンを買って来
        たわ・・・。食べる?」
  リーザ「(首を振る。)」
  ジェシカ「駄目よ。少しは食べないと・・・。(リーザを起こしてやり、
        パンを千切ってリーザに手渡す。明るく。)もう、一個の
        パンを買うにも、パン屋の前は長い行列で大変!」
  リーザ「・・・姉さん・・・ごめんなさい・・・。」
  ジェシカ「何謝ってるの!さ、沢山食べて元気つけなくちゃ!!」
  リーザ「私がもっと健康なら、姉さんに苦労かけることないのに
      ・・・。」
  ジェシカ「そんなこと気にしないの!さぁ・・・。(リーザのパンを
        持っていた手を、口元へ近付ける。)」

         リーザ、頷いて少しパンを口に入れる。
         ジェシカ、その様子を優しく見詰めている。
 
  ジェシカ「何か飲み物を持って来るわね・・・。」
  リーザ「ありがとう・・・」

         ジェシカ、微笑んで奥へ去る。
         一時置いて、扉をノックする音。

  リーザ「(奥を見ながら。)姉さん・・・?」

         再びノックの音。
         リーザ、ジェシカが気付かないのを確認し、
         ゆっくりベットから起き上がり、扉の方へ。  

  リーザ「はい・・・。(扉を開ける。)」
  
  フランチェスコの声「ジェシカは・・・?」
  
  リーザ「はい・・・。どうぞお入り下さい・・・。」

         フランチェスコ扉から登場。続いてヴィクトール
         回りを見回しながら登場。

  フランチェスコ「(入りながら。)中々見つからなくてね。随分捜し
           たんだ。大体この辺りだと聞いていたんだが・・・。
           で・・・?ジェシカは・・・」
  リーザ「今・・・呼んで・・・(突然、胸を押さえて苦しそうに座り込
      む。)」
  フランチェスコ「(リーザに気付いて駆け寄る。)君!?」

         その時、奥よりジェシカ登場。フランチェスコ達を
         認め、驚いたように。

  ジェシカ「フランチェスコ・・・(リーザに気付き。)リーザ!!」










     ――――― “フランチェスコ”4へつづく ―――――










    ※ 子ども向き人形劇では考えられないシチュエーション
      です^^;久しぶりにこんな感じの場面・・・何だか少し
      ・・・ジェシカちゃんではありませんが、恥ずかしいです
      ~・・・(^_^;)




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“チュー吉くんの星に願いを・・・” ―全7場― 2

2011年12月20日 19時40分10秒 | 新作(人形劇用)


  チュー太「ねぇ、チュー吉、そうしようよ!これを母さんのプレゼ
        ントにすればいいじゃないか。」
  チュー吉「・・・そんな盗んだ物を、母さんのプレゼントになんて
        出来ない。行こう、兄さん!!」
  チュー太「チュー吉!」
  チュー五郎「ちぇっ!!なんでぇ・・・折角、俺様が安くで売って
          やるって言ってるのによ・・・。で?おまえさん達は
          何を母さんにプレゼントするつもりなんだよ。」
  チュー太「僕達は、辺りが真っ暗になれば現われる、あの高い
        場所にキラキラ輝く、おじさんが持ってるその石を取
        りに行くんだよ。」
  チュー五郎「え・・・?キラキラ輝く・・・(持ってたダイヤモンドと
          空を交互に見る。)」
  チュー吉「兄さん、行こう!暗くなる前に、たかいさんの頂上に
        着かなけりゃ。」
  チュー太「う・・・うん。」
  チュー五郎「(笑う。)馬鹿だなぁ・・・!あれは“星”って言うんだ
          。」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー太「(チュー吉を見て、首を傾げる。)」
  チュー吉「・・・星・・・って何・・・?」
  チュー五郎「星って言うのは、この今、俺達が立ってる地球と同
          じようなものさ。」
  チュー太「地球・・・?」
  チュー吉「おじさんの手に持ってるのは・・・?」
  チュー五郎「これは宝石!」
  チュー吉「おじさんも、あのキラキラを取って来て、今そうやって
        持ってるんじゃないの・・・?」
  チュー五郎「あの空でキラキラ光ってるものと、これとは全く違う
          別物だ!それに、あんな風に夜になりゃキラキラ輝
          いて見えるけど、実際はキラキラもしてねぇし、あん
          な風に小ちゃくもねぇってことさ!」
  チュー吉「嘘だ・・・」
  チュー五郎「嘘吐いてどうすんだ!だから、あんなのを取りに行
          こうだなんて、馬鹿なこと考えてないで、さっさとこ
          のダイヤモンドを買って、家に帰った方がいいぜ!
          どうせ家で母ちゃんが、心配して待ってるんだろ?」
  チュー吉「嫌だよ!!折角、こんな遠くまでやって来たのに、何
        も持って帰ることが出来ないなんて!!」
  チュー五郎「だから俺様が、売ってやるって・・・」
  チュー吉「嫌だ!!そんな泥棒したものなんていらない!!」
  チュー五郎「だけど、いくらどれだけ高いとこに登ったとしても、
          あの“星”に着くのは・・・まぁ、無理だ。(笑う。)」
  チュー吉「無理・・・」
  チュー太「無理だって・・・チュー吉・・・」
  チュー吉「じゃあ、あの高いところを飛んでいる、あの鳥に頼ん
        で連れて行ってもらうよ!!おーい!!(手を振る。)
        おーい!!そこの高いところを飛んで・・・!!」
  チュー五郎「馬鹿!!(チュー吉を押さえて隠すように。)あいつ
          らは鷹だぜ!!あいつらに見つかっちゃ、俺らみた
          いな小さなネズミ、一飲みにされちまうぜ!!それ
          にさっきから言ってるだろ!?あの“星”って奴は、
          見えてるみたいに小さくもないし、綺麗でもないん
          だ。諦めろ諦めろ。」
  チュー吉「嫌だ!!僕は、自分の力で母さんにプレゼントを用意
        するんだ!!」
  チュー五郎「ああ、そうかい。じゃあ好きにするがいいさ。俺には
          関係ない。さぁ、そう言うことならさっさと行きな!!
          俺は薬屋から薬を頂戴・・・おっと違った、買う為に
          来たんだ!忙しいんだから早いとこ行った行った!
          !」
  チュー吉「兄さん!行こう!!」
  チュー太「う・・・うん・・・」

         チュー吉、チュー太、下手へ去る。

  チュー五郎「(2人が去るのを見計らって。)ばーか!!星なん
          か手に入る訳ねぇだろ!!ふん!!俺様が折角
          ・・・(手に持っていたダイヤモンドを見る。)」

         音楽流れ、チュー五郎歌う。

         “こいつは金持ちの家から拝借したんだ・・・
         こっちは通りすがりに見つけた
         家の庭で拾った宝・・・
         そっちは店の軒先から
         店主の目を盗んでちょいと頂いた・・・
         何もあんなに拒否しなくてもいいだろう
         泥棒だってこの俺様が・・・?
         確かに泥棒かも知れない
         けど何がいけないんだ泥棒の・・・
         余り余ったお宝を
         小さな俺様が頂いて
         何が悪いんだ分からない・・・”

  チュー五郎「馬鹿な奴らだぜ・・・あんな、たかいさんの天辺に登
          ったところで星なんて・・・取れる訳ねぇのに・・・。な
          んて一生懸命なんだ・・・あいつら・・・。(下手方を見
          て。)あ・・・おーい!!ちょっ・・・ちょっと待ってくれ
          ー!!俺様も一緒に行くからー!!」

         チュー五郎、慌てたように下手へ走り去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より一羽のトビ、怯えるように回りを
         見回し、ゆっくり登場。
         その時、オオタカの声が聞こえる。

  オオタカの声「おいトビ!!そんなところをコソコソと、どこへ行
           くつもりだ!!それでも隠れているつもりか?俺
           にはおまえの行動は一目瞭然・・・!!」

  トビ「オ・・・オオタカの親分・・・」

  オオタカの声「早くエサになりそうな生き物を、探して連れて来
           るんだ!!でないと、おまえとおまえの家族を、
           今日の食卓へ乗せてしまうぞ!!」

  トビ「は・・・はい、オオタカの親分・・・!!直ぐに獲物を探して
     連れて来ます!!だから、今しばらく待って下さい!!」

  オオタカの声「早くしろ!!俺は今朝から何も食べてないんだ。
           腹が減って死にそうなんだよ!!」

  トビ「はい!!」

         鳥の羽ばたく音、遠ざかる。

  トビ「はぁ・・・全く、エライ親分に見つかってしまったなぁ・・・。毎
     日毎日、エサになりそうな生き物を連れて行かないと、オイ
     ラの生まれたばかりの子ども達がやられちまう・・・。姿形は
     似てはいても、オイラ達トビは、オオタカの親分なんかと比
     べりゃあ、力も何も敵ったもんじゃないのに・・・。自分達の
     エサすりゃ、満足に探して来れないオイラ達トビに・・・。」

         トビ、歌う。

         “何てことだ
         何て不幸なオイラだろう
         ちょいと目にした卵を頂こうと
         抜き足差し足 側に行くと・・・
         そこに現れた大きなタカ”

  トビ「オオタカの親分の卵を頂こうなんて、これっぽっちも思っち
     ゃいなかったんだ!!ただ腹が減って、腹が減って・・・巣
     で待ってる子ども達の為に、ちょいと目に付いただけなん
     だ、美味そうな卵が・・・。あああ・・・何てこった・・・何てオイ
     ラは運が悪いんだ・・・。さぁ、早いとこ獲物を探して・・・(そ
     の時、下手方に何か気付いたように。)おっ!!向こうから
     山を登って来るのは・・・しめしめ!!野ネズミが2匹・・・い
     や・・・3匹だ!!今日はついてるぜ!!あいつらを、さっさ
     と親分のとこに連れて行きゃあ・・・。ようし・・・!!」

         トビ、上手へ(一旦)去る。

    ――――― 第 5 場 ――――― 
 
         その時下手より、チュー吉、チュー太登場。
         続いてチュー五郎登場。

  チュー五郎「おいおい、つれないなぁ、お2人さん。」
  チュー吉「何で僕達に付いて来るんだよ!」
  チュー五郎「いや、何・・・何でそんなに一生懸命になれるのか
          なぁ・・・って。ちょいと好奇心って奴さ。」
  チュー太「好奇心・・・?」
  チュー五郎「変な奴・・・。さぁ、兄さん!!いよいよその木の間
          を抜けたら頂上だよ!!」
  チュー太「うん・・・」
  チュー吉「丁度、辺りも暗くなってきたし、この木の先には屹度、
        沢山のキラキラした宝石が、目の前にあるんだ!!」
  チュー太「そうだね!」
  チュー五郎「そうかねぇ・・・」
  チュー吉「(チュー五郎を睨む。)さぁ・・・!!」

         チュー吉、走りながら上手方へ。
         紗幕開く。(と、だだっ広い山頂の様子。)

  チュー吉「ほら!!(紗幕が開いた後方を、指し示す。)」
  チュー太「うん!!・・・あれ・・・?」
  チュー吉「・・・ない・・・」
  チュー太「・・・ないね・・・」
  チュー吉「辺りは、もう真っ暗なのに・・・」
  チュー五郎「(ボソッと。)ほうら・・・だから言ったじゃないか・・・。
          」
  チュー太「あっ!!見て、チュー吉!!(空を指差す。)」
  チュー吉「え・・・?(上方を見る。)」

         (満天の星空が広がる。)

  チュー吉「キラキラした宝石だ・・・」
  チュー太「まだ、あんなところにあるよ・・・。」
  チュー吉「こんな山の高いところまで登って来たのに・・・」
  チュー五郎「だからさぁ・・・言ってやっただろ?あれは“星”って
          言って、この地球からもっと、もーっと遠くにあって、
          誰も手にすることなんて出来ねぇ代物なんだよ。」
  チュー太「なんだ・・・」
  チュー吉「そんな・・・」

         その時、一つの流れ星が流れる。

  チュー吉「あっ!!キラキラだ!!今、キラキラの宝石が落ちて
        いったぞ!!」
  チュー太「ホント!?」
  チュー吉「届かないんなら、あの落ちたキラキラを探しに行けば
        ・・・」
  チュー五郎「ばーか!」
  チュー吉「馬鹿ってなんだよ!!」
  チュー五郎「あれは“流れ星”・・・。あんなもん探せる訳ないだろ
          !?おまえ、何も知らないんだなぁ、全く・・・」
  チュー吉「・・・だって・・・」
  
         その時、木の陰からトビ登場。

  トビ「やあ、お3人さん。」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー五郎「(チラッとトビを見る。)おっと、タカ・・・!!・・・じゃ
          ねぇ・・・。なんでぇ、トビか。」
  チュー吉「トビ・・・?」
  トビ「はいはい、確かに私はトビでござます。そちらの方はよく
     ご存じで・・・」
  チュー五郎「ふん・・・(一寸、離れたところへ腰を下ろす。)」
  トビ「何やらさっきからお話しを伺っていると、あの流れ落ちた
     “星”の場所が知りたいと・・・?」
  チュー吉「え・・・?トビさん分かるの・・・?」
  トビ「いやあ何、私はこの辺りのことは、そこいらの誰よりもよく
     知っている、この山の住人ですから・・・。今起きたことは、
     全てこの私に聞いてくれさえすれば、何でもお答え出来る
     と思いますがねぇ・・・。」
  チュー太「へぇ・・・」
  トビ「どうです?この私が、あのキラキラ星の落ちた場所まで、
     案内して差し上げましょうか?」
  チュー吉「本当!?」
  トビ「ええ。」
  チュー吉「やった、兄さん!!これで母さんの誕生日プレゼント
        が無事、手に入るよ!!」
  チュー太「うん。」
  チュー五郎「おいおい・・・おまえら本当に、そんなトビの言うこと
          を信用していいのか?」
  チュー吉「いいじゃない!だってトビさん、この山のことは何だっ
        て知ってるんだって言ったんだ!如何様物売りのあな
        たより、ずっと信用できるよ!」
  チュー五郎「ふうん・・・まぁ、いいや、好きにしな。俺様はここで
          暫く休憩させてもらうことにするぜ。」
  チュー吉「お好きに!ねぇ、トビさん!!早く僕達を、そのキラキ
        ラ星が落ちた場所へ案内して!!」
  トビ「ああ、お安いご用でさぁ・・・。(意味ありげに笑う。)」  

         チュー吉、チュー太、トビに付いて上手へ去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

  チュー五郎「あああ・・・本当にあんな奴に付いて行って、大丈
          夫なのかよ。俺は知らねぇぞっと・・・(ゴロンと横
          になる。が、何か落ち着かない様子で、直ぐに起
          き上がる。)馬鹿野郎・・・トビったって、タカには違
          いねぇんだよ!!それを信用してノコノコと・・・。ホ
          ント馬鹿な奴らだぜ・・・。」

         音楽流れ、チュー五郎歌う。

         “何で気になるこんなに・・・
         つい今しがた偶然知り合った
         ただの子ネズミ達・・・
         放っておきゃあいいんだ気にするな・・・
         何があっても知っちゃいねぇ
         俺は関係ないんだ何も
         だから知らん顔してれば
         それでいい・・・”

  チュー五郎「でも・・・あいつらの、あの瞳を見てると・・・何故か
          昔の自分を思い出すんだ・・・。まだこんな悪びれた
          仕事に手を染めるなんてことを、これっぽっちも考
          えなかった・・・餓鬼の頃の自分を・・・」

         その時、鳥の激しい羽ばたきの音に交じって
         チュー吉、チュー太の悲鳴が聞こえて来る。

          
     








  ――――― “チュー吉くんの星に願いを・・・”
                          3へつづく ―――――












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