りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“Thank you!B・J” ―全○場― 2

2013年04月29日 16時30分50秒 | 未発表脚本



    ――――― 第 3 場 ―――――

         舞台、明るくなると1場の公園の様子。
         (ベンチにジム、寝っ転がっている。)
         B・J、ジムを認め、一瞬、躊躇したように
         立ち止まる。が、意を決したように近寄る。

  B・J「・・・やっぱりここにいた・・・兄ちゃん・・・」
  ジム「・・・う・・・ん・・・」
  B・J「兄ちゃん・・・!」
  ジム「・・・ん・・・」
  B・J「兄ちゃん!!」
  ジム「・・・煩いな・・・」
  B・J「起きろよ!!」
  ジム「もう、何だよ!!(目を覚ます。)・・・何だ・・・昨日の餓鬼
     じゃないか・・・。何か用か・・・?俺の一番のリラックスタイ
     ムに、邪魔すんなよな・・・。また悪いことやったんじゃない
     だろうな・・・」
  B・J「やってねぇよ!!・・・」
  ジム「本当だろうな・・・?」
  B・J「何、疑ってんだよ!!俺は嘘は吐かねぇ!!」
  ジム「・・・どうしたんだよ・・・」
  B・J「うん・・・え・・・っと・・・」
  ジム「何だよ。」
  B・J「・・・昨日の話し・・・」
  ジム「え・・・?」
  B・J「独りぼっちの婆さんとこ・・・行くってやつ・・・」
  ジム「ああ・・・。そうか、行く気になったのか?」
  B・J「あれ・・・男として・・・だよな・・・」
  ジム「ばぁか!男としてってどう言う意味だよ。兎に角、婆さん
     家に行けば、おまえのその無作法を正してくれるだろう。ナ
     イフとフォークの持ち方を習うのに、男女の別があるのか
     ?挨拶の仕方が違う訳ないだろ?礼儀作法に男も女も関
     係ないんだ。変なこと聞く奴だな。(笑う。)」
  B・J「う・・・ん・・・。・・・それで・・・そいつは・・・いくらなんだよ・・・
     」
  ジム「いくら・・・?タダに決まってるだろ!?パンを買う金もない
     奴に、金のいる話しをする訳がない。アルバイト・・・って言
     ってるだろ?おまえ、アルバイトの意味分かってるか?」
  B・J「わ・・・分かってらぁ、そんなこと・・・!」
  ジム「ただ、夏休みが終わって、自分の生活に戻っても、週末に
     時々元気な顔を婆さんに見せてやればいいんだよ。」
  B・J「・・・分かったよ・・・俺・・・行くよ・・・俺、その婆ちゃんのとこ
     、行ってやることにする・・・!」
  ジム「よし、決まった!それじゃあ、おまえの前途を祝して乾杯
     といくか!」

         ジム、横に置いてあった鞄の中から、
         紙コップを取り出し、1つをB・Jへ差し
         出す。

  ジム「ほれ、持ってな。」
  B・J「・・・う・・・うん・・・」

         ジム、鞄の中からペットボトルを取り出し、
         B・Jの紙コップへ半分注ぎ、残りを自分の
         持っていた紙コップへ注ぐ。

  ジム「さ、乾杯だ!!(紙コップをB・Jの方へ差し出し、中身を
     一気に飲み干す。)ほれ、おまえも飲め飲め!」
  B・J「あ・・・うん・・・(紙コップを見て。)え・・・?こ・・・この紙コッ
     プ・・・」
  ジム「ん・・・?何か問題あるか?」
  B・J「も・・・問題って・・・このメモリ・・・」
  ジム「メモリ?メモリがどうしたんだ?量が分かってちょいと便利
     だろ?(笑う。)」
  B・J「ばっ・・・!この紙コップ、病院なんかで検査の時にトイレ
     で使う・・・あれじゃねぇか!!」
  ジム「(笑う。)大丈夫、大丈夫!まだ使用前の新しいのだから、
     なんてことないただの紙コップと一緒だ。」
  B・J「使用前ってったって・・・!!」
  ジム「細かいことは気にするな!」
  B・J「だって・・・」

         音楽流れ、B・Jの背に手をかけ、
         ジム歌う。(紗幕閉まる。)

         “さぁ始めよう 新しい人生!
         昨日までと同じようで全く違う
         朝陽が昇るんだ
         さぁ希望溢れる待ちに待った人生!
         この手で切り開くんだ未来を
         明日が来ない日なんてない
         そう信じていれば
         この世はバラ色
         幸せは自分の手で掴むんだ
         ちっぽけなチャンスを物にしろ!”

  ジム「さぁ、行くぞ!!」

         ジム、上手へ走り去る。

  B・J「あ・・・待って・・・待てよ!!おい!!」

         B・J、上手方へ行きかけて、立ち止まる。
         歌う。

         “ホントにこの俺が・・・
         あの人の言うように・・・
         ちゃんとした身形の
         言葉遣いも丁寧な・・・
         そんな奴に生まれ変われる・・・?
         ホントにたった今まで
         着の身着のまま好き放題
         自由気儘に生きてきた
         俺が生まれ変われるの・・・?”

  B・J「あ・・・(上手方を見て。)待ってくれよ、兄ちゃーん!!」

         B・J、慌てて紙コップの飲み物を飲み干し、
         ジムを追い掛けるように上手へ走り去る。
         音楽盛り上がって、暗転。

    ――――― 第 4 場 ――――― A

         後方段上、下手スポットに老婦人
         (ミセスアダムス。)、ベッドに横になって
         いる。
         横に白衣を着た医師、客席に背を向け
         座る。

  ミセスアダムス「先生・・・私はもう何だか生きる張り合いがなく
            て・・・毎日毎日こうしてベッドの中で、早くお迎え
            が来ないかと、そればかり考えているんですよ
            ・・・」
  医師「ミセスアダムス、そんな風に落ち込んでばかりいても、仕
     方がないですよ。もっとこう前向きに・・・」
  ミセスアダムス「でも先生・・・今まで私の回りは、孫達の笑顔が
            いつも溢れていて、毎日がとても生き生きとして
            いたのですよ・・・。それが今では・・・この広い屋
            敷がただ恨めしくて・・・」
  医師「何か生きがいを探されたら如何です?」
  ミセスアダムス「・・・生きがい・・・?」
  医師「ええ。もう一度このお屋敷を、明るく笑いの絶えない場所
     にするのです。」
  ミセスアダムス「・・・そのような場所になど、出来るのでしょうか
            ・・・」
  医師「そうだ、ミセスアダムス、僕にいい考えがあります。少し時
     間を頂けますか?」
  ミセスアダムス「・・・先生・・・ええ・・・時間ならいくらでも差し上
            げますよ・・・。もし本当にそのような場所が、再
            び戻るのであれば・・・」
  医師「(立ち上がり振り返ると、ジム。)はい、勿論!」

         後方段上、下手スポット、フェード・アウト。
         入れ代わり、後方段上、上手スポットに
         身奇麗ななりの七三分けしたB・J、幾分
         緊張した面持ちで立つ。横にはシスター。

  シスター「まぁ、見違えるようですよB・J。本当によかったこと・・・
        。たとえ夏のバカンスの間だけでも、あなたを引き取っ
        て下さると言う、奇特な方が見つかって・・・。いいです
        ね、B・J、ミセスアダムスのお宅では、ホームと同じよ
        うに振舞っては駄目ですからね。」
  B・J「ホームと同じって・・・何だよ・・・しねぇよ、そんなこと・・・!
     」
  シスター「しっ!その言葉遣いもね。“しねぇ”ではなく、“しませ
        ん”と言うの。」
  B・J「・・・し・・・ません・・・先生・・・」
  シスター「そう!そうやってきちんとした洋服に身を包んで、丁
        寧な言葉遣いで話すあなたは、ネリーや他の子となん
        ら変わりなく見えますよ。」
  B・J「ネリーや・・・みんなと・・・」
  シスター「お行儀良くね・・・。夏休みが終わるまで、ちゃんとお世
        話になるのですよ。」
  B・J「・・・はい・・・先生・・・」

         後方段上、上手スポットフェード・アウト。   ※

    ――――― 第 4 場 ――――― B

         音楽流れ、舞台明るくなる。(紗幕開く。)と、
         中央階段のあるミセスアダムス邸。
         上手、下手より其々メイド(ルーシー。)、
         執事(バート。)が登場。歌う。



          
       なんとなく、舞台イメージが分かって頂ける
       でしょうか・・・?(^^;



         “ようこそいらっしゃいました
         ここは裕福なアダムス邸
         ようこそおいで下さいました
         誰もが羨むアダムス邸
         大きな塀に囲まれた
         ここは楽園アダムス邸
         煌びやかなシャンデリアに
         金の食器
         大理石で出来た床はピカピカ
         赤い毛氈ひいてお出迎え
         ご主人様はミセスアダムス!!”

         バート、ルーシー、中央階段上を指し示し、
         ポーズを決める。

  ルーシー「はぁあ・・・ご主人様は今日もベッドでお休み・・・毎日
        毎日寝たきりで、本当、大丈夫なのかしら・・・」
  バート「仕方あるまい・・・。ついこの間まで賑やかで、明るかった
      お屋敷が今はこの通り・・・ネズミの足音すら聞こえはしな
      いのだから・・・」
  ルーシー「あら、バートさん、このお屋敷の中に、ネズミなんてい
        やしませんわよ。」
  バート「まぁ、まぁルーシー、例えだよ例え・・・」
  ルーシー「そうですわね・・・今はシーンとして・・・お子様達の笑
        い声に包まれてたこの間までが、丸で嘘のよう・・・」
  バート「本当だな・・・」
  ルーシー「それよりバートさん、お客様がお見えになられますの
        ?お部屋の用意をしろだなどと・・・」
  バート「ああ、そうだよ。何でもグレイ先生の紹介で、夏のバカン
      スの間、この屋敷で預かることになった子どもが来るらし
      いのだ。」
  ルーシー「子ども・・・ですか?」
  バート「うむ・・・。具合の良くない奥様がいるこの屋敷で、何の
      もてなしも出来ぬからと、お断り申したのだが、先生がど
      うしてもと仰ってな・・・。ただ預かって、一緒に生活をさせ
      てくれればそれでいいからと・・・」
  ルーシー「どういったお子様なのかしら・・・」
  バート「さぁ・・・それは私にも分からないが・・・グレイ先生の知り
      合いなら、何の問題もないだろう。おまえ、その子の世話
      を頼むよ。」
  ルーシー「はい、バートさん。」

         2人、話しながら下手へ去る。
         一時置いて中央階段上、メイド登場。
         つづいてB・J、回りを見回しながら
         ゆっくり登場。

  メイド「さぁ、こっちよ。ご主人様をお呼びしてくるから、あなたは
      少しここで待ってて頂戴ね。」
  B・J「うん・・・」

         メイド、段上下手へ去る。
         B・J、回りをキョロキョロ見回しながら、
         階段を下りて来る。

  B・J「わぁーっ・・・おっきな屋敷だなぁ・・・あのでっかいシャンデ
     リア!もの凄く綺麗だ・・・!!へぇーっ・・・!!この花瓶!
     !なんて重そうなんだ!!割ったら院長先生に大目玉を
     食うぞ!!(笑う。横に置いてあるソファーの側へ。触って
     みる。)うわっ・・・なんてフカフカなんだ!!こんなソファー
     に生まれてから一度だって座ったことねぇや・・・!!すげ
     ぇなぁ・・・」

         音楽流れ、B・J、歌う。

         “なんて豪華なお屋敷だ
         キラキラ輝く装飾品
         床はピカピカツルツルだ
         ソファーはフカフカ体が沈む
         こんな贅沢見たことねぇ!!”

         B・J、思わずソファーの上へ上がり、
         ジャンプして遊ぶ。
         その時、下手より車椅子に乗った、
         ミセスアダムス登場。

  ミセスアダムス「(B・Jの様子に唖然と。咳払いする。)」
  B・J「あ・・・(ミセスアダムスに気付き、気不味い面持ちでソファ
     ーから下りる。小声で。)やっべ・・・」
  ミセスアダムス「あなたがB・Jね。」
  B・J「う・・・うん・・・」
  ミセスアダムス「お返事は“はい”ですよ、B・J。」
  B・J「はぁい・・・」
  ミセスアダムス「“はぁい”と伸ばすのではありません、“はい”で
            す!」
  B・J「イエス サー!!」
  ミセスアダムス「(溜め息を吐いて。)やれやれ・・・あなたは今ま
            でどんな教育を受けてきたのかしら・・・」

         下手よりルーシー、盆の上にティーカップと
         お菓子を乗せて運んで来る。

  B・J「わぁーっ!!(ルーシーに駆け寄る。)姉ちゃん!これ食っ
     ていいか?」
  ルーシー「(驚いて。)ね・・・姉ちゃんではありません!ルーシー
        と申します!」
  B・J「ルーシー・・・姉ちゃん?」
  ルーシー「姉ちゃんはいりません!」
  B・J「ふぅん・・・。まぁどっちでもいいや!これ食ってもいいよな
     !(ルーシーの持っていた盆の上から、お菓子を2つ両手
     の取り食べる。)わぁーっ・・・うめぇ!!こんな美味いクッキ
     ー食べたことねぇや!!いいなぁ・・・金持ちって!!」
  ミセスアダムス「グレイ先生の勧めで、安易に引き受けてしまっ
            たけれど・・・大丈夫なのかしら・・・本当に・・・」
  B・J「婆ちゃん!婆ちゃんも食べなよ!(1つのクッキーをミセス
     アダムスに差し出す。)」
  ミセスアダムス「・・・(B・Jが素手で持つクッキーを見て。)私は
            結構ですよ・・・。それと・・・私のことは婆ちゃん
            ではなく、ミセスアダムスと・・・」
  B・J「婆ちゃん!婆ちゃんはこんな広い屋敷に今まで独りぼっち
     ・・・じゃあないか、ルーシー達がいるもんな!けど、それに
     しても広い屋敷で、一体毎日何して遊んでんだい?」
  ミセスアダムス「遊んでなどおりません!あなたは今日から2ヶ
            月間、みっちりと礼儀作法を学ばなければなり
            ませんよ、B・J!」
  B・J「礼儀・・・あ・・・うん・・・」
  ミセスアダムス「“うん”ではありません、お返事は・・・」
  B・J「はいっ!!」
  ミセスアダムス「・・・よろしい・・・」










  ――――― “Thank you!B・J”3へつづく ―――――











      ※ この場面、書き忘れていました(^^;
      ・・・ので、急ぎ書き足しました(^_^;)前後しますが・・・
      ご覧下さいm(_ _)m



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



       (おまけフォト^^;)

    
       

    ちょっと見え難いですね~・・・すみませんm(_ _)m

   7回公演のお知らせチラシがとりあえず出来上がったので、
   皆様にご覧頂こうと思ったのですが・・・(^^;
   インクがなくて、一先ず白黒で印刷したので、余計に
   分り難くなってしまいました(ーー;)












“Thank you!B・J” ―全○場―

2013年04月20日 20時47分20秒 | 未発表脚本



    今回は、色々と迷いましたが、以前ご紹介した
   “Thank you!リトルレディ”の原作的な作品(未完成
   です^^;)が、途中ではありますが読み直してみて面白
   かったので、そちらをご覧頂こうと思います♥
   
   実は書きかけの私作品が色々とあるのですが、今回
   選んだこの作品が、その中でも今の私作品寄りで、続き
   が書き易いと感じたので選ばせて頂きました(^_^;)

   ・・・にしても・・・以前の私は余程、移り気だったのか・・・
   書きかけの作品を完成させないまま、次の作品に移って
   も、気持ち的に何の問題もなかったようです(-.-;)

   それでは、“・・・リトルレディ”と似ているようで別物の
   “・・・B・J”、是非読み比べご覧下さいm(_ _)m


                               どら。




― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


 
    ――――― 第 1 場 ―――――

         音楽流れ、幕が上がる。
         と、舞台中央、一つのベンチが置いてある
         公園の風景。
         そのベンチに一人の青年(ジム・グレイ)、
         ゴロンと横になっている。
         (騒いでいる人々の声が聞こえる。)

  声「ちょっと捕まえとくれ、その坊主!!」
  声「待てー!!逃がすもんか!!」
  声「泥棒ーっ!!」

         その時、上手より一人の子ども(B・J)、
         走りながら登場。
    
  B・J「捕まるもんか!!へへーんだ!!」

         B・J、後ろを気にするように、下手へ
         走り去る。
         一時置いて、上手より息を切らせ、走り
         ながら大人達登場。中央、立ち止まる。

  大人1「すばしっこい悪餓鬼だよ、全く!!」
  大人2「本当だね!!」
  大人3「いつもいつも・・・」

         大人達歌う。
   
         “うちのパンを盗みやがった”

         “うちはクッキーひと袋”

         “うちではコップを割りやがった”

         “なんて悪戯な悪い奴
         いつもあいつには手を焼いて
         この街の厄介者だ
         うちの子猫のヒゲを切った
         うちの鶏の卵を盗んだ
         あいつの頭の中には
         皆を困らせることしかないんだ”

         大人達、溜め息を吐いて上手へ去る。
         一時置いて、下手より上手方を伺うように
         B・J、ゆっくり登場。

  B・J「チョロいもんだな・・・(手に持っていたパンを見詰め、心な
     しか淋しそうなな面持ちをする。)」

         音楽流れ、B・J歌う。

         “ああ・・・俺に翼があったなら・・・
         ああ・・・今直ぐに飛んで行くんだ
         大空に・・・
         俺にもおまえ達のように
         羽ばたく羽があったなら・・・
         力強く両手を羽ばたかせ
         飛び出すんだ自分一人の世界へと
         自由に飛び回るんだ
         この広く澄み渡る青空の隅から隅まで
         ああ・・・俺にも翼があったなら・・・”

         B・J、溜め息を吐き、パンにかぶりつく。

  ジム「泥棒して食ったパンは美味いか・・・?」
  B・J「え・・・?(驚いて回りを見回す。)」

         ジム、起き上がる。

  ジム「(背伸びをして。)ああ・・・よく寝た・・・。悪いことばっかやっ
     てると、ろくな大人になんねぇぞ。」
  B・J「よ・・・余計なお世話だ、おっさん!!」
  ジム「・・・おっさん!?」
  B・J「俺は腹が減ってんだ!!」
  ジム「腹が減ってりゃ何してもいいってのか?それじゃあ世の中
     泥棒だらけだ。(笑う。)」
  B・J「うっせぇんだよ!!」
  ジム「大人の言うことは黙って素直に聞くもんだぞ。そんな口ば
     っか聞いてると、口がひん曲がるかも知れないな。」
  B・J「冗・・・冗談言うんじゃねぇ!!」
  ジム「いいか?何もいい人間になれと、強制している訳じゃない
     んだ。ただ生きていくうえでだな、こう・・・」
  B・J「説教なんか聞きたくねぇ!!」

         B・J下手方へ行こうとする。

  ジム「まぁ待てよ、小僧・・・」

         音楽流れ、ジム歌う。

         “よく考えてみろ
         世の中悪い奴らばかりなら
         まるでこの世の終わりだな
         世紀末に相応しい
         誰もが悪人 地獄絵図
         よく考えてみろ
         皆が理性を持たなけりゃ
         まるでこの世は崩壊寸前
         ノストラダムスも真っ青だ
         警察官も弁護士も誰もがお手上げ
         だから神様がお与えになった
         人には考える頭と感情を持つ心
         それを使いこなせずに
         思いつくまま欲求を満たそうなんて
         それじゃあ人として落第だ
         分かるか小僧
         世の中いいこと悪いこと
         それを見極め生きていく
         それが人としてやるべきこと
         それが誰もが考える
         当たり前のこと・・・”

  B・J「神様なんているもんか!!」
  ジム「いるさ。」
  B・J「絶対にいない!!」
  ジム「何故そう思う?」
  B・J「・・・ホントにいるなら・・・なんで俺を独りぼっちにするんだ
     !!なんで俺の父ちゃん母ちゃん、事故で死んじゃったん
     だ!!神様なんて糞食らえだ!!嘘吐くんじゃねぇ!!」
  ジム「そうか・・・おまえ・・・」
  B・J「(ジムの言葉を遮るように。)可哀想なんかじゃないぜ!!
     同情なんかするな!!俺は今の生活で満足してんだ!!」
  ジム「可哀想なんて言ってないぜ。」
  B・J「煩い!!誰が可哀想・・・え・・・?」
  ジム「頑張ってるんだな・・・って褒めてやろうと思ったのに。早と
     ちりだな。(笑う。)」      
  B・J「笑うな!!何が可笑しいんだ!!大人たちは皆一緒じゃ
     ないか!!先ず、俺の格好を見て嫌な顔をするんだ。それ
     から俺の身の上話しを聞いて、決まって言うんだ・・・俺をジ
     ッと見ながら“まぁ可哀想に・・・”まっぴらゴメンだ、そんなの
     !!余計なお世話だってんだ!!」
  ジム「まぁまぁ、そうカリカリすんなって。大人って言うのは、心の
     表現がおまえら子どもと違って、下手糞なんだよ。建前や
     愛想抜きに中々話せないものなんだ。」
  B・J「そんなの迷惑ってんだよ!!」
  ジム「まぁ確かに・・・それは一理ある。だが全ての大人を10個
     一盛のように思い込むのはどうかな・・・?人其々、顔が違
     うように・・・」
  B・J「考え方も違うってんだろ!?」
  ジム「おっ・・・」
  B・J「分かってら、そんなこと!!」
  
         音楽流れ、B・J歌う。

         “だけど大人の考え程
         ありきたりでくだらないものはない
         だから何でもお見通し
         つまらない不必要な考え事さ
         余計なお世話 時間の無駄だ
         俺のことは放っといてくれ”

         ジム、呼応するように歌う。

         “それが駄目だな 大人には
         くだらないと思われる台詞一つにも
         意味がある
         それが分からないなんて
         おまえはまだまだ子どもだな
         だから大人の言うことは
         黙って聞いてりゃ間違いない
         道をそれたら大変だ
         誰か導く大人が必要”

  ジム「そこでだ・・・ものは相談だが・・・おまえ、アルバイトする気
     はないか?」
  B・J「・・・アルバイト・・・?」
  ジム「金が手に入れば、パンが堂々と食える。泥棒なんてする
     ことないんだ。」
  B・J「アルバイトなんてゴメンだね!!働くなんて俺の性に合わ   
     ねぇ!!」
  ジム「性に合う合わないの問題じゃないぜ。人間誰しも働かな
     きゃ食っていけないんだ。働いて清々しい汗でも流してみ
     な。自ずと自分の進む道が見えてくるぜ。」
  B・J「分からねぇよ、そんなこと!」
  ジム「・・・ま・・・そうだな、今はまだ分からなくても、その内おま
     えにも理解出来る時が来るんだよ。その時になって“しまっ
     た”と思うより、今は半信半疑でも騙されたと思って、俺の
     言うこと聞いときなって!きっとおまえにとって、よかったと
     思える時がくる筈さ!」
  B・J「嫌だ!!」
  ジム「俺の知り合いに、独り暮らしの金持ちの婆さんがいるんだ
     が・・・最近、今まで一緒に暮らしてた子ども一家が、仕事
     の都合で遠くに引越しちまったんだ。」
  B・J「何、勝手に喋ってんだ!!嫌だってんだろ!!」

         B・J、下手へ行きかける。

  ジム「(B・Jの襟首を掴む。)」
  B・J「な・・・!何すんだよ!!離せ!!離せよ!!」
  ジム「それで、その淋しさから、急に塞ぎ込むことが多くなって、
     寝たきりで毎日過ごすようになってな・・・。だけどこのまま
     じゃ、体によくないだろ?元々は元気ハツラツな婆さんだっ
     たんだぜ。そこでだ!その婆さんが夏のバカンスの間、自
     分の孫と同じ年頃の男の子を預かって、面倒みようと思い
     ついたんだ。そうすれば家の中が賑やかになる。婆さんも
     張り合いが出るってもんだ。できれば少々ワンパクでも、元
     気な奴がいいと思っていたが・・・おまえなら願ったり叶った
     りじゃないか!(笑う。)」
  B・J「何勝手に・・・俺は行かないって・・・離せよ!!」
  ジム「(B・Jを離す。)婆さん家へ行けば、教育は受けさせてもら
     える。礼儀作法もバッチリだ!食事のマナーもお手の物。
     バカンスが済んだ頃には、おまえは立派なおぼっちゃまだ
     !!」
  B・J「おぼっちゃま・・・馬鹿にすんな!!おぼっちゃまなんかに
     なってたまるかよ!!」

         B・J、下手へ走り去る。

  ジム「あっ、ちょっと待てよ・・・!!せっかく上手い話しだと思っ
     て言ってやったのに・・・。大人は皆同じ・・・か・・・」

         暗転。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

         鐘の音が静かに聞こえる。
         上手よりシスター登場。続いてトランクを
         提げた一人の少女(ネリー。)、嬉しそうに
         登場。

  シスター「さぁネリー、もう用意は整っていますね。」
  ネリー「はい、先生!」
  シスター「もう直ぐ、トマスご夫妻がお見えになるわ。そうすれば
        いよいよお別れですからね。いい子で新しいご両親の
        言う事をよく聞いて、頑張るんですよ。」
  ネリー「はい、先生!」
  シスター「忘れ物はないですね。」
  ネリー「はい、先生!」
  シスター「院長先生の教えを忘れないように・・・」
  ネリー「はい、先生!」
  シスター「(下手方を見て。)列車が遅れているのかしら・・・。少
        し外の様子を見てきますから、あなたはここで待って
        いなさい。」

         シスター、下手へ去る。
         入れ代わるように上手よりB・J登場。

  ネリー「はい、せん・・・(B・Jに気付き。)あら、B・J・・・今お帰り
      ?」
  B・J「・・・ネリー・・・」

         B・J、上手方へ行きかける。

  ネリー「漸くお別れね!私は今日から新しい生活が始まるの!!
      やっとこのうらぶれた孤児院ともおさらばよ!この間見学
      にいらしたトマスご夫妻が、大勢の子ども達の中から、是
      非、金髪の巻き毛が愛らしい品の良さそうな私をうちの子
      に・・・と仰って下さったのよ!!あなたは・・・そのなりじゃ
      駄目よねぇ・・・。あなたみたいな薄汚れた品のない子は、
      きっといくら待っても里親は見つかりっこないわね。それに
      礼儀作法だって全然なってない。そんな風だと、ロクな大
      人になれないわよ。まぁ、あなたはそれでもいいから、そう
      しているのよね。余計なお世話だったわ。ごめんなさい。
      いい子は自分の非は素直に認めるものなの。あなたとも
      散々喧嘩したけれど・・・あなたの今までの様々な無礼を
      私は許してあげるつもりよ。感謝してね。」

  シスターの声「ネリー!!トマスご夫妻がお見えになったわよ!
           早くいらっしゃい!!」

  ネリー「はい、先生!!じゃあね、B・J!!」

         ネリー、嬉しそうにスキップをしながら、
         下手へ去る。

  B・J「じゃあね、B・J!!何が“じゃあね、B・J”だ!!馬鹿野郎
     ・・・誰が許してくれと言ったんだ!!こっちはおまえのこと
     を、許してなんかやるもんか!!」

    ――――― 第 2 場 ――――― B

         音楽流れる。
         B・J、上手より舞台下、歌いながら下手方へ。

         “品がない
         だからどうしたってんだ
         そんなもの生きていくのに必要ないだろ
         礼儀作法?
         なんなんだそれは
         そんなの知らなきゃ困るのか
         人の道に逸れるのか
         俺は俺の好きなように生きるんだ
         誰に縛られるのもまっぴら御免
         下品で乱暴者でも
         別に俺は困らない
         自分は自分・・・なんだから・・・”

         B・J、下手より舞台上へ。
        



  




  ――――― “Thank you!B・J”2へつづく ―――――











― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    (どら余談^^;)
   
    明日の練習日は来月に呼んで頂いている、保育園での
    公演の練習をする予定なのですが、突然昨日・・・?
    一昨日・・・?あ、一昨日です(^^;ボランティア冊子の
    担当さんからお電話があり、“取材”をさせて欲しいとの
    お話しがあり、急遽・・・練習風景を見に来られることに
    なりました(^_^;)

    ですが・・・
    皆さんご存知の通り、ボランティアの貧乏劇団故に、
    練習会場も台詞だけは大声を張り上げる為、公的な場
    を借り、そこで練習するのですが、人形操作に至っては
    “我が家”で細々と行っているのです(^^;;
    なので、自宅に来られると言うことに、少し戸惑いました
    が、こんな機会は初めてなので、頑張って掃除を念入り
    にしておきましょうと・・・掃除の話しはどうでもいいです
    ね・・・(ーー;)
    また一つ、嬉しい前進感がある今日この頃であります
    (^-^)V

    新しい出会いにワクワクします♥




    


























































“イルカのキューイ” ―全7場― 完結編

2013年04月10日 20時27分16秒 | 未発表脚本



  ルディ「王様!!お願いです!!僕達人間にも、海の国の色ん
      な人達と友達になる機会を与えて下さい!!どうか・・・
      どうかキューイと友達に・・・」
  アリア「ルディ・・・(ルディを見る。)」
  ルディ「(アリアを見る。)うん。」
  アリア「お父様、お願い!!」
  ルディ「王様!!お願いします!!」
  キューイ「アリア・・・ルディ・・・」

  王の声(エコー)「キューイ・・・おまえはどうだ・・・人間ともっと仲
            良くしてみたいと思うか?」
  
  キューイ「僕・・・僕ももっと沢山の人達と、友達になりたいよ・・・
       キューイ・・・。人魚達が海の国を出て、人間の人達と交
       流を深めることが出来るように・・・僕も陸に上がり、色ん
       な人と・・・」
  
  王の声(エコー)「よし、おまえの気持ちは分かった。それでは今
            回のドーンの悪事を暴いた、おまえの功績に対
            しての褒美と、アリアとルディ、2人の友を思う
            優しい心に応え、キューイに自由に陸へ上がる
            為の空気の浮き輪を授けることとしよう!!」

  キューイ「え・・・?キューイ・・・」
  アリア「お父様・・・!!ありがとう!!」
  ルディ「やった!!」

         3人、お互い顔を見合わせ笑い合う。            
         その時、上手よりウオレット、慌てた様子で
         登場。

  ウオレット「姫様ー!!姫様ー!!」
  アリア「ウオレット・・・?」
  キューイ「ウオレットさん・・・」
  アリア「どうしたの?そんなに慌てて・・・」
  ウオレット「やっとお見つけ致しましたぞ・・・(息を切らせて。)じぃ
        は、どれほど姫様のことをお捜ししたことか・・・」
  アリア「・・・私・・・?」

  王の声(エコー)「これ、ウオレット、一体今までどこを捜し回って
            いたのだ。」

  ウオレット「お・・・王様・・・?」

  王の声(エコー)「アリアならとっくの昔に、キューイが見つけ出し
            ておるわ。」

  ウオレット「キューイが・・・?」
  キューイ「・・・キューイ・・・」
  ウオレット「そなた・・・キューイなのか・・・?その姿は一体・・・」
  キューイ「王様が、僕をアリアやウオレットさんのような、人魚に
       してくれたんだ、キューイ・・・」
  ウオレット「人魚じゃと・・・?」
  アリア「ええ!これからはいつだって、陸の上へ上がって来るこ
      とが出来るのよ!」
  ウオレット「なんと・・・」
  アリア「ね!」
  キューイ「うん!キューイ・・・!」
  ウオレット「それはよかった・・・。のぉ、キューイ・・・。」
  キューイ「・・・ウオレットさん・・・うん!!」
  ウオレット「それにしても姫様・・・じぃは今日は一日中、この島の
        中を歩き回って、姫様のことを捜し回っておったのです
        ぞ・・・。」
  アリア「そうなの?ごめんなさい、ウオレット・・・」
  キューイ「(肩にかけていた水筒を、ウオレットに差し出す。)ウオ
       レットさん、これどうぞ!キューイ・・・」
  ウオレット「おお、キューイ!これは有り難い!持って来た水を
        全部飲み干し、もう少しで水切れをおこすとこじゃった
        わ。(水筒の水を飲む。)」
  アリア「じぃ、ありがとう!不慣れな陸の上まで、私のことを捜し
      に来てくれて・・・!!」
  ウオレット「姫様・・・いいえ・・・ご無事で何よりで御座います。(
        優しく微笑む。端に立っていたルディに気付き。)おお、
        ルディ殿・・・いつも姫様が世話になっておるの・・・。」
  ルディ「ウオレットさん・・・(首を振る。)」
  ウオレット「ありがとう・・・」

  王の声(エコー)「ウオレット、そろそろ城に戻って来るのだ。一日
            中そなたが留守にしていると、海の中は困り事
            が多く出て敵わないぞ。」

  ウオレット「いやあ・・・じぃの1人や2人、いようがいまいが・・・」
  アリア「何言ってるのよ!じぃがいなければ、私達のお城は誰が
      仕切ってくれるの?」
  ウオレット「姫様・・・」
  キューイ「ウオレットさん!アリアは僕が連れて帰るから、安心し
       て、キューイ!」
  ウオレット「キューイ・・・そうか?それじゃあ・・・姫様のことは頼
        んだぞ。王様!只今直ぐにこのウオレット、そちらへ戻
        ると致しますぞ!!(3人に向いて。)では皆様、一足
        お先に!!」

         ウオレット、急ぎ足で上手へ去る。

  王の声(エコー)「相変わらずウオレットは忙しない奴であるな・・・
            (笑う。)アリア、あまり遅くならないうちに、帰って
            来るのだぞ。」

  アリア「はい、お父様!」

  王の声(エコー)「キューイ・・・アリアを頼んだぞ。」

  キューイ「王様・・・はい!!キューイ!!」

         音楽流れ、アリア、キューイ、ルディ歌う。

         “僕達は友達だ
         どこにいてもどんな姿でも
         生きてる仲間だいつだって
         たとえ何があっても
         一度つないだこの手と手
         決して離しはしないさこれからも
         どんどんつながる友情の手
         そうしていつかは輪になろう!”

         3人、楽しそうに笑い合う。







         ――――― 幕 ―――――














   
    この掲載が終わる頃には、7回公演の新作が書き終わり、
   こちらの新作書きに取り掛かっている予定でした・・・(。-_-。)
   ・・・が・・・
   思いの外、7回公演作品の曲決めに時間がかかってしまい、
   まだ書き終わっていない状態であります・・・(-.-;)
   なので、次回掲載作品をどうするか・・・本来ならここでお知
   らせしておくのですが、しばしお待ち頂けますでしょうか^^;

   申し訳ありません、直ぐに戻って参ります・・・m(_ _)m 
   



    
































“イルカのキューイ” ―全7場― 4

2013年04月07日 15時58分19秒 | 未発表脚本



  王「他の魚達の片ヒレも、元に戻してやらなければならないな。」
  キューイ「王様・・・」
  王「(団扇を手に取り。)怪しい魔力により囚われたヒレ達よ!今
    直ぐ本来の主の元へと帰るが良い!!」
  
         団扇を形作っていたヒレ達、其々に
         飛び去る。

  キューイ「(片ヒレが元に戻る。)あ・・・ヒレが・・・!王様!キュ
       ーイ!」
  王「うむ・・・。ではキューイ、そろそろ我々も城へ戻るとするか。
    そうだ、キューイ・・・。自分の力でない・・・何かを犠牲にして
    手に入れた願いは・・・叶ったと言えるものではないのだぞ・・・
    。」
  キューイ「王様・・・キューイ・・・」
  王「願いを叶える薬なんてものは、一歩使い方を間違えると、と
    ても危険なものなのだ・・・。分かるな、キューイ。願いは自分
    の手で叶えるもので、誰かの手によって叶えてもらうもので
    はない・・・。」
  キューイ「はい、王様・・・キューイ・・・」
  王「ではその人間になる薬はここへ置いて行きなさい。」
  キューイ「・・・え・・・?」
  王「そんなものが何の役に立つと言うのだ?おまえはイルカの
    姿が不満か?」
  キューイ「(首を振る。)」
  王「ならば、そんな薬は必要ないであろう?」
  キューイ「・・・はい・・・(薬瓶をテーブルの上に置く。)」
  王「何故、アリアにしてもおまえにしても、人間に強い興味を抱く
    のか、私にはよく分からないぞ・・・。」
  キューイ「僕は・・・アリアが・・・」
  王「ん?アリアが・・・?」
  キューイ「・・・いいえ・・・王様・・・」
  王「アリアもそのことは承知しているものだと信じているが・・・最
    近は人間達のところへ足繁く通っているのが、心配であるの
    だ・・・。おまえもそう思うであろう?」
  キューイ「(頷く。)僕は・・・陸の上へは上がれないから・・・キュ
        ーイ・・・アリアが水切れをおこしても・・・僕には何も・・・
        できないから・・・キューイ・・・」
  王「・・・キューイ・・・おまえのような良い友を置いて、アリアは全
    く・・・(溜め息を吐く。)」
  キューイ「あ・・・あの・・・王様・・・キューイ・・・」
  王「ん・・・?」
  キューイ「・・・ぼ・・・僕・・・キューイ・・・」
  王「どうしたのだ?(暫く、キューイの様子を見て、何かに気付い
    たように。)今回のドーンの悪事を無事解決出来たのは、キ
    ューイ・・・おまえのお陰であったな・・・。うむ・・・そうだキュー
    イ、これを・・・(懐からテープを取り出す。)」
  キューイ「え・・・?」
  王「誰か島の人間に頼もうと思っていたのだが・・・。おまえがも
    う一度、その人間になる薬を使って人間の島へ行き、このテ
    ープを祠に結び、再び人間の島へ良からぬ者が足を踏み入
    れぬよう、封印をかけて来てはくれまいか?」  
  キューイ「・・・王様・・・?」
  王「誰か人間が行くよりも、切った張本人が行く方が、元の通り
    に結界を結び易いのではないか?(笑う。)」
  キューイ「・・・僕・・・」
  王「さぁ、せっかく手に入れた薬であろう・・・?今一度、人間の姿
    となり、アリアに会ってくるがよい・・・。祭はまだ終わってない
    ぞ・・・。(微笑む。)」
  キューイ「(テープを受け取り見詰める。)・・・うん・・・うん!!あ
        りがとう、王様!!キューイ!!」

         キューイ残して、カーテン閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― B

         カーテン前。音楽流れ、キューイ歌う。

         “ずっと夢見てたんだ
         君と同じように陸に上がる
         ことの出来る人魚の姿に・・・
         そして砂地を踏み締めてみたい
         そう思っていたんだ
         この小さなヒレで・・・
         今まで憧れ続けた
         そんな思いは夢で終わると思ってた
         けど今は・・・
         僕は君のナイトになる!”

  キューイ「アリア・・・僕はもう一度、君に会いに行くよ!!人の
        形となって、君がいる陸の上へ!!」    

         キューイ、上手へ去る。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         カーテン開く。と、島の海岸。
         下手よりルディ、走り登場。

  ルディ「アリアー!!こっちだよー!!こっちこっち!!」

  アリアの声「ルディー!!待ってよー!!」

  ルディ「早く行かないと、神輿が行っちゃうよーっ!!」

         ルディ、上手へ走り去る。
         入れ代わるように下手より、アリア走り登場。

  アリア「待ってー!!(息を切らせて。)矢っ張り、ヒレだと走り難
      いわ。人間のように2本の足でないと・・・。」

         そこへ上手より、人間の姿をしたキューイ、
         アリアを見詰めながらゆっくり登場。

  アリア「今度、魔法使いのお婆さんに、ヒレが2本の足に変わる
      薬を作ってもらおうかしら・・・あ、痛っ・・・(下を見る。)」
  キューイ「(アリアに駆け寄る。)どうしたの?」
  アリア「(キューイを認める。)・・・あなた・・・この間の・・・」
  キューイ「見せて・・・(アリアの足ヒレを見て。)貝殻で切ったん
       だね・・・少し血が出てる。」
  アリア「血!?」
  キューイ「大丈夫!こっちへ来て!」

         キューイ、アリアに手を貸し、横の岩へ腰
         を下ろすように導く。
         肩に掛けていたポーチから水筒を取り出し、
         アリアのヒレにかけ、傷の手当をする。

  キューイ「さぁ、綺麗になった!後は薬を塗ってあげるね!僕、
       すごくよく効く薬を持っているんだ!(ポーチから、貝殻
       の形をした入れ物に入った薬を取り出し、アリアの傷へ
       塗る。)」
  アリア「(薬入れを見て。)・・・その薬・・・」

         (アリアの回想。)
         主舞台、薄暗くなる。後方段上スポットに、
         幼いアリアとウオレット、浮かび上がる。

  アリア「えーん・・・えーん・・・痛いよー・・・ウオレット・・・」
  ウオレット「ほらほらアリア様、じいの言うことを聞かず、急いで
        サンゴの間を摺り抜けたりなさるから・・・ヒレが少し傷
        ついてしまったのですぞ。」
  アリア「えーん・・・」
  ウオレット「さぁ、もう泣かずとも、じいがこの海の国に代々伝わ
        る貝の薬を、そのヒレに塗って差し上げますから・・・そ
        うすれば忽ち傷は良くなりますぞ。」
  アリア「本当・・・?」
  ウオレット「じいが嘘を申したことがありますかな?この薬は、海
        の国にしかない秘薬で御座いますからな。じいがちゃ
        んと管理しておるんですよ。姫様も必要とあらば、いつ
        でもこのじいにお申し付け下さいまし。ほら、もう大丈
        夫で御座いますよ。」
  アリア「ウオレット、ありがとう!!」
  ウオレット「ホッホッホ・・・(木霊する。)」

         後方スポット、フェード・アウト。
         同時に主舞台、明るくなる。

  キューイ「ほら!これでもう平気だよ。(微笑む。)」
  アリア「・・・ありがとう・・・あなた・・・もしかして・・・」
  キューイ「アリア・・・僕・・・今まで訳があって、ある場所から出る
       ことが出来なかったんだ・・・」
  アリア「ある場所・・・?」
  キューイ「うん・・・すごく素敵ないいところなんだけど・・・僕はど
       うしてもそこから出たくて・・・それで・・・」
  アリア「どうしてそんな素敵な場所から、出たかったの・・・?」
  キューイ「本当は出たかったんじゃないんだ・・・。僕は友達が夢
       中になって、出掛けて行く場所に・・・一緒に行きたかっ
       ただけなんだ・・・いつも・・・楽しそうに出掛ける友達の、
       背中を見送ることしか出来なかったから・・・。何故なら
       僕は・・・」

         音楽流れ、キューイ歌う。

         “ずっと夢見てたんだ
         君と同じように陸へ上がる
         ことのできる日がくることを・・・
         いつも楽しそうに笑って出掛ける
         君が行くその場所へ
         僕も一緒に行きたかったんだ
         ただそれだけだった・・・”

  アリア「あなた・・・キューイ・・・なの・・・?」
  キューイ「(頷く。)僕はアリアと違って・・・海から上がることの出
       来ないイルカだから・・・キューイ・・・。だからもしアリア
       が、この間みたいに陸の上で体の中の水分がなくなっ
       て、危ない目にあっても・・・僕は・・・友達を助けに行くこ
       とも出来ないんだ・・・キューイ・・・。君がいつも楽しそう
       に、人間の島へ行くのが・・・本当は少し、淋しかったん
       だ・・・僕・・・キューイ・・・。それに・・・これまでは、いつも
       僕と一緒に、海の中で楽しく過ごしていたのに・・・今は
       そんなことも忘れたかのように、いつもいつも・・・だから
       ・・・僕・・・」
  アリア「キューイ・・・ごめんね・・・淋しい思いをさせて・・・。それ
      で・・・ありがとう・・・私のことを心配してくれて・・・」
  キューイ「アリア・・・」

         アリア、歌う。

         “知らなかったそんなこと
         私はただ未知の世界が珍しくて
         今まで見たことのないものや
         色んな経験が嬉しくて
         回りのことが見えていなかったのね・・・”

  キューイ「ううん・・・僕が我が儘だったんだ、キューイ・・・。君に
        忘れ去られるのが怖いだなんて・・・」
  アリア「私の方こそ・・・自分のことしか考えていなかったのね・・・
      。」

         アリア、歌う。

         “友達だからいつだって
         忘れる訳ないあなたのこと
         私の一番の友達なのよ
         どこにいてもあなたは昔から・・・”

         2人、歌う。

         “2人は友達いつだって
         姿形は違っても
         2人は仲良しこれからも・・・”

  アリア「来て!あなたにもルディや島の人達を紹介するわ!!」
  キューイ「(首を振る。)」
  アリア「どうしたの?」
  キューイ「僕はもう・・・海の国へ帰らなきゃいけないんだ・・・」
  アリア「え・・・?」
  キューイ「王様との約束で・・・少しの時間だけ、人間の姿になっ
       てアリアに会いに、人間の島へ来ることを許してもらっ
       たんだ、キューイ・・・」
  アリア「・・・お父様と・・・?」
  キューイ「うん・・・だからもう帰らなきゃ・・・。海の国で僕・・・アリ
       アが帰って来るのを待ってるよ・・・」
  アリア「待って・・・!!折角、人間の姿になれたのに・・・」
  キューイ「でも・・・約束だから・・・キューイ・・・」
  アリア「お父様・・・お父様ー!!今の話し聞いてたんでしょ!?
      お父様ー!!どこなのー!?(回りを捜すように。)」

  王の声(エコー)「・・・なんだ、アリア・・・」

  アリア「お父様!!キューイに自由に人間の島へ来る為の足を
      あげて頂戴!!」
  キューイ「アリア・・・キューイ・・・」

  王の声(エコー)「何だと・・・?キューイに足をやれだと・・・?」

  アリア「ええ!!お願い、お父様!!お父様なら出来る筈よ!!
      キューイをイルカと人の人魚にすることが!!」

  王の声(エコー)「それは出来ない相談だ・・・」

  アリア「どうして!?お父様はいつも言ってたじゃない!!姿形
      は違っても、生きてる者同士、皆仲良くしなきゃ駄目だっ
      て!!」

  王の声(エコー)「それがどうした・・・」

  アリア「だからキューイにも、海の国でない人達と仲良く出来る
      機会を与えてあげて欲しいの!!何も人間にしてと言っ
      ているのではないわ。私と一緒にほんの少しの間、体に
      水を蓄えて陸に上がることの出来る人魚にしてくれれば
      いいの!!」
  キューイ「アリア・・・」

         その時、下手よりルディ登場。

  ルディ「(宙を見回し。)王様!!王様!!僕からもお願いしま
      す!!」
  アリア「ルディ・・・?」
  キューイ「ルディ・・・キューイ・・・」









     
 ――――― “イルカのキューイ”完結編へつづく ―――――











― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 



    (どら余談^^;)

    7回公演の2作品目が、ほぼ出来上がりました♥
   後は曲だけですが・・・曲決めは結構大変な作業です(^^;
   
   今回は意外と長編の、歌も勿論いつもどーり沢山あるの
   ですが、台詞もしっかりと書き込んだ作品となっています♪

   夏公演、お楽しみに~(^^)V





   4月2日(火)

   今の時期には珍しいのですが、5月に公演依頼がありました♥

   保育園と言うことなので、また可愛いお話しでお邪魔すること
   になると思います(^O^)

   新しい出会いが楽しみです(^-^)