りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“チュー吉くんの星に願いを・・・” ―全7場― 2

2011年12月20日 19時40分10秒 | 新作(人形劇用)


  チュー太「ねぇ、チュー吉、そうしようよ!これを母さんのプレゼ
        ントにすればいいじゃないか。」
  チュー吉「・・・そんな盗んだ物を、母さんのプレゼントになんて
        出来ない。行こう、兄さん!!」
  チュー太「チュー吉!」
  チュー五郎「ちぇっ!!なんでぇ・・・折角、俺様が安くで売って
          やるって言ってるのによ・・・。で?おまえさん達は
          何を母さんにプレゼントするつもりなんだよ。」
  チュー太「僕達は、辺りが真っ暗になれば現われる、あの高い
        場所にキラキラ輝く、おじさんが持ってるその石を取
        りに行くんだよ。」
  チュー五郎「え・・・?キラキラ輝く・・・(持ってたダイヤモンドと
          空を交互に見る。)」
  チュー吉「兄さん、行こう!暗くなる前に、たかいさんの頂上に
        着かなけりゃ。」
  チュー太「う・・・うん。」
  チュー五郎「(笑う。)馬鹿だなぁ・・・!あれは“星”って言うんだ
          。」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー太「(チュー吉を見て、首を傾げる。)」
  チュー吉「・・・星・・・って何・・・?」
  チュー五郎「星って言うのは、この今、俺達が立ってる地球と同
          じようなものさ。」
  チュー太「地球・・・?」
  チュー吉「おじさんの手に持ってるのは・・・?」
  チュー五郎「これは宝石!」
  チュー吉「おじさんも、あのキラキラを取って来て、今そうやって
        持ってるんじゃないの・・・?」
  チュー五郎「あの空でキラキラ光ってるものと、これとは全く違う
          別物だ!それに、あんな風に夜になりゃキラキラ輝
          いて見えるけど、実際はキラキラもしてねぇし、あん
          な風に小ちゃくもねぇってことさ!」
  チュー吉「嘘だ・・・」
  チュー五郎「嘘吐いてどうすんだ!だから、あんなのを取りに行
          こうだなんて、馬鹿なこと考えてないで、さっさとこ
          のダイヤモンドを買って、家に帰った方がいいぜ!
          どうせ家で母ちゃんが、心配して待ってるんだろ?」
  チュー吉「嫌だよ!!折角、こんな遠くまでやって来たのに、何
        も持って帰ることが出来ないなんて!!」
  チュー五郎「だから俺様が、売ってやるって・・・」
  チュー吉「嫌だ!!そんな泥棒したものなんていらない!!」
  チュー五郎「だけど、いくらどれだけ高いとこに登ったとしても、
          あの“星”に着くのは・・・まぁ、無理だ。(笑う。)」
  チュー吉「無理・・・」
  チュー太「無理だって・・・チュー吉・・・」
  チュー吉「じゃあ、あの高いところを飛んでいる、あの鳥に頼ん
        で連れて行ってもらうよ!!おーい!!(手を振る。)
        おーい!!そこの高いところを飛んで・・・!!」
  チュー五郎「馬鹿!!(チュー吉を押さえて隠すように。)あいつ
          らは鷹だぜ!!あいつらに見つかっちゃ、俺らみた
          いな小さなネズミ、一飲みにされちまうぜ!!それ
          にさっきから言ってるだろ!?あの“星”って奴は、
          見えてるみたいに小さくもないし、綺麗でもないん
          だ。諦めろ諦めろ。」
  チュー吉「嫌だ!!僕は、自分の力で母さんにプレゼントを用意
        するんだ!!」
  チュー五郎「ああ、そうかい。じゃあ好きにするがいいさ。俺には
          関係ない。さぁ、そう言うことならさっさと行きな!!
          俺は薬屋から薬を頂戴・・・おっと違った、買う為に
          来たんだ!忙しいんだから早いとこ行った行った!
          !」
  チュー吉「兄さん!行こう!!」
  チュー太「う・・・うん・・・」

         チュー吉、チュー太、下手へ去る。

  チュー五郎「(2人が去るのを見計らって。)ばーか!!星なん
          か手に入る訳ねぇだろ!!ふん!!俺様が折角
          ・・・(手に持っていたダイヤモンドを見る。)」

         音楽流れ、チュー五郎歌う。

         “こいつは金持ちの家から拝借したんだ・・・
         こっちは通りすがりに見つけた
         家の庭で拾った宝・・・
         そっちは店の軒先から
         店主の目を盗んでちょいと頂いた・・・
         何もあんなに拒否しなくてもいいだろう
         泥棒だってこの俺様が・・・?
         確かに泥棒かも知れない
         けど何がいけないんだ泥棒の・・・
         余り余ったお宝を
         小さな俺様が頂いて
         何が悪いんだ分からない・・・”

  チュー五郎「馬鹿な奴らだぜ・・・あんな、たかいさんの天辺に登
          ったところで星なんて・・・取れる訳ねぇのに・・・。な
          んて一生懸命なんだ・・・あいつら・・・。(下手方を見
          て。)あ・・・おーい!!ちょっ・・・ちょっと待ってくれ
          ー!!俺様も一緒に行くからー!!」

         チュー五郎、慌てたように下手へ走り去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より一羽のトビ、怯えるように回りを
         見回し、ゆっくり登場。
         その時、オオタカの声が聞こえる。

  オオタカの声「おいトビ!!そんなところをコソコソと、どこへ行
           くつもりだ!!それでも隠れているつもりか?俺
           にはおまえの行動は一目瞭然・・・!!」

  トビ「オ・・・オオタカの親分・・・」

  オオタカの声「早くエサになりそうな生き物を、探して連れて来
           るんだ!!でないと、おまえとおまえの家族を、
           今日の食卓へ乗せてしまうぞ!!」

  トビ「は・・・はい、オオタカの親分・・・!!直ぐに獲物を探して
     連れて来ます!!だから、今しばらく待って下さい!!」

  オオタカの声「早くしろ!!俺は今朝から何も食べてないんだ。
           腹が減って死にそうなんだよ!!」

  トビ「はい!!」

         鳥の羽ばたく音、遠ざかる。

  トビ「はぁ・・・全く、エライ親分に見つかってしまったなぁ・・・。毎
     日毎日、エサになりそうな生き物を連れて行かないと、オイ
     ラの生まれたばかりの子ども達がやられちまう・・・。姿形は
     似てはいても、オイラ達トビは、オオタカの親分なんかと比
     べりゃあ、力も何も敵ったもんじゃないのに・・・。自分達の
     エサすりゃ、満足に探して来れないオイラ達トビに・・・。」

         トビ、歌う。

         “何てことだ
         何て不幸なオイラだろう
         ちょいと目にした卵を頂こうと
         抜き足差し足 側に行くと・・・
         そこに現れた大きなタカ”

  トビ「オオタカの親分の卵を頂こうなんて、これっぽっちも思っち
     ゃいなかったんだ!!ただ腹が減って、腹が減って・・・巣
     で待ってる子ども達の為に、ちょいと目に付いただけなん
     だ、美味そうな卵が・・・。あああ・・・何てこった・・・何てオイ
     ラは運が悪いんだ・・・。さぁ、早いとこ獲物を探して・・・(そ
     の時、下手方に何か気付いたように。)おっ!!向こうから
     山を登って来るのは・・・しめしめ!!野ネズミが2匹・・・い
     や・・・3匹だ!!今日はついてるぜ!!あいつらを、さっさ
     と親分のとこに連れて行きゃあ・・・。ようし・・・!!」

         トビ、上手へ(一旦)去る。

    ――――― 第 5 場 ――――― 
 
         その時下手より、チュー吉、チュー太登場。
         続いてチュー五郎登場。

  チュー五郎「おいおい、つれないなぁ、お2人さん。」
  チュー吉「何で僕達に付いて来るんだよ!」
  チュー五郎「いや、何・・・何でそんなに一生懸命になれるのか
          なぁ・・・って。ちょいと好奇心って奴さ。」
  チュー太「好奇心・・・?」
  チュー五郎「変な奴・・・。さぁ、兄さん!!いよいよその木の間
          を抜けたら頂上だよ!!」
  チュー太「うん・・・」
  チュー吉「丁度、辺りも暗くなってきたし、この木の先には屹度、
        沢山のキラキラした宝石が、目の前にあるんだ!!」
  チュー太「そうだね!」
  チュー五郎「そうかねぇ・・・」
  チュー吉「(チュー五郎を睨む。)さぁ・・・!!」

         チュー吉、走りながら上手方へ。
         紗幕開く。(と、だだっ広い山頂の様子。)

  チュー吉「ほら!!(紗幕が開いた後方を、指し示す。)」
  チュー太「うん!!・・・あれ・・・?」
  チュー吉「・・・ない・・・」
  チュー太「・・・ないね・・・」
  チュー吉「辺りは、もう真っ暗なのに・・・」
  チュー五郎「(ボソッと。)ほうら・・・だから言ったじゃないか・・・。
          」
  チュー太「あっ!!見て、チュー吉!!(空を指差す。)」
  チュー吉「え・・・?(上方を見る。)」

         (満天の星空が広がる。)

  チュー吉「キラキラした宝石だ・・・」
  チュー太「まだ、あんなところにあるよ・・・。」
  チュー吉「こんな山の高いところまで登って来たのに・・・」
  チュー五郎「だからさぁ・・・言ってやっただろ?あれは“星”って
          言って、この地球からもっと、もーっと遠くにあって、
          誰も手にすることなんて出来ねぇ代物なんだよ。」
  チュー太「なんだ・・・」
  チュー吉「そんな・・・」

         その時、一つの流れ星が流れる。

  チュー吉「あっ!!キラキラだ!!今、キラキラの宝石が落ちて
        いったぞ!!」
  チュー太「ホント!?」
  チュー吉「届かないんなら、あの落ちたキラキラを探しに行けば
        ・・・」
  チュー五郎「ばーか!」
  チュー吉「馬鹿ってなんだよ!!」
  チュー五郎「あれは“流れ星”・・・。あんなもん探せる訳ないだろ
          !?おまえ、何も知らないんだなぁ、全く・・・」
  チュー吉「・・・だって・・・」
  
         その時、木の陰からトビ登場。

  トビ「やあ、お3人さん。」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー五郎「(チラッとトビを見る。)おっと、タカ・・・!!・・・じゃ
          ねぇ・・・。なんでぇ、トビか。」
  チュー吉「トビ・・・?」
  トビ「はいはい、確かに私はトビでござます。そちらの方はよく
     ご存じで・・・」
  チュー五郎「ふん・・・(一寸、離れたところへ腰を下ろす。)」
  トビ「何やらさっきからお話しを伺っていると、あの流れ落ちた
     “星”の場所が知りたいと・・・?」
  チュー吉「え・・・?トビさん分かるの・・・?」
  トビ「いやあ何、私はこの辺りのことは、そこいらの誰よりもよく
     知っている、この山の住人ですから・・・。今起きたことは、
     全てこの私に聞いてくれさえすれば、何でもお答え出来る
     と思いますがねぇ・・・。」
  チュー太「へぇ・・・」
  トビ「どうです?この私が、あのキラキラ星の落ちた場所まで、
     案内して差し上げましょうか?」
  チュー吉「本当!?」
  トビ「ええ。」
  チュー吉「やった、兄さん!!これで母さんの誕生日プレゼント
        が無事、手に入るよ!!」
  チュー太「うん。」
  チュー五郎「おいおい・・・おまえら本当に、そんなトビの言うこと
          を信用していいのか?」
  チュー吉「いいじゃない!だってトビさん、この山のことは何だっ
        て知ってるんだって言ったんだ!如何様物売りのあな
        たより、ずっと信用できるよ!」
  チュー五郎「ふうん・・・まぁ、いいや、好きにしな。俺様はここで
          暫く休憩させてもらうことにするぜ。」
  チュー吉「お好きに!ねぇ、トビさん!!早く僕達を、そのキラキ
        ラ星が落ちた場所へ案内して!!」
  トビ「ああ、お安いご用でさぁ・・・。(意味ありげに笑う。)」  

         チュー吉、チュー太、トビに付いて上手へ去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

  チュー五郎「あああ・・・本当にあんな奴に付いて行って、大丈
          夫なのかよ。俺は知らねぇぞっと・・・(ゴロンと横
          になる。が、何か落ち着かない様子で、直ぐに起
          き上がる。)馬鹿野郎・・・トビったって、タカには違
          いねぇんだよ!!それを信用してノコノコと・・・。ホ
          ント馬鹿な奴らだぜ・・・。」

         音楽流れ、チュー五郎歌う。

         “何で気になるこんなに・・・
         つい今しがた偶然知り合った
         ただの子ネズミ達・・・
         放っておきゃあいいんだ気にするな・・・
         何があっても知っちゃいねぇ
         俺は関係ないんだ何も
         だから知らん顔してれば
         それでいい・・・”

  チュー五郎「でも・・・あいつらの、あの瞳を見てると・・・何故か
          昔の自分を思い出すんだ・・・。まだこんな悪びれた
          仕事に手を染めるなんてことを、これっぽっちも考
          えなかった・・・餓鬼の頃の自分を・・・」

         その時、鳥の激しい羽ばたきの音に交じって
         チュー吉、チュー太の悲鳴が聞こえて来る。

          
     








  ――――― “チュー吉くんの星に願いを・・・”
                          3へつづく ―――――












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