りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“キャシーの森(原作)” ―全6場―

2012年09月27日 19時20分17秒 | 脚本

  

    今回は、“キャシーの森”の原作となる舞台脚本、そして
   これは、私がファミリー向き脚本を書いた、初めての作品と
   なります(^_^)

   それまでの、大人チックなものから、子どもさんでも見て楽し
   んでもらえるものへと移行していく、初めての脚本・・・と言う
   ことで、今でこそ言葉使いの“いい”“悪い”も大体は把握で
   きていますが、その当初は子ども向きとは言え、それまでの、
   難しい言い回しの名残がチラホラ見え隠れする、作品となっ
   ております(^。^)・・・とは言え・・・今現在も難しい言い回し、
   やっぱり好きなので、未だにチラホラ見え隠れしていますよ
   ね~・・・^^;

   今回は、皆さんもご存知の作品と言うことで、いつも書いて
   いる“主な登場人物”表記は省かせて頂きます



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



         開演アナウンス。

    ――――― 第 1 場 ―――――

         スポットに横になって眠っているひとりの
         少女(キャシー)浮かび上がる。

  キャシーの母の声「何故、あなたはいつも人を傷付けることを平
              気で言えるのかしら!!泣いて帰ったお友
              達の気持ちも分からないような悪い子は、暫
              くの間、屋根裏部屋で反省して、何が本当に
              大切なことなのか、よく考えてごらんなさい!
              !」              ※
  キャシー「(寝言のように。)・・・何が大切なことなのか・・・ママ
        ・・・」

         フェード・インする。と、キャシーの横に、
         一羽の黄色い小鳥(クルト)が立っている。
         (森の様子。)       ※2

  クルト「僕はママじゃないよ。甘えん坊だな!(笑う。キャシーを
      見て、まだ眠っているのを確認して、キャシーの耳元で。)
      ねぇ、どうしてこんなところで眠ってるんだい?鷲の爺さ
      んに食べられちまうぜ!(笑う。)」
  キャシー「ううん・・・(目覚める。目を擦りながら。)誰よ、さっきか
        ら煩いなぁ・・・(クルトを認め、驚いたように。)小鳥・・・
        ?どうして小鳥がうちの屋根裏部屋にいるのよ!?」
  クルト「小鳥には違いないけど、ちゃんと名前があるんだ!僕の
      名前はクルト!“クルト”って呼んでほしいな。」
  キャシー「あんた、なんで喋れるの!?」      ※3
  クルト「君・・・僕の言ったこと聞いてるかい?僕は“あんた”でも
      “小鳥”でも・・・」
  キャシー「聞いてるわよ!“ケルト”でしょ!?ねぇ、なんで喋れ
        るの!?」
  クルト「“ケル・・・”クルトだよ!!(溜め息を吐いて。)なんでっ
      て言われても・・・。この世界じゃ、皆喋れるのが当たり前
      じゃないか。(笑う。)」
  キャシー「(立ち上がり周りを見回す。)ここ・・・屋根裏部屋じゃ
        ない!!一体、ここは何処なの!?」
  クルト「何言ってるんだよ、さっきから・・・。ここは僕たちの世界
      じゃないか・・・キャシー!」

         クルト、明るく歌う。

         “緑に溢れ 風が歌う
         花たちが踊り 木々が誘う
         陽の光 降り注ぎ
         空に一番近い場所

         皆仲良く手を取れば
         心温かく笑顔に満ち
         小川のせせらぎ水の音
         大地が一番香る場所”

  キャシー「分かったわ。ここが何処だか分かったけど、何故私が
        今ここにいるのか分からない!それにどうしてあなた
        が私の名前を知ってるの!?」
  クルト「そんなこと言われたって、僕にだって分からないよ。キャ
      シーだって、ずっとキャシーなんだし・・・。そうだ!長老な
      ら分かるかも知れないぜ!」      ※4
  キャシー「・・・長老・・・?誰それ・・・」
  クルト「森の奥に昔々から住む長老さ!」
  キャシー「いいわ!その長老のところへ、私を案内して頂戴!」
  クルト「うん!」

         2人にスポット。歌いながら上手より客席方へ。
         客席前通り、下手方へ。

         “行こう!
         分からないことを知る為に
         行こう!
         分からないことを聞く為に
         なんでも知ってる
         森の生き字引 長老に
         なんでもお見通し
         長老に聞けばなんでも分かる筈
         だから行こう!行こう!
         森の奥深く長老のもとへ”

         2人、下手側より舞台へ。

  クルト「長老!!長老!!何処にいるんだい、長老!!」

  長老の声「・・・どうしたんじゃ、クルト・・・そんな大声で・・・」

         上手方スポットに、胡坐をかいた長老
         (白いマントに身を包む。)浮かび上がり、
         フェード・イン。
         場面は森の風景。

  クルト「(長老を認め。)長老!!」
  長老「折角、静かな森の奥が台無しじゃ・・・。」
  クルト「捜してたんだよ!」
  長老「何か用か?(キャシーに気付いて。)ん?キャシーも一緒
     じゃないか。」
  キャシー「あなたも私を知ってるの!?」
  長老「(笑って。)当たり前じゃないか。おまえさんが、赤ん坊の
     時から見てきたんじゃぞ。」
  キャシー「でも、私はあなたたちのことなんて知らないわ!!な
        のに何故!?」
  長老「それは・・・最初からそう決まってたことじゃからのぉ・・・。」
  キャシー「そんなの答えになってないわ!それになんでも知っ
        てる長老って言ったって、ただのおじいさんじゃない!
        」
  クルト「キャシー・・・」
  長老「わしに答えて欲しいなら、おまえさんが自分でちゃんと考
     えんとな・・・。でなけりゃ、わしらにはおまえさんの納得いく
     ような答えは言ってやれんよ。」
  キャシー「どう言うこと?」
  クルト「キャシーはここは自分の世界じゃないって言うんだ。」
  キャシー「当たり前じゃない!私は今日、ママにお仕置きされて
        屋根裏部屋に閉じ込められてたのよ!なのに、気が
        ついたらこんな森の中・・・!冗談じゃないわ!!私は
        早く帰りたいの!!(長老に。)あなた、なんでも知って
        るんでしょ!?どうやったら元の世界に帰れるか、教
        えて頂戴!!」         ※5
  長老「そうさなぁ・・・それなら、この森に住む5人の妖精たちに
     会うんじゃ。」
  キャシー「5人の妖精・・・?」
  クルト「花、泉、風、大地、木・・・其々の妖精は、この森の守り神
      なんだ!」
  長老「5人の妖精に会って、願いの石を貰ってくるんじゃ。」
  キャシー「願いの石?」
  長老「そうじゃ、願いの石じゃ。その石が5つとも揃った時、その
     石を持つ者の願いは、なんでも叶えられる。」
  キャシー「なんでも?(嬉しそうに。)」
  長老「ああ。」
  キャシー「じゃあ元の世界へ帰れるのね!?」
  長老「そうじゃな・・・。」
  キャシー「分かったわ!!」

         キャシー、慌てて下手方へ走り出ようとする。

  クルト「僕も一緒に行くよ!!」
  キャシー「え?(振り返る。)」
  クルト「君一人じゃ、5人の妖精に会うことなんて、出来ないぜ。
      」
  キャシー「・・・そうね・・・いいわ!連れて行ってあげる!」
  クルト「つれ・・・!?」
  キャシー「さぁ、早く案内して頂戴!カルト!!」

         キャシー、下手へ走り去る。

  クルト「カル・・・!?僕はクルトだってば!!(足を踏み鳴らす。
      呆れたように、キャシーが去った方を見て、溜め息を吐く
      。)それが協力を願い出た僕に対して言う台詞かなぁ・・・
      ね!?長老!!」
  長老「(笑う。)やぶ蛇じゃったかの?」       ※6

         フェード・アウト。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         音楽でフェード・インする。と(森の花畑)、
         ポーズをとった蝶たち、楽しそうに踊る。
         そこへ蜘蛛が登場。蝶たちを捕まえようと
         躍起になって踊る。      ※7

  蜘蛛「いい加減に観念して、わいの餌になってしまいいな!!」
  蝶「いやよ!!」

         その時、花の妖精の声が聞こえる。

  花の妖精の声「私のお花畑で、乱暴な言葉を使うのは誰!?」

         上手より、ゆっくり花の妖精、登場。
         皆、その方を注目する。

  蝶「花の精!!」

         蜘蛛、“仕舞った”と言う風な顔付きで、
         ソロリと下手方へ行こうとする。

  花の妖精「まぁ!またあなたなのね、蜘蛛さん!!あれ程、私
        の花園に遊びに来る、可愛い子たちに乱暴はしない
        って約束した筈なのに・・・。」
  蜘蛛「(ボソッと呟きながら、ゆっくり下手方へ。)そやけど、ここ
     んとこいっこも獲物はかかれへんし、腹減って腹減って・・・
     。そんなん言うんやったら、わいの空腹、満たしてぇや・・・。
     」

         蜘蛛、不貞腐れたように座り込む。

  蝶「ありがとう、花の精!」
  花の妖精「今度からは気を付けないと駄目よ。」
  蝶「ええ!」

         その時、上手よりキャシー登場。続いて
         クルト登場、そこに垂れ下がっていた蜘蛛の
         糸に引っ掛かる。

  クルト「わあっ!!(もがく。)」
  蜘蛛「(クルトに逸早く気付いて。)やった!!かかったで!!」
                       
         蜘蛛、嬉しそうに飛び上がり、上手方へ
         走り寄る。

  クルト「(脅えて。)助けて!!キャシー!!」

         キャシー、チラッとその方を見るが、興味が
         ないように向き直り、周りの様子を見回して
         いる。          ※8 

  蜘蛛「小鳥か!!ご馳走やな!!」
  クルト「キャシー!!キャシー!!」

         花の妖精、気付いて近寄る。

  花の妖精「蜘蛛さん!!」
  蜘蛛「なんやねん!!これはわいの餌やで!!ちゃんと、わい
     の蜘蛛の巣にこいつ自らかかったんや!!食おうが殺そう
     が放っといてんか!!」
  クルト「こ・・・殺す・・・!?」
  花の妖精「小鳥さん脅えてるじゃない。助けてあげて。」
  蜘蛛「いやや!!」
  花の妖精「そんなこと言わないで。ね?」
  蜘蛛「わいは腹減ってんねん・・・。」
  花の妖精「その代わり私が後で蜘蛛さんに、飛びっきりのご馳
        走するわ!フラワーレストランスペシャルメニューよ!」
  蜘蛛「花なんか食うても、腹一杯になれへんわ・・・!」
  花の妖精「(さっきまでとは打って変わって、怖い顔付きになる。
        )・・・そう・・・もとはと言えば蜘蛛さんが、約束を破って
        私の花園で乱暴したのよね・・・。」
  蜘蛛「それは・・・」
  花の妖精「二度とここへは来れなくなるわね。(蜘蛛を睨む。)」
  蜘蛛「・・・あの・・・(一時考えて。)わ・・・分かったわ・・・そんだけ
     言うんやったら・・・今回だけは見逃したるわ・・・」
  花の妖精「(再びさっきまでの優しい笑顔になって。)本当?」
  蜘蛛「・・・ああ・・・男に二言はない!その代わり・・・そのスペシ
     ャルなんとか・・・っての頼むで・・・。」
  花の妖精「ええ!あなたの為に、最高を用意するわ!」 ※9
  
         蜘蛛、渋々クルトに絡まった糸を外してやる。

  クルト「・・・ありがとう!」
  蜘蛛「ふん・・・どんくさい鳥やで、ほんまに・・・(ブツブツと言いな
     がら、下手へゆっくり去る。)」










   ――――― “キャシーの森(原作)”2へつづく ―――――











    ※ 早速、この台詞、人形劇用では“パパ”を登場させまし
      たが、本来キャシーは“ママ”にお仕置きされていたので
      した(^.^)
      何故パパに代えたかと言うと、台詞メンバーのパパ声
      が聞いてみたかった・・・と言う、単なる私の勝手な好奇
      心からでした~^^;

      余談ですが・・・全場数も違いますね"^_^"

    ※2、クルトって、黄色だったんですね~(゜.゜)
      自分で書いておきながら、たった今まで忘れていた事実
      でした(~_~)
      人形劇でクルトを青色にしたのは、舞台で公演して頂い
      た時に青い小鳥だったので、青が正解だと思ってたから
      です^^;
      確かにでも舞台などに上がると、黄色より青色の方が、
      締まりがいいかも知れないですね~^_^;
  
    ※3、今なら“あなた”とするでしょう^^;・・・と言うことは・・・
      昔の方が、使っていい、悪い関係なく、自分の頭の中に
      思い浮かんだ表現に素直に従い、どちらが正解か・・・と
      言うことではなく、書きたいものを書いていた・・・と言うこ
      とですね・・・(>_<)

    ※4、この「知れないぜ」の“ぜ”は、明らかにそれまで書い
      ていた作品群の名残です^_^;

    ※5、どちらかと言えば、今回の舞台脚本でのキャシーの
      方が、人形劇のキャシーより気持ちキツイ子で書かれて
      います(^。^)

    ※6、「やぶ蛇」って・・・^^;

    ※7、読んで頂いた通り、人が演じなければ無理な場面の
      為、人形劇では省いています(^。^)

    ※8、人形劇舞台では、ゴチャゴチャと沢山の登場人物を
      一度に同じ場面に出すことは、見た目の問題から、極力
      避けるので、この場面もキャシーは出ていなかったと思
      うのですが、舞台では引っ込むことなくウロウロしている
      ようですね(^.^)

    ※9、この場面、人が演じてるのなら、表情や雰囲気など
      で、優しい花の妖精と怖い花の妖精の演じ訳は容易い
      と思うのですが、お人形でそこまでの差をどうして出す
      か・・・と考え、見た目ではなく耳から入る“音”で、怖く
      なった花の妖精を演出したのでした"^_^"


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“藤川信次” ―全8場― 2

2012年09月26日 19時30分03秒 | 未発表脚本

         そこへ上手より、スーツ姿の信次、
         幾分緊張した面持ちで、椅子を持ち
         登場。
         下手より、年配の偉そうな態度の
         男性、椅子を持ち登場。

         (天使、ニヤリと微笑み、下手前方へ。
         そんな2人の様子を楽しそうに見ている。)

         男性、舞台中央椅子を置き、座る。
         信次、その前に椅子を置き、横に立つ。

  男性「(手に持っていた書類に目を遣り、チラッと信次を見る。)
     どうぞ・・・」
  信次「はい、失礼します。(椅子に腰を下ろす。)」

         男性歌う。

         “藤川信次くん・・・
         T大学卒業予定・・・”

  男性「ほう・・・有名国立大学か・・・」
  
         男性歌う。

         “得意なスポーツ マラソンと・・・
         持久力には自信あり・・・”

  信次「はい、一つのことを、コツコツと成し遂げるのが得意です
     。」
  
         男性歌う。

         “我が社を希望した動機は・・・?”

  信次「はい、貴社の将来性と・・・」

         天使、2人の側へ。2人の様子を見ながら
         歌う。

         “ここぞとばかり熱弁を揮った
         自分の考え 自分の思い
         口八丁手八丁
         相手を飲み込む熱い視線で
         考えの全て”

         男性歌う。

         “しっかりした考え独創性
         社運を賭けた新事業
         君になら任せられる”

  男性「是非、我が社に!!(立ち上がり、信次の肩に手を掛け
     る。)」
  信次「ありがとうございます!!(立ち上がり、頭を下げる。)」

         2人、其々椅子を持ち、上手下手へ去る。
         
  天使「見事、大手企業に一発ストレート入社、流石だね。」

         天使歌う。

        “このままどんどん上り詰める
         自分の願った人生そのまま
         一度の挫折も知らぬまま
         人間らしさも知らぬまま
         それが当たり前であるかのように
         冷たい奴だ誰が見ても
         心がないねあいつには
         だけどそんな彼にも心から
         愛してくれる人はいた
         知ってか知らずか
         それは彼の不幸中の幸い”

         暗転。

      ――――― 第 4 場 ―――――

         上手スポットに、スーツ姿の一人の
         女性(花村秋)浮かび上がり、歌う。

        “2つ違い・・・
         ただの幼馴染・・・
         それも小さい頃の話し
         今はほんの顔見知り・・・
         会っても挨拶すらしない
         でも私は見てた 
         いつもあなただけ・・・
         女の子達が告白するのを羨ましく・・・
         冷たくあしらうのを少し淋しく・・・
         そしてちょっぴりホッとした・・・
         だから頑張ったわ
         同じ高校に行きたくて
         だから夢中で勉強した
         置いていかれないように
         大学にストレートで入れたのも
         あなたのお陰
         だけど・・・
         卒業式が来る度
         いつも辛かった・・・
         2つ違いはどうしても
         埋まらないから・・・”

  秋「でも、やったわ!!」

        “今度こそ
         卒業式のない社会人
         今日
         漸くまたあなたの側に・・・”

         舞台明るくなる。(社内の様子。)
         中央に課長。周りには社員が立っている。
         (その中に、信次の顔も見える。)

  課長「えー・・・今日からこの課に配属になった、花村秋さんだ。」
  秋「(信次を認め。)・・・信次くん・・・」
  
         周りの社員、「信次くんだって・・・」など、
         ヒソヒソ声で囁き、顔を見合わせる。
    
  信次「・・・花村・・・秋・・・?」
  課長「なんだ藤川くん、知り合いかね?」
  信次「・・・え?ええ・・・まぁ・・・」
  課長「それじゃあ君が色々と、花村くんの面倒を見てやってくれ
     たまえ。その方が花村くんも心強いだろうからな。」
  信次「・・・え・・・?」
  課長「頼むよ。」
  信次「(独り言のように。)・・・面倒臭い・・・」
  秋「(信次の側へ。)よろしくお願いします、藤川さん!!(頭を
    深く下げる。)」
  信次「・・・あ・・・?ああ・・・」

         秋、スポットに浮かび上がり歌う。

         “覚えていてくれたわ!
         丸で奇跡ね
         私のこと知ってくれてたの
         信じられる?
         2人の思い出は
         遠い昔の小さなブランコ
         それだけなのに
         彼の記憶に私がいたわ
         ああ丸で夢みたい
         ああ丸で雲の上にいる気分よ!!”

         暗転。

    ――――― 第 5 場 ――――― A

         舞台、明るくなると、藤川家リビング。
         (中央テーブルの上には、パーティの用意が
         されている。)
         一時置いて、1場の紳士姿の信次、拾った
         花束を手に上手より登場。

  信次「ただいま・・・(周りを見回す。)誰もいないのか・・・?なん
     だ・・・今日は何か祝い事でもあったのかな・・・?(テーブル
     の上を見て。)・・・冷めたスープに・・・冷めた料理・・・一体
     皆、どこへ行ったんだ・・・。(倒れていた椅子を立てる。)秋
     ?悠矢?(花束をテーブルの上へ置く。)」

         信次、下手方に置いてあった一つの
         ロッキングチェアにゆっくり腰を下ろし、
         揺らす。

  信次「ああ・・・この椅子はいいな・・・。何故かとても落ち着くん
     だ、昔から・・・。それにしても皆どこへ行ったんだろう・・・。
     そう言えば昨夜・・・秋が何か言っていたような・・・。明日は
     記念日で・・・だから、どうのこうのと・・・」

         信次、ゆっくり目を閉じる。
         フェード・アウト。

    ――――― 第 5 場 ――――― B

         遠くから音楽流れ、木霊するように段々
         大きくなる。
         ライト・インする。と、ポーズを取った
         オフィスレディ達、歌う。

         “我が社に不景気なんて
         関係ないわ
         業界切っての企業伸び率
         新事業プロジェクトも軌道に乗った
         その功績は彼の手腕に
         ねぇ藤川さん!”

  OL1「噂じゃ彼、仕事以外に趣味はないそうよ。」
  OL2「本当?」
  OL3「でも男前よね!」
  OL1「それはそうだけど・・・彼みたいな人と付き合ったら、泣き
     を見るのはこっちよ!」
  OL2「それでもいいわ!」
  OL3「仕事をバリバリこなしてる藤川さん、誰が何て言ったって
     格好良いんだもの!!」

         オフィスレディ達、歌う。

         “すごいわね藤川さん
         片手入社でもう課長
         毎日毎日残業ばかり
         休みも返上
         一体いつ眠るのかしら?”

  OL1「素敵ねー!」

         (途中、沢山の書類を抱えた信次、
         下手から登場。急ぎ足で上手へ去る。)

         オフィスレディ達、歌う。

         “嘘みたい藤川さん・・・
         まだ若いのに部長だなんて
         我が社始まって以来の快挙ね
         日曜日も接待
         今度はゴルフらしいわよ”

  OL2「格好良いー!」

         (途中、ゴルフバックを肩から提げ、手には
         書類を持った信次、上手から登場。下手へ
         去る。)

         曲調変わる。(音楽静かに。)
         オフィスレディ達、歌う。

         “・・・結婚したわ藤川さん・・・
         とてもショックよ・・・
         彼女なんて3日も寝込んだらしいわ
         でも驚きね
         あの仕事人間に
         愛する人がいたなんて・・・

         違うわ 噂じゃ
         体裁保つ為
         幼馴染で同じ職場・・・
         彼のことをよく知ってる彼女が
         選ばれただけ・・・”

         舞台、薄暗くなる。
         舞台奥、中央スポットに、婚礼姿の後ろ向き
         の男女、浮かび上がる。

  神父の声「藤川信次・・・汝は花村秋を妻とし、一生涯愛しぬく
        と誓いますか?」
  信次の声「・・・誓います。」
  神父の声「花村秋・・・汝は藤川信次を夫とし、一生涯愛しぬく
        と誓いますか?」
  秋の声「誓います!!」

         オフィスレディ達の悲鳴で、スポット男女、
         フェード・アウト。
         (舞台、明るくなる。)
         オフィスレディ達、歌う。

         “とうとう副社長になったわ藤川さん
         結婚しても変わらない
         その仕事ぶりに生活態度
         家庭を顧みず
         自分の思うままの道
         歩き続ける
         止まることを知らぬまま
         彼と結婚してたら大変なこと!”
     
         オフィスレディ達、其々上手下手へ去る。
         そこへ50代半ばになった信次、下手より
         登場。
         上手より一人の男性、ゆっくり登場。
         2人、舞台中央へ。男性、信次へ辞令を
         手渡す。

  男性「これからは副社長として、社長の片腕となり、我が社を盛
     り立てていってくれ。」
  信次「はいっ・・・!」
  男性「頑張りたまえ・・・。(信次の肩に手を掛ける。)」

         男性、下手へ去る。
         信次、深呼吸をして上手方へ行きかける。
         と、上手より慌てた様子で悠矢、登場。

  悠矢「父さん!!」
  信次「どうした、悠矢。」
  悠矢「大変なんだ!!母さんが・・・!!」
  信次「今、忙しいんだ。これから引継ぎ業務が・・・」
  悠矢「父さん!!母さんが倒れたんだ!!」
  信次「・・・それで?」
  悠矢「それでって・・・救急車でK大学病院に・・・」
  信次「分かった・・・K大学病院なら、小川先生に連絡しておく。」
  悠矢「父さんは・・・?」
  信次「だから言ってるだろ。私はこれから色々と忙しいんだ・・・」
  悠矢「・・・なんて人だ・・・」
  信次「(悠矢の顔を見る。)」

         音楽流れ、悠矢歌う。

         “母さんが倒れたんだ・・・
         なのに駆け付けようともせず・・・
         あなたは背を向けた・・・
         母さんよりも仕事を選んだ・・・
         何よりも・・・あなたのことを
         待ち続ける人を待たせたまま
         何がそんなに大切なんだ・・・
         何があなたを駆り立てる
         あなたにとって家族って何なんだ
         あなたの口で答えてみろよ・・・”

  信次「馬鹿馬鹿しい・・・(上手へ行きかける。)」

         悠矢、信次の前へ立ち塞がる。

  信次「どきなさい・・・」
  悠矢「嫌だ・・・僕と一緒に病院へ行くんだ!!」
  信次「そんな時間はない。」
  悠矢「時間なんか作ればいい!!」
  信次「何も分かっていないな・・・」
  悠矢「分かっていない・・・?」
         







     ――――― “藤川信次”3へつづく ―――――











― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


       (おまけフォト^^;)

       
   

     これは、記念公演作品“J”の衣装です(^_^)

    「あれ・・・?いつもの人形と違って、顔も手足もない・・・
    」と、不思議に思われた方・・・はい、作品の演出上、
    どうしても“J”には途中で衣装代えをさせたくて、
    同じ人形を2体作るか着せ替え式にするか迷い・・・
    上写真のような着せ替え式に致しました^^;
    (本体は、今あるお人形を使い回しさせてもらうことに
    しました~・・・^_^;)

    さて・・・
    昨日、初めて動かし練習をしたのですが・・・
    “J”はあまり引っ込まない・・・と言うことに気付き・・・
    (脚本を書いている時から、そんなことは百も承知
    ではありましたが・・・^^;)その上、着替えを着込んで
    いるとなると、いつもの人形より重い・・・
    アリアちゃん作品を公演した後にこの“J”・・・腕がどう
    なりますことやら・・・恐ろしい・・・(ーー;)













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“ゲルダ” ―全8場― 完結編

2012年09月22日 18時50分35秒 | 未発表脚本


         ゲルダ歌う。

         “人の愛は・・・
         あなたが考えるよりずっと
         大きくて温かい・・・
         心のないあなたには
         きっと分からない・・・
         あなたには理解できる筈がない
         どんなに深くて広いかが・・・
         言葉で表現など出来ない!!”

         ゲルダ、トロルが落とした鏡を拾う。
         ゆっくりカイの方へ向かって差し出す。

  ゲルダ「・・・私は・・・本当は・・・本当は・・・あなたとの毎日なん
       て忘れちゃったわ・・・!!あんなつまらない日々は、二
       度と戻ってこなくていい!!カイなんて・・・カイなんて
       雪の女王と勝手に何処へでも行けばいいのよ!!二
       度と会えなくなっても、私は全然平気なんだわ!!カイ
       なんて大っ嫌い!!そのまま氷人間になっちゃえばい
       いのよ!!(叫ぶ。)」
  フロル「ゲルダ・・・?」
  雪の女王「それはいいわ!(笑う。)」

         その時、鏡が光出し、ガラスのひび割れる
         音が響き渡る。カイ、ほんの少し、ゲルダ
         の叫び声に反応する。

  フロル「・・・え・・・?」
  雪の女王「何・・・?」

         カイ、一時ゲルダを見詰める。涙を拭う
         ような仕種をする。

  フロル「カイの心の中の氷が融け出した!!」
  雪の女王「どうして・・・!?」
  カイ「(ゆっくりと口を開く。)・・・ゲルダ・・・」
  ゲルダ「・・・カイ・・・?」
  フロル「カイ・・・!」
  カイ「(ハッキリと。)・・・ゲルダ・・・ゲルダ・・・!!」
  ゲルダ「カイ!!(カイに抱き寄る。)」
  雪の女王「・・・何故・・・!?」
  ゲルダ「・・・温かい・・・温かいわ・・・!!」       ※
  カイ「ゲルダ・・・」

         ゲルダ、カイ抱き合う。
         トロル、ゆっくり目覚め、起き上がる。

  フロル「(トロルに気付き。)トロル!!」
  トロル「オイラ・・・」
  フロル「(嬉しそうに。)馬鹿野郎・・・心配かけやがって・・・(涙
      を拭うように。)」
  トロル「・・・フロル・・・ごめん・・・」
  雪の女王「(皆の様子を見て。)・・・畜生!!もう少しだったの
        に!!どうして氷が溶けだしたんだ!!」
  フロル「彼女が言った・・・人の心は簡単に片付くようなものじゃ
      ない・・・。あなたがゲルダの愛情を跳ね返す魔法を使っ
      て、カイを自分の囲いの中に閉じ込めていたから、ゲル
      ダは愛情とは反対の、憎しみの感情で、カイの心の中の
      氷に、割って入ったんだ・・・!!」
  雪の女王「何だって・・・!?」
  フロル「きっと、人間ではないあなたには、分からないだろうね
      ・・・。そして・・・僕にも・・・。けれど、ゲルダのカイを思う
      愛情の強さだけは、あなたにも分かる筈だよ。普通の人
      間がこんなところまで・・・死ぬかも知れないって言うのに
      、愛する人を救いたい一身で来るなんて・・・」
  雪の女王「ふん・・・!!あと少しでカイは私のものになるところ
        だったのに!!」

         雪の女王、怒りに肩を震わせ、マントを
         翻し下手へ去る。
         トロル、フロル、嬉しそうに顔を見合わせ、
         ゲルダ、カイを見詰める。
         ゲルダ、カイ、スポットに浮かび上がる。

  ゲルダ「とても心配したのよ・・・!!」
  カイ「・・・ごめん・・・。なんだかまだ夢の中にいるようだ・・・。ま
     た・・・君に会えるなんて・・・」
  ゲルダ「よかった・・・(何かに気付いたように、ハッとして。)そう
       だわ!!フロル!!トロル!!(2人を捜すように。)」
  カイ「(ゲルダの側へ。)誰だい?」
  ゲルダ「フロル・・・トロル・・・(カイを見る。)私をあなたのところ
       まで導いてくれた・・・天使よ・・・」
  カイ「・・・天使・・・?」
  ゲルダ「ええ・・・本当の天使だったに違いないわ・・・」

         音楽流れ、ゲルダ歌う。

         “あなたのお陰で
         勇気を持てた・・・
         あなたがいたから
         ここまで来れた・・・
         ありがとうも言えずに
         思いを残し
         私を幸せに導いてくれた
         本当の天使だったに違いない・・・
         羽を隠して地上に降りた
         夢の国に住むもの・・・
         忘れないわ・・・
         あなたたちのこと・・・
         決して・・・”

  ゲルダ「・・・ありがとう・・・!!」

         優しくゲルダに寄り添うカイ。
         2人、微笑み合う。
         暗転。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         明るくなる。と、舞台中央にトロル、
         座り込んで嬉しそうに、手に持って
         いた鏡を大事そうに磨いている。
         そこへ上手より、フロル登場。

  フロル「手の傷はどうだい?」
  トロル「まぁな・・・」
  フロル「(嬉しそうに。)けど、トロルがゲルダを庇って氷に閉じ
      込められ、凍傷になるなんて・・・(笑う。)名誉の負傷だ
      な。」
  トロル「あれは!!つい・・・」
  フロル「本来の自分の役割に目覚めたのかな?でなきゃ、いつ
      までも悪戯を繰り返してちゃ、君は堕天使のままだぜ!!
      “トロル”なんて呼び名、嫌だろ?小鬼だなんて・・・。なぁ、
      チロル!!」
  トロル「(恥ずかしそうに。)・・・別に・・・小鬼だって、オイラは・・・
      そ・・・それより見てみろよ!!」

         トロル、手鏡を嬉しそうにフロルの方へ
         差し出す。

  フロル「また、そんなものを作ってるのかい?」
  トロル「馬鹿!こいつはなぁ、前の鏡とはちょいとばかし訳が違
      うんだ!!へへん!!オイラは心を入れ替えたのさ!!
      聞いて驚くなよ!!この鏡は・・・」
  フロル「・・・この鏡は・・・?」
  トロル「誰もが美男美女に映る、名付けて“夢の変身鏡”なのさ
      !!(声を上げて笑う。)」
  フロル「・・・ゆめ・・・?(呆れたように。)・・・くだらない・・・」
  トロル「見るか?見るか?」
  フロル「・・・見ないよ・・・」
  トロル「そんなこと言わねぇで、ちょっとだけ見てみろよ!!」
  フロル「いやだ・・・」
  トロル「面白いと思うがねぇ・・・」

         トロル、自分で鏡を覗いて、うっとりする。

  フロル「(その様子を見て。)馬鹿だなぁ・・・(笑う。)」
  トロル「(ハッとして鏡を見るのを止める。)・・・そ・・・それにして
      も、雪の女王と天上界の女王って、似てたと思わねぇか
      ?」
  フロル「・・・え?ああ、確かに・・・。けど、天上界の女王様が、“
      畜生”なんて言わないよ。それより、雪の女王の手・・・見
      たかい?」
  トロル「・・・いいや。」
  フロル「なんと!・・・手袋をはめてたんだぜ・・・」
  トロル「嘘吐け!」
  フロル「本当だってば!長いコートの下から、チラッとだけ見え
      たんだ!真っ白な手袋・・・!なんか解せないよなぁ・・・あ
      の2人・・・」
  トロル「分かった!!天上界の女王様の心にも、鏡の破片が突
      き刺さってたんだ!!天上界の女王様くらいになると、破
      片が刺さったところで、感情は自由に操れるんじゃねぇか
      ?だから冷たい心になった時は、雪の女王に変身してた
      んだ!!・・・なぁんてね・・・(笑う。)」
  フロル「だけど君・・・残る破片は後一つ!って、雪の女王の城
      へ行く前に言ってたじゃないか。」
  トロル「馬鹿だねぇ・・・ガラスの破片だぜ?後、一個で完成かど
      うか、集めてみないと分かんねぇじゃねえか!(笑う。)」
  フロル「・・・いい加減な奴・・・(呆れように。)それで・・・?完成し
      たの?」
  トロル「ああ!カイの破片を嵌め込んだ時には、まだ隙間があっ
      たんだけど、いつの間にか綺麗に復活してたんだ!」
  フロル「いつの間・・・って・・・」

         その時、下手より天上界の女王、登場。

  女王「まぁ・・・2人揃って、近頃仲がいいですね・・・。」
 
         フロル、トロル、驚いたように顔を見合わせ
         作り笑いする。

  女王「(ゆっくり上手方へ歩きながら。)それも、あの鏡のお陰か
     しら・・・。満更、役立たずの鏡でもなかった訳ですね・・・。
     (笑う。)」

         トロル、通り過ぎた女王のドレスの裾に、
         何か見つけ、慌ててそれを取る。

  女王「(トロルに気付いて。)何かしら・・・?」
  トロル「(首を振る。)」
  女王「そろそろ“トロル”と言う呼び名は、返上してもよさそうね
     ・・・。(微笑む。)」

         女王、上手へ去る。

  フロル「何、見つけたんだい?」
  トロル「(拾ったものを自分の耳に当てる。)」
  フロル「・・・イヤリング・・・?」
  トロル「これ・・・雪の女王がつけてたイヤリングに、似てると思
      わねぇか・・・?」
  フロル「・・・そう言えば・・・」

         2人、顔を見合わせる。

  2人「まさか・・・」

         2人、顔を引き攣らせて笑う。
         その時、鐘の音が響き渡る。
         2人、下(地上。)を見るようにしゃがみ込む。

  フロル「あっ!!カイとゲルダの結婚式だ!!」
  トロル「綺麗だなぁ・・・」
  フロル「祝福の歌を贈ろう!!」

         立ち上がって、フロル、トロル歌う。
   
         “バラの花 
         香る谷間におわします
         幼子のイエス様!”

         途中、豪華な音楽流れ出し、フィナーレへと
         続く。

    ――――― 第 8 場 ―――――

         下手より、ウェディング姿のカイとゲルダ、
         寄り添い歌いながら、上手より天上界の女王、
         歌いながら登場。
         トロル、フロル、歌いながら微笑んで迎える。
         天上界の女王、ゲルダに花(ブーケ)を手渡す。

         “優しい気持ちは些細なことで
         違うものへと変わることもある
         けれど心の奥深く 根付いた思いは
         何があっても変わらない
         それが本当の思いの宝・・・
         誰もが持ってる温かな温もり
         決して変わらない心の宝
         それを手に入れた者は何よりも強く
         そして誰よりも優しさ溢れる・・・
         きっと分かる筈さ
         君の心の中にも生まれた宝があるから!!”

         その時、花弁がチラチラ舞い落ちる。
         皆、嬉しそうに空を見上げる。
         そのピンクの花弁は、春の訪れを告げているよう。








           ――――― 幕 ―――――








     それでは、次回掲載作品の紹介ですが・・・
     次回は“キャシーの森”の原作・・・とでも言いましょうか、
     人形劇用に書き直したものではなく、舞台用に書いた、
     当時の作品そのままをご覧頂こうかな・・・と思います♪
     人形劇用と、内容的には変わりはないですが、言葉使い
     や背景描写など、微妙に違う部分を読み比べ、楽しんで
     みて下さい(^_^)v
     



















   ※ この辺り、以前の台詞にプラスする形で、全面的に
     書き直しながら進めてる為、少しずつの掲載になって
     しまってすみません~・・・





― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

   今日は久しぶりに、有名ミュージカルの舞台観劇に、お出掛
   けして来ました(^_^)v
   とっても有名な歌がメインのこの作品、主演のお2人の歌声
   が素晴らしく・・・一時、夢の世界の住人と化して来ました(^^)
   確か・・・この作品に感化されて、記念公演の“J”作品が生ま
   れたのではなかったかと・・・^_^;
   ・・・ま、それはさて置き・・・
   とても楽しい自分時間を持てた一日でした♪











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“藤川信次” ―全8場―

2012年09月21日 19時36分37秒 | 未発表脚本


 
     〈 主な登場人物 〉

    藤川 信次  ・・・  本編の主人公。子どもの頃からエリート
                街道を進んできた。
 
    藤川 秋(旧姓花村)  ・・・  信次の妻。

    藤川 悠矢  ・・・  信次と秋の息子。

    嶺山 葵  ・・・  悠矢の恋人。

    天使

    
    その他



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ―――――

         静かな音楽流れ、木霊するように小さな
         歌声聞こえる。

         “アイ・ラヴ・・・アイ・ラヴ・ゴースト・・・
         アイ・ラヴ・ゴースト・・・”     ※

         舞台中央スポット、ベンチに座り俯き加減に、
         物思いに耽るように一人の紳士(藤川信次)、
         浮かび上がる。

  信次「・・・なんだろう・・・何か大切なことを忘れているような・・・
     何かやらなければならない、大事なことがあったような・・・
     何だろう・・・」

         音楽大きくなる。
         信次、立ち上がり歌う。

         “大切なこと・・・思い出せない・・・
         当たり前のこと・・・何か忘れてる
         自分の心が・・・求めてる
         誰かの為に・・・出来ること・・・
         何だろう・・・一体・・・
         どうしたんだろう・・・
         分からない・・・”

  信次「こう・・・通りを見ていても、どこかへ急いで行かなければ
     ならなかったような・・・落ち葉が落ちるよりも早く・・・何か
     見つけなければいけない・・・探し物があったような・・・」

         “一つだけ心に・・・
         ポッカリ空いた忘れ物・・・
         何が癒してくれるのか・・・
         どこに落としてしまったのか・・・
         いつになれば満たされる・・・
         振り返っても見つからない
         目の前に広がる道もただ
         霞んで今はよく見えない・・・”

         信次、再び座り、頭を抱える。
         その時、上手より一人の女性(嶺山葵)、
         怒っているように足早に登場。
         続いて葵を追い掛けるように、一人の
         青年(藤川悠矢)、バラの花束を手に登場。

  悠矢「葵・・・!!葵、待てよ・・・!!」
  葵「嫌よ!!」
  悠矢「待てってば・・・」
  葵「もういい加減にしてよね!!あなたはいつも仕事、仕事・・・
    こんなに楽しみにしていた記念日にまで遅刻してくるなんて
    !!」
  悠矢「だから謝ってるじゃないか・・・!こうして君の好きなバラ
     の花束だって・・・(差し出す。)」
  葵「そんなもので騙されないわ!!あなたは仕事さえ出来れば
    いいのよ!!仕事だけがあなたの生き甲斐!!私のことな
    んて、これっぽっちも考えてくれたことがないんだわ!!」

         音楽流れ、葵歌う。

         “2人のことなんて
         どうでもいいの あなたには
         2人の約束なんて
         あってもないの あなたには
         優しさを贈り物で
         誤魔化そうだなんて
         思い遣りのない身勝手な人!!”

  葵「大っ嫌い!!」

         葵、下手へ走り去る。

  悠矢「あ!!待ってくれ・・・!!葵!!待っ・・・て・・・畜生・・・
     僕が何をしたって言うんだ・・・。ちょっと約束の時間に遅れ
     ただけじゃないか・・・!それなのに・・・!そりゃ、ここんと
     こ忙しくて・・・約束を守れたことは・・・あんまりないけど・・・」

         悠矢歌う。

         “ただ仕事が長引いただけ
         ただいつもより・・・
         やるべきことが多かった
         ちゃんと連絡もいれた
         この通りプレゼントだって・・・
         なのに何故・・・
         彼女はあんなに怒るんだ
         全く訳が分からない
         どうすればいいんだ・・・
         今日は大切な記念日・・・
         2人が出会った思い出の日・・・”
        
  悠矢「そして僕が・・・(背広のポケットをそっと触る。)」

         悠矢、花束を見て溜め息を吐き、横に
         あったゴミ籠の中に花束を捨て、上手へ
         去る。(いつの間か信次、頭を上げ今まで
         の2人の様子を、何の気なしに見ている。)

  信次「あ・・・おい・・・君・・・!全く・・・最近の若い者は、何でも物
     を粗末にし過ぎる・・・。(ゴミ籠の中から、花束を拾う。)・・・
     こんな綺麗な花束・・・。それにしてもあの2人・・・どこかで
     見たことが・・・(首を傾げる。)それに一体・・・何を言い合
     いしてたんだろう・・・。大切な日に遅刻がどうのこうのと・・・
     大切な日・・・何だろう・・・何か大切なことがあったような・・・
     」

         信次、再び歌う。

         “どこかで誰かが待っている・・・
         急いで行かないと間に合わない・・・
         別れ別れになった2人のように
         何かを言わなければならなかった・・・
         胸に抱えた一つの台詞・・・”

         信次、ゆっくり上手へ去る。
         と、同時に一人の天使、信次を見て
         いたように登場。上手方を見たまま
         舞台の縁に腰を下ろす。

  天使「やれやれ・・・人間って言うのは、面倒な生き物だ・・・。折
     角の大切な時間・・・彼はただああやって、考えて終わらせ
     るつもりなのかな・・・?」

         天使歌う。

         “君は忘れてるね
         大切なこと・・・
         遣り残した思いを満たす為に
         もう一度舞い降りた
         地上に立つ意味を・・・
         早く思い出さないと
         言い残した言葉・・・
         でなきゃ永遠に
         君はこの世を徘徊する
         迷える風になるんだから・・・”

         暗転。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         中央前方スポットに、一つの長椅子。
         (病院の待合室。)
         そこに腰掛けている婦人(藤川秋)と、
         悠矢浮かび上がる。

  秋「・・・あの人は本当に今まで仕事ばかり・・・いつもいつも働き
    詰めで・・・挙句の果てに、仕事場で倒れるなんて・・・」
  悠矢「・・・母さん・・・」
  秋「あの人と私は昔・・・同じ職場で働いていたの・・・。今のあな
    たと、嶺山さんのようにね・・・」
  悠矢「そうだったんだ・・・」
  秋「その頃のお父さんは、とても仕事熱心だったの・・・。今と全
    然変わりなく・・・私は・・・それを承知で結婚したんだけれど
    ・・・正直言って・・・淋しいと思ったことは、一度や二度では
    なかったわ・・・。結婚してからも家庭を顧みることなく・・・私
    のことも放ったらかし・・・小さいあなたの面倒なんて一度も
    ・・・。私のこと・・・本当に愛してくれていたのかしら・・・」
  悠矢「そんな父さんと一緒になって・・・母さんは幸せだったの
     ・・・?」
  秋「私・・・?私は・・・(考えるように。)」

         舞台明るくなる。と、上手後方に一つのベッド。
         (病室。)
         その上に信次、眠っている。横には小川医師と
         看護師立っている。
         秋と悠矢、信次の側へ。

  秋「小川先生・・・」
  小川「藤川さん・・・」
  悠矢「先生、どうなんですか?父の容態は・・・」
  小川「最善の手は施しましたが・・・」
  悠矢「・・・そうですか・・・」
  秋・・・あなた・・・」
  小川「・・・全く・・・無茶な仕事量をこなして・・・いつか取り返しの
     付かないことになるから、程々にして下さいと、常々煩く言
     っていたのに・・・」            ※2
  秋「あなた・・・」

         音楽流れ、秋、言葉を搾り出すように歌う。
         (途中、小川医師、看護師上手へ去る。)

         “聞こえてる・・・?
         そこにいるの・・・?
         いつも私は待ちぼうけ・・・
         なのにまた・・・
         私を置いて行くの・・・?
         私のことが分かる・・・?
         いつもここにいる・・・
         あなたの温もりが
         虚飾に感じるわ・・・
         私はあなたの声が聞きたい・・・”

  秋「ねぇ・・・答えて・・・あなたの言葉で聞かせて・・・私の生き
    方が正しかったんだと・・・」
  悠矢「・・・母さん・・・」

         暗転。

  天使の声「・・・彼の命は風前の灯・・・さぁて・・・藤川信次・・・そ
        の人の昔をちょいとばかし覗いて見るとしようか・・・。」

    ――――― 第 3 場 ―――――

         一転して明るい音楽流れる。
         一人の女子学生、手に袋を持ち下手より
         スポット登場。歌う。

         “子どもの時から優秀で
         英才教育 お受験で
         有名私立幼稚園
         そのままエスカレーター式に
         おぼっちゃま街道まっしぐら
         学校ではいつも1、2を争う秀才くん
         その上 運動神経抜群で
         おまけに誰もが振り返るハンサムボーイ
         女の子が放っとかないよね藤川くん”

         舞台、明るくなる。と、舞台中央に置かれた
         一つのベンチ(1場と同じ。)に、学生服姿の
         信次、腰を下ろし本を読んでいる。
         女子学生、信次を認め恥ずかしそうに躊躇い
         ながら、ゆっくり近付く。

  女子学生「・・・あの・・・藤川くん・・・」

         信次、顔を上げ、女子学生を認め怪訝そう
         に見詰める。

  女子学生「・・・こ・・・こんなところで読書?さ・・・寒いでしょ?」
  信次「・・・君・・・誰・・・?」
  女子学生「・・・え?同じクラスの南愛子じゃない。」
  信次「・・・南・・・ああ・・・聞いたことがあるような気がする。」
  女子学生「・・・気がするって・・・」
  信次「それで?何か用・・・?」
  女子学生「え・・・ええ!今日、何の日か知ってる?」
  信次「何の日・・・?さぁ・・・」
  女子学生「2月14日よ!?学校中の女の子達が・・・」
  信次「くだらない・・・」
  女子学生「え・・・?」
  信次「皆が何に騒いでいるのか知らないが、他に考えることが
     ないんだな・・・。」
  女子学生「・・・本当に知らないの・・・?」
  信次「ああ・・・。何の日だろうと、僕には関係ないからね。失敬
     ・・・」

         信次、上手へ去る。

  女子学生「藤川くん・・・!!・・・折角・・・チョコレート・・・頑張っ
        て作ったのに・・・」

         女子学生、悲しそうに歌う。

         “知的で冷静沈着で・・・
         背も高くてハンサムボーイ・・・
         女の子が放っとかないけど藤川くん
         あなたはちっとも見向きもしない・・・
         いつも手には読みかけの分厚い本
         横にいるのは教科の先生・・・”

  女子学生「女の子に興味がないのかしら・・・」

         女子学生、溜め息を吐きながら、残念
         そうに下手へ去る。
         下手後方より、その様子を見ていたように
         天使、ゆっくり登場。

  天使「成績優秀で、何をやらせてもそつ無くこなす・・・見た目に
     はとてもよく出来た人間に見えるけれど・・・内面を探って、
     人間的な部分に触れると・・・彼にはその一番大切な、“人
     間らしさ”・・・と言うところには、全く無頓着で、そう言った
     感情は欠如しているらしい・・・(笑う。)さぁて、この後、彼は
     どんな風に成長していくんだろうね。(上手方を見て、何か
     に気付いたように。)おや・・・?お出ましだ・・・。バリッとス
     ーツに身を包んで、今日はどこへお出掛けかな・・・?」
  
         
    








       ――――― “藤川信次”2へつづく ―――――










     実はこのページで続きを書いていたのですが、途中で
    次ページに変えにくくて、昨日公開以降を、2ページ目に
    移動しました~^^;
    続きは、そちらをご覧下さい<(_ _)>











   ※ この作品のタイトルとして“アイ・ラヴ・ゴースト”と付いて
     いたのですが、読み直してみて「どうかな・・・」と感じたの
     で、今回はタイトルを主人公名で書かせて頂いています
     ^^;
     もう一つ余談ですが・・・この信次さん、初めは外国名
     (ジム・グレイ)が付いていました^_^;


   ※2、こんな会話をする・・・と言うことは、小川先生と信次
     さんは、友達か・・・それに近い関係だとお考え下さい^^;



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“ゲルダ” ―全8場― 3

2012年09月17日 15時06分53秒 | 未発表脚本


    ――――― 第 5 場 ――――― 

         舞台、明るくなる。
         上手よりゲルダ、誰かを捜すように登場。

  ゲルダ「ねぇ!!フロル!!トロル!!もう・・・どこに行っちゃ
       ったのかしら・・・。あの2人、先々行くんだもの・・・。それ
       にしても、なんて寒いところなのかしら・・・。(辺りを見回
       す。)カイはもっともっと寒いところに、閉じ込められてる
       のね・・・。急がなきゃ・・・!!」

         その時、下手より一人の老婆、曲がった腰に
         杖を持ち、ゆっくり登場。ゲルダ、老婆を認め
         近寄る。

  ゲルダ「こんにちは、お婆さん!お婆さんはこの先の道から来た
      のかしら?だったら、途中で白と黒の服を着た、2人連れ
      の男の子に出会わなかった?」
  老婆「(ゲルダの言葉は耳に入らないように。)・・・手が、冷たく
     て凍えそうじゃ・・・」
  ゲルダ「(老婆の手を取る。)まぁ・・・本当。(老婆の手を温める
      ように、息をかけたり摩ったりする。)こんなに手が冷たく
      なるまで・・・きっとお婆さん、ずっと長い距離を歩いて来
      たのね。(暫く手を摩る。)・・・どう?少しは温まったかしら
      ・・・。ごめんなさいね・・・私、お婆さんがいくら凍えそうで
      も、何も差し上げるものがないの・・・。私も慌てて、カイの
      後を追うことにしたものだから、服だってこんな薄着で・・・
      。私の目指すところは、もっともっと北の・・・ここよりうんと
      寒いところなのに・・・。でもカイも頑張っているんだから、
      私も頑張らなくちゃいけないのよ。(何か思い出したように
      。)そうだわ!(ポケットから薄い手袋を取り出し、老婆の
      手にはめる。)こんな薄い手袋でも、ないよりましよ!私、
      花弄りが好きで、いつも手袋をポケットに入れていたんだ
      ったわ。少し土がついているけれど、我慢してね。じゃあ、
      私は先を急ぐから・・・。さよなら、お婆さん!」

         ゲルダ、下手方へ行きかける。

  老婆「・・・優しい娘だねぇ・・・」
  ゲルダ「(振り返る。)・・・え・・・?」
  老婆「こんな見ず知らずのわしのようなただの年寄りに、手袋
     までくれるとは・・・。こっちへ来てごらん、ゲルダ・・・」
  ゲルダ「(驚いて。)どうして私のこと・・・」

         ゲルダ、ゆっくりと老婆の側へ。
         老婆、マントの中から毛皮のマフラー
         と、手袋を取り出す。

  老婆「(マフラーと手袋をゲルダの方へ差し出す。)これを、おま
     えにやろう・・・」
  ゲルダ「これは・・・毛皮でできたマフラーと手袋・・・?駄目よ!
      これは貰えないわ!!」
  老婆「おまえさんは、わしにこれをくれたではないか・・・。(手を
     見せる。)わしはこれで十分じゃよ・・・。さぁ、はめてお行き
     ・・・。雪の女王のところは、ここよりもっと寒いんじゃ。そん
     な格好では凍えてしまうよ・・・。」
  ゲルダ「何故、雪の女王のことまで・・・?」
  老婆「(笑って。)わしは、ちょっとばかし魔法が使えるのさ・・・。
     さぁ、若い娘が、遠慮なんかせんでいい・・・。」
  ゲルダ「・・・でも・・・」
  老婆「わしはこの国の人間じゃから、少々のことで凍えたりはせ
     んよ・・・。」
  ゲルダ「(マフラーと手袋を受け取る。)・・・温かい・・・。ありがと
       う、お婆さん・・・。」
  老婆「雪の女王の城は、もう直ぐそこじゃ・・・。後、2マイルも行
     けば、そこから女王の庭が始まる・・・。そこから城までは、
     真っ直ぐ1本道じゃ・・・。しっかりな・・・。(上手方へ行きか
     ける。)」
  ゲルダ「(頷く。)」
  老婆「そうじゃ・・・、おまえさんと一緒にいたフロルとトロルの2
     人も、直ぐそこで(下手方を指す。)おまえさんを捜しておっ
     たぞ・・・。」
  ゲルダ「本当!?」
  老婆「ああ・・・」
  ゲルダ「ありがとう!!(老婆の頬にキスするように。)さよなら
       、お婆さん!!」

         ゲルダ、下手へ走り去る。と、同時に老婆、
         曲がった腰を伸ばし、下手方を見詰める。
         風の音が聞こえ、段々大きく。
         フェード・アウトする。
         (そのまま音は次景へと続く。)

    ――――― 第 6 場 ―――――

         吹雪の音。重なるように静かな歌声が
         聞こえる。

         “城の壁は吹き荒ぶ雪
         窓は身を切るような風
         雪の広間の真ん中に凍った湖
         それが雪の女王の城なのさ・・・”

         薄明るくなる。と、舞台中央、表情のないカイ
         座っている。一時置いて、下手よりフロル、
         トロル登場。続いて周りを見回しながら、ゲルダ
         登場。

  フロル「さぁ、着いたよ・・・」
  ゲルダ「・・・ここが雪の女王のお城・・・?」
  フロル「うん・・・」
  ゲルダ「・・・カイは何処にいるの?」
  フロル「えっと・・・」
  トロル「(顎でカイの方を指して。)ほれ・・・」
  フロル「(カイを認める。)あ・・・!(カイの様子に顔色が変わる
      。)・・・あれは・・・」
  ゲルダ「(トロルが指した方を見、カイを認める。)カイ!!(駆け
      寄る。)カイ!!(カイに触れる。驚いたように手を離す。)
      ・・・冷たい・・・!?そうだわ!!(自分の巻いていた毛皮
      のマフラーを、カイに巻く。)カイ!!返事をして頂戴!!
      私よ!!ゲルダよ!!如何して、何も言わないの!?」
  トロル「・・・心が凍っちまってんだ・・・」
  ゲルダ「ねぇ、フロル!!クラウスとシスターの時みたいに、あ
      なたの力で鏡の破片を取り除くことが出来るんでしょ!?
      お願い!!カイの心を元に戻して!!」
  フロル「・・・それが・・・」
  ゲルダ「(フロルの様子に。)どうしたの・・・?」
  フロル「もうカイは表面だけでなく・・・心の奥深くまで氷ついてし
      まってるんだ・・・」
  ゲルダ「どう言うこと・・・?」
  トロル「手遅れだってことさ!」
  ゲルダ「手遅れ・・・?手遅れって・・・」
  フロル「・・・もう少し早ければ・・・シスターの時のように、僕が手
      を伸ばせば取り出すことが出来たんだ・・・けれどもう、僕
      の手の届くところに、鏡の破片はないようだ・・・」
  ゲルダ「嘘よ・・・何故そんな!!だってあなたも言ったじゃない
       !!鏡の破片さえ取り出せば、カイは元の優しい人に
       戻るって!!」
  フロル「・・・ごめん・・・間に合うと思ったんだ・・・」
  トロル「いい加減なこと言って、そんな安請け合いするからだ。」
  ゲルダ「そんな・・・じゃあ、どうすればカイは元に戻るの!?ど
       うすれば温かな心を取り戻すの!?どうすればいいの
       !?」
  トロル「見てみろ、カイのその生気のない表情を!助けに来る
      のが遅すぎたのさ!諦めろ!諦めろ!」     ※
  ゲルダ「そんなこと・・・嫌よ!!」

         その時、上手より雪の女王、登場。
  
  雪の女王「誰かしら・・・私の城で騒いでいるのは・・・」
  フロル「・・・雪の女王・・・」
  ゲルダ「雪の女王・・・?この人が・・・」

         雪の女王、ゆっくりカイの横に腰を下ろし、
         カイの首に巻いてあったマフラーを取り、放る。
         雪の女王のコートの下からチラッと見えた
         手には、白い手袋がはめられている。
         フロル、目敏くそれに気付き、首を傾げ不審
         そうな面持ちをする。

  ゲルダ「・・・お願い・・・カイに近付かないで・・・!それ以上あな
      たが側にいると、カイは本当に死んじゃうわ・・・!!」
  雪の女王「(微笑んで。)いやよ・・・。私、彼のことが気に入った
        の。」
  ゲルダ「カイはただの人間なのよ!!こんなところで暮らせない
       わ!!」

         音楽流れ、ゲルダ歌う。

         “お願い・・・
         私からカイを奪わないで・・・
         ただ愛しいあなたに会う為
         ここまで来た・・・
         あの優しかったあなたは
         どこへ行ったの・・・
         そんな冷たい目で
         私を見ないで・・・!!”

  ゲルダ「カイを返して!!カイ!!目を覚まして!!ゲルダよ
       !!・・・お願い、カイ!!あなたを愛しているの・・・!!
       」

         カイ、冷ややかな目でゲルダを見詰めるだけで、
         何の反応もしない。
         雪の女王、立ち上がり歌う。

         “もうカイは私のもの・・・
         彼の心臓はあと少しで
         全て氷に包まれるの・・・
         二度とあなたの元へは
         帰らない・・・”

  ゲルダ「お願い・・・(泣く。)カイ・・・思い出して頂戴・・・。二人で
      過ごした優しい日々を・・・!高価なものは何もなくても、
      二人の間には愛があったわ!!とても満ち足りた毎日だ
      った筈よ!!」

         雪の女王歌う。

         “いくら何を聞かせても
         もう彼の心にあなたはいない”

         ゲルダ歌う。

         “そんなことないわ!!
         あなたの言葉なんて信じない!!
         私はカイを取り戻す為
         ここまで来たのよ!!”

  雪の女王「煩く言うのは嫌いよ!あなたもカイのように、氷の中
        に閉じ込めてあげるわ!!(ゲルダの方へ向かって、
        息を吹き掛けるように。)」
  トロル「(思わず。)危ねぇ!!(ゲルダを押し退ける。)」

         雪の女王の吐く息が、トロルにかかる。
         トロル、手鏡を落とし、固まったように
         倒れる。

  フロル「トロル!!(駆け寄る。)」
  ゲルダ「トロル!?」
  フロル「トロル・・・!!」
  雪の女王「まぁ・・・失敗しちゃったじゃない・・・。(笑う。)こんな
        鬼を凍らせちゃって、邪魔になるだけよね・・・。」
  フロル「(雪の女王を見る。)・・・雪の女王・・・・」
  ゲルダ「(フロルに。)トロルはどうなっちゃうの!?」
  フロル「(首を振る。)・・・分からない・・・永遠にこの氷の中に閉
      じ込められたまま・・・死ぬとも・・・生きるとも・・・(涙を堪
      えるように。)」
  ゲルダ「・・・そんな・・・私の為に・・・トロルが・・・」
  雪の女王「分かったでしょう?あなたもこの小鬼みたいに凍ら
        されたくなければ、さっさと家にお帰りなさい!!」

         雪の女王歌う。

         “さぁ
         私はカイは返さない!!”









      ――――― “ゲルダ”4へつづく ―――――







    (どら余談^^;)

    少し、駄作感のある作品なので、手直ししながら書き
   進めている為、中々先に行くことが出来なくて、いつもに
   比べ、更新ペースが遅くなっていますが・・・お許し下さい
   <(_ _)>










 ※  昨日書いた辺りの部分を、少し手直ししてみました^_^;
  この作品、書き写しながら、全般に少し言葉足らずの台本で
  あったな・・・と、気になっていたのです^^;が、前半は、あまり
  手直しすることはなく、書いた当時のまま載せていたのですが、
  ここにきて、ラストの盛り上がりに入る部分が、さすがに言葉
  足らずでは不味いな・・・と思い、書き直してみました(^_^;)
  ラストに向け、これからも一度載せたものを変更することが
  あるかも知れませんが、気になさらないで下さい(^。^)





― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

   今日は、午後から学習参観です♪

   毎日教室までの子どもの送り迎えで知っていますが、
   学校と言うところは、無茶苦茶“暑い”・・・(>_<)
   密集した場所にいる子ども達の体温が高いからか、
   道中の日陰なんかはこの時期、少しひんやりした心地いい
   場所に変わりつつあるのに、教室の前に着いた頃には・・・
   “ド~ッ”と流れる汗・・・(^_^;)

   その汗の元となる場所へ行って参ります・・・^_^;








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