りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ロベルトの旅” ―全9場―

2012年02月27日 20時19分23秒 | 未発表脚本



      

      少し光の加減で、薄くなってすみません^^;




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


    〈 主な登場人物 〉


    ロベルト  ・・・  本編の主人公。優しい少年。

    フリード  ・・・  悪魔。

    マリアンヌ  ・・・  幽霊城の姫。

    アース  ・・・  ロベルトの友達。

    ニルス  ・・・  ロベルトの友達。

    りリア  ・・・  ロベルトの母。

    ユリア  ・・・  村の守り神の娘。

    リィ、ルゥ  ・・・  潤いの森に住む、双子の妖精。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         開演アナウンス。(客電落ちる。)

    ――――― 第 1 場 ―――――

         音楽流れ、幕が上がる。
         (舞台上、全出演者達、板付き。)
         全出演者、彼方を見上げるように歌う。

         “遥か遠い空の果て
         まだ見ぬ憧れを胸に抱き
         さぁ行こう!
         彼方遠い道の果て
         希望の夢を求め旅立つ
         さぁ行こう!”

         出演者による総踊り。
         其々上手、下手へ走り去る。
         2人の少年(アース、ニルス)、ロベルトを
         認め声を掛ける。

  アース「おーい、ロベルト!!」
  ロベルト「アース!ニルス!」
  アース「今そこで、村の守り神ユリアに聞いたんだけど、あの彼
       方(客席上方を指差す。)に、何でも望みの叶う不思議
       な白い花の咲く、砂漠があるんだって!!」
  ロベルト「まさか・・・(笑う。)」
  ニルス「本当さ!!その花を手にした者は、何だって一つの願
       いを手に入れることができるんだ!!」
  ロベルト「何でも・・・?」
  アース「うん!(頷く。)大金持ちになりたいとか、永遠の命が欲
      しいとか!!何だって!!」
  ロベルト「・・・本当に?(何かに心が奪われたように、呆っと彼
       方を見遣る。)」
  ニルス「ただ、そこへ辿り着くのが大変で、まだ今まで誰もその
      花を見たことがないんだ!」
  アース「大変って、一体どんなことがあるんだろう?(ロベルトの
      様子に気付いて。)ロベルト・・・?おい、ロベルト!!何
      呆っとしてんだよ!!」
  ニルス「ロベルト、聞いてるのかい!?」
  ロベルト「あ・・・うん!聞いてるさ!あの砂漠に行けば、夢や願
       いごとが何だって叶うんだろ?僕にはどうしても叶えた
       いことがあるんだ。」

         ロベルト、瞳を輝かせ歌う。

         “僕には叶えたい願いがある
         一つの夢 追い求め”

         アース、ニルス、歌に加わる。

         “僕らは未来へと続く
         あの虹を越えてどこまでも行こう”

         子ども達踊る。(ロベルト、アース、ニルス)
         (途中フリード、チラッと登場し子ども達の話し
         を聞いている風に。)
         繰り返し歌う。
         子ども達、希望に満ちた表情で、彼方を見遣る。

    ――――― 第 2 場 ―――――

  アース「何だよ、ロベルト!おまえの願いごとって・・・。」
  ロベルト「いいだろ、何だって!」
  アース「いいじゃないか!聞かせろよ!」
  ニルス「教えてくれよ!」
  ロベルト「煩いな・・・。早く大人になりたいんだよ!!」
  アース、ニルス「大人になりたい!?」

         アース、ニルス顔を見合わせて笑う。

  ロベルト「父さんが死んで・・・母さん、苦労ばっかしてきたんだ
       ・・・。何時までもこんなチビの僕じゃ、力仕事だって満足
       にできない・・・。早く大人になって、父さんのように力持
       ちになれば、母さんにも楽させてあげられる・・・。」
  アース「ロベルト・・・」
  ロベルト「(ハッとして。)馬鹿!それに大人だと、学校に行かな
       くてもいいだろ!?」
  ニルス「なぁんだ、やっぱりそんな理由か!(笑う。)」

         その時、下手より籠を抱えてリリア登場。
         ロベルトを認め近寄る。

  リリア「ロベルト!」
  ロベルト「(リリアを認め。)あ、母さん!今、仕事の帰り?」
  リリア「ただいま。」
  アース「こんにちは、小母さん。」
  ニルス「こんにちは。」
  リリア「こんにちは。遅くまで遊んでいると、もう直ぐ夕食の時間
      よ。」
  ロベルト「うん。でもこの2人と遊んでいると楽しいんだ。」
  リリア「遊びばかり・・・?」
  ロベルト「え?」

         音楽流れ、リリア歌う。

         “宿題は済んだのかしら?”

         ロベルト、首を振る。

         “毎日本を読みなさいと言ってるでしょう”

         ロベルト、頷く。

         “林へ行って薪を集めて来て頂戴”

  ロベルト「分かってるよ・・・。」

         “あなたはいい子よ
         素直に返事のできる・・・
         ただそれを行動に移すのが
         少し苦手なだけ”

  リリア「母さんは買い物を済ませて帰るから、先に戻って火を熾
      しといてね。」
  ロベルト「分かったよ・・・。」

         リリア、上手へ去る。
         リリアと入れ代るように、上手よりフリード登場。
         意地悪そうな顔付で、3人を見詰める。

  アース「どこの母さんも、言うことは同じだよなぁ・・・。」
  ニルス「うん。」
  アース「帰ろう・・・!」

         3人、ゆっくり下手方へ行きかける。

  フリード「おい、おまえら・・・!!」

         3人、振り返ってフリードを認める。

  フリード「俺と何かして遊ばないか?(ニヤリと笑う。)」
  アース「誰だ?おまえ・・・。」
  ロベルト「遊ぶ・・・?」
  フリード「ああ。」
  アース「止めとけよ、ロベルト!俺達はこれから真っ直ぐ家へ帰
      るのさ!」
  ニルス「うん。」
  アース「行こうぜ!」

         アース、ニルス歩き始める。

  ロベルト「誰だよ・・・。」
  フリード「俺の名前はフリード・・・。あの彼方の(客席上方を、指
       差す。)砂漠から来たのさ!」
  ロベルト「あの砂漠から・・・?」
  フリード「ああ・・・。あの願いの花の咲く・・・砂漠からね・・・。」
  ロベルト「見たことあるの・・・?その花・・・」
  フリード「勿論!砂漠に咲く、たった一輪の黒い花・・・。」
  ロベルト「・・・黒い?嘘だ!!願いを叶える花は白いって聞い
       たぞ!!」
  フリード「・・・おっと・・・そうそう白い・・・白い花だ!ちょっとした
       勘違いさ。そんな怖い顔しなくてもいいだろ?」
  ロベルト「本当は見たことなんてないくせに!」
  フリード「おや・・・疑うのか?」
  ロベルト「信用できない。」
  フリード「じゃあ、いいものを見せてやろう・・・。(服のポケットか
       ら、一枚の写真を取り出し、ロベルトの方へ。)」
  アース「ロベルト!」
  ロベルト「(写真を受け取り見る。)・・・これは・・・」
  フリード「そう・・・それが願いを叶える白い花・・・。その花を探し
       に行きたいんだろう?」
  ロベルト「どうやったら、この花の咲く砂漠へ行けるの!?」
  フリード「知りたいかい・・・?」
  ロベルト「(頷く。)」
  フリード「・・・いいだろう・・・。(ニヤリと笑って、客席方を指差す。
       )・・・この道を真っ直ぐ・・ただひたすらに真っ直ぐ・・・突
       き進めば、一つの古城が見えてくる・・・。その城に住む
       姫に会って、次に目指す場所・・・“潤いの森”に行く道筋
       を教えてもらえばいいのさ・・・。」
  ロベルト「・・・分かったよ・・・。」
  アース「ロベルト、まさか行く気じゃないだろうな!?」
  フリード「さぁて・・・俺様にものを聞いておいて、ただって訳には
       いかないぜ・・・。」
  ロベルト「え?お金なんて持ってないよ、僕・・・。」
  フリード「・・・ふん・・・金・・・?金だと?俺は悪魔だ!!金では
       動かない!!俺様が欲しいものは人間の魂だ!!それ
       も、おまえの一番大切な者のな!!」
  ロベルト「・・・悪魔・・・?」
  ニルス「ロ・・・ロベルト・・・」
  ロベルト「どう言うことなんだよ!!」
  フリード「早く、お家に帰らないと!」
  ロベルト「まさか・・・母さん・・・?」

               ロベルト、上手へ走り去る。アース、ニルス、
         ロベルトの後を追うように上手へ走り去る。

  アース、ニルス「ロベルト!!」
  フリード「もう一つ、サービスで教えといてやろう。その城に住む
       マリアンヌ姫は、もうとっくの昔に死んで、今いるのは・・・
       (声を上げて笑う。)」

         フリードの笑い声で暗転。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         音楽流れ、舞台薄明るくなる。
         中央、一つのベット(ソファー)にリリア、横に
         なっている。ユリア、横に付いて手を握っている。
         一時置いて、上手より息を切らせてロベルト、走
         りながら登場。

  ロベルト「母さん!!(リリアを認め、呆然と。)・・・母さん・・・」
  ユリア「あ・・・ロベルト・・・。小母様、突然倒れられたの・・・。」
  ロベルト「あいつだ・・・あいつのせいで・・・」
  ユリア「・・・あいつ?」
  ロベルト「(リリアの横へ跪く。)母さん・・・ごめんよ・・・。僕があ
       んな奴の相手になったばっかりに・・・。(涙を堪えるよう
       に歌う。)」

         “心苦し温もり・・・
         憂い溢れ思い出・・・
         夢と希望叶える
         遠い空の下へ・・・”

  ロベルト「ユリア・・・僕に教えて・・・砂漠に咲く白い花のこと・・・。
       僕はなんとしてでも、その花を探してくるよ・・・。何でも
       願いの叶うその花を・・・。」
  ユリア「・・・ロベルト・・・。でも、そこへ辿り着くには、何があるか
      分からないのよ?」
  ロベルト「・・・分かってる・・・。でも、僕は行かなきゃ・・・。母さん
       を助ける為に・・・。僕のせいだもの・・・母さんがこんなこ
       とになったのは・・・。だからお願い・・・」

       ロベルト“願いを叶えるんだ・・・”

       ユリア“白い花は願いを叶えてくれるだろう
           その手に入れる為に試練に向かえ・・・”

  ロベルト「ユリア・・・僕が戻るまで、母さんのことを頼むよ・・・!
       !」
  ユリア「ロベルト・・・!!」

         ロベルト残して、カーテン閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         音楽流れる。
         ロベルト、固い決心に肩を震わせ、彼方を
         見上げ歌う。

       コーラス“旅立つ未来に向かい
            あなたの信じる道
            旅立つあの空の下
            一つの願い求めて”

       ロベルト“行こう!!未来に向かい
            明日がある限り
            行こう!!あの空の下
            自分の信じる道を!!”

  ロベルト「待ってて、母さん!!必ず・・・必ず・・・僕が花を見つ
       けてくる!!だから、それまで・・・!!」     ※

       ロベルト“一つの願い求め
            今旅立とう!

            行こう!!未来に向かい
            希望がある限り
            行こう!!虹の彼方へ
            願いを叶える為に”

         その時、上手よりアース、ニルス走り登場。

  アース「ロベルト!!」
  ロベルト「アース!!ニルス!!」
  アース「一緒に行くよ!!」
  ニルス「僕も!!」
  ロベルト「けど・・・」
  アース「何、遠慮してんのさ!一人より二人、二人より三人って
      さ、力を合わせれば屹度見つかるよ!!」
  ニルス「うん!!」
  ロベルト「アース・・・ニルス・・・」

         ロベルト、嬉しそうに大きく頷く。
         他の2人、微笑んで頷く。3人、手を重ねる。
         3人踊る。(足踏みする。)

       3人“行こう!!未来に向かい
          明日がある限り
          行こう!!あの空の下
          自分の信じる道を”

       コーラス“旅立つ未来に向かい
             あなたの信じる道”

       3人“行こう!!虹の彼方へ
          願いを叶える為に”

       ロベルト“一つの願い求め
             今旅立とう!!”

  ロベルト「見つけるんだ、必ず!!」
  アース「白い花を!!」
  ニルス「うん、必ず!!」
  ロベルト「行こう!!」

         3人、客席後方へ駆け抜け去る。

  ロベルトの声「待ってて、母さん!!」

         暗転。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         下手スポットにフリード浮かび上がる。
         何か良からぬ考えを、思い巡らしているように
         ゆっくり抜き足差し足で踊る。
         物陰に隠れる。
         舞台、明るくなると城内の様子。
         中央後方にドレス姿の姫(マリアンヌ)、一人で
         曲に乗りワルツを踊っている。
         途中、フリード物陰から表われ、マリアンヌの前へ。
         深く一礼し、手を差し出す。
         マリアンヌ、驚いたようにフリードを見詰めるが、
         嬉しそうに微笑むと、フリードとワルツを踊る。

  マリアンヌ「あなたはどなた・・・?」
  フリード「俺はフリード・・・。」
  マリアンヌ「・・・フリード・・・?」
  フリード「(ニヤリと微笑み、後方に置いてあった一つの椅子の
       上から、手鏡を取りマリアンヌの方へ差し出す。)これを
       見てみな・・・。」
  マリアンヌ「(鏡を受け取り見る。)何かしら・・・。」
  フリード「そこに子どもが3人、映っているだろう・・・?」
  マリアンヌ「・・・ええ・・・。」
  フリード「その子どもらは、誰も住んでいないこの城を、目茶苦茶
       に荒らし回って、金品をかっさらいに来た悪い奴らだ・・・
       。」
  マリアンヌ「・・・なんですって・・・?(口調が少し変わる。)」
  フリード「あんたの大切な指輪・・・奴らに持ってかれてしまうか
       も知れないぜ。(笑う。)」
  マリアンヌ「・・・許さないわ、そんなこと・・・。私が何故、何時ま
         でもこの城に留まっていると思ってて?恋人に贈ら
         れたあの大切な指輪・・・。あの指輪をこのお城のど
         こかで無くしてしまったからよ・・・。あの指輪を贈られ
         た直後に、彼は事故で亡くなってしまったの・・・。あ
         の指輪がないと、天国で彼に合わす顔がないわ。」
  フリード「さぁ、お越しだ・・・。(ニヤリと笑う。)」
      
         フリード、上手へゆっくり去る。マリアンヌ、後方
         の椅子に後ろを向いて、腰を下ろす。
         舞台、薄暗くなり音楽流れる。
         一時置いて、下手よりロベルト、アース、ニルス
         恐々と回りを見回しながら、ゆっくり登場。

  ニルス「な・・・なんか寒くない・・・?」
  アース「うん・・・。」
  ロベルト「・・・大丈夫さ!こう言う古めかしいお城は、造りが冷
       たいレンガで・・・だから中がひんやりするのさ・・・。」
  アース「そ・・・そうだよ・・・。何、ビクビクしてるんだよ!!全くニ
      ルスは・・・。」
  ニルス「だって・・・」

         アース、上手方の壁に飾ってあった肖像画に
         気付き、その方へ。ロベルト続く。

  ニルス「(慌てて2人に続く。)ま・・・待ってよ!!」
  アース「へぇ・・・肖像画だ・・・。マリアンヌ・ボルドー・・・1813年
      から1845年・・・。ふうん・・・今から100年以上も昔だな
      ・・・。」
  ニルス「・・・綺麗な人だね・・・。」
  アース「まぁな・・・。」
  ロベルト「・・・それで、この城に住むお姫様って一体・・・何処に
       いるんだろう・・・。」

         3人、回りを見回す。

  マリアンヌ「・・・私のお城へようこそ・・・。」
  アース、ニルス「わあっ!!(思わず叫ぶ。)」

         マリアンヌ、立ち上がる。

  アース「な・・・なんだ人間か・・・。」
  ロベルト「・・・あなたが、このお城のお姫様・・・?」
  マリアンヌ「・・・ええ・・・。」
  ロベルト「ごめんなさい、黙って入って・・・。実は僕達、お願いが
       あって・・・。」
  マリアンヌ「(口調厳しく。)駄目よ・・・!!」
  ロベルト「え・・・?」
  マリアンヌ「私のお城の金銀財宝を盗もうったって、そうはいか
         ないわ・・・。」
  ロベルト「違うよ・・・。僕達、何もあなたのお城を荒らしに来た盗
       賊でもなんでもないんだ・・・!僕達ただ・・・!」
  マリアンヌ「ただ何!?みんなそんなことを言ってここへ来て、
         結局は私の大切な宝物を1つ・・・2つ・・・自分のもの
         にする為に、持ち帰ろうとするのに!!」
  アース「本当だぜ!俺達、ただあんたに“潤いの森”に行く、道
      筋を教えて欲しいだけなんだって!!」
  マリアンヌ「人間って、なんて嘘吐き・・・。」

         その時、肖像画とマリアンヌを何気なく
         見比べていたニルス、驚いたように。

  ニルス「・・・ア・・・アース・・・」
  ロベルト「どう言ったら信じてもらえるのかな・・・。」
  ニルス「アース!!」
  アース「なんだよ!!煩いなぁ!!」
  ニルス「見・・・見てよ・・・この肖像画・・・」
  アース「今、そんなもの呑気に見てる場合じゃないだろ!!もう
      ・・・何て顔してんだよ!!」
  ニルス「だけど・・・!!ほら・・・!!ほら・・・!!(肖像画とマリ
       アンヌを交互に指差す。)」
  アース「だから何だって・・・(何かに気付いて、驚いたように。)
      ロ・・・ロベルト・・・」
  ロベルト「一体どうしたんだよ・・・。」
  アース「こ・・・この肖像画とその人・・・」
  マリアンヌ「(微笑んで。)そう・・・その肖像画は私・・・」
  ロベルト「・・・え?(肖像画を見る。)・・・だけど・・・この肖像画は
       100年以上前のだって・・・」
  マリアンヌ「・・・そう・・・。」
  アース「じ・・・じゃあ・・・あんたは・・・」
  アース、ニルス「幽霊!?(尻餅をつく。)」
  ロベルト「幽霊?まさか・・・」
  マリアンヌ「(声を上げて笑う。)・・・人間はみんな、私の正体を
         知ると逃げ出すの・・・。さぁ、あなた達もとっととお帰
         りなさい!!」












      ――――― “ロベルトの旅”2へつづく ―――――













   ※ この一文・・・何となくどこかで聞き覚えがあるような・・・
     気がしませんか・・・?^^;はい、エリオットくんが“白い花”
     を探しに旅立っていましたよね~・・・^_^;
     こう言ったシチュエーション・・・昔から好きだったんでしょう
     ね^^;





 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    (どら余談^^;)

     昨日お話しした通り、この作品は手直しが入ったものが、
    一度舞台公演されています^^;
    ・・・が、書いたまま状態の作品は殆ど誰の目にも触れて
    いませんので、今回敢えてこの“未発表”ページに入れさせ
    て頂きました(^.^)




         (おまけフォト^^;)
         

     録音スタジオの中を写そうと思って撮ったのですが、
    光って何も見えない上に、ガラスに映る私の影・・・^^;
    以前、スタジオの写真を皆様に見て頂いた時に、ボツ
    にした一枚でした~・・・^_^;    



    
    (どら余談2^^;)

    それまでは、ファミリーミュージカルと言っても、演じる
    のは大人の方の劇団に提供していた脚本でしたが、
    この作品は、初めて本物の子ども達が演じる劇団へ
    書いたお話しでした(^.^)
    お稽古場にも、何度かお邪魔し、子ども達とも仲良く
    させてもらっていたのですが、その子ども達の、嘘の
    ない瞳の輝きはとても素敵で、その時の思いが、今の
    私の軸になっていると言っても過言ではありません。

    その時に、子ども達から「どらちゃん♪」と呼んでもらって
    いたのですが、それが今の私の“どら”の由来になって
    います^^;(何故“どらちゃん”と呼ばれるようになった
    か・・・って?単に私が某アニメの主人公が大好きだっ
    たからであって、決して私の風貌がその主人公に似て
    いたからではありませんので、あしからず・・・^^;)

    現在は皆大きくなっているであろう、当時の子ども達は
    どんな道に進んでいるのでしょうか・・・。
    訳あって、本番に見に行くことができなかったのが、
    唯一の心残りです・・・。




    (どら余談3^^;)

    今日は、グーグル版“ワールド”に、“勇気の石”のラスト
   少しの動画を公開致しました(^^)vとっても動きは雑です
   が、音は最近の作品とあまり変わりのない出来栄えとなっ
   ていますので、よければ目を瞑ってお楽しみ下さい^_^;








http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

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     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 


“正義の王子エリオット” ―全7場― 完結編

2012年02月22日 21時44分58秒 | 新作(人形劇用)


  
         
                  エリオット王子




         音楽流れ、エリオット歌う。

         “同情している訳じゃない
         哀れんでいる訳でもない
         そんな思いはこれっぽっちも
         持ち合わせてはいない
         ただみんなの生きる希望に
         歩む道標となり佇もう
         差し出す手に
         遠慮なく掴まればいい
         それは生きる者の権利だから・・・”

  エリオット「ほら!(ボタンをリコの方へ差し出す。)意地張ってな
        いで、受け取れよ。」
 
         リコ、ボタンを受け取る。

  リコ「ありがとう・・・」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

         紗幕前。
         下手より、村長とポリー巡査、話しながら登場。

  ポリー「村長、来週城から村までの警備命令がありました。配給
      金が届くようです。」
  村長「そうか。さて、今回は何を購入するとしようかの。」
  ポリー「そう言えば、隣村で、かの巨匠の名画のオークションが
      来月開催されると聞きましたが・・・。」
  村長「名画か・・・。だが、絵はもう100枚程コレクションしておる
     からの。また何か愉快な情報があれば知らせてくれたまえ。
     」
  ポリー「はい、分かりました。」

         そこへ上手より一人の家臣、登場。

  家臣「ご主人様・・・」
  ポリー「それでは私はこれで・・・(礼をして上手へ去る。)」
  村長「うむ・・・」

    ――――― 第 6 場 ――――― B

         紗幕開く。と、村長の邸宅内。
         豪華な装飾品の数々が、飾られている。

  村長「(ポリーが去るのを見計らい。)如何した?」
  家臣「それがご主人様、光の城からの使いで来たとか言う者が
     参っておりますが・・・如何致しましょう。」
  村長「光の城だと・・・?そんな訳の分からないような奴は追い
     返せ!!」
  家臣「それがもう・・・」
  村長「何?」
  
         そこへ上手よりエリオット登場。

  エリオット「何か会えない理由でもおありですか?」
  村長「何だと!!おまえ・・・。城からの使いだとしても、招き入
     れられる前に人の家の中にズケズケと入って来るとは・・・
     !!」
  エリオット「流石、村長さんのお宅ですね。この調度品の数々は
        素晴らしい。外の村の様子からは、全くこの家の中の
        豪華さは想像だに出来ない程だ。」
  村長「・・・何が言いたいのだ・・・。」
  エリオット「いえ、お気に障ったのなら失礼しました。」
  村長「で・・・、城の使いの者が、私に何の用がおありか・・・。」
  エリオット「・・・少し・・・噂の真意を確かめたいと思いまして・・・」
  村長「真意・・・とは・・・?」
  エリオット「村長であられるのですから、村の様子はご存じでしょ
        うが・・・」
  村長「勿論・・・。それが何か・・・」

         そこへ下手より、一人のメイド登場。
    
  メイド「ご主人様、今日の夕食のシェフが、本日仕入れた食材か
      ら今日の一品の品を選んで欲しいと申しておりますが・・・
      。」
  村長「後にしなさい!!お客様の前だぞ!!」
  メイド「あ・・・はい。(礼をして下手へ去る。)」
  村長「城の使いの者、失礼した。それで・・・何の話しでしたかな
     ・・・。」
  エリオット「・・・村の有力者ともなれば、夕食は色々な食材をよ
        り取り見取りとは・・・羨ましいお話しですね・・・。」
  村長「いや何・・・大したことはないのだ・・・。」
  エリオット「・・・村人は、たった一個の食材すら満足に、手にする
        ことが出来ないと言うのに・・・」
  村長「ん・・・?」
  エリオット「おまえが城からの配給金を、村人達に平等に分配せ
        ず、一人占めにしているのは明白なこと!!」
  村長「な・・・何を可笑しなことを・・・!!何処にそんな証拠が・・・
      」
  エリオット「この後に及んで、まだしらを切るとは・・・お笑いだな。
        (笑う。)」                 
  村長「よくも、この私を侮辱したな!!城からと言えど、ただの
     使い人にそこまで言われる筋合いはないわ!!これ以上
     失礼なことを言うのなら・・・その命の保障はせんぞ!!」
  エリオット「(笑う。)ほう・・・面白い奴だ。この命・・・如何しようと
        言うのだ。」
  村長「誰か・・・誰かーっ!!不逞のやからが家の中に侵入して
     おるぞーっ!!早く捕まえるのだ!!誰かーっ!!誰かお
     らぬかーっ!!」

  声「はっ!!ご主人様、只今!!」

  エリオット「人の手を煩わせねば、一人では何も出来ないのか、
        この似非村長!!」
  村長「何だと・・・!?」
  エリオット「誰の目を欺こうとも、この光の国のエリオット!!僕
        の目は誤魔化せない!!」
  村長「何が“光の国のエリオット”だ!!馬鹿者!!ふざけた名
     のり方を・・・エリオット・・・だと・・・?まさか・・・エリオット王
     子・・・?」

         そこへ下手より、大勢の家臣がなだれ込むように
         登場。

  家臣達「わーっ!!ご主人様ーっ!!只今、お助けに!!」
  村長「わ・・・あっ・・・ちょ・・・ちょっと待て・・・おまえ達・・・」

         村長の制止も聞こえないと言う風に、家臣達
         剣を翳し、エリオットに切り掛かって行く。

  家臣達「わあーっ!!」
  エリオット「面白い!!この僕に敵うとでも思っているのか!!
        いくらでも相手になってやるぞ!!(剣を抜く。)」
  村長「ちょ・・・ちょっとおまえ達・・・待って・・・(オロオロする。)」

         エリオット、切り掛かって来る家臣達を、
         峰打ちで楽しそうに倒して行く。     ※

  家臣達「わあーっ!!」
  エリオット「やあっ!!」
  家臣達「わあーっ!!」
  エリオット「はっ!!」

         そこへ上手より、ポポ、ミミ走り登場。

  ポポ「エリオットーッ!!ワン!!」
  ミミ「エリオット王子ー!!ニャア!!」
  エリオット「ポポ!!ミミ!!」
  ポポ「王子様!!ワン!!(剣を抜いて、エリオットの前へ出る
     。)」
  ミミ「王子様!!ニャア!!(剣を抜いて、ポポに続く。)」
  ポポ「王子!!加勢します、ワン!!」
  ミミ「お助けしますニャア!!」
  エリオット「ポポ、ミミ!!僕一人で大丈夫だ!!2人はそこで
        見ておけ!!」
  ポポ「そんな・・・ワン・・・」
  ミミ「エリオット王子・・・ニャア・・・」

         家臣達、ポポとミミの“王子”と呼ぶ声に
         気付き、驚いたように剣を止め、立ち尽くす。

  家臣達「王子・・・様・・・?」
       「エリオット王子・・・?」
  村長「だから、さっきから私が言っているだろう!!馬鹿者!!
     エリオット王子様!!これは何かの間違い・・・」
  エリオット「何だ・・・もうおしまいか?」
  ミミ「もう・・・王子様ったら・・・ニャア・・・」
  エリオット「折角いい所だったのに・・・」
  ポポ「もう・・・エリオット王子は・・・ワン・・・」  
  エリオット「さぁ、村長!!後は城でゆっくり話しを聞かせてもら
        うとしよう!!」
  村長「ちょ・・・ちょっとお待ちを・・・王子様・・・!!」
  エリオット「ポポ!!ミミ!!村長を城まで連れて行け!!」
  ポポ「はいワン!!」
  ミミ「はいニャア!!」

         ポポ、ミミ、村長を両脇から捕まえる。

  村長「ちょ・・・ちょっと・・・!!王子!!王子ー!!糞う!!ポ
     ーリーの奴を捕まえろーっ!!俺だけ・・・俺一人だけ・・・
     何でだーっ!!」
  家臣達「ご・・・ご主人様ーっ!!」

         村長、ポポとミミに引き摺られるように、上手へ
         去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 7 場 ――――― A

         紗幕前。鐘の音が厳かに鳴り響く。
         上手より王様登場。ゆっくり下手方へ。
         そこへ下手よりじぃ、幾分慌てた様子で
         足早に登場。

  じぃ「王様・・・王様ーっ!!」  
  王様「如何した、じぃ?何か分かったか?」
  じぃ「そ・・・それが・・・エリオット王子様が・・・」
  王様「エリオットが・・・?何かあったのか!?」
  じぃ「はぁ・・・それが・・・王子様がその・・・村々の貧窮の原因を
     招いておった原因を付き止められ、黒幕の輩をひっ捕らえ
     て来られたのです・・・。」
  王様「何?エリオットが・・・?」
  じぃ「はい・・・。」
  王様「そうか・・・。私が手を出すまでもなかったか・・・。(笑う。)」
  じぃ「王様・・・」
  王様「じぃ・・・、エリオットは随分成長したようだな。」
  じぃ「はい、全く・・・」
  王様「それで、じぃ・・・去年までの日照りも漸く落ち着いて来た
     のか、ここ数日のたった僅かの恵の雨のお陰で、少し不作
     からの回復も見込めそうだな。」
  じぃ「はい。またこの国も、潤い溢れる豊かな国に戻ることでしょ
     う。」
  王様「自分のことだけではない、誰かのことを思い、行動するこ
     とは・・・よくよくは回り回って我が身に返るのだ・・・。エリオ
     ットの行動力が、それを教えてくれたな。(笑う。)」
  じぃ「王様・・・」

         2人、話しながら下手へ去る。
         紗幕開く。

    ――――― 第 7 場 ――――― B

         場面は城外の様子。(音楽流れる。)
         中央にエリオット佇み歌う。

         “皆が幸せであること
         それが願いだ
         誰もが自分のことだけを
         考え生きていたならば
         屹度幸せさえも
         自分勝手に振る舞うだろう
         ほんの少しだけ
         自分以外の誰かの為に
         皆が思いを馳せれば
         屹度その輪が広がって
         大きな力になるだろう
         そんな世界が幸せだと
         それが屹度・・・
         皆の願いだから・・・”

  エリオット「まだまだ僕には、勉強しなければいけないことが山
        程ある・・・。この国全てを幸せに導くこと・・・それが僕
        の使命だから・・・。村人達が豊かになれば、それはこ
        の国をも豊にすると言うこと・・・。さぁ、また次の村に
        出掛けよう!!村人達が、何かに困っていないかど
        うかを確かめに!!」       
  

         瞳を輝かせ、遠くを見遣るエリオット。
         音楽盛り上がり。








            ――――― 幕 ―――――
















     さて、只今頭フル回転で、7周年記念公演作品の2本目
    の執筆に取り掛かっております(@_@;)
    時間の期限がある為、今しばらく頭を全部そちらに使いた
    いと思っておりますので、このページの新作は少しだけお
    待ち下さい^_^;
    そちらの作品が落ち着けば、またこのページでも新しい作
    品をご紹介出来るかと思っておりますので、それまでは他
    ページやグーグル版“ワールド”などをご覧下さい
    
    今年発表予定の4作品のうち、すでに仕上がっている3作
    品の出来が、思いの外、素晴らしい(・・・自分で言うなって
    ・・・?^^;)ので、ラストになる現在生みの苦しみを味わっ
    ております新作・・・気合いが入り過ぎているように感じるの
    で、肩の力を抜きつつ・・・書き上げたいと思っていますの
    で、引き続きヨロシクお願い致します♥

 

                               どら。











    ※ ね・・・?何だか“時代劇調”だと思いませんか・・・?
      つい「であえ・・・であえ~!!」と書きたくなりました^^;





 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    (どら余談^^;)

   今日は、グーグル版“ワールド”にティンクルちゃんシリーズ
   の第1段、“花の妖精ティンクルの小さな冒険”の動画を少し
   のせてみました(^^)v
   この作品は彼此5年以上前の作品である為、まだまだ動き、
   台詞、歌、小道具、大道具・・・どれをとっても未熟な出来の
   ものであります(>_<)・・・が、その時に出来うる最高を、
   何時も目指して作っていた当時の最高だと考えていた舞台
   ・・・是非ご覧ください^_^;




   







http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 












“アルベール” ―全14場― 完結編

2012年02月21日 22時07分28秒 | 未発表脚本



  アルベール「(カークを睨み付けたまま。)ロバートは死んだ・・・。
         ロバートは死んだ・・・。あの時、俺の腕の中でロバー
         トは冷たくなったんだ!!おまえは誰だ!!」
  カーク「(溜め息を吐いて。)こりゃあ重症だな・・・。私は何時も、
      ロバートに聞かされていたあなたに会うのを、楽しみにし
      て向こうの署で追っていた山を、仲間に託してまで来たと
      言うのに・・・。がっかりですよ・・・。」
  アルベール「・・・ロバートの弟のカーク・・・」
  カーク「当たりです。何故、署長が態々サンフランシスコの私の
      ところへ来て、あなたの相棒に・・・と頼んで来たのか・・・。
      最初は不思議に思っていたけれど・・・。(頷いて。)分かり
      ましたよ、アルベール・・・。今のあなたは兄の死に、雁字
      搦めにされているようですね。」
  アルベール「・・・おまえはショックを受けなかったのか・・・」
  カーク「勿論ショックでした・・・。私達は小さい頃から、何をする
      にもずっと一緒でしたから・・・。仕事に就いてからです。
      別々に生活するようになったのは・・・。けれど、何時まで
      も悲しんでばかりはいられないのですよ、アルベール・・・
      。兄は死に・・・私達は生きているのですから・・・。」
  アルベール「そんなこと・・・おまえに言われなくても分かってい
          る!!」
  カーク「・・・本当に?」
  アルベール「決まってるだろ!!」
  カーク「じゃあ何故、私を見ないのです・・・。何故頑ななまでに
      パートナーを持とうとしないのですか。私達は単独捜査を
      禁じられている筈です。」
  アルベール「あいつを殺した犯人は・・・俺一人で必ず捕まえて
          みせる!!おまえに手を貸してもらわなくてもな!
          !」
  カーク「我が儘な人ですね。だが、それは無理ですよ。私と飽く
      迄、組む気がないと言うのなら、そう報告するまでです。
      そうすれば、あなたは必然的にこの捜査から下ろされる
      ことになるでしょうからね。」
  アルベール「卑怯だぞ!!」
  カーク「卑怯も何も・・・決まりですから・・・。私をパートナーとし
      て認めますか?観念して。」
  アルベール「(暫く考えて。)・・・分かった・・・。だが、これは飽く
          迄、俺の仕事だ・・・!!俺は俺の遣りたいように遣
          る!!いいな!!」
  カーク「まぁ、いいでしょう。お手並み拝見といきますか・・・。」

         音楽で紗幕閉まる。

    ――――― 第 12 場 ―――――

         紗幕前。
         下手より、ジュリーゆっくり登場。歌う。

         “何故 何時までも
         波間を漂う筏のように・・・
         何故 何時までも
         悲しみに向かい
         未来に目を閉じるの・・・
         美しい花を見て
         美しいと言えた人は
         もう遥か彼方・・・
         どんなに願い望んでも
         二度と戻りはしない・・・
         あなたの進む道のその向こうに
         私の影すら見えないのなら・・・
         私は如何すればいいの・・・
         そんなあなたの側で・・・
         背中だけを見詰め
         途方に暮れる・・・
         涙が乾かない・・・”

         紗幕開く。と、署内。
         受付でシンディ、女性の話しを聞いている。
         暫く話して、一緒に上手へ去る。
         ジュリー、デスクに着いて仕事を始める。
         一時置いて、奥の扉よりボビー、一人の
         少年を連れて、登場。

  ボビー「もう二度とあんなことするんじゃないぞ!」
  少年「・・・はい・・・。」
  ボビー「またスーパーで盗みを働いたら、今度こそ刑務所に打ち
      込まれるんだぞ!」
  少年「(多少、申し訳なさそうに。)はい・・・もう二度としません。」
  ボビー「本当だな?おまえ、前も同じこと言ってたからなぁ・・・。
      何か心配だなぁ・・・。」
  少年「(不貞腐れたように。)もう大丈夫っすよ!」
  ボビー「よし・・・分かった。もう一度だけ信じてやろう!じゃあ、
      今日は帰ってよろしい!」
  少年「ありがとうございました!!(受付横を通って、上手へ走り
     去る。)」
  ボビー「やれやれ・・・」
  ジュリー「(立ち上がって。)もうすっかり一人前ね。(笑う。)」
  ボビー「嫌だなぁ、ジュリーさん!当たり前ですよ!(頭を掻きな
      がら。)けど・・・やっぱり心配だから、ちょっと見て来ます
      ね!!」

         ボビー、少年の後を追って上手へ去る。
         そこへ下手よりアルベール登場、自分の
         デスクへ。机の上に散らかっていた書類
         を整えたりしている。

  ジュリー「アルベール・・・。今まで仮眠室?」
  アルベール「ああ・・・。(ジュリーと目を合わせるのを避けるよう
          に。)」
  ジュリー「最近、ちゃんと家へ帰って眠ってないんじゃない?」
  アルベール「そんなことないさ・・・。」
  ジュリー「・・・少し、根を詰め過ぎよ・・・。(アルベールの肩に手
       を掛ける。)」
  アルベール「(肩を避けて。)よしてくれ!!俺の心配なんかす
          るな!!」
  ジュリー「アルベール・・・何故・・・?・・・何故、ロバートが亡くな
       ってから、私を避けるの・・・?」
  アルベール「・・・避けてなんかないさ・・・。」
  ジュリー「嘘!なら如何して私の目を見て話してくれないの!?
       何故、私の方を向いてくれないの!?」
  アルベール「・・・ロバートは・・・おまえのことを心から愛していた
          んだ・・・。」
  ジュリー「・・・だから・・・私とは・・・もう話せないって言うの・・・?
        」
  アルベール「・・・違う・・・!!ただ・・・!!兎に角・・・暫くそっと
          しておいて欲しいんだ・・・。」
  ジュリー「・・・分かったわ・・・。でも安心して・・・もう、あなたを困
       らせたりしないから・・・。私・・・田舎へ帰って結婚するこ
       とにしたの・・・。」
  アルベール「・・・それは・・・おめでとう・・・。」
  ジュリー「・・・ありがとう・・・。」
  アルベール「・・・それで・・・何時・・・帰るんだ・・・?」
  ジュリー「(微笑んで。)急なんだけどね・・・。明日・・・朝一番の
       列車で・・・。別れが辛くなるし・・・皆には黙って帰るつも
       りだったから・・・。」
  アルベール「・・・送りに行けないけど・・・。」
  ジュリー「・・・分かってる・・・。」
  アルベール「・・・じゃあ・・・。」

         アルベール。最後までジュリーを見ずに、
         上手へ急ぎ足で去る。

  ジュリー「(アルベールの背中を見詰めて、涙を拭う。)・・・さよ
       なら・・・。」

         一時、置いて電話のベルが鳴り響く。
         ジュリー、慌てて受話器を取る。

  ジュリー「はい、捜査課・・・。え・・・?カイト・・・?アルベールな
       ら、今出てるけど・・・。如何したの?もう少し落ち着いて
       話して!!・・・殺し屋に・・・狙われてる・・・?如何言う
       こと・・・?待って!!私が今行くわ!!何処にいるの!
       ?ええ・・・ええ・・・分かった!!直ぐ行くから動いちゃ
       駄目よ!!分かったわね!?」

         ジュリー、受話器を置いて、慌てて机の上の
         紙に何か書き、アルベールのデスクへ置き、
         上着を取って上手へ走り去る。
         そこへ下手よりカーク、今までの話しを聞いて
         いた風に登場、アルベールのデスクに置いて
         あった手紙を見て、慌ててジュリーの後を追う。
         緊迫した音楽で暗転。

    ――――― 第 13 場 ―――――

         フェード・インする。と、舞台は以前、アルベール     
         とカイトが出会った公園。辺りは闇に包まれ、
         電燈だけがやけに明るく、噴水の前で心細そう
         に回りを見回しながら立つカイトを、照らし出して
         いる。その時、木の揺れる音がする。
         カイト、驚いて声も出ない風にその方を見据える。
         と、一組のカップルが楽し気に語らいながら、
         上手方の木の茂みから登場。

  カイト「何だ・・・脅かしやがって・・・(ホッとする。)」

         カップル、話しながら下手へ去る。
         一時置いて、上手よりジュリー、走り登場。
         カイトを認めて近寄る。

  ジュリー「あなたが・・・カイト?」
  カイト「うん・・・。」
  ジュリー「一体如何したの?凄く慌ててたから驚いたわ。」
  カイト「俺、殺し屋に狙われてるんだ!!今は上手く撒いて来た
      けど・・・。お姉さん、助けてくれよ!!」
  ジュリー「アルベールは知ってるのね、訳・・・。」
  カイト「(頷く。)俺が何やってたかは・・・。」
  ジュリー「分かったわ・・・。今は兎に角、急いで署に戻りましょう
       !ここにいたって、また何時その殺し屋が現れるか知れ
       ないし・・・。」

         ジュリー、カイトの肩を抱いて、上手へ歩いて
         行きかける。と、上手より、片手にライフル銃を
         持ったJ、不気味に微笑んでゆっくり登場。

  カイト「(驚いて。)奴だ・・・!!」

         ジュリー、カイトを背後に隠すように。

  J「さっきは上手く撒いてくれましたね・・・。」
  ジュリー「何故、この子を狙うの!?」
  J「お嬢さん・・・。そこにいると危険ですよ。少し離れてもらえま
   せんか?」
  ジュリー「私は警官よ!!そんな物を持ってウロウロしてるなん
       て、あなたを危険人物として逮捕します!!」
  J「(笑って。)面白いお嬢さんだ・・・。じゃあ、まぁ・・・あなたも一
   緒に・・・と言うことで・・・。(ライフルを2人に向けて構える。)」
  カイト「お姉さん・・・(不安気に。)」

         ジュリー、カイトを背後に隠したまま、Jを
         見据える。J、ゆっくり引き金に手を掛ける。
         その時、上手方の木の間から、カーク飛び
         出して、カイトを突き飛ばし、ジュリーを抱き
         守る。と、数発の銃声が辺りに響き渡り、
         J、呻き声を上げて転がる。
         カーク、腕を押さえて膝をつく。

  ジュリー「カーク!?」

         そこへアルベール、銃を片手に走り登場。
         数人の警官、アルベールに続いて登場、
         Jを捕まえる。

  アルベール「(カークに駆け寄り。)カーク!!」
  カーク「(微笑んで。)・・・2人して・・・そんな顔しなくても・・・大
      丈夫ですよ・・・。腕を掠めただけです・・・。それよりジュリ
      ー?」
  ジュリー「私は大丈夫・・・。ありがとう・・・。(涙が溢れる。)よか
       った・・・同じことが起こらなくて・・・。(カークに抱き寄る。
       )」
  
         カーク、微笑んでジュリーの背を撫でる。

  アルベール「(ホッとして。警官に向かって。)そいつを連行しろ
          !!」
  警官「はい!!」
  アルベール「これから、じっくりウィリアムスのことを話させてや
          るからな!!」
  J「(痛みに顔を歪めながら。)畜生!!」

         J、警官に両側から掴まれ、上手へ去る。

  アルベール「(カイトに向いて。)大丈夫か?」
  カイト「・・・(頷く。)」
  アルベール「そうか・・・。」
  カイト「(立ち上がって、アルベールに抱き縋り泣く。)兄貴!!」
  アルベール「(微笑んで。)馬鹿・・・。」
  ジュリー「(一時置いて、カイトが落ち着くのを待って。)じゃあ・・・
       署に戻りましょう・・・。(カイトの肩を抱く。)」
  カイト「(頷く。)」
  ジュリー「(アルベールを見詰めて微笑む。)ありがとう・・・。」

         ジュリー、カイトを連れて上手へ去る。
         アルベール、2人に続こうとする。

  カーク「(腕を押さえたまま。)アルベール!」
  アルベール「(振り返り。)ん・・・?」

         2人残して、紗幕閉まる。

  カーク「ジュリーをこのまま黙って、田舎へ帰していいんですか
      ?」
  アルベール「え・・・?」
  カーク「悪いと思いましたが、署内であなたとジュリーの話しを
      聞かせてもらいました・・・。」
  アルベール「・・・そうか・・・。」
  カーク「あなたは死んだ兄に義理立てして、本当に大切な者を
      手放してしまうのですか!」
  アルベール「(作り笑いをして。)・・・何言ってるんだ・・・」
  カーク「兄はあなたの気持ちに気付いていました・・・。あなたの
      ジュリーに対する思いにね。そうして先手を打ったのです。
      あなたに自分の方が先にジュリーのことが好きだと告白
      することで、あなたが彼女に手出しできなくなることを考
      えて・・・。」
  アルベール「・・・嘘だ・・・。」
  カーク「本当です・・・。兄はジュリーに振られてたんですよ・・・。
      告白する前から、ジュリーが誰を愛しているのかも気付い
      ていたのです。それでも敢えて、君が好きだと告白した・・
      ・。兄は2人がお互いに愛し合っていることを知っていな
      がら、あなたに易々とジュリーを渡してしまうのは、ちょっ
      とばかり癪に障るからと、あなたにあんなことをしたのは
      少し卑怯だったかな・・・と、後悔していました・・・。」
  アルベール「愛し・・・合う・・・?」
  カーク「(頷く。)だから、最後に屹度兄は言った筈です、“彼女
      を頼む。”と・・・。違いますか?」
  アルベール「何故・・・分かる・・・。」
  カーク「私も兄と同じ立場なら、同じことを言うからです・・・。そし
      てそれは、心から本当にそう願って言った言葉・・・。兄は
      ジュリーの幸せを・・・命が尽きる・・・その時まで願ってい
      たのです。そして彼女を幸せに出来るのは、あなた以外
      にいないことを知ってて、あなたに託した・・・。兄の願いを
      受け取って下さい・・・。」

         アルベール、スポットに浮かび上がり歌う。

         “今・・・やっと分かったことがる・・・
         今まで心の奥に秘めていたことが・・・
         ずっと押し殺してきた自分の気持ち・・・
         一生忘れ去ろうとしていたこと・・・
         今やっと弾け散る・・・
         おまえが好きだと!!
         この胸に抱き締めたいと!!
         死ぬ程おまえが愛しいと!!

         何をずっと躊躇っていたのか・・・
         如何して本当の気持ちを
         隠し続けていたのか・・・
         決して知られてはいけないと・・・
         自分の思いを胸の深くに押し鎮め・・・
         甘い香りに心が掻き毟られる・・・
         もう隠すことはない・・・
         おまえが好きだと!!
         この胸に強く強く抱き締めたいと!!
         死ぬまでおまえを愛し抜くと!!”

         遠くを力強く見遣るアルベール。フェード・アウト。

    ――――― 第 14 場 ―――――

         フェード・インする。と、舞台は辺りに朝靄が
         立ち込める駅(ステーション)の風景。
         静かな列車の音。
         舞台には数人の旅仕度の人。其々の待ち
         時間を過ごしている。
         下手よりボストンバックを持ったジュリー、
         ゆっくり登場。呟くように歌う。

         “さよなら・・・私の町・・・
         さよなら・・・私の夢・・・
         さよなら・・・愛しい人・・・”

         ジュリー、腕時計を見て、名残惜しそうに
         回りを見回し、ゆっくり舞台奥方のホーム
         入口へ進む。待っていた人々もホームへ。
         その時、遠くからジュリーの名を呼ぶアルベ
         ールの声が微かに響く。ジュリー、不思議
         そうに回りを見回すが、誰もいないのを確認
         して、首を傾げながら、再びホームの方へ
         歩きかけた時、今度ははっきりとアルベール
         の声。

  アルベールの声「ジュリー!!行くな!!(叫ぶ。)」

  ジュリー「・・・アルベール・・・?(振り返って。)」

         アルベール走り登場。

  アルベール「ジュリー!!(ジュリーを認め走り寄る。)」
  ジュリー「アルベール・・・。」
  アルベール「(息を切らせて。)行くな!!おまえを愛している!
          !」
  ジュリー「・・・嘘・・・」
  アルベール「嘘なものか!!今までこの気持ちをずっと押し殺
          してきた・・・。ロバートに心の何処かで済まないと
          感じていたからだ。だが、あいつが最後に言った言
          葉の意味が、今やっと分かったんだ・・・。さっき、ロ
          バートに会って来たよ・・・。そして、おまえのことを
          聞いて来た・・・。」
  ジュリー「・・・聞いてきた・・・?」
  アルベール「ああ・・・。(微笑む。)本当に俺が貰っていいんだな
          ・・・って・・・。あいつ・・・何時ものように黙って微笑
          んでいたよ・・・俺の心の中で・・・。だからこれから
          は二人で・・・。」
  ジュリー「私が・・・どんな気持ちであなたを見てたと思ってるの
       ・・・?私が・・・どんなに・・・あなたのこと・・・愛してたと
       思ってるの・・・?(涙声になる。)私が・・・どんなに・・・
       アルベール!!(ボストンバックを放り出して抱きつく。)
       」
  アルベール「(ジュリーを力強く抱き締める。)ごめん・・・。もう二
          度とそんな思いはさせない・・・。もう二度と・・・離さ
          ない・・・!!」

         アルベール、ジュリーを優しく見詰め口付ける。
         その時、列車が出発を知らす鐘の音が鳴り響く。
         アルベール、ジュリー、チラッとその方に目を
         遣り、顔を見合わせ微笑む。
         音楽盛り上がる。
         アルベール、ジュリーの手を取り嬉しそうに
         歌う。舞台は朝陽が昇りゆくように、段々と
         光輝き、スモーク流れる。

         “今・・・今日から・・・
         新たに始まる・・・
         昨日までと同じようで
         全く違う一日が・・・
         回り道したけれど
         辿り着いたそこには
         何時もただ微笑んで・・・
         待つ君がいた・・・
         その時から始まる
         二人の未来を・・・
         輝き照らす者に守られて・・・
         共に歩こう・・・”

         アルベール、微笑んでボストンバックを拾い
         ジュリーの肩を抱いて、2人幸せそうに彼方
         を見遣る。


   



           ――――― 幕 ―――――












   さて、この辺で、次回掲載作品のご紹介をしておきたいと
  思います(^.^)
  次回は・・・色々と選びながら、とっても迷ったのですが・・・
  以前、ある劇団に提供し、公演された作品の原作(公演され
  た時には、手直しが沢山入り・・・手直しも私なので、私が書
  いた作品には違いないのですが、私の“心”は入っていない
  ものなので・・・敢えて、原作と呼ばせて頂きます^^;)を、
  ご覧頂こうかと思っています(^^)v

  それでは次回“ロベルトの旅”・・・どうぞお楽しみに♥


    



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    (どら余談^^;)

    今日は、グーグル版“ワールド”に、“ルルゥの一番大切な
    お友達”の一部動画を公開致しました(^^)v
    以前、お話ししたお化けを動かしている途中に、起こった
    ハプニング場面ですので、焦り具合が少しご覧頂けるの
    ではないかと・・・^_^;
    あの時は、あれだけで「腕パンパン・・・」と思っていました
    が、現在のハードな腕具合から考えると・・・全く何てこと
    ない場面だなぁ・・・と^^;

    また、お楽しみ下さい♥
    


    (どら余談2^^;)

    新作ほぼ完成致しました(^^)v
    後、曲決めを5、6曲・・・残すのみ・・・と、言ったところな
    のですが、毎回お話ししているように、この曲決めが、
    新作を仕上げる上で、一番時間の掛かる、とっても苦労   
    する部分なのです・・・^_^;
    よってまだ気は抜けないのですが、何とか明日中には
    仕上げてしまう予定です♥



    2012年2月21日(火)

    新作仕上がりました♥
    ラストの曲がとても素敵で、またもや泣きながら書いた
    場面・・・記念公演作品なので、まだまだ皆様にはお聞き
    頂けないですが、歌詞だけでもご覧下さい^^;
  
        “みんなが幸せになることができるなら
        手をつなぎ前を向いて歩こうよ
        生きる仲間だよ・・・”

    今回、“J”の作品もそうですが、(上記の作品の“J”とは
    なんら関係ございませんので、あしからず・・・^^;)
    “みんながつながっているんだよ”・・・と言うことをテーマ
    として書き上げました(^^)

    皆様に読んで頂くのは、随分と先になりますが・・・楽しみ
    にお待ち頂けると嬉しいです♥

   

                                どら。







http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 


“アルベール” ―全14場― 2

2012年02月17日 19時09分30秒 | 未発表脚本


  アルベール「それが、俺は絶対に専務のウィリアムスが、裏で
          操ってると思って確信持ってるんだが、中々尻尾を
          出さない野郎でさ・・・。ちょっと捜査の方法を変え
          ようかと思ってるところなんだ。」
  マシュー「そうか・・・。そりゃあ大物の尻尾を掴むには、時間も
        かかるだろうさ。まぁ、気長に待ってみることだな。焦り
        は禁物だぞ。」
  アルベール「分かってるよ。」

         その時、奥よりヘレンの声。

  ヘレンの声「マスター!電話!!」
  マシュー「OK!!今、行く。(立ち上がってカイトの肩に手を掛
        ける。)まぁ、この少年のことは、心配しなくていいから
        な。」
  アルベール「ありがとう!」

         マシュー、奥へ去る。

  アルベール「(コーヒーを一気に飲み干して。)さぁて、俺もそろ
          そろ仕事に戻るかな。(立ち上がる。)じゃあ、しっ
          かりやれよ。また時々見に寄るからさ。(カイトの頭
          に手を置いて、行きかける。)」
  カイト「(立ち上がって。)・・・兄貴!」
  アルベール「(振り返って。)おっ?“糞親父”から“兄貴”に若返
          ったな。(笑う。)」
  カイト「冗談言うんじゃねぇよ!!」
  アルベール「(微笑んで。)如何した?一人で心細いのか?」
  カイト「違うよ!!あの・・・あのさ・・・」
  アルベール「何だよ?」
  カイト「(下を向いて、少し躊躇うように。)俺・・・俺さ・・・兄貴に
      嘘を吐いてたんだ・・・。」
  アルベール「・・・嘘・・・?」
  カイト「俺・・・実は、初めてあんなことやったんじゃないんだ・・・。
      あれは・・・俺の仕事なんだ・・・。」
  アルベール「(微笑んで近寄る。)分かってたよ・・・。」
  カイト「・・・え・・・?」
  アルベール「俺は刑事だぜ?おまえみたいな餓鬼の言葉に、い
          ちいち騙されてたんじゃ、この仕事は勤まんないん
          だよ。」
  カイト「俺・・・兄貴がさっき話してた“NYインターナショナル”の
      裏組織で雇われてるんだ・・・。」
  アルベール「・・・何だって・・・?」
  カイト「けど・・・俺一番下っぱの捌き屋で、上のことはよく分かん
      ないけど・・・兄貴が目を付けてた専務が、闇ボスなのは
      間違いないぜ!!俺・・・見たことがあるんだ。何時もみた
      いに、品物と金を引き替えに行った時、あいつが麻薬の
      一杯詰まったケースを持って行くとこ!!・・・こんなこと喋
      っちまって・・・俺・・・刑務所行きだな・・・。」
  アルベール「よく教えてくれたな。おまえのことは心配するな。俺
          が上手くやるから・・・。これであいつは間違いなく、
          俺の目の付けた通りの男だったと分かった訳だ・・・
          。必ず尻尾を掴んでやる!!」

         アルベール残して、音楽で紗幕閉まる。

    ――――― 第 7 場 ――――― A

         アルベール遠くを見詰め、力強く歌う。

         “俺が目を付けた獲物は
         誰が何と言おうとも
         必ずこの手に入れる!
         確信を持って追い続けた
         この何ヶ月か・・・
         間違いを恐れ
         足踏みしたこともあったけど
         今は真実に成り得た!!”

         そこへロバート、アルベールを認め
         近寄る。

  ロバート「アルベール!!」
  アルベール「(ロバートを認め。)ロバート・・・」
  ロバート「(怒ったように。)何故ジュリーを使う!?何故ジュリー
        を態々あんな危険なことに巻き込むんだ!!何故、彼
        女を使って、NYインターナショナルに脅迫電話を掛け
        させるような真似・・・!!」
  アルベール「・・・危険なのは百も承知だ!!だが、女相手の方
          が、あいつらも油断して尻尾を掴みやすいんだ!!
          」
  ロバート「だがもしものことがあってからじゃ遅いんだぞ!!ア
       ルベール!!」
  アルベール「心配するな!!おまえの愛するジュリーは、俺が
         命を賭けて必ず守ってみせる!!だから、あいつに
         もしものことがあったらなんて考えると、俺が許さな
         いぜ!!」
  ロバート「・・・アルベール・・・」
  アルベール「おまえと同様、俺にとってもあいつは大切な・・・仲
          間だからな・・・。」
  ロバート「・・・おまえ・・・。分かった・・・おまえを信じるよ・・・。俺
        もいるんだ・・・2人で彼女を必ず守ろう・・・!!」
  アルベール「ああ!!」

    ――――― 第 7 場 ――――― B

         2人、上手方へ寄る。紗幕開く。と、夜の公園。
         中央に回りを気にしながら、佇むジュリー。
         アルベール、ロバート、上手方にあった木の
         後ろに回り込んで、ジュリーを見守る。
         2人、手には銃を握る。
         一時置いて上手奥より、サングラスを掛け帽子
         を深く被った一人の男、アタッシュケースを持って
         登場。ジュリーに近付き、黙ってジュリーの前を
         通り過ぎる時、そのケースをジュリーの足元へ
         置いて、下手へ去る。

  アルベール「(慌てて飛び出し、男の後を追う。)畜生!!」
  ロバート「アルベール!!」

         ロバート、アルベールの方を気にしながらも、
         銃を仕舞い、ゆっくりジュリーの側へ行こうと
         した時、下手奥の木の陰より、黒いスーツに
         サングラス姿の殺し屋(J。)が、ライフルを
         ジュリーに向けているのに気付き、驚いて
         ジュリーに駆け寄り抱き寄せ、Jから守る為に
         自分が銃の楯になる。その時、ライフル銃の
         発射音が辺りに響き渡り、ロバートに命中する。
         一瞬の辺りの静寂・・・。
         ジュリーの悲鳴。逃げ去るJ。
         アルベール、その音に驚いて駆け戻る。
         ロバート、ゆっくりと崩れ落ちる。呆然とする
         ジュリー。

  アルベール「ジュリー!!(倒れているロバートに気付いて。)
          ・・・ロバート・・・?(ゆっくりとロバートに近寄りなが
          ら。)ロバート・・・!!(駆け寄り抱き起こす。)ロバ
          ート!!しっかりしろ!!ロバート!!」
  ロバート「・・・ドジを・・・した・・・(微笑む。)・・・ジュリーは・・・?」
  ジュリー「(涙声で。)私なら大丈夫よ!!」
  アルベール「ロバート!!(回りを見回して。)誰か!!」
  ロバート「・・・ジュリーが無事で・・・よかった・・・(溜め息を吐く。)
        ・・・ジュリーを・・・頼んだぞ・・・」
  アルベール「・・・何言ってんだ!!(涙が溢れる。)」
  ロバート「アルベ・・・ル・・・俺は・・・おまえと・・・組めて・・・幸せ
        ・・・(亡くなる。)」

         ジュリー、ロバートに縋って泣き叫ぶ。

  アルベール「・・・ロバート・・・ロバート・・・目を覚ませよ・・・。何で
          おまえなんだ・・・。何で俺じゃなくておまえなんだ!
          !ロバート!!(叫ぶ。)」

         音楽でフェード・アウト。紗幕閉まる。         

    ――――― 第 8 場 ――――― 
    
         紗幕前。
         下手スポットにJ浮かび上がる。
         (上半身、フェード・インする。)

  J「如何やらこれは、警察の罠だったようです。」
  
  ウィリアムスの声「・・・罠・・・?如何言うことだ。」

  J「はい・・・。専務のところへ脅迫電話を掛けて来た女・・・彼女
   は警察官です。それで我々を・・・いや、あなた自身を誘き寄
   せるつもりだったのでしょう・・・。」

  ウィリアムスの声「・・・何処から奴らに情報が漏れた?」

  J「今のところはよく分かりませんが・・・。もう少し探ってみます。」

  ウィリアムスの声「誰であれ・・・もし我々の仲間に、裏切り者が
             いるとすれば・・・私の判断を待つまでもない。
             J、おまえが決め、即刻抹殺してしまうのだ。い
             いな・・・?」

  J「・・・分かりました。誰であれ・・・」

         J、フェード・アウト。
         上手スポットにアルベールとジュリー、
         浮かび上がる。

  アルベール「・・・俺のせいだ・・・。俺があの時、おまえの側から
          離れた為に・・・ロバートは・・・(遣り切れないように
          。)」
  ジュリー「アルベール・・・(アルベールの肩に手を掛ける。)」
  アルベール「あれ程、俺がおまえを守ると言っておきながら・・・
          何故、俺はあの時!!」
  ジュリー「あなたのせいじゃないわ・・・。」
  アルベール「(思わずジュリーを見据える。)じゃあ何故だ!!
          何故あいつは死んだ!?」
  ジュリー「・・・ロバートが亡くなって、私も悲しいわ・・・。けど、そ
       の死を誰かのせいにして、その誰かを責めるなんて・・・
       。そんな風に考えるのは、もっと悲しいわ!!」
  アルベール「だが・・・あれは完全に俺の過失だ・・・。俺がジュリ
          ーを守りきれなかった・・・。」
  ジュリー「そんな考え、あなたらしくない・・・。そんな思いに雁字
       搦めになってるあなたを見たら、ロバートも屹度悲しむ
       わ!!」

         ジュリー、悲しみを隠しながら歌う。

         “何故そんな風に
         自分を責めるの・・・
         何故そんな風に
         自分のせいだと・・・
         誰かが責任を背負っても
         彼は喜ばない・・・
         屹度・・・
         彼方から悲しむだけ!!”

  アルベール「・・・もう・・・俺のことは、放っといてくれ・・・。」
  ジュリー「アルベール・・・」
  アルベール「・・・何としても・・・ロバートを殺した犯人を・・・俺は
          この手で必ず捕まえてみせる!!」
  
         アルベール、固い決意に遠くを見遣る。
         側でジュリー、不安気にアルベールを
         見詰める。音楽でフェード・アウト。

    ――――― 第 9 場 ―――――

         紗幕開く。と、署内。
         何となく、中の様子はしんみりとしている。

  シンディ「何となく淋しいわね・・・。」
  ボビー「ああ・・・。ロバートさんは、外に出てることが多くて、あま
      りここにはいなかったから、風景自体は以前と変わりない
      んだけど・・・。(溜め息を吐く。)」

         そこへ花の入った花瓶を抱えたジュリー、
         上手より登場。

  ジュリー「おはよう!」
  シンディ「おはようございます!」
  ボビー「おはようございます!(花を見て。)ロバートさんにです
       か?」
  ジュリー「ええ・・・。」
  シンディ「綺麗なお花・・・。」
  ジュリー「彼、この花好きだったから・・・。この花だけじゃなくて、
       全部の草花を愛する人だったわね・・・。そのことで、よ
       くアルベールと言い合いしてたっけ。(笑う。)アルベール
       は見ての通り、あんなでしょ?“花なんか腹の足しにな
       るか!”ってね・・・。もう・・・言い合う相手、いなくなっちゃ
       ったのね・・・。(淋しそうに。)」
  シンディ「ジュリーさん・・・。」

         シンディ、ボビー、顔を見合わせる。
         ジュリー、ロバートのデスクの上に、手に
         持っていた花瓶を置く。そこへ上手より
         ミセス・バーバラ、曲がった腰に手を当て、
         杖を突きながらゆっくり登場。
         受付カウンターから中を覗いて。

  バーバラ「お巡りさん!お巡りさん!(手招きする。)」
  ジュリー「あら、お婆さん・・・。(カウンターの方へ。)」
  バーバラ「私のアレックスは、見つかりましたでしょうか・・・?」
  ジュリー「それがね、お婆さん。よくよくは気を付けて歩いてみる
       んだけど・・・。」
  バーバラ「一体、何時になったら見つけて貰えるのやら・・・。私
        ゃ、首を長ーくして待っているのに・・・。」
  ボビー「(幾分控え目な声で。)普通、警察で迷子犬の捜索なん
      か引き受けないんだぞ!それをジュリーさんは優しいか
      ら・・・。」
  シンディ「ボビー!」
  ジュリー「ごめんなさい。本当は直ぐにも見つけてあげたいんだ
       けど・・・。」
  バーバラ「この間の、鳥のお巡りさんに頼んで下さいな!あの人
        は直ぐにピーコを捜して、連れて来てくれたんですよ。
        今回も屹度、見つけてくれるに違いない!どうかあの
        人に!」
  ジュリー「分かったわ、お婆さん。彼によく頼んでみるから、そん
       なに心配しないで。」
  バーバラ「本当に頼みましたよ・・・。本当に・・・。」
  ジュリー「はい。」

         バーバラ、再びゆっくり上手へ去る。
         ボビー、シンディ、ジュリーの側へ。

  ボビー「何だい、あのお婆さんの言い方。あれじゃあ丸でこっち
      が、手を抜いて何もしてないみたいじゃないか。」
  ジュリー「仕方ないわ・・・。暫く、ロバートのことでバタバタしてた
       のも事実だし・・・。」
  ボビー「けど・・・。」
  シンディ「ジュリーさんが一番気に止めてくれてるのも知らない
       で。」
  ジュリー「ううん。一番気に掛けてくれてるのは、あのお婆さんの
       言う通り、アルベールよ。今はロバート殺しの犯人のこ
       とで、それどころではないけど。それまでは捜査の振り
       して、犬捜ししてたもの。」
  シンディ「へぇ・・・知らなかった・・・。」
  ボビー「よく見てるんだなぁ・・・。」

         その時、上手よりカーク、回りを見回しながら
         登場。

  ジュリー「(カークを認め。)・・・ロバート・・・(呆然と。)」
  ボビー、シンディ其々「(ジュリーの声に、その方を見て。)ロバ
                ートさん!!」
  カーク「まただ。署の入口を入って、10人に会えば10人共が
      私の顔を見て、同じ言葉を繰り返す“ロバート”とね・・・。」
  ジュリー「・・・あの・・・あなたは・・・?」
  カーク「今日から捜査課に配属されたカーク・・・ジョンソンです。
      」
  ジュリー「・・・ジョンソン・・・?じゃあ、もしかしてロバートの・・・」
  カーク「イエス。彼は私の双子の兄でした。君は・・・ジュリーだ
      ね?」
  ジュリー「・・・ええ・・・。」
  カーク「一目見て分かったよ。ロバートがよく君の話しをしていた
      から・・・。」
  ジュリー「ロバートが・・・。」
  カーク「余りにしょっちゅう聞かされていたもので、私まで一度も
      会ったことのない君を、以前から知っているような気がし
      てた程ね。それと・・・君と同じくらい、名前が出ていたの
      がアルベール・・・。“目を離したら何を仕出かすか分から
      ない”とか言いながら、何時も楽しそうに話していた・・・。
      ・・・で・・・そのアルベールは?(回りを見回す。)」
  ジュリー「捜査に出てるんです。最近は署に立ち寄る時間も惜し
       いくらい、ロバート殺しの犯人を捕まえることで、頭が一
       杯みたいで・・・。」
  カーク「・・・成る程ね・・・。今の彼は、ロバートの話しを聞いて、
      思い描いて来たアルベールとは、少しばかり違うようだ・・・
      。」

         音楽で暗転。紗幕閉まる。

    ――――― 第 10 場 ―――――

         紗幕前。人々の雑踏。車の通行音の中、
         下手より何かに追われているように、後ろ
         を気にしながら、買い物袋を持ったカイト、
         足早に登場。
         少し置いて、黒スーツに黒サングラス姿の
         J、カイトをつけているように登場。
         カイト、何か思い立ったように立ち止まり、
         意を決してスタスタとJの側へ近寄る。

  カイト「よお、おっさん!!さっきからずっと俺のことつけてやが
      るが何か用か!!」
  J「(ニヤリとして、サングラスを外す。)・・・ちょっと・・・ね・・・」
  カイト「ちょっとって何だよ!!ちょっとのことで、俺に付き纏わ
      ないで欲しいね!!」
  J「君は・・・近頃、仕事は如何したんだ?」
  カイト「仕事・・・?俺はちゃんとカフェレストで洗い場・・・」
  J「へぇ・・・新しい仕事を見つけたんだ・・・。」
  カイト「・・・おまえ・・・誰だよ!!何でそんなことを聞く!!」
  J「(サングラスを掛けて微笑む。)じゃあな、坊主!(上手へ去
   る。)」
  カイト「おい!!待てよ!!」

         紗幕開く。と、カフェ。
         数人の客、其々座っている。本を読む者。
         書き物をしている者など。

  カイト「・・・一体・・・誰なんだ・・・」

         ヘレン、店の奥より飲み物を運び登場。
         客の前へ。

  ヘレン「(カイトに気付いて。)カイト!買い出しご苦労様!如何
      したの?そんなところで呆っとしてないで、こっちへ来て
      座って休んだら?」
  カイト「あ・・・うん・・・(カイト、言われるまま椅子に腰を下ろす。)
      」

         店の奥よりマシュー登場。

  ヘレン「何か飲み物、入れて来てあげるわね。(ヘレン、奥へ去
      る。)」
  マシュー「やぁ、ご苦労だったね。(カイトの様子に気付いて。)
        如何した?何かあったのかい?」
  カイト「(首を振る。)」
  マシュー「本当に?」
  カイト「うん・・・。久しぶりに遠くまで買い物に出たんで、疲れた
      だけさ・・・。」
  マシュー「ならいいけど。」
  カイト「・・・なぁ、親父・・・」
  マシュー「・・・ん?」
  カイト「・・・兄貴が前言ってた・・・俺を見てると、昔の自分を思い
      出すって・・・」
  マシュー「ああ・・・。あいつも今は刑事なんて仕事やってるけど、
        昔は相当悪いことをしてたからなぁ・・・。要領がいい奴
        だから、それこそ警察のお世話にだけはならなかった
        がね。あいつも丁度、おまえくらいの時、この店で働い
        てたんだぜ。」
  カイト「え・・・?」

         ヘレン、飲み物を持って登場、カイトの前へ。

  ヘレン「はい。」
  カイト「ありがとう。」

         ヘレン、空いている椅子に座る。

  マシュー「あの頃丁度、あいつもおまえと同じで、施設にいたん
        だ。それで余りに先生達の手に負えないってんで、追
        い出されたんだな。」
  カイト「俺は自分から飛び出したんだぜ!!追い出されたんじゃ
      なくって!!」
  マシュー「分かってるよ。」
  ヘレン「へぇ・・・そうだったの?私はアルベールと同じだと思って
      たわぁ。」
  カイト「失礼な奴だな!!俺を兄貴と同じに考えるなよ!!」
  マシュー「(微笑んでカイトを見る。)少しは元気になったみたい
        だな。」
  カイト「・・・うん・・・。実はさっき、帰り道で何か変な奴に出会って
      さ・・・。」
  マシュー「変な奴・・・?」
  カイト「(頷く。)誰だか全然分かんないんだけど、矢鱈と恐ろしい
      感じが、胸ン中に溢れ出してくるみたいな・・・。ちょっと嫌
      な気分だったんだ。」
  マシュー「そうか。」
  カイト「けど、もう平気だよ。兄貴の話し聞けて、元気になったか
      ら。(笑う。)・・・兄貴なら俺のこと、分かってくれるって・・・。
      」
  マシュー「そうだな。まぁ、もう少し休んでから、奥を手伝っておく
        れ。」
  カイト「了解!」
        
          マシュー、ヘレン店の奥へ去る。

  カイト「(2人が去るのを見計らって、立ち上がる。)だけど・・・何
      だろう・・・。一人になるとやっぱり湧き上がる、この不安な
      気持ちは・・・」

         カイト残して、紗幕閉まる。
         何か怯えるように、不安気に歌う。

         “何故だか分からないけど
         背後から忍び寄る黒い影に
         訳もなく怯えるように・・・
         誰かも分からず ただ何時も
         振り向けば不気味に佇む
         奴の影・・・
         怖い・・・怖い・・・
         無性に逃げ出したくなるような
         この不安から逃れたい・・・”

  カイト「・・・(何かに気付いたように。)あいつ・・・見たことがある
      ・・・。あれは・・・専務の部屋を覗いた時・・・(ハッとして。)
      あいつ・・・殺し屋だ!!」

         音楽で暗転。(紗幕開く。)

    ――――― 第 11 場 ―――――

         フェード・インする。と、署内仮眠室。
         何台か置かれたベットの上に、アルベール
         腰を下ろして、今起きたばかりのように、
         気だるそうに頭を抱えている。続いて、横に
         置いてあった靴を履く。(ゆっくり靴紐を結ぶ。)
         その時、入口よりカーク入って来て、ゆっくり
         アルベールの側へ。アルベール、人の気配に
         気付きながらも、靴を履くことに熱中しているよう。

  カーク「君が・・・アルベール刑事かい・・・?」
  アルベール「(下を向いたまま。)・・・何か用か・・・」
  カーク「今日から君と組むよう命令されて、この署に配属になっ
      た・・・」
  アルベール「(カークの言葉を遮るように。)相棒などご免だ・・・
          。」
  カーク「君は随分と、この署内では鉄砲玉で通ってるそうじゃな
      いか。私の方としても、君のような野蛮刑事と組むのは、
      勘弁願いたいのだが、署長の達ての頼みじゃ、仕方ある
      まい・・・。」
  アルベール「(思わず立ち上がり、カークに食って掛かるように。
          )野蛮で悪かっ・・・!!(カークの顔を見て、呆然
         とする。)・・・ロバート・・・」
  カーク「・・・如何した?」
  アルベール「誰だ・・・おまえ・・・!?(カークを見据える。)」
  カーク「ロバートじゃないか、アルベール・・・。(両手を広げ、微
      笑む。)」










       ――――― “アルベール”3へつづく ―――――











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“正義の王子エリオット” ―全7場―

2012年02月11日 21時36分14秒 | 新作(人形劇用)


   〈 主な登場人物 〉

   エリオット  ・・・  光の国の王子。

   リコ  ・・・  村の少年。

   村長  ・・・  いちの村の村長。

   王様  ・・・  エリオットの父。

   じぃ  

   ポポ  ・・・  エリオットの家臣。

   ミミ  ・・・  エリオットの家臣。

   ポーリー巡査  ・・・  いちの村の警察官。

   マーサ  ・・・  リコの妹。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         鐘の音が厳かに鳴り響き、
         幕が開く。

    ――――― 第 1 場 ――――― A

         紗幕前。
         下手より、光の国の王様、じぃ、話しながら
         登場。

  じぃ「王様・・・、悪天候による長年の不作のせいで、益々我が国
     が統治する村々は貧しさを増し、村人達の生活は貧窮を極
     めておりまする・・・。このままでは・・・」
  王様「うむ・・・。だが、今や我々でさえ、日々の暮らしがやっとと
     言う・・・。全ての村に分配する配給金を、捻出するのも儘な
     らなくなっておる・・・。何ともはや・・・如何したものか・・・。」
  じぃ「何とかしなければ、村人達の不満が溢れ出るのも時間の
     問題・・・。そうなれば村の統治も何も、あったものではない
     かと・・・。」
  王様「そうだな・・・。」
  じぃ「ただ・・・」
  王様「ただ・・・?」
  じぃ「はい・・・、その貧窮の裏で・・・何やら不穏な気配がしてお
     るのです・・・。」
  王様「不穏な気配だと・・・?」
  じぃ「はい・・・。」
  王様「分かった、じぃ。家臣達にその辺りのことを探らせるのだ
     。」
  じぃ「はい。」
  王様「但し・・・くれぐれも、目立った動きはしないように、申し伝
     えるのだ。もし、本当に何か良からぬ者が、裏で手を引い
     ているようなことがあるとするなら、探りを入れる気配に気
     付いて、動きを止めるかも知れぬ・・・。」
  じぃ「はい、分かりました王様・・・。」
  王様「だが、先ずは村人達に分け与えるだけの、食料を確保す
     ることが急務であるな。」
  じぃ「・・・はい・・・。」

         2人、話しながら下手へ去る。
         音楽流れ、紗幕開く。

    ――――― 第 1 場 ――――― B

         場面は城内の様子。
         中央、光の国の王子(エリオット)、瞳を輝かせ
         遠くを見遣り立つ。エリオット歌う。
    
         “僕は光の国のエリオット
         みんなの平和と幸せを守り
         未来への道標となる者
         自分の役割に気付いた今
         ただひたすらみんなの為に
         間違いは全て正す

         僕の力でこの世の中を
         変えて行く
         そう誓ったこの心に
         だから歩くんだ一歩ずつ”

  エリオット「(上手、下手を見て。)ポポ!!ミミ!!」

  ポポの声「はい!!エリオット王子ワン!!」
  ミミの声「はい、只今!!ニャア!!」
 
         上手、下手よりエリオットの家臣ポポ、ミミ登場。
         エリオットの横に膝を付き控える。

  ポポ「王子!!如何したんだワン!!」
  エリオット「今から“いちの村”へ行く!!」
  ミミ「え・・・今からニャア?」
  エリオット「そうだ!!いちの村で、何か困ったことがありはしな
        いか、様子を見に行く!!2人共、直ぐに仕度しろ!!
        馬の用意を!!」
  ポポ「はい、ワン!!」
  ミミ「分かりました、ニャア!!」

         ポポ、ミミ、上手下手へ其々走り去る。
         エリオット再び歌う。

         “僕は光の国のエリオット!
         いつも誰かの為になる
         そんな生き方をするんだ
         ただひたすら光を放ち
         みんなが迷うことがないように
         僕はいつでも誰もが
         目指す者でありたい”

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

         紗幕前。
         一人の少年(リコ)、下手より後ろを気にしながら
         走り登場。上手方に立つ一本の木の後ろに隠れ
         るように。

  声「おーい!!待ちやがれー!!この餓鬼ー!!俺の財布、返
    せー!!」

         その時、下手より誰かを捜すように、一人の
         村人、走り登場。回りを見回す。

  村人「くっそう・・・一体何処へ行きやがったんだ、あの餓鬼・・・!
     俺ン家の晩飯代を・・・!!おおーい!!何処に隠れてるん
     だー!!」

         村人、回りを見回しながら、走り去る。
         村人、走り去るのを見計らって、木の後ろ
         に隠れていたリコ、上手方を見ながら出て
         来る。

  リコ「へへーんだ!!・・・チョロイもんさ!(手に持っていた袋の
     中を覗く。)なんでぇ・・・しけてんなぁ・・・。たったこんだけか
     ・・・。こんなんじゃ、パン一切れしか買えねぇじゃないか・・・
     」

         音楽流れ、リコ歌う。

         “何てしけた
         村の奴らの懐・・・
         こんなはした金
         腹の足しにもなりゃしない
         一体いつまで
         こんな貧乏・・・
         いくら働いたって
         ちっとも楽になりゃしない
         だったら俺は働かねぇ!”

         その時、どこからかエリオットの声が聞こえる。

  エリオットの声「おい、そこの子ども・・・!見てたぞ!!」

  リコ「・・・え・・・?(回りを見回す。)誰だよ!!」

         (紗幕開く。と、村の様子。)

    ――――― 第 2 場 ――――― B

         そこへ、上手よりエリオット登場。

  エリオット「泥棒は悪いことだと、学校で習わなかったか・・・?」
  リコ「何だ、おまえ!!」
  エリオット「目上の者には敬語を使えと、学校で教えられなかっ
        たか・・・?(リコの頬を抓る。)」
  リコ「いてててて・・・何しやがんだ、てめえ!!放せ!!放せっ
     てんだろ!!」
  エリオット「放して下さい・・・だろ?」
  リコ「はな・・・放せ・・・いてててて・・・放して下さい・・・放して下
     さい!!」
  エリオット「よし!(手を放す。)」
  リコ「何が“よし”だ!!いってぇ・・・(頬を摩る。)こいつ、とんで
     もねぇ野郎だな・・・。ふん!!」
  エリオット「それより、こんな時間に村の中をフラフラ・・・子どもは
        学校に行って、勉強している時間だろ?」
  リコ「知らねぇよ!俺は学校なんて行ってねぇ!!」
  エリオット「学校に行ってないだって・・・?」
  リコ「それが、どうしたんだよ!おまえに関係ないだろ!」
  エリオット「“おまえ”?」
  リコ「あ・・・いや、あんたには関係ないってんだよ!」
  エリオット「そう言えば・・・(回りを見回す。)」

         いつの間にか、後方数人の子ども達、
         当てもなくウロウロしている。

  エリオット「この村の子ども達は、こんな時間にみんな・・・学校
        に行ってないのか・・・?」
  リコ「この村に、学校なんてないよ!兄ちゃん、知らねぇのか?」
  エリオット「学校がないって・・・如何言うことなんだ・・・?学校建
        設に掛かる費用は、城から出てる筈だろ・・・。」
  リコ「そんなこと知らないさ・・・。ただ俺達は、生まれてから一度
    も、学校なんて行ったことがないってことさ。」
  
         その時、後方にいた子ども達、リコの方へ
         近寄って来る。

  子ども1「おーい、リコ!!如何したんだ?」
  リコ「(子ども達を認め。)よお!」
  子ども2「橋向こうに金持ちそうな大人がいるんだ!今からたか
       りに行くんだけど、リコも行かないか!?」
  エリオット「・・・え?」
  リコ「おう!行く行く!」

         子ども達、下手方へ行きかける。

  エリオット「たかり・・・だって?ちょ・・・ちょっと待て!!(リコの
        腕を掴む。)」
  リコ「何だよ!!」
  エリオット「たかりに行くって如何言うことだよ!?」
  リコ「え・・・?」
  エリオット「たかりが悪いことだと、学校で・・・そうか・・・行ったこ
        とがなかったんだ・・・。」
  リコ「何だよ!放せよ!食費を稼ぎに行くんだ!!」
  子ども1「早くしろよ、リコ!金持ちが行っちまうぜ!」
  エリオット「たかりなんて駄目だ!!」
  リコ「駄目って何だよ!!」
  
         子ども達、コソコソ話す。

  子ども2「行こうぜ!」
  子ども1「ああ。」
  子ども2「俺達、先に行くぜ!」

         子ども達、下手へ走り去る。

  リコ「あ・・・ちょっと待って・・・!!放せよ!!俺ン家だけ、晩飯
    抜きにしろってのかよ!!」
  エリオット「おい!!聞くんだ!!」
  リコ「何だよ!!」
  エリオット「“たかり”と言うのは、強盗と同じで犯罪なんだ!!
        そんなことをしていると、警察に捕まって牢屋に入れら
        れてしまうんだぞ!!」
  リコ「犯罪・・・って・・・大袈裟だなぁ、兄ちゃん。警察も何も・・・こ
    の村のお巡りって、交番から出てこないぜ。だからみんな悪
    いことし放題なんだ!俺もう行くぜ!晩飯、稼がないと!!
    (下手方に手を振り。)おーい、待ってくれよーっ!!」

         リコ、下手へ走り去る。
                      
  エリオット「稼ぐって・・・」

         そこへ上手よりポポ、ミミ何か解せないように
         首を傾げながら登場。

  ポポ「エリオット王子・・・ワン。」
  エリオット「(振り返りポポを認める。)ポポ。しっ!!ここでは“
        王子”はナシだ。」
  ポポ「あ・・・そうかワン。」
  ミミ「エリオット・・・ニャア。」
  エリオット「如何した?」
  ポポ「何だかこの村の様子が・・・ワン・・・」
  エリオット「様子・・・?」
  ミミ「ええニャア。」
  ポポ「村人達みんな、ボロボロの服を着てるワン。」
  ミミ「それに子ども達は平気で盗みを働くし・・・ニャア。」
  エリオット「そうか・・・。ポポ!ミミ!暫くこの村の様子を探ってく
        れ。僕は警察へ行って来る。」
  ポポ「分かったワン!」
  ミミ「OKニャア!」

         ポポ、ミミ上手へ走り去る。
         音楽流れ、エリオット歌う。

         “何かが変だ
         悪を悪とも感じず
         良心を失ったのか・・・
         いつからこんな風に変わってしまった
         誰も気付かぬ間に・・・”

  エリオット「何だか良くない気配がする・・・。どの村にも同じだけ
        、村の運営を賄う公費・・・それに村人達の生活を維持
        する為の配給金が分配されていると言うのに・・・。何
        故この村だけ、こんな風に貧しいんだ・・・。おかしい・・・
        絶対におかしいぞ!!」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         紗幕前。
         一人の警察官(ポリー巡査)上がる。
         その時、声が聞こえる。

  声(エコー)「まだ誰にも気付かれてはいないかね、ポリー巡査
         ・・・。」

  ポリー「はい、まだ大丈夫かと・・・」

  声(エコー)「万が一にも、気付かれそうな気配が見えてくれば、
         直ちに私へ連絡をよこすのだ。いいな?」

  ポリー「はい、勿論です。」

  声(エコー)「それで・・・?そろそろ次の配給金分配の時期であ
         ろう?そろそろ警察当局にも、警備の知らせが入る
         筈だ。そうすれば、直ちに私の方まで・・・(笑う。)」

  ポリー「はい、分かりました村長・・・(“村長”繰り返す。)」

         そこへ上手よりエリオット登場。

  エリオット「こんにちは・・・」
  ポリー「(エリオットをチラッと見る。)」
  エリオット「お巡りさん、僕はたった今、そこで引ったくりを見かけ
        たんですが・・・。」
  ポリー「・・・それで・・・?」
  エリオット「まだ犯人が、その辺をウロウロしているかも知れない
        ・・・。今ならまだ間に合うかも・・・。」
  ポリー「・・・ほう・・・」
  エリオット「捕まえに行かないんですか・・・?」
  ポリー「・・・この私が・・・かね?」
  エリオット「勿論。」
  ポリー「(笑う。)放っとけ、放っとけ。いつものことだ。」
  エリオット「いつもの・・・?」
  ポリー「ああ、そうさ。おまえはこの辺りじゃあ見ない顔だな・・・。
      知らないのなら教えてやろう。この村は、人から物を貰っ
      て皆、生計を立ててるんだ。」
  エリオット「引ったくりは泥棒ですよ?れっきとした犯罪だ。物を
        貰うこととは違う。」
  ポリー「この村で、そんな風に正義感を出してると、エライ目に
      遭うぞ。さぁ、早く行った行った・・・。悪いことは言わない、
      さっさとこの村から出て行け。そして自分の村へ帰ったら
      、決してこの村で見聞きしたことは口外せぬように・・・。」
  エリオット「如何してですか・・・?」
  ポリー「如何して・・・?おまえだって・・・命が惜しいだろ?」
  エリオット「命・・・?偉く物騒な話しだ。(笑う。)」
  ポリー「そう・・・この村は物騒なのさ・・・。見えないつもりだろう
      が・・・そんなキラキラ光るものを身に付けていると、忽ち
      子ども達から狙われるんだぜ。」
  エリオット「・・・あなた・・・本当に警察官・・・?」
  ポリー「勿論!私はこの村のポリー巡査!」
  エリオット「・・・ポリー巡査・・・か・・・」

         ポリー巡査、エリオット下がる。(紗幕開く。)

    ――――― 第 4 場 ――――― A

         場面は城内。
         下手より、光の国の王様とじぃ、話しながら
         登場。

  王様「それでどうだ・・・?何か分かったのか?」
  じぃ「いえ、それがまだ何も・・・。確かに其々の村には、村の運
     営費の配給が半年に一度、間違いなく行われておるようで
     はありますが・・・。」
  王様「そうか・・・。ならば、全ての村人が毎日の食事に事欠くこ
     とはない筈だが・・・。誰かが何処かで、私腹を肥やしてお
     るようなことがない限りは・・・。全ての村人が平等で暮らせ
     るようにと考えて、この配給制度も始めたのだ・・・。」
  じぃ「はい、王様。」
  王様「だが、ここ数年の悪天候による不作のせいで、今や、この
     国全てが危機的状況に陥っている・・・。」
  じぃ「はぁ・・・全くその通りで・・・。」

         その時、上手方よりエリオットの声が聞こえる。

  エリオットの声「父上ーっ!!父上ーっ!!」

  王様「(上手方を見て。)エリオット?」

         上手より、エリオット走り登場。

  エリオット「(王様を認め、駆け寄る。)父上!!」
  王様「エリオット・・・」
  じぃ「エリオット王子様・・・。」
  王様「如何したのだ、そんなに慌てて・・・。」
  エリオット「父上!!今、いちの村から戻ったのですが、何とか
        村人に分配する配給金を、もっと増やすことは出来ま
        せんか!?」
  王様「増やすだと・・・?」
  エリオット「はい!!何故だか分りませんが、村人達の様子は、
        今日明日をも食べる物に困るような状態・・・。このま
        までは、次の配給金の分配まで、持ちそうにないので
        す!!だから、何とか臨時の金を・・・!!」
  じぃ「王子様・・・」
  王様「エリオット・・・今までおまえには黙っていたが・・・」
  エリオット「父上・・・?」
  王様「我が国はもう、これ以上余分なお金はないのだ・・・。」
  エリオット「お金が・・・ない?」
  じぃ「王子様・・・ここ数年の農作物の不作のせいで・・・全く収入
     源がなく・・・配下の村々に配る配給金を、捻出するのがや
     っとなのです・・・。」
  エリオット「じぃ・・・そんな・・・」
  王様「それが今の我が国の・・・真実の状況なのだ・・・。」
  エリオット「父上・・・」

         王様、じぃ下がる。(場面変わる。)

    ――――― 第 4 場 ――――― B

         エリオットの部屋。(上手方に一つのベット。)
         エリオット、ベットの上へゴロンと横になる。

  エリオット「そうだったんだ・・・この国がそんな風に・・・。僕は全
        くそんなことは知らなかった・・・。駄目だな・・・。そう言
        えば・・・ずっと前に出会ったマルコは如何しているん
        だろう・・・。マルコの村も貧しくて・・・僕の剣を盗んで
        売ろうとしてたっけ・・・。(笑う。)今じゃ、この国もあの
        時のマルコの村と・・・売る・・・そうか・・・!!(ベットか
        ら起き上がる。)そうだ!!僕の持っている物を売って
        、金に変えればいいんだ!!そして、その金を皆に
        配ればいいんだ!!剣だけじゃない!!何だって売
        るぞ!!洋服だって・・・靴だって・・・(胸元を見て。)
        このペンダントだって!!この部屋にある物、全部売
        ろう!!」

         音楽流れ、ベットから飛び降りたエリオット、
         歌う。

         “金がないなら作ればいい
         金になるものはいくらでもある
         贅沢なんているものか
         全てを金に代えるんだ
         そしてそれを困ってる人
         皆に配ろう!!”

  エリオット「そうだ!!何なら城を開放して、学校に使おう!!
        こんなに広い場所があるんだ!!僕達には広過ぎる
        から!!」
 
         “金がないなら作ればいい
         金になるものはいくらでもある
         使える場所も沢山あるんだ
         だからみんなで訳合おう!!
         一人占めする必要なんかない
         みんなが一緒に幸せになる為に”

         その時、下手よりポポ、ミミ走り登場。

  ポポ「王子ー!!ワン!!」
  ミミ「エリオット王子様ーっ!!ニャア!!」
  エリオット「ポポ、ミミ!!如何だ、何か分かったか!?」
  ポポ「はいワン!!それが配給金は確かに村の銀行に届けら
     れてるワン!!」
  ミミ「でも、そこから村人達の手には渡ってないニャア!」
  ポポ「何処かで、その金を横取りする奴がいるようだワン!」
  エリオット「そうか・・・。配給金が入るのを先ず知るのは・・・」
  ポポ「城から村までの警備を担当する警官・・・ワン。」
  エリオット「警官・・・。ポポ、ミミ!!僕は今から、もう一度いちの
        村へ行って来る!!」
  ミミ「え・・・?今からニャア!?」
  エリオット「おまえ達2人は、この部屋にある僕の剣や洋服を売
        って、金に代えて来てくれ。」
  ポポ「お金に・・・?ワン・・・」
  エリオット「そうだ!!金だ!!全部売ったって構わない。出来
        るだけ沢山の金貨に代えて来るんだ。いいな!」
  ミミ「・・・え・・・ええ・・・ニャア・・・」
  エリオット「(下手方へ行きかけて。)あ・・・(首にぶら下げていた
        ペンダントを外し、ポポに手渡す。)これも、持って行っ
        てくれ。」
  ポポ「これ・・・これは亡くなったお母上の・・・ワン・・・」
  エリオット「いいんだ。」
  ミミ「でも・・・」
  エリオット「そんなものがなくても、母はここにいるよ・・・。(胸を
        押さえる。)村人達の為になる方が、母も喜ぶ筈だ。」
  ポポ「エリオット・・・」
  エリオット「頼んだぞ!!」

         エリオット、下手へ走り去る。

  エリオット「あ!!エリオット王子ワン!!」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         紗幕前。音楽流れる。
         一人の少女(リコの妹“マーサ”)上手より
         登場。歌う。

         “毎日 毎日食べる物がないの・・・
         お腹が空いても
         満たす物は何もない・・・
         一欠片のパンさえ買えない・・・
         売ってない・・・
         お金もない・・・”

         そこへ下手より、リコ登場。

  リコ「マーサ!」
  マーサ「あ、お兄ちゃん!!(駆け寄ろうとして転ぶ。)あっ!!」
  リコ「マーサ!!」
  マーサ「痛いっ!!えーん!!えーん!!・・・」
  リコ「(マーサに駆け寄り。)大丈夫かい、マーサ!」
  マーサ「お兄ちゃん!!(リコの方へ手を差し出す。)血が出て
       る・・・。えーん・・・えーん・・・」
  リコ「大丈夫・・・これくらいの傷!唾付けときゃ、直ぐに治るさ!」
  マーサ「えーん・・・えーん・・・」

         そこへ下手より、エリオット登場。(紗幕開く。)

    ――――― 第 5 場 ――――― B
  
         場面は村の様子。

  エリオット「(泣いているマーサに気付いて。)如何したんだい?」
  リコ「(エリオットに気付いて。)・・・あ・・・おまえ・・・」
  マーサ「(手を差し出して。)転んじゃったの・・・。えーん・・・えー
       ん・・・」
  エリオット「どれ・・・(マーサの手を取り見る。)ちょっと待って・・・
        いいものがある・・・(ぶら下げていた袋の中をガサゴソ
        探すように。)あ・・・あった、これだ・・・。ほら、見せてご
        覧。(マーサの手にテープを貼ってやる。)さぁ、これで
        もう大丈夫。ね?痛くないだろ?」
  マーサ「・・・うん・・・痛くない・・・。お兄さん、ありがとう!!お兄
       ちゃん見て!!全然痛くないわ!!」
  リコ「・・・よかったな・・・マーサ・・・。」
  マーサ「うん!!」
  エリオット「そうだ・・・君達知らないかな、村長さんの家。」
  リコ「村長・・・?」
  エリオット「ああ。村長さんに少し用があるんだ。」
  リコ「ふうん・・・。じゃあ俺が案内いてやるよ。マーサの傷の手
    当てしてくれた礼だ。」
  エリオット「ありがとう。」
  マーサ「お兄ちゃん・・・お腹空いたね・・・」
  リコ「・・・我慢しな。後で何とかしてやるから・・・。」
  マーサ「・・・うん・・・」   
  エリオット「(2人の話しを聞いていたように。再び袋をガサゴソ
        探す。)君・・・よかったらこれあげるよ。(袋からパンを
        取り出し、マーサへ差し出す。)」
  マーサ「本当!?」
  リコ「え・・・?」
  マーサ「お兄ちゃん!!貰っていい?」
  リコ「え・・・あ・・・うん・・・。ありがとう・・・。」
  エリオット「いいさ、そんなこと。」

         マーサ、パンを嬉しそうに頬張る。

  マーサ「美味しい!!お兄ちゃんもはい!!(パンを半分千切
       って、リコへ差し出す。)」
  リコ「(パンを受け取る。)」
  エリオット「そうだ・・・(服のボタンを一つ取り、リコの手に握らせ
        る。)」
  リコ「何だよ、これ・・・」
  エリオット「売れば、結構な値が付く筈だ。村長の家までの案内
        代だ。受け取っておくれ。」
  リコ「(ボタンを見て。)・・・こんな高そうなの・・・。俺・・・貰えない
     !!(ボタンをエリオットの手に無理矢理持たす。)村長ん
     家は川向こうだ!!この道を真っ直ぐ行きゃ着くよ!!マ
     ーサ!!行くぞ!!」
  マーサ「え・・・うん・・・」
  エリオット「ちょっと待てよ!!これだけあれば一カ月は食べて
        暮らせるだろ?」
  リコ「兄ちゃん!!貧乏人の俺達に金品を恵んでいい気になっ
     て、何様のつもりだい!?」
  エリオット「・・・恵む・・・?」
  リコ「俺達は盗みはしても、物乞いはしない!!恵んでもらって
     も、ちっとも嬉しくないんだ!!」
  エリオット「(笑う。)馬鹿・・・!何、偉そうに言ってるんだ。盗み
        は泥棒・・・れっきとした犯罪だ。そんなことをやってい
        ると、警察に捕まって、牢屋に放り込まれるんだぞ。」
  リコ「・・・牢屋・・・」
  マーサ「お兄ちゃん・・・」
  エリオット「だが物乞いは罪じゃない。持ってる人に恵みを乞う
        ことは罪なことか?そうじゃない。おまえにはおまえの
        生きる権利がある。生きる為に必要な物・・・空気や水
        ・・・家・・・服・・・寒ければ暖を取るものもいる。それら
        は全ての人に、平等に与えられるべき物なんだ。生き
        る為に・・・。だが・・・悲しい話しだが、それらが人々に
        平等に行き渡らない事実があるのが現実だ。だったら
        人の手を介して平等にしていけばいいじゃないか!!
        “恵んで貰う”なんて考えは止めるんだ。今は親切だと
        、黙って受け取ればいい。そして、いつか自分の力で
        生きる権利を全う出来るようになった時、また今のおま
        えのように、権利の不平等に苦しむ者に、今度はおま
        えが平等を与えてやればいいんだ。」
       




      





   ――――― “正義の王子エリオット”2へつづく ―――――














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    (どら余談^^;)

    今日書き上がったばかりの新作です(^^)v
    今回のテーマを、「エリオットくんの世直し」と掲げたので、
    そう言った方向性で書いて行ったところ・・・
    何となく・・・最後の方が、人気の時代劇で、先だってその
    シリーズの最終章を迎えた・・・「ははぁ・・・」と言っ
    たテレビ番組に、何となく似てきたように感じたのですが・・・
    皆様には如何な感想をお持ち頂くことになるのやら・・・^^;
    



    (おまけフォト1^^;)  
    

    “楽しい森の仲間たち”チュンコちゃんが出来上がり
    ました♥頭の上に、黄色いリボンが付いています(^^)v

    子ども曰く・・・“ひよこ”に見えるそうです^_^;
    ま、いっか・・・(^_^;)

  

    (おまけフォト2^^;)
    

    羽根に針金を付けました(^^)v
    普通のお人形では“手”に付けている針金と
    同じ役割です(^^)


    (昨日の練習で、このチュンコちゃんを団員に披露した
    ところ、私に「似てるね~」と・・・^^;丸いイメージが
    そう見えたのかも知れません(^_^;)見た目云々より、
    チュンちゃんの“チュンチュン”煩い部分は・・・確かに
    似てるかも・・・^^;余談でした^_^;)





    (どら余談2^^;)

    録音したての新作を、とりあえず選んだテイクで一本
    につなげてもらい、物語の流れを聞いてみました(^^♪
    ・・・ら、「面白いです~♥」とっても(^.^)
    クリフくん作品の2本目になるのですが、少し落ち着いた
    感のあるクリフ作品に、明るい感じのジュリーちゃん作品
    で、組み合わせ具合も丁度良く・・・^^;
    自分で言うのも変ですが・・・とっても公演が楽しみです
    (^.^)
    



    
    (どら余談3^^;)

    今日は、グーグル版“ワールド”にティンクルちゃんシリーズ
    の第2段、“音の妖精・・・”のラスト動画を投稿いたします♥
    以前、お話ししたことがあると思いますが、真っ黒からキラ
    キラに変わる背景、是非ご覧ください^_^;












http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta