『そして、闇のエネルギーがこの世界に流れ込み、
エヌスメタルの力と共振する者に幻を見せる…
…垣間見るのは、押し寄せる闇の軍勢…
…その到来は近い
目指す先はバルバトスが長年にわたって狙ってきた、
暗き角を持つ神の荷車…
…ウェイン家の息子』
闇の世界からの侵略者を防ぐために動くバットマンと、
それを追うスーパーマンたちジャスティス・リーグ。
その前に現れたのは、それぞれの住む世界を滅ぼした7人のバットマンたち。
世界が暗黒に沈むとき、バットマンの前に現れたのは、夢の王。
ダークマルチバースとの戦いが、始まる。
「プレリュード」に続いて刊行された本作は、
「ダークナイト・メタル」本編全話を収録。
衝撃のスタートから大団円までを楽しむことができます。
今作はこの先のDCユニバースの新展開へと繋げる物語、としての性格もあり
ホークマンにプラスチックマンといったキャラクターがリバース以降初めて登場しているのですが
その中の一人が夢の王・ドリームです。
ニール・ゲイマンによる名作「サンドマン」の邦訳は
全10章のうちの第3章までしかされておらず、
今作に登場しているのは代替わり後のダニエル・ホールでございますが
それでも20年ぶりに邦訳に登場し、ストーリーに絡んでいることに
(途中でDCユニバースとの接点が事実上失われていただけに)
なんというか感慨深いものもございます。
今作からドリームを巡る新たな物語「サンドマン・ユニバース」が始まる…のですが
「サンドマン」完結を踏まえた物語、であることを考えると
邦訳は難しいかな、とは思いますが、「サンドマン」完結までの完訳ともども
「いつかは」と期待していきたいと思います。
本筋に戻して。
前巻紹介のときも触れましたが、今作は90年代のアメコミ…
イメージコミックスが設立され、コミックシーン全体が熱に浮かされたように
バイオレンスと派手さを競っていた「ダークエイジ」を想起させるような
そんな内容やキャラクターデザインとなっております。
ダークマルチバースからやってきた7体の悪のバットマン、
特にそのリーダー格であるバットマン・フー・ラフス(ジョーカーの意匠をもったバットマン)には
マクファーレン・トイズからリリースされたクリーチャーフィギュアのような感覚を覚えます。
それに対し、ヒーロー側は冒頭の合体ロボ(!)といい、クライマックスでのパワーアップ形態といい
同じく90年代にハズブロ、ケナー、トイビズといったメーカーから出ていた
ヒーロー物のアクションフィギュアが持っていた「おもちゃ感」を感じさせる対比も面白いかな、と。
一方のストーリーも途中グラント・モリソンレベルの「奇想」を挟みつつも
(『夢の中で息子たちが演奏している曲のコード進行が暗号』とか言われても判るかいなw)
ヒーローたちがどんどん追い詰められた末の逆転劇には、ビジュアルもあわせて
『コロコロかボンボンでこの展開読んだことあるような気がする』という気持ちにもなったりして。
「サンドマン」の続きを20年待ち続けた方、激ヤバ即ゲット時代が懐かしい方、
そして燃えるヒーローコミックを読みたいなぁ、という方の年末年始におすすめしたい1冊です。
来月には悪のバットマンたちが主役の番外編も収録の「メタル:ライジング」も出るよ。