いろいろな要因が重なった結果、今日明日が連休となったため
ちょっと遠出をしてみようと福岡まで行ってきました。
犬散歩があるので日帰り(それも夜7時には帰宅)ですけど。
というわけで福岡市美術館で開催中の
「キース・へリング展 アートをストリートへ」へ。
ウォーホル、バスキアとともにポップアートを代表するアーティストであり
80年代ニューヨークを駆け抜けた芸術家であったキース・へリング。
不景気で荒れた地下鉄駅の広告スペースに貼られた黒い紙に
白のチョークでグラフィティをドローイングする活動を5年間続けたり
自分のアートをグッズ化して販売する店を開店したりといった
そんな「アートの庶民化/商業化をすすめた」文脈で語られる人であります。
グラフィティアートを描く中で抽象化/キャラクター化された
赤子や犬、妊婦等のシンボルで知られ、原色や蛍光色で彩られたそれは
ポスターやグッズとして飾りたくなる魅力に溢れており
それはまさしく「商業化の象徴」と見えるわけですが、
そもそものグラフィティアートも、自作のグッズ化も
「画廊や美術館に収められ、高額で取引される『芸術』を
安価/無料で庶民の手に届くところにもっていく」ための活動、であることに気づかされます。
それこそ地下鉄でのドローイングをやめた理由が
「剥がして高額で売る輩が出て来たから」ということだったり、
反核、反アパルトヘイトなどのメッセージを込めた作品は
自費で2万枚を印刷し、無料で配布したり、ということだったり、と。
それは「世間にありふれたイメージを「芸術」化し、高額で取引される作品に変える」
(同じ福岡市美術館の常設展示には、「エルヴィス・プレスリー」があります)
ウォーホルの対極にある活動ではなかったか、と思い、
親交があった…というかウォーホルにフックアップされ有名になり、
共作をする仲の良い間柄でありながらも、
その共同作品でウォーホルをミッキーマウス
(商業化の象徴であり、ウォーホル作品のモチーフのひとつでもある)になぞらえた
「アンディ・マウス」として描いたときの彼の心境とはどんなものだったのだろう、
ついそんなことも思ってしまいます。
80年代後半、世界を席巻した後天性免疫不全症候群(AIDS)に彼自身も侵され
結果それが死因となってしまうわけですが、
その晩年においてこの病気への理解を広めるための活動に
アートの、イメージの力をもって飛び込んでいきます。
その以前からも彼の作品には生と性、そして死のイメージが常に描かれ
(かなり直接的にセクシャルなモチーフを描いている作品も多いです)
連作ドローイング作品の中では彼の主モチーフの一つである犬にも
どこか不穏な暴力の匂いを感じることとなっています。
今展覧会は一部展示(東京に来たときのあれこれ)を除いて撮影自由、
多くの作品はポストカードやグッズとして販売されますが
そのかわりに図録は販売しない、というもの。
作品を取り巻く情報や知識を残さずに、あくまで作品のビジュアルだけを残す、
そう考えると、「徹底した」ポップさなのかもしれない、と感じました。