好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

繰り返される、時の檻。

2023-05-10 | 物語全般
『秋の牢獄』(by恒川光太郎)、読了。

全3話収録の短編集。2006年初出。

本命は表題の『秋の牢獄』。
区切られた時間の中を繰り返す、いわゆる「ループもの」。
ある年の「11月7日の水曜日」の1日を、延々と繰り返す事になった主人公。
何をしても、それは日付の終わりを境に、「11月6日に見ていた夢」として処理され、11月7日の朝へ戻る。
『恋はデ・ジャヴ』辺りのイメージに近いか。

本作の独自性は、そういった人々が大勢登場する事。
作中でリプレイヤーと呼ばれる彼らはグループで行動し、各地を旅する。
そして主人公が、謎めいた存在と出会ったところで、話は切られる。
結局、リプレイヤーとは何だったのか。穏やかな一日を繰り返す情感を味わうべき作品。

自分としては、他の2編の方が、より印象深い。
『幻は夜に成長する』は、幻想をもたらす“魔法”に翻弄される女性の半生。
ただ、これもラストは寸止め。
組織に囚われた復讐を果たそうとする直前で切られる。

『神家没落』が最も好み。
厳格なルールに基づいて日本中をさまよう家屋。
途中で刑事事件が起こるなど波乱を経ての劇的な終焉までが描かれる。
SCPオブジェクトを連想した。

世のレビューを読むと、同作者の『夜市』の評判良いのでいつか読みたい。

それでは。また次回。

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