『やってきた春』
読みやすく分かりやすくバランス良い作劇の中、見逃せない要素の多い快作。
1.性的倒錯。
今回、冴子経由で護る事になったゲストキャラは、まさかの男装女子・柏木圭一こと柏木圭子。
役者志望の彼女は5日間、獠に対して途中まで、香に至っては最後まで異性を演じきる。
現実では考えにくい展開だが、こちら読者は説得されてしまうのは、北条氏の力量ゆえだろう。
いわゆる一般的な男女カップルではない、(厳密には違うが)「女×女」に「男×男」、そして「性別逆転デート」まで出る勢いには、後続作品『F・COMPO(ファミリーコンポ)』の片鱗も感じられる。
2.「香=さらわれ要員」の法則。
作品の構造上、何度も狙われる香。
今回は初めて拉致監禁される羽目に陥り、獠の機転で救われる。
まさに盛り上がる展開だが、創りやすいパターンのためか、以降のアニメオリジナル展開で多用され、印象が薄まったのは残念な点。
3.リアルタイム加齢。
香の生年月日は1965年3月31日と描かれていたところに更に、「今年で23」と明記され、本作の登場人物は私たちの現実とリンクして加齢すると確定。
この手法は『キャッツアイ』と同様、読む際の親近感や臨場感を得やすいメリットの一方、作品を永久には続けられないというデメリットが横たわる。
少なくとも少年漫画としては、「いつか終わる」事が決定したのだ。
それでは。また次回。