トルファン滞在中に、例の西安駅で知り合った日本語堪能な中国人君にホテルから電話をかける。外国で電話をかけたのはドイツとここ中国だけである。ホテルのオペラーターに英語が通じるので、私も慣れないヘタクソな英語を使って国内電話を依頼です。はたして中国人君に電話は繋がった。列車の到着時間は午前9時という事を伝える。
さて、トルファンの朝早く駅にバスで向う。値段は8元。やはりバスは安い。最後の電車の切符は「無座」。つまり立ち席というわけである。
駅では、X線チェックはいつもの事でみていない。だがリュックの中身について聞いてきたようだ。ようだというのは、言葉が分からないからである。内容は何となく分かっていたが、イロイロ開けさせられるのが嫌だったので、分からないフリをきめこんで、チェックを逃れた。おまけにパスポートチェックまでさせられた。だいたいこんなチェックは、この旅行で初めてだ。憶測ではあるが、新彊ウイグル自治区だから厳しくなったのだろう。チェックが空港並だ。それも全員やっているわけではないから一層腹立たしい。荷物を明けろというようなことをいってくるが、不愉快なので分からない不利をしてあけなかった。荷造りも大変だからだ。
ウルムチまでの所要時間は約2時間。今まで利用した鉄道の中で一番短い道のりの切符が無座でよかった。この電車の中でもウイグル人に好奇な目で見られ、分からない中国語で話しかけてくるのを身振り手振りで話す。途中死海を通過する。ウイグルに死海があるとはこの時初めて知った。
列車は1時間遅れでウルムチに到着。出口に中国人君が待っていた。その隣には彼女らしい子がいるではないか。ははぁ、知り合いって女のことだったのか…と、この時初めて気づく。かねてより、ウルムチについたら「天山天地」に行こうと言っていたのだが、この日のバスツアーは30分前に締め切られていた。列車の到着が1時間おくれなければ、バスツアーに参加できたのである。彼は「どうしようか?」といってきたが、私はどうしても天山天地に行きたかったので「天地に行く!」と主張した。彼は、代わりのツアーを探すがバスッアーはもうない。仕方が無くタクシーのチャーターを検討するが、1日タクシーのチャーター代が1000元とか言っている。中国人君は半ば途方にくれていた様子であるが、私はどうしても天山天地に行きたかった。ちょっとウルムチに行って来るなんてことは、気軽にはできないのである。場合によっては今後二度と行けないかもしれない。だがチャーター1日1000元というのは法外すぎた。ハッキリいって舐めている。中国人君は非常におとなしい子のようで、1000元から食い下がらない。ハッキリいって、この1000元と吹っかけてくるヤツと交渉しても時間の無駄と思った私は、駅前から離れて500メートルくらい離れたロータリーの方に向って歩くことにした。「もっと安く行ける!」と私は中国人君(彼は「成」という苗字。以後成君とする)を説得して、ちがうタクシーを探すことにした。はたしてタクシーのたまり場にやってきた。早速交渉開始。最初のタクシーは700元と言ってきた。内心「なんだよ、いきなり1000元から700元かよ。値段なんてあってないようなものだな」と思ってしまったが、こんなところでは到底妥協はできない。なにせトルファン、そして嘉峪関では6時間のチャーターで150元という値段で行けたことを私は既に知っているからだ。トルファンでは一日チャーターが半ば騙された感じでも500元。二日目も中間マージンなしのオスマンのほぼ一日チャーターも300元でいけた。その情報・背景を知っているので私は俄然強気だった。700元とか600元とかぬかしていたが、あっという間に400元まで落ちた。いつのまにか人だかりができている。私が外国人だからなのか、カモとして捉えられているのか、10人くらいのタクシードライバーに囲まれている。400元から先は下がらない。ここで初めて私は料金を提示する。300元を提示したらタクシーのオヤジが怒り始めた。だが、前述したようにこの値段は法外ではない。キチンとした根拠がある。嘉峪関では150元で10時間も乗り回したぞ、と若干の誇張を入れて筆談で説得にかかる。300元は決して無茶な額ではない。交渉はかなり白熱して相手も熱くなってきているが、この相手の態度は半分演技であることを私は知っている。ひるむことなくバトルを続ける。だが振り返ってみると、成君はなにかご機嫌がよろしくない。呆気にとられていたのか、400元あるいは300元でも高いと感じていたのか、多分後者であったのだろう。この時は、私はバスツアーの一人頭の料金が入場料を含んで150元だったとは知らなかった。ちなみに天山天地の入場料は1人100元なので、150元のバスツアーは破格だったということになるが、この時点ではこの事実を私は知らなかった。交渉後のタクシーの中で、その事実を成君から知らされることになるのである。この時は、3人で費用をシェアしたら、400元なら1人頭130元。タクシーなら300に値切れたら、1人頭100元ということになるので、かなりお得だと思っていた。入場料が100元だとしても、合計1人頭200~230元。これでもまだ悪いのか?と交渉しながら思っていた。結局、成君が元気のなさそうにしていたので、交渉はここで打ち切って、400元で妥協する事にした。本当は300元まで延々とやるつもりであったが、成君の反応がすこぶるよろしくない。その都度、どうする?400元でいいか?それとも300まで粘るか?と成君に聞いていたが、これがよくなかった。相談するということは、こちらの出せる額を相手に探られてしまっていたのだろう。
最終的には「入場料ナシで400元」となった。この入場料ナシで400というのが、私にとっては想定していない出費を余儀なくされることになる。これは後になって分かった事だが、タクシードライバーも入場料を払わなければならないらしかった。だから、一日のチャーター代金は実質500元になってしまったのである。1人頭166元となった。入場料を3人分入れれば800元。つまり1人あたま266元の旅行である。これはバスツアーの150元と比べれば相当高い。だがこの交渉を纏める段になっても、成君は「嫌だ!高い!やめよう!」とは言わなかったから、私はそのまま押し切ってしまった。私から見ると、彼は中国人にしては珍しく大人しい。
後にバスツアーの値段を知って「気の毒な事をしたな…」と思ったが、もう後の祭りである。まぁ私としてはここに二度目に来る機械があるかどうかは分からないので、押し切っていくことにしたのは正解だが、彼にとっての266元は高かったに違いない。そこで罪滅ぼしの意味と、いままで世話になった感謝の意をこめて、彼には携帯用リチウムバッテリーを進呈することにした。このバッテリーはiphoneを充電することができるモノで、これは彼曰く「中国にはない」そうである。私は旅行前にこのバッテリーを購入したので、まだ新品ホヤホヤである。値段は5000円を超えるものなので、元に換算すると1元=13円としても、384元である。
天山天地は、文字通り「天山山脈」を拝むことができる絶景の地である。そこへはロープーウェイであがる。
ついに天山山脈が肉眼で見える地まで来たのか…と思ったが、曇っていてハッキリ見えない。違う写真ではうっすらと見えたが、今回その写真はUPしない。ここから西に600キロも行けば、そこはもうカザフスタン共和国である。最後のモンゴル帝国と言われるジュンガル帝国があった場所が、ここウルムチである。最終的には清に滅ぼされて現在に至る。
天山にはこおような仏教寺院がある。それにしても線香の太いこと。灰になって崩れる時も「バラバラバラッ」と音を立てて崩れる。迫力が違う。ちなみにここは撮影禁止区域。
天山山脈からの水が滝になって落ちている。水量のものすごいこと。華厳の滝など…メジャナイかもしれない。
見よ、この遊歩道まで水が溢れているのを。中国の安全対策ってもののレベルが分かる写真でもある。危ないってコレ。
まるで洪水の如し。
上から下を見下ろした図。
水量がハンパではない。
滝の上流はこのような穏やかな湖になっている。
カルスト地形ならではの、水の青さである。
岩盤に文字をほってカラーリングしてある。これは中国ならではの文化である。日本や西洋では、このように岩盤に文字を彫って色を塗ったりはしない。だが、こういう手を加えられた風景もまたよきかな…である。
下山して食事へ。右の女性は成君の彼女の仕事の同僚である。うーん右の同僚の子のほうがカワイイな。
彼女らは中国系の形質の顔をしており(西安から来ているので当たり前か)、ここウルムチではむしろ珍しい顔立ちである。
夕暮れのモスク。
我々日本人とはもっと馴染みが浅い「遠い外国」の風景である。
ウルムチ蜂起があったのによく中国人がここに旅行にこれたな、と思った方はクリックを。