炎と水の物語 2013 Apprehensio ad Ignis et Aquarius.

広大な宇宙を旅する地球。私たちは今、どの辺にいるのでしょう. 

スマトラ沖巨大地震から二年

2006-12-28 | アジア・太平洋地域
 二十万人以上が死亡した2004年のスマトラ島沖の巨大津波。その津波の映像から私は、今まで理解出来なかった古い地震記録の意味する所をやっと理解出来ました。その記録とは、西暦869年貞観十一年、現在の仙台平野を水没させたという『日本三代實録』の記録です。

 貞観十一年 五月二廿六日
「陸奥国地大震動。流光如晝隠映。
頃之。人民叫呼。伏不能起。或屋仆壓死。
或地裂埋殪。馬牛駭奔。或相昇踏。
城郭倉庫。門櫓墻壁。頽落顛覆。不知其数。
海嘯哮吼。聲似雷霆。驚濤涌潮。 泝徊漲長。忽至城下。
去海数千百里。浩々不辧其涯俟矣。原野道路。惣為滄溟。
乗船不湟。登山難及。溺死者千許。資産苗稼。殆無孑遺焉。」

 ( 869年 貞観十一年 旧暦五月二十六日の夜)
 「陸奥国の地に、大地震が発生し、その発光現象で、昼のように明るくなったり影ったりする。
人々は、悲鳴をあげて倒れ、起き上がることが出来ない。
建物の下敷きになり圧死し、地は裂け埋もれてしまう人もいる。
牛や馬は、走り回り、高い所に登ろうとしては、おり重なって騒ぐ。
城郭や倉庫、門、見張り台、城壁は崩れ落ち、破損した所は数知れない。
海からは轟音が響き渡り、その音は雷鳴のようだ。
大津波が陸上を襲い、怒涛渦巻き溢れ、たちまち(多賀城の)城下に達した。
さらに、はるか内陸にまで浸水し、原野や道も見渡す限り、海に没してしまった。
舟に乗る間もなく、山に登ることも出来ずに溺死した者は、千人ほど。財産や食料もほとんど失われてしまった。」 拙訳
(『日本三代實録』は、菅原道真、藤原時平らが、宇多天皇の命を受けて編纂した、「清和天皇」「陽成天皇」「光孝天皇」三代の出来事を記した、858年~887年の30年間の歴史書です。)

 スマトラ沖の巨大地震が起きるまでは、、「仙台平野が見渡す限り水没した」というのは、昔の人の誇張した表現だろうと思っていました。しかし、報道される映像から、この記録も誇張ではないと思えるようになりました。地質学者も、この記録を実証する、津波痕跡の発掘調査 の結果を発表し、仙台平野深く襲った過去三度の巨大津波の存在が、明らかになりました。

 さらに2005年8月16日には、宮城県沖でM7.1の地震が起き、東北電力女川原子力発電所は、想定していた「過去五万年で最強の地震」を超える振動を受け、緊急停止してしまいました。原子力発電所の耐震基準が、現実的でない事が浮き彫りとなり、その見直しが行われています。

 宮城県を中心として、内陸の「過去五万年」よりも古い地層へと誘導した、元電力会社系社員の藤村新一らによる考古学捏造事件を解く鍵も、こうした所にあるように思うのです。
 また、日本海側でも過去の津波記録を改ざん隠匿し、東京大学地震研究所の宇佐美龍夫氏が、「津波の心配はない。」という報告書を提出していた事は、早くから発覚していましたが、それが何の為であったかは謎でした。ただ、宇佐美氏がまとめたとされる全国の地震の歴史資料から、過去の地震の大きさが決められていたことは確かで、各地の原子力発電所の耐震性も、見直しに直面しています。
 
 本日、有罪判決を受けた、姉歯元建築士の事件からも分るように、一般建築物の耐震基準には、多くの批判が集まりますが、それよりも古い基準で出来ている原子力施設への批判は、なぜか盲点のままです。なぜマスコミが取り上げないのか、これも不思議でなりません。
 私がこのブログの冒頭で書いた 登呂遺跡の埋没の謎 や、アメリカオリンピック半島の オゼット遺跡の謎 を解く鍵も、そのあたりにあるのではないかと思うのです。


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2 コメント

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喉元すぎれば (goojuly)
2006-12-29 16:06:54
トラックバック有難うございました。
岩手に住んでいるためか、ついつい女川原発のことを忘れがちです。
岩手では放射性物質廃棄施設建設の調査問題が持ち上がったばかりで、遠野では調査が凍結されましたが、もしも、女川原発から放射能漏れが生じたら、三陸地方は立ち直れないのではないでしょうか。
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貴重な三陸沖の魚介類 (U-3)
2006-12-29 23:29:55
oojulyさん、ありがとうございます。
当ブログは、もっぱら地震の謎と、考古学の謎を追っていたのですが、最近、原子力の問題に突き当たりました。どうやら、こうした問題を解く鍵は、原子力発電にあるようだと、ぼんやり思うようになりました。

遠野に,そんな計画があったなんて知りませんでした。岩手は日本のメルヘンの世界であってほしいと思います。また、三陸沖は、日本の再生可能な漁業資源の宝庫。汚染されてしまうと、アメリカなどの牛肉を輸入せざるを得なくなりますね。
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