バーネットの『 秘密の花園 』は、インドで両親を失った子どもの、ヒーリングの過程を描いた、児童向け小説の傑作。
いびつな子どもの心を癒し、はぐくんでくれるのが、ヨークシャーの荒野、ムーアに吹く風であり、素朴な風土や、育ちゆく草花なのです。
心を閉ざしていた主人公、メリーは、荒れた庭をよみがえらせ、花々を育てることに、喜びを見いだし、次第に暖かい心を取り戻してゆきます。
こうしたストーリーは、『 秘密の花園 』(1911年刊)に限らず、『 緑の切妻のアン 』(1908年刊)、『 ハイジ 』(1880年刊) それにミシシッピーの大自然にゆったりと育まれていく、『 トム ソーヤー 』(1876年刊)、などに共通のモチーフですね。いずれも、厳しいながらも美しい農村で、たくましく育ってゆく子ども達を描いています。
さて、バーネットの『 秘密の花園 』で、主人公は、春の掘り起こしたばかりの土の新鮮な香りに、まず魅せられます。
メリー:「なにか、すがすがしい,いい匂いがするわ。しめった感じもするけど。」
庭師ベン:「 肥えた土の匂いだよ。」「 土も、ごきげんで、ものを育てるしたくをしているところさ。種蒔き時になれば、土もうれしいのさ。.....」
こうした、表現が作品の随所にみられます。
皆さんは、春の土にそうした香りを、感じたことがありますでしょうか。
私も土いじりが好きですが、最近の畑ではそうした香りは、乏しいように思うのです。
こうした児童文学の傑作が、第一次大戦前のものであることに、気が付かれた方も多い事でしょう。第一次大戦を境に、欧米、そして日本の農業も、大きく変貌してしまいます。それまでの有機農業に換わって、化学肥料と、機械化による大規模化が進み、小さな農家が急速に消えていったのです。
同時に、健康的な児童文学は、影をひそめて行きます。日本の誇る『 おしん 』も、日露戦争前あたりから、はじまりますが、そのたくましさの根源は、有機農業にあったのでしょうか。日本での化学肥料の普及は、昭和に入ってからだそうです。....
近頃、奇妙な事件が絶えません。今一度、健全でたくましい児童文学の時代背景を探る試みが、なされてもよいのではなかろうかと思うのです。
( 掲載の画像は、原作に出てくるコマドリをイメージしました。我が家の庭に迷い込んできたイカル君です。代役ですみません。)
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子どもに絵本を読んで上げるというのは、情操上とてもよろしいことと思います。想像力を働かせるということは、将来の複雑な思考に耐えられる、脳神経の発達を促進するものと、考えられます。
世の中には、思考という訓練の無いままの大人になった方も少なくなく、「分からない」→「恐い」→「排斥」というパターンの行動をとる人も、最近増えております。こういう人は、各種詐欺にかかりやすいとのことです。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』お知らせくださりありがとうございます。 アメリカで公民権運動が盛んだった頃のお話でしょうか。図書館で見てみます。『 アンクルトム 』の小屋もたいへん優れた作品ですね(^^)。。
『秘密の花園』は、最初にフランシスコッポラ総指揮の映画を見て、後で原作を読んだものです。映画では、インドの大地震で、主人公の両親が死んでしまう設定でした。原作の方が、イマジネーションを刺激して、お子様には、よいと思います。
現代の農業は、土の中にいる生物をすべて殺してしまう点で、第一次大戦後とは、比較にならない無機的な農業となっております。
子どもを取巻く、昨今の複雑な情勢は、こうしたものを背景としているように思えるのでございます。
本当に『読んだ』と自覚した本です
その物語と読んだ達成感は忘れることができません
内容は記憶に薄れつつありますが断片的に浮かぶ風景や質感は忘れられません
最近 もう1度読んでみたいと思っていました
農業の変化は食に変化を表し食の変化は身体(精神も含め)の変化に及んだのではないかと思います
良い物語が少なくなったことも不思議ではないかも知れません
ルドルフ シュタイナーの一連の活動は、第一次大戦の反省に立っていると思われます。
何が間違っていたのかという、問いが、彼の著作を、難解ならしめているのでしょうか。
こうした変化は、家庭内にも押し寄せ、思考力の弱い人間を大量に生み出していることは、決して食べ物だけではなく、家庭内の教育力も影響している所と、思います。
地理の部屋さんへの、コメントもお読みいただければ幸いでございます。
あの愛らしいピーター家族は、パパが人間につかまって、パイにされて食べられちゃってるって設定です。人と自然の間のそんな残酷さまで描き込まれているという点で、農園生活のリアリズムを感じます。
ところで僕が子供の頃は、ウチの菜園でも、畑にお肥をまいていたものでした。あれは土にも野菜にもよいそうだけど、さすがに、今はもうやりませんね…。
私の欧米文学の知識を総動員して書いたのですが、『 ピーター ラビット 』気が付きませんでした(^^;; 今度、読みます。
1893年ですか。やはり、トラクターが走り回り、化学肥料が撒かれると、牧歌的な詩情は、消えていくんですね。
化学肥料は、生育を著しく促進してしまいますので、どうしても、病害虫に弱くなるんです..。
お肥、単層式浄化槽(洗濯や風呂水が入らないT専用)で、送気したものは、なぜか無臭です。
ウサギは、冬になりますと、近くの町の魚屋に、鴨といっしょに、吊り下がります。
そのストーリーよりも、主人公が森で遊ぶ場面の描写が好きだったのです。工業地帯に近い市街地にいましたから、森の中の沢に遊ぶことはできず、そんな場所に行きたくなると、繰り返し読んでいました。
いまだに都塵に暮らし、かの世界を渇望しております。
自然への憧れ、田舎に暮らしていてもあります。「誰も知らない小さな国」、ロマンチックで、不思議な題名ですね。そういう本を図書館で、発見するのって秘密の宝物を見つけたようで楽しいですよね。
私は、小学校の図書室で見つけた『 灰色の谷の秘密 』がそれです。ラスコーか、アルタミラ洞窟を発見した子ども達の話です。表紙の字も読めないほど、古い本でした。
森林が好きなら、アレクセーエフの『デルス ウザーラ』最高! 日記形式で読みやすく、デルスといっしょに、沿海州の森を巡れます。ありがとうございました。「座布団」差し上げます。
映画はU-1さんのおっしゃっていた通り、ちょっと原作とは、
なんでしょうね、精神が違うものでしたね。
土の匂いのする本…私はバーバラ・クーニーという作家の「荷車ひいて」という絵本がとても好きです。
合成洗剤、プラスチック、どちらも第一次世界大戦の時代に生まれたのでしたっけ?(違ったらごめんなさい)。
映画は、その時々の社会を反映して、作られますから、歪んだ時代には、それなりのひずみが、出てきます。
原作と比較して、映画の変な所が、その時代を映し出しているとも、言い得ましょう。
最後のヨークシャーの空、楽しんで下さいね。良かったです。
バーバラー クニーさんですか、今度チェックしておきます。私は、絵本には疎く、最近知ったと所では、ロシアの『 大きなかぶら』ぐらいでしょうか。皆さんに未知の本を教えて頂き、感謝申し上げます。
合成洗剤、合成樹脂ともに、第一次大戦で供給を絶たれた、ドイツの発明です!
『秘密の花園』再度読んでみたいと思います。
土に触れる習慣を持つことは大切ですね。
小学生の頃、授業の一環としてお芋を育てたり、
田植え、稲刈り等々がありましたが、今は続けられて
いるのかどうか…。
田圃そのものが埋め立てられている可能性があります。
先日は、メッセージをありがとうございました。