始まるとニュースでみました。
華やかな映画スターが一同に集まってくる様子を見ていると
こちらも気分がなんだか浮き立ってくるようです。
今日は、そのカンヌのPalme d'or 賞受賞経験のある3人の
監督さんが撮ったものをオムニバスっぽくまとめた映画を借りて
観ました。
『Tickets』(邦題:明日へのチケット)
監督:エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチ

ジャケットに、セルティックサポーターの写真が載っていたので
単純にそれがきっかけで借りてみたのですが、これが結構おもしろくて♪
<あらすじ>*****************************************
ローマへと向かう特急列車に乗り込んだ様々な人種と階級の人々。
そこで描かれるのは彼らが手にした1枚の乗車券がもたらす哀しみ、
不安、残酷さ、不平等、そしてそれでも失われない愛と希望の物語。
悪天候のために飛行機をあきらめ、インスブルックから列車でローマに
帰るはめになった初老の大学教授は、予期せぬ心のときめきに出会い
その思いをきっかけに、これまでの自分なら考えられないような
ひとつの行動をとる。
何の目的も見つけられずに流されながら生きている青年は、
自分自身と真摯に向き合うことでやっと未来へと目を向けるようになる。
長い間わがままで自分勝手に生きてきたある中年女性は、
人生は誰にも頼らずに一人で歩いていかなければならないことを思い知らされる。
そして夢にまで見たサッカーチャンピオンズ・リーグの試合を観るために
スコットランドのグラスゴーからやって来たセルティック・サポーターの3人の
若者たち。彼らもまた自分たちがしっかり世界とつながっていることを知り、
限りない未来への可能性を見つけ出す。そして偶然めぐり会った乗客たちは、
それぞれの新しい人生の選択と可能性の物語へと旅立ってゆく。
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まずなんといっても、ヨーロッパを走る国際列車の様子が
とてもうまく描かれていてなんとも懐かしい気持ちになりました。
「あー、こんな人いるよね~」という感じの乗客がさまざまに
描かれていて凄く雰囲気が出ていました。
私もローマ行きの列車に乗ったことがあるのですが、
向こうの人ってやたらと親切なんですよね。
座るところがなくてデッキに立っていたら、向こうの方から
初老のご夫婦が、わざわざ私の方まで来て
「次の駅で私達は降りるから、座りなさい」とかいって
引っ張っていかれたり。あるいは眼の前に座っていた
人が突然パンを分け与えてくれたり・・。
よっぽどの貧乏旅行に見えたのでしょうか?

1話目、2話目とそれぞれに淡々と話しが進むのですが、
映像と人物の描き方になんともいえない味わいがありました。
でもやっぱり3話目のセルティックサポーターが主人公になった
話が一番楽しかったです。
列車でベッカムのシャツを着た少年に思わず話し掛けたり
気分が高揚しっぱなしでチャントを歌ったり・・
うん、わかる、わかる、その気持ち・・という感じでにやけてしまいました。
3人とも純粋でお人よしで純朴で、
そしてなによりも愛すべきサッカー馬鹿という感じで、
グラスゴーの田舎から出てきた若いセルサポの
イメージがとても良く出ていました。
そういえば2002年に日本に集結したアイルランドサポーター達も
こんなふうに純粋で朴訥な感じだったし、時々セルティックの試合など
テレビで見ても、こんな感じの人の良い温かい雰囲気がありますよね。
「ヘンリク・ラーション♪ヘンリク・ラーション♪♪」とチャントを
口ずさんだりするところなんかは
もし今年撮っていたら「ナカムーラ♪ナカムーラ♪」だったのかな~。笑。
グラスゴーからローマへ--
自分のクラブのチャンピオンズリーグの試合を
応援するためのアウェイへの旅路なんて、最高に楽しいでしょうね。
しかし彼らはそんな楽しい旅の最中に
列車に乗り合わせたアルバニア難民の家族と、
ある事件から関わりを持ってしまうのですが、
その場面でも、純粋に一人の人間として悩んでしまいます。
「難民の問題なんて俺達には扱えないよ」とか
「でも、難民の人たちって虐待を受けたり、殺されたりとかするんだぜ・・」
と真剣に苦悩しだす若者たち。
今、ACLで闘っている浦和サポの方達や、川崎サポの方達は
アジアのアウェイの地に赴いていらっしゃるので
特に感じることも多いと思いますが、
サッカーのサポーターは、知らず知らずのうちに世界の現実と
対面したりすることがありますよね。
また同時に自分達が確実に世界の中の自分であることを自覚し、
そしてフットボールを通して世界とつながっているのだということも・・。
最後の場面、偶然にことが運び、
駅を痛快に走り抜ける3人のサポーター。
そしてそこにローマサポも加わり、とても爽快な気分になりました。
サポーターっていいね♪サポーター万歳♪♪


この映画の中で様々に描かれる、他人への寛容さ
あるいは慈愛といったものが
とても温かい気持ちにさせてくれました。
人に寛容であるということ--
例えそれがお人よしと言われようともそこには何か世界が幸せに
なれる鍵が備わっている気がします。
小さな作品で、どちらかと言えば静かな作品でしたが、
見終わったあと、5月のさわやかな風がどこからか吹いてくるような
そんな気分にさせてくれる佳作でした。

