2018年のブログです
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ウィニコットさんの『人間の本性-ウィニコットの講義録』(牛島定信監訳・館直彦訳、2004・誠信書房)を再読しました。
これも、ものすごく久しぶりです。
そういえば、ウィニコットさんのことはずいぶん引用するわりに、彼の本をきちんとご紹介するのは初めてかもしれません。
いずれ、きちんとご紹介したいと思っているのですが…。
さて、本書、イギリスの幼児教育や社会福祉などの大学院生に向けての子どもの発達やこころの発達についての講義。
深い内容をていねいに話しています。
人間の本性というのは human Nature の訳で人間性のことですが、人間の精神的、心理的な成熟について語っていると思います。
いろいろなことが語られていて盛りだくさんですが、じーじが今回、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、精神分析について述べているところで、精神分析は認識することの増大と認識できないことへの耐性をもたらす、という点。
ウィニコットさんらしいというか、逆説的な感じで、認識できないことへの耐性をもたらす、といわれると、なるほどと思います。深いですね。
二つめは、ひきこもりについてで、退行した部分を有する人が、外的な関係を犠牲にしても、その部分の世話をしている状態、と述べていて、かなり肯定的にとらえていると思います。
三つめは、人間の成熟についてのコメントで、成熟した人間の数が一定数以下ならば、民主主義は政治的実態ではなくなる、と明言しているところ。
今の世界各国や日本の社会状況を見ていると本当にうなづけます。
また、カウンセリングをやっていると政治と無関係という感じがしていましたが、人間が少しずつでも成熟する過程をお手伝いすることは真の民主主義を実現することにつながるのだな、今回、わかったように思います。
なかなか勉強になる一冊です。 (2018 記)
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2021年3月の追記です
今ごろ気がついたのですが、認識できないことへの耐性、ということは、わからないことに耐えること、に通じそうですね。 (2021.3 記)
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2023年11月の追記です
以前は、カウンセリングで個人の悩みを解決しても、社会が変わらないと駄目ではないかという、心理学には限界があるのではないかという気持ちもどこかにあったのですが、この本を読んで、個人が人格的に成熟することで社会も変わりえるのだ、ということがわかって、とてもうれしく思った記憶があります。 (2023.11 記)