“シャン シャン シャン”と、赤鼻のトナカイはソリを引いて、やってくる。
数日前からまた坊やが熱でダウンし、保育園を休ませている。
ツインズの世話でもてんやわんやな上に、日中も体調が悪いまー坊が
泣き止まなかったり、ご飯にてこづったりで、みー坊も疲れがピークとなり
ダウン。それでも休めないのが母親。
昨晩、夕飯を作りまー坊とみー坊に食べさせ、もことりこを風呂にいれ、
まー坊を寝付かせたのがもう22時。
まー坊みー坊は休み、やっと僕は食事にありつけ、冷めたご飯をほおばる。
あー疲れたと思ったその瞬間、
「・・・ガランガラン・・・」と遠くで金属音が聞こえた。
まさかと、庭を見ると、いるはずのまゆげ犬カイ君が、いない。
庭につなげている、鎖と、鉄製の杭ごと引っこ抜いて逃亡した。
朝夕となかなか散歩に行けないこの頃は夜暗くなって、家が一段落してから
真っ暗の近所を散歩していたが、カイ君今夜は待ちきれなかった。
懐中電灯で探しても見つからない。
辺りは静まりかえっているので大声で呼ぶこともできない。
鎖と杭があるから走れば聞こえるはずだ。
うちの裏は雑木林の崖となっている。カイは逃げるとそこへ行くことがある。
普段ならいいが、鎖が絡まって首をつってしまってないか、身動きとれないのではないかと
不安になる。
ライトをもって近所を走る。
家では病人といつ泣き出すか分からないベビーがいる。
戻っちゃ皆寝ていることを確認し、また車を出して国道にひかれてないか見に行き、
車をおいて崖の下の住宅へ行って上をのぞく。
真っ暗の中にライト一つで林をうろうろしている僕はさぞかしあやしかっただろう。
どうしたものか。「メイ君、まだそっちに呼ぶなよ」と祈る。
普段なら臆病のカイ君は逃げても5分と経たずに帰ってくる。でもかれこれ30分は探している。
「このきついときに頼むぜカイ君」とぼやきながら我が家の前で待機する。
しばらくして、
“ガラガラガラガラ・・・・”
遠くで音が聞こえた。
ライトを向ける。
“ガラン ガラン ガラン ガランッ”と、茶鼻の”となカイ”は鎖を引いて、やってきた。
おしまい。