ざっきばやしはなあるき  

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コートールド美術館展

2019-09-16 21:18:34 | 美術[か]
 
 ロンドンのコートールド美術館がたまたま改装中のため、ラッキーにも名作が来日中。サミュエル・コートールドはレーヨン産業で大儲けをした実業家で、印象派作品をたくさん蒐集した。その中からルノワール、ゴーギャン、セザンヌ、マネ、ドガ、シスレー、ボナール、ロダンなどの名作が60点と資料が20数点展示されている。
 
 いちばんの目玉はマネの《フォリー=ベルジェールのバー》。フォリー=ベルジェールはパリの劇場で、店内にあるバーの女性店員がカメラ目線で真ん中に立っている。後ろの鏡には店内の客やカウンターテーブルが映っている。そこまでなら何も問題はないのだが、どう見ても平行なカウンターに両手をついて正面を向いて立っている女性店員の、鏡に映る後ろ姿がちょっとどころかちょっとちょっとそこじゃないでしょ、うしろの人!って言いたくなるほど大幅にズレた所に描かれているから大変。真正面を向いている人物の後ろ姿はその真後ろにあるはずだから見えないはずだし、その人物と相対している山高帽のおじさんの顔もやはり見えないはずだし、カウンターの上に並ぶ酒瓶の配置も鏡に映ったとは思えないほどメッチャクチャ。そんなこんなで世界中の人々がAa-da,Ko-daと議論するネタを提供する作品になった。
 
 キュビスムのピカソが、目が正面なのに鼻が横顔だったりと、視点を変えて描いた絵が多数あるけれど「これはおかしい!」なんて怒る人はもういない。なのでマネのこの絵もそういうものだと思えば問題ない。絵画だからこそできることで、悪魔はあくまで悪魔であるのと同じように、絵画はあくまで絵画であると思えば、この世に不思議なことなど何もないのだよ!ってことになる。
 
 
 
 同じくマネの《草上の昼食》が来ている。と言ってもこれはオルセー美術館の大きな作品の習作みたいなもので、マネが背景をどうしようかと検討するために描いたものだそうだ。なので、人物の描写はヘロヘロだ。結果的にオルセーの作品の背景はほぼこの習作に基づいて描かれている。後ろの池だか川だかにいる白い服の女性の大きさがちょうどいい感じになっている。オルセーの作品ではややでっかくなっているので、でっかい女になったのか、川がぐーんと接近したのか、どちらにせよちょっと近くなった気がする。「だるまさんが転んだ」で振り向くと少しずつ近づいてくる鬼みたいな雰囲気だ。もういちど「だるまさんが転んだ」で振り向いたらもう目の前にど~~~~~~んって来ているかも。
 
《草上の昼食》コートールド美術館所蔵
 
参考:《草上の昼食》オルセー美術館所蔵
 
 
《少女と桜》 ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー
 日本好きなホイッスラーが描いた、桜の鉢植えをいじくるちょっと猫背な少女。この少女は何を着ているのか? 何を着ていないのか? それがいちばん気になる。この中途半端感が、何も着ていない《草上の昼食》よりよっぽどセクシー!
 
 
 
 
 
 
 

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