365日の空

空を見ていると会いたくなる人は居ませんか?空は その人の所まで繋がっています。
そう思って私は今日も空を見上げています

はじめの一歩

2004年06月29日 | おもひで
私が高校生だったある日、母が膨れっ面で現れた。
どぉしたのかと尋ねると、
何か大切なものを、父が捨ててしまったと言うのだ。
一体何を捨てられてしまったのか、話を聞くと
兄と私が、生まれて初めて履いた靴だと言う。
私は、そのような物が我が家に有った事を、この時初めて知った。
丁度その時、父が私達の前に現れた。
母と私は、何でも捨ててしまう父の性格から
今回も、父が捨てたに違いないと確信していた。
「私は知りませんよ」と父は言っていたが、私達は信用しなかった。居辛くなったのか、女二人に睨まれた父はサッサと部屋を出て何処かに行ってしまった。
逃げたのだと思った。
すると、しばらくして父は笑みを浮かべて戻ってきた。
「あるじゃないか」と言いながら。
母と同じく、父も私達兄妹のファーストシューズを捨ててはいなかった。
私は直ぐに見に行き、その物の存在を確認した。
薄汚れてはいるけれど、25年前と同じまま、とても愛らしく
その小さな靴には、幸せが詰まっていた。

手のひらに収まってしまう様な、この小さな小さな靴が
兄と私の、はじめの一歩だったんだ。