紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「魔王城殺人事件」歌野晶午

2004年11月30日 | あ行の作家
ミステリーランドに関しては、私、評価が違うのです。
これまで読んだ中で素直にいちばん面白いと思ったのは
実は「闇のなかの赤い馬」竹本健治だったりします。
しかーし、これって全体的に評価が低い(笑)。
もちろん、「探偵伯爵と僕」森博嗣「虹果て村の秘密」有栖川有栖
「くらのかみ」小野不由美なんかは、すごく楽しみましたが、
でも、読んでて私の子供心をくすぐられたのが、
竹本健治だったんですねえ。
もうね、しょうがないんです。今の私は子供には戻れないから。
子供のときに出会っていたら、きっと違う評価になったでしょう。
でも、無理だもんねえ。…そんな私の感想ですが(笑)。

ストーリーとはあまり関係ないところで、
ちょっとした仕掛けに気付きまして。
それだけで舞い上がってしまいました(笑)。
これって、ほかのミステリーランドの作品にもあるのかなあ。

子供向けにしては、事件はちょっと残酷。
さらに、歌野さんにしては、なんだかストレートに決まったな、と。
もうちょっと捻ってもよかったかなあ、と思いつつ。
でも、人物がとても魅力的なので、物語にすっと入っていけます。
子供たちから見る“刑事”という概念が、これで
覆ったとは思いませんが、とても魅力に溢れていたと思います。

クラスの有志で結成された探偵クラブ「51分署捜査1課」。
いくつかの事件を解決した後、最大の“謎”「デオドロス城」の
怪しい噂の真相を確かめることに。潜入はうまくいったものの、
不可解な事件に遭遇し…。

一つ思ったのは、これ、登場人物を大人に代えても、
まったく問題なく、同じような物語が成立してしまう、ということ。
それがちょっと残念かな。子供らしい、子供ならではの
物語っていうのを期待していると思うのですよ、これって。
そういった意味では、やっぱりアリスや小野不由美ってのは
とても上手いのではないでしょうか。だから逆に、竹本健治のは、
寮という特殊な舞台を設定することで、その辺は確立してるんですよね。
しかも、事件は全部学園の中で起こっているし、謎は魅力的だし。
でも評価が低いのよね(^^;)。それは置いといて…。
「デオドロス城」を学校の施設の一つにすれば良かったのかも。
そうすると、森の中の怪しいお城を探検、なんていう、
今ではなかなか遭遇することのできないストーリーではなく、
ちょっと古い学校だとホントにありそうな話になるじゃないですか。
…そこまで文句つける必要もないか(^^;)。
ま、それだけ、歌野さんには思い入れがあるってことなのです。


魔王城殺人事件(Mystery land)
歌野晶午著

出版社 講談社
発売日 2004.09.15
価格  ¥ 2,100(¥ 2,000)
ISBN  4062705737

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「寡黙な華」榎田尤利

2004年11月30日 | あ行の作家
榎田さんは、とても大好きな作家さんなのですが、
いちばん最初に読んだ魚住くんシリーズのインパクトが強すぎて、
その後にどんなにほぼのぼな作品を読んでも、どんなにシリアスな
作品を読んでも、感じ方が鈍くなってしまっているのです。
あれです。加納朋子とおんなじ。
「ななつのこ」「魔法飛行」のインパクトが強すぎて、
何を読んでもこれ以上のモノが見つからない…。

とは言っても、好き嫌いの激しいBLの中では、ダントツです。
それは何故かというと、物語の方向が私好みだからなんでしょうね。
普通のBL(という言い方もおかしいのですが)は、
男×男というだけで、普通の恋愛小説(少女小説)と
変わらなかったりするんですよね。もともと恋愛モノが苦手な私としては、
それだけでは読めないのです。だから、BLというジャンルは
得意だとしても、その中での好き嫌いが激しいわけなのです。

では、榎田さんの作品の、ほかとは違うところは何でしょう。
多分ですね、やっぱりキャラじゃないかと思われます。
前回読んだ「少年はスワンを目指す」にしても、
ホントの姿は誰にも理解されていない硬派な原と、
心に傷を持ったわがまま王子というカップルは魅力的です。
今回も、鼻持ちならない馬宮辺は濱田センセに似てるし(笑)、
強引で傲慢な邦彦と、どこまでも弱い千蔭はすれ違い過ぎて
どういう展開になるのか心配になるほど(大きなお世話)。
で、まさかあんな風になるとは思わなかったですしねえ。
(ヒドイよ、榎田さぁん。というような展開なんですっ)
でも結局、思った以上に千蔭が強かった、と。
それでみんなが救われました。そういう救いを残してくれるのも、
やっぱり榎田さんらしいのです。
だから榎田さんが好きなんですねえ。


寡黙な華(Shy novels 112)
榎田尤利著

出版社 大洋図書
発売日 2004.09
価格  ¥ 903(¥ 860)
ISBN  4813010318

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「おとなを休もう」石川文子編

2004年11月30日 | その他
小学3・4年生の国語の教科書に掲載された作品
すべての中から、掲載回数の多いものを中心に収録。
帯に椎名誠の言葉もあって、なかなかそそるんですけどね。
残念なことに、「ごんぎつね」以外まったく記憶がない(笑)。
「てぶくろをかいに」が、かろうじて記憶にあるくらい。
もちろん「もちもちの木」という作品は知ってますが、
それは図書館で絵本を見たか、NHKで見たか(笑)。
私の記憶にないだけなのか、やっぱり田舎が迫害されていたのか(違)。

「チワンのにしき」「サーカスのライオン」「青銅のライオン」
などは、タイトルは知ってます。なんとなく内容も知ってます。
やっぱりどれも、良い作品ですよ。小さい頃に触れるべき
作品だと思いますが、でも、やっぱり、大きくなってから
再度触れるべき作品だと、強く思いました。
子供心に“何か”を感じても、それって案外長続きしません(笑)。
折に触れ、何度か触れているうちに、しっかりと心に
“何か”が残るのではないかと。…私だけ?(^^;)

一つ残念なのは、添えられた絵がどうにも下手すぎ(笑)。
せっかくいい作品なのに、心得のない人が仕方なく描きました、
という挿し絵なんですよね。もうちょっとましな絵はなかったんかい。


おとなを休もう
石川文子編

出版社 フロネーシス桜蔭社
発売日 2003.08
価格  ¥ 1,470(¥ 1,400)
ISBN  4896107349

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