紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」麻耶雄嵩

2004年12月03日 | ま行の作家
初めての麻耶さんの長編、デビュー作なのに、
シリーズは続いているのに、
“メルカトル鮎最後の事件”だなんて(笑)。

麻耶さんっていうのは、最初からどこにも突き抜けないで、
どことなく暗澹とした雰囲気が始終漂っている、という
そんなイメージだったのですね(「まほろ市」なんですけど)。
これも読み始めてからずーっと、なんだか違和感があって。
「まほろ市」の方は鬱々とはしてたけど、しっくりはきていたので、
なんだかこんなに物語に馴染めないっていうのが、ちょっと怖かった。
“何か”あるんだろうな、とは思いつつも、
もし最後までこのままだったら、とか思うと不安で(笑)。
そういうときは、“島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎が絶賛”
という言葉を思い出してたんですが、それはそれで、ねえ(笑)。

京都近郊に建つ、ヨーロッパ中世の古城と見紛う館・蒼鴉城。
名探偵・木更津のもとに、不可解な依頼が舞い込み、
友人で推理小説作家の香月とともに、木更津は蒼鴉城へ向かう。
現場に到着した彼らを待っていたのは、首なし死体だった…。

結果から言いますと、すんげー面白かったです(^-^)。
でも、最後の最後までひっぱり過ぎです(笑)。
感情移入して読むタイプの私としては、
木更津にしろ香月にしろ、誰にも同調できないままだったのが、
とてももどかしかったし、なにせメルがなかなか出てこないし。
以前に一度、メルの短編を1作読んだことがあったのですね。
そのときからメルはあまり好きではなかったのですが(笑)。
それにしても、ねえ(^^;)。しかも、木更津はメル以上に嫌いだあっ。

蒼鴉城で起こる一連の事件に、まあよくあれだけいろんな解釈が
付けられるものです。しかし、それも全部最後のあの場面のため
だけだと思うと、なんと贅沢な(笑)。いや、前フリ長いよ(^^;)。
そして最後に残る疑問が、あのサブタイトルの意味は?
…いろんな意味で楽しませていただきました(笑)。


翼ある闇(講談社文庫)
麻耶雄嵩〔著〕

出版社 講談社
発売日 1996.07
価格  ¥ 770(¥ 733)
ISBN  4062632977

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