紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「本所深川ふしぎ草紙」宮部みゆき

2005年01月06日 | ま行の作家
本所は深川に伝わる“七不思議”をモチーフに、
回向院の茂七親分が活躍する、“宮部節”の効いた人情話。
「片葉の芦」「送り提灯」「置いてけ堀」「落ち葉なしの庭」
「馬鹿囃子」「屋敷」「消えずの行灯」の7編を収録。

タイトルは以前から聞いたことがあったのですが、
何度も聞きすぎて、自分が過去読んだのかどうか分からなく
なってました。で、読んでないと思っていたのですが、
今回読んでみて、どれも微かに記憶に残っていたり(笑)。
でも、何度読んでも、やっぱり宮部の時代モノは良いなあ。

ふしぎ草紙とか七不思議とかいうわりには、
そんなホラーな気配はまったくなく、
ただただ、切なくて物悲しくなるばかり。
ひとつ救われると、大きく突き落とされたり、
大きく転んでも、どこかに心温まるものがあったり、
微妙なバランスで、でもやっぱりちょっと辛い。

誘拐とか殺人とか、ましてや連続殺人なんて起きはしないけど、
でもこれはやっぱり“ミステリー”なんだと思います。
江戸時代の昔の話だけれど、どの“事件”も身近で起こること。
長屋の隣に住む仲良し夫婦の実状は、とか、
羽振りのよさそうに見えるお店だけど実は…、とか、
こう書いてしまうととても陳腐に思えてしまうけど、
要は“日常”なのです。日常の謎とはちょっと違うけど、
でも、日常の謎を扱うミステリー同様、些細な事柄を、
それに関わる人たちを丁寧に描くことで伝え、
そして謎まで解いてしまう、というやり方で、
しかも、回向院の茂七親分という魅力的なキャラクターを
中心に配することで、短いのにとても深い作品になるんですね。

そうだ。お初っちゃんのシリーズも読んでみよう。
それを今年の目標に挙げたりして(小さいなあ(笑))。
その前に、茂七親分のシリーズも読まないと。


本所深川ふしぎ草紙(新潮文庫)
宮部みゆき著

出版社 新潮社
発売日 1995.09
価格  ¥ 540(¥ 514)
ISBN  4101369151

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