紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『隻腕のサスラ 神話の子供たち』榎田尤利

2005年06月28日 | あ行の作家
「もったいないからまだ読まない」ということはやめよう、
そう思っていても、やっぱり大切にしたくてなかなか手が出ない
作品(作家)というものはあるもので。私にとって、榎田作品がそれ。
魚住くんシリーズから、とても大切に読んでいて、そのシリーズで
すらも、3冊目以降がなかなか読めなかったりしたのです。
しかしながら、BL系の作品はあれ以上の感動はありえないだろう(笑)
という思いから(失礼だなあ^^;)、ぼちぼちと読んではいるのですが、
ファンタジーである前作『神を喰らう狼』は、BLにはない感動を
与えてもらいました。という理由があって、その続編であるところの
本作には、なかなか手が出なかったのですね。

でも、やっぱり早くに読んでおけばよかった。いかに私が、
榎田さんの文章を欲していたのかが、読み始めてよく分かりました。
冒頭、「ルアンの髪は長い。」たったこれだけに、心がかき乱されました。
どうしてこの人の文章がこんなにも奥が深いのだろう、と。

そこから、この物語の主人公・サラまで辿り着くまでの長いこと長いこと。
しかも、そこ(サラ)へ辿り着いて、彼女が決断するところで本作は
終わるのですね。“隻腕のサスラ”というタイトルのサラの物語は
ここで終わり、ということなのでしょう。そういう潔さみたいなものも、
やっぱり榎田さんの特長です。しかしながらその反面、とてつもなく
長いシリーズになるのだなあ、という予感はしますね、びしびしと(笑)。

この続編、神話の子供たちの3作目になる『片翼で飛ぶ鳥』は、もうすでに
本棚に収まってます(もちろん積ん読の棚ですが^^;)。ホントはすぐに
でも手に取って読んでしまいたいのですが、なんだかまだもったいない!
といっている間に、どんどんBL系の作品も積まれていくのですが…。


隻腕のサスラ 神話の子供たち』榎田尤利(講談社X文庫)