あの子をつうじて

自分の心を取り出す。
気持ちを、感情を取り出す。
眺めて、どうやって拭い去るか考える。
砂のように表面が流れ、
そのすぐ下にある新たな面が見えてくる。
浅い表層を拭い去った次の段階の表層を、
今度はゆっくりゆっくり時間をかけて、
大事にしながら流していく。
こわくないのだと、
恐れることは何もないのだと、
あなたはそんなに美しい光なのだと、
それに向かって語りかけながら作業を進める。
徐々に自分の手から離れ、形が消えて作業が
完了すると、以前よりも少しだけ、自分が
自分に近くなっている。



あの子はいつも、そんな様子をそっとたたずんで眺めている。