
ポール・セルー「鉄道大バザール」
アメリカ人作家ポール・セルーが1970年代前半に行ったユーラシア大陸の鉄道旅行(おまけで日本も)を綴った本です。旅の目的はづばり鉄道(汽車という言い方がふさわしいか)に乗ること。途中の国々で作家としての講演などもこなしながらであるが、とにかく鉄路があれば危険だろうが、汚かろうが車中の人となるのである。
旅の始まりはロンドン15時30分発のオリエント急行。今でこそ豪華列車の代名詞とされていますが、セルーが乗車した当時、この列車には食堂車さえ連結されておらず、乗客は途中駅で必死に食料を探しまわるはめに。
イスタンブールからトルコを横断し、イラン、アフガニスタン(当時も紛争地帯で鉄道は断念)、パキスタン、インド、ビルマ、マレーシア、ベトナムと旅は続きます。貧困に喘ぐアジアではあるが、その鉄道はかつての植民地時代の香りを残すもの。セルーの目は時に優しく、時にシニカルに、時に嫌悪を隠しもせず、ゴトゴトと揺られる汽車の旅を伝えてくれます。米軍が撤退し、直後にサイゴンが陥落するベトナムで彼が感じた光景が印象的・・・。
最初のオリエント急行の途中駅、置いてきぼりをくったおじいさんはどうなったのでしょうか?!
こういう本は一気読みせずに、1章1章を日を変えて読むのが良いみたい。
それにしてもこの文庫、上下それぞれ1600円(税別)って高いなあ・・・・。
以前紹介したポール・セルー(セロー)はこちら→
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