六本目 PJTケーブ ↑ 人の頭のように視える珊瑚
断崖の間際にアンカーリング。ジュニアが水中ライトを取り出した。
ライトを必要とするところをみると相当暗いのか?。
「私がケープダイビングをしたいとリクエストしたんです。ご迷惑でしたか?」と美樹。
「いや、気にしないで、私はどこでも結構。いい海さえあれば」
が、グアムの名物ポイント、ブルーホールが抜けたのは少々寂しい気もする。
だが、海豚の登場で相殺してもいいだろう。
先刻と同様の手順でエントリー。バディにBCを装着させて娘のところへ。
「自分でできる?」
「駄目です。ウェィトも外れちゃいました」水中を覗いてみるとベルトを吊り下げていた。
受け取って腰に捲いてやる。続けてBCを装着させる。お父さんは忙しい。
と言うことで準備完了。↑
「お前はね、ガイドにくっついて行け」とバディへ。
「・・・・・・?」
「あの二人は少々危ない。バックアシストがいないから俺が面倒をみる」
「・・・・・・解った」
潜行。岩の谷間を進んで行くと横穴が穿かれていた。穴の直径は3mほど。
ジュニアの後を追って侵入。まずは小ホール。その奥に狭い横穴がまだ続いている。
一呼吸おいて更に奥へと進む。
『バディ同志 クッツケ』とジュニアのサイン。
続いて『カメラ ハ ノー』私はその対象では無いらしい。
ジュニアと京大が先行。その後を美樹と直美。バディが続いて私は最後尾。
隧道は波と潮流の影響だろう多少の流れと揺れがある。
前を行く直美のオクトパスが岩に引っ掛った。本人は全く気付いていない。
距離を詰めた。直美も進行が妨げられたので振り返った。
気づいた。手を伸ばそうとした。それを制し外してやる。更にパーティは前進。
縦穴。光が射し込んでいる。直美が突然それに吸い込まれた。
ジュニアが慌てて跳びついた。・・・無事?生還。
後で聴いたところによると、したたか頭をぶつけたそうだ。
隧道の幅が狭まった。光は全く射していない。ライトが無ければ暗黒の世界だ。
だがそのライトの光も先行の四人が捲き上げた澱で遮られている。
甚だ心持たない。
バディが私のインフレーターホースを引っ掛けて前進。
『ちょっと待て』と脚を引っ張る。気づいたようだ。
数分後。パーティは入口のホールへと戻った。ジュニアが天井をライトで照らした。
小型のウミウチワが群生。ジュニアはその一つを採って直美へ。
『いいのか・・・そんなことをして』
※ファンダイビングではとるのは写真だけ、生物を採るのはご法度
ホールを抜け出して再び外へ。
岩の谷間。頭上を見上げると大きな影。
距離があるので断定はできないが魚体からロウニンアジかギンガメアジだろう。たぶん。
バディに『先に行け』と促して二人の傍に・・・。
『おいて行かれちゃうよー』
↑ 直美 オクトパスのホースは自分の使用するレギュレターのものより長い。
故に水底近くでは引きずることになる。私はそれが嫌でポケットに収納しているが・・・。
美樹のタンクがずれて落ちそうになっていた。まったく気づいていない。
完全にBCから外れるとレギュレターを引っ張られてパニックに。『ストップ!』
ジュニアにタンクを再装着させる。京大はそれを視ている。バディはヒトデを持って ヒトデゴト 他人事。
目の前に小アーチ。穴が狭いのでくぐるのを辞めて出口へと先回り。
次々と通り抜けてきた。最後はバディ。私が姿を現さないので振り返って気にしている。
『こっちだ』
残圧チェック。だいぶ少なくなっていた。バディもチェック。私より残量は多い。大丈夫だ。
艇の下へと戻って来た。ジュニアが水底で仰向けになっている。バブルリングの披露か?。
張り合う心算は無かったが水面休息時間中にお嬢さん方からリクエストがあった。
2mほど離れてやはり仰向けになった。バブルリングを連発。
エキジット。
ファブリックスーツはウェットスーツほどの保温力は無い。寒いほどでは無いがやはり尿意の頻度は増す。脱ぎ捨てて飛び込んだ。
ジュニアも続いた。
・・・・・・
我々と入れ違いに娘二人も飛び込んだ。それが女心と言うものだろう艇からけっこうな距離まで泳いで離れた。
「終わったら。ちゃんと流すんだよ」
「はーい」
※ 娘二人の名誉のために・・・・。結局、彼女たちは水中ではできなかったそうだ。
でも本当に『名誉のために』ならばこの部分はカットすべきなんだろうなぁ。
京大は直美に御執心なのかしきりに話しかけている。
だが艇の上での話題は終始ダイビングである。講習(講習を行っている様子は無かった。ついて来れれば及第のようだ)の彼ではまだまだ力不足だ。
邪魔をする心算は無いがどうしても女性達との会話は私の方が多くなる。
少々可哀そうになった。本当の私は心優しいのだ。
「大丈夫だ。数年経験を積めば、さりげなくアシストもできるようになるよ。それからだな」
「・・・・・・!?」
「そう、上手かったよ。私たち(私は含まれない)よりも」とバディ。
「だけど講習なのに海豚が出てきたり、若いオネーサン二人も一緒だし最高だったな。
もうこの後ダイビングを続けてもいい事無いかもしれない。運を使い果たしちゃって」
バディが私を睨んでいる。
「いくつなんですか?」と美樹とバディ。二人は同い年だった。直美はニ十三歳。
「おい、さっきの取り消し」
「・・・・・・?」
「若いオネーサン一人と、昔若かったオネーサン二人に訂正」
マリーナに到着。機材をバラシてメッシュバッグに詰め込んだ。
ジュニアが直美の頭を後ろから小突いた。
「なに?」
ジュニアが私を指さし自分では無いと言っている。
「お父さんがそんなことするわけないでしょう!」
記念写真。
意識して腹に力を入れた。
「いま、お腹を引っ込めたでしょう」いたずらっぽい眼で愛娘が笑っていた。
『よく視ていやがるなぁ』
ダイビングサービスに到着。テーブルの上にはすでに昼食の用意が。
バディと娘二人と同じテーブル。京大は隣のテーブル。
「こっちで一緒に食べようよ」とバディが京大に声をかけた。
三日目の昼食は『焼きそばライス』喰えないことは無いがあまり歓迎できない味。
だが空腹なので取り合えず全部を胃の中に収めた。
「サイン クダサイ」 ジュニアがログブックを持ってやって来た。
最終日なのでサインの他に自分の似顔絵を描いた。
それを視た娘二人も「私にも描いてください」ログブックを差し出された。
ジュニアのものよりも多少力を入れて描いた。
※ 私のログブック 娘二人が記したのがこれ。
「明日はどうするの?」
「明日は潜りません」
「そうすべきだよね。フライトの前は」
「お二人はどうするんですか?」
「ジェットスキーをやる心算なのだが・・・」
「エッー!。私たちもやってみたい」
「じゃあ一緒にやるか?」
「午前中でしたら」
「これからホテルに戻ったらツアーデスクに出向く心算だから・・・」
「じゃあ、電話してもいいですか?」
「いいよ」
つ づ く