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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

森山さんのいない高田馬場管弦楽団定演と「やきや」

2023年07月27日 | コンサート

7月17日3連休の最終日、杉並公会堂で高田馬場管弦楽団第102回定期演奏会を聴いた。
今回の曲目は、下記3曲だった。
    ブラームス 大学祝典序曲
    ドリーブ バレー組曲「シルヴィア」
    ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」

今回は、1年ぶりに森山崇さんの指揮を見られるかと楽しみにしてきたが、会場には「体調不良のため指揮者交代」と無情のお知らせが貼られていた。代理は副指揮者の松林彗さん、2年前2021年7月の定演でも森山さんの耳鼻科の急病降板でベートーヴェン第5「運命」を振られた方だ。そのときのプロフィールには元団員の2世とあったが、22年7月の第100回から第一バイオリンに名前があるので、団員にも加わられたようだ。1986年生まれの30代で、森山さんより40歳若い北海道生まれの方だ。
さて松林さんの指揮は、手の振りや体の揺らし方が「ダンス」っぽく、少し森山さん風だった。ややオーバーアクション気味のシーンもあった。
ブラームスとドリーブは疾走感が感じられ、そういえば馬場管のひとつの特色は疾走感だったと思い出され、ババカンカラーに染まり始めておられるようでよかったと思った。
しかし交響曲6番「田園」のほうは、そういかなかった。よほど切迫した時期に突然交代されたのかもしれない。オケとの音合わせが十分ではなかったようで、1楽章の前半は指揮者の要求するテンポとオケのテンポが合わなかった。ただ4、5楽章はまずまずのまとまりだった。
アンコールは同じドリーブの「コッペリア」のなかの1曲だと思うが、これは「シルヴィア」と同じく華やかな出来映えだった。
今回フランスものがよかったので、「華麗な指揮者」を待望できるかもしれない。
なお登場や退出は淡々としたスタイルで、すがすがしかった。

馬場管のプログラムはいつも完成度が高いが、今回はかなり異色だった。たとえば「田園」の解説は「普段全く注目を浴びないコントラバス奏者の目線で書」くとあり、1楽章で「コントラバス注目ポイント:24小節かけてじわじわクレッシェンドしていくところが見せ場。1回見逃しても大丈夫・2回あります」とあり、他方2楽章は「コントラバス注目ポイント:特になし。体力温存してます」と書かれていて、読むだけでも楽しい。
ブラームスの大学祝典序曲は有名な曲だが、ドイツの4つの学生歌が紡ぎ合わされていることは、知る人は知っているのだろうが、わたしはプログラムで知り、曲の構成がよくわかる短文にまとめられていた。
今回最大のポイントは、予定指揮者だった森山さんの特集だ。プロフィールにも、従来のものに、たとえば(小学3年)「担任のY先生がピアノの名手で、先生の伴奏で木琴のソロ演奏をする」、(1961年)「札響発足と同時に定期会員になり、札幌を離れるまで札響の演奏会には欠かさず足を運ぶ。そのころ「ウェストサイド・ストーリー」の圧倒的な音楽と映像に打ちのめされる」、2001年「小学校のPTA会長を務めたのを機に地域の子どもたちの育成ボランティア活動にも熱心に取り組み、早稲田大学フィルハーモニー管弦楽団と一緒に、地元新宿区の小学校で音楽教室開催に協力している」など、森山さんのまったく知らなかった側面がいくつも紹介されており、(森山ファンには)貴重だ。
その他、資料的なものとして「ババカン演奏史――森山崇とベートーヴェンの交響曲」に、102回の演奏会でベートーヴェンの交響曲を20回(約2割)演奏し、そのうち森山指揮が9回と、年月日、会場、曲目のデータとともに掲載されている。
また「ババカンだいたい50年間の『ホールものがたり』杉並公会堂――森山崇とベートーヴェンの交響曲と杉並公会堂」ではこれまでの演奏会で杉並公会堂を25回(およそ四分の一)使い、森山さんの9回の指揮のうち6回が杉並(うち6回は改装前のホール)、3回が練馬文化センターとある。わたくしが聞いたのは2008年の真夏の第九(改装後の杉並)だけのはずだ。
わたしも改装前の杉並公会堂には思い出がある。高校生のころ早稲田高等学院や東京立正高校吹奏楽部の定演を聴いたのは杉並だった。出身高校のOB吹奏楽団の演奏会も何度かやったはずだ。聴いたわけではないが、61年にギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団が来日しレコード録音をしたのも杉並だったはずだ。
急に猛暑になり、普通の人も体調を悪くする季節だったが、いつかもう一度、ぜひ森山さんの指揮を聴き、見てみたいと思った。
末筆になり恐縮だが、この日の演奏で感心したのは、コントラバスのピチカート合奏と打楽器、とりわけトライアングルや小太鼓だった。

もうひとつ、少し前の7月9日アマチュアの混声合唱団「ピアチェーレ」第8回演奏会を、飯田橋のトッパンホールで聴いた。男性8人、女性12人の小さい合唱団だ。この合唱団は、京都大学音楽研究会ハイマート合唱団の在京OBOG合唱団だそうだ。大きな大学なので合唱団もいくつもあるが、この団は女声も原則として京大生だそうだ。ピアチェーレはイタリア語の「自由に」という意味とのこと。
プログラムは、バッハのJesu, meine Freude、プーランクの「クリスマスのための4つのモテット」、「となりのトトロ」「いつも何度でも」、三善晃:混声合唱曲集「木とともに人とともに」でアンコールがフォーレのラシーヌの雅歌だった。
聴き始めると、男声アンサンブルがよく聴こえそういう特性の団なのかと、よく聞くと女声も別に弱いわけではなかった。男声がとりわけ優れた団なのだろうと思う。
わたしは三善の合唱曲をはじめて聞いた。
谷川俊太郎の詩
「生きていること、いま生きているということ
 それはミニスカート それはプラネタリウム
 それはヨハン・シュトラウス それはピカソ
 それはアルプス ・・・」
と言葉が力強く、基本的には現代音楽だが、詩を生かすすばらしい曲だった。
三善の終曲「生きる」とラシーヌの雅歌がとくによかった。
このホールは音響がよいことで知られているが、たしかにそのようだった。
印刷博物館と同じ建物で、そちらには行ったことがあるが、ホールは初めてだった。たしかに400席規模のよいホールだった。
かなり暑い日で、飯田橋の駅から結構な距離があり、まいった。

●杉並公会堂がある荻窪といえば、浜田信郎さんのブログ「居酒屋礼賛」でよく登場する「やきや」がある。
駅南口から徒歩2分、小さな立ち飲み店だが、いかの専門店だ。いかみみ焼、げそ焼、げそ揚げ、げそわさ、いか焼、なんこつ焼、いか納豆、いか刺身、いかみみ刺身、珍味わたあえ、塩辛、いかしょうが棒、とすべて揃っている。値段は原則として290円、げそわさのみ250円だ。
うなぎやまぐろならこういうシリーズがあるが、いか専門の店に入るのは初めてだ。わたしはいかみみ焼と珍味わたあえ、そして漬物と常温の酒を頼んだ。いか以外に、漬物、みそきゅうり、めかぶ、冷奴各220円、うなぎきも焼、きざみ穴子、もつ煮込各290円、串刺フランク250円がある。飲み物は酒280円、ビール(中)、生ビール(中)各430円、ウーロンハイ、レモンサワー各320円、ホッピー360円だ。
入ったのは16時半ごろ、L字型のテーブルでおそらく定員10人くらい、机はイカ墨のように真っ黒で、店内も暗い雰囲気でよくわからないが、まだ3人くらいだった。出たのは17時過ぎだがほぼ満席になっていた。浜田ブログでよく客で満席近いと書かれているが、たしかにそういう店であることはよくわかった。
店のスタッフは女将さんと焼き台の前に若い男性、そして若い女性の3人、感じのよい方たちだった。荻窪に来ることがあればぜひ立寄り、次はいか刺しや塩辛も食べてみたい。

やきやのかみみ焼、珍味わたあえと漬物

●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。


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