タイガーマスク現象と新しい時代

昨年末から「伊達直人」を名乗って児童福祉施設に寄付を行う現象が広がっている。伊達直人とはアニメ「タイガーマスク」で、ファイトマネーを素性を隠して孤児に寄付する主人公の名だ。昨年のクリスマスに前橋市の児童相談所にランドセル10個が届き、差出人の「伊達直人」という名前に「タイガーマスクでは」と職員が気付いたのが発端となった。以後善意の寄付が全国に広まっていった。

最初の寄付はクリスマスで、冬至図ではうおの木星と天王星が合、12室に近い太陽とスクエアとなる。同時に皆既月食の月が加わりTスクエア。うおの木星は豊かさや慈善行為も表し、これが天王星と合となることで一気に広まったということもできる。また2011年の日本春分図では12室に木星が入り、木星による利他的な行為が盛んになることも暗示されている。たしかにトレンドはあったのだが、しかしそれだけだろうか。木星がうお座から去る１ヶ月前になって始まった現象は、そのときだけの一過性のものなのか。鍵を握るのは、サインやぎに入った冬至図太陽だ。

◆サインやぎの示す本当の意味◆
冬至図の木星は皆既月食の太陽とスクエアとなった。寄付の対象となったのは太陽のあるサイン、やぎの社会施設。オポジションの月がエグザルトとなるサインかににあり、この施設が子どもを守る施設であることがわかる。

太陽の光が当たったサインやぎの意味は何か。従来占星学では、社会制度や法律、官僚、大企業、建築などの社会学的な分野を表すとされた。しかし人類史の占星学的テーマとして考えるなら、これは本題ではない。やぎ座の本質はむしろ社会から疎外されてきた弱者や障がい者、社会から手助けが必要な人々をあらわすテーマなのである。サビアンシンボルにも「破壊された教会」「病院のおもちゃ」「女子修道院」などの象徴がある。今までしし座的勝者の論理を掲げて発展してきた20世紀の社会が、置き去りにしてきたもう一つのテーマだ。そして2008年11月、このサインやぎに冥王星がイングレスしたことにより、勝者の論理から社会の価値観は少しずつ別の方向に目が向けられはじめている。

◆タイガーマスクの時代に似ている時代◆
孤児であったタイガーマスク「伊達直人」が幼少の頃は、敗戦により荒廃した街が広がっていた。しし座冥王星時代に強さを求めて戦った世界大戦は時代に深い傷を残した。そして21世紀に入ったいて座冥王星時代には、唯一の勝ち組だったアメリカが9.11に挫かれ、2008年の金融危機に沈みかけている現状を見て、現代の人々には強者の論理に人生の目的価値を置くことがすでに出来なくなっているという心理をうかがうことができる。そこにタイミングよく現れたのが、現代版「伊達直人」だった。

◆カーディナルクライマックスが示す真の変革が来るか◆
筆者は昨年12月の「皆既月食の地震と冬至」という記事で、こう書き記した。もう一度以下に掲示したい。「（月蝕図について）いわゆるカーディナルクライマックス直前の完成形態とも呼ぶべき位相だ。この位相は政治と国民の関係、個人と集団の関係の大きな転換の可能性を示している。今後半年以内に国家レベルから個人レベルに至る様々な場面で、関係性の変化が現れると思われる。」「サビアン占星術では、月はサインかにに入る直前で、太陽はやぎに入る直前の「法王の度数」。変化は結果的に一般の人々に良好な結果をもたらすと考えられる。おとめ終盤のジュノーは個人の力の増幅。先の尖閣諸島ビデオ流出事件であったように、個人の行動が国家的な決断を左右する。うお終盤の天王星は集団の パラダイムの劇的な変化を呼び起こすと思われる。」

結果は早速「タイガーマスク現象」という意外な形で現れはじめていると言える。カーディナルクライマックスとは、単に社会的金融的な激変を示しているのではない。サインやぎ冥王星時代の指し示す、「もう一つの価値」に根ざした新しい文化が芽吹くかどうかが、真に追求すべき本当の課題なのだ。カーディナルクライマックスの天体は冥王星を軸とした土星-天王星の大きなてんびんだ。軸と腕をうまく使えば、レバレッジ効果で大きな変革が起こる。また今年の春分図では、土星に木星が衝で、座視するだけでない実行力がある。

21世紀の人類の辿る命運に小さな小さな一石を投じた「タイガーマスク現象」が、カーディナルクライマックス時代の「定礎」の一つとなる。そう信じたいと思う。