現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

児嶋サコ展@渋谷

2006-01-29 | アート感想@関東
飯田橋から渋谷に移動し、東急本店のさらに先にあるアップリンク(写真)へ。ここまで来ると、NHKは目と鼻の先。

児嶋サコ「Afternoon of Atelier―マリの部屋―」

一見可愛いけど、良くみると残酷な姿にされた小動物の立体作品や、自らハムスターになりきったパフォーマンスなどで知られる児嶋サコの個展。今回の展示は、最近公開された映画『ブラックキス』と連動した企画。なんでも、映画に登場する「ヘンタイ人形アーティスト」のイメージにぴったりだったのが、児嶋作品だったらしい。そして、個展最終日に監督自らアポなしで乗り込んで、映画への協力を取り付けたとのこと。この監督、凄い行動力だ……(汗)。

ギャラリーに入ると、近作のドローイングやパフォーマンス写真などが展示されている。ドローイングは児嶋にしては毒々しさの少ない作品だったけど、痛可愛いのは相変わらず。

そして奥の薄暗い部屋にはいると、部屋全体が映画のセットを再現したものになっていた。この「ヘンタイ人形アーティスト」の部屋には、児嶋が過去に作りためたぬいぐるみ作品と、今回の映画のために制作された作品がウヨウヨ。ホワイトキューブの中よりも、作品が活き活きとしていたような気がした。

あと、セットの裏側隅っこに投影されていたパフォーマンス映像《between pillow and FUTON》も、いかにも児嶋サコといった感じで良かった。無邪気に巨大風船にじゃれる小動物姿の作家本人を観ていると、かえって哀れな気持ちになってくる。

アップリンク・ギャラリー(渋谷)にて、2月8日まで(会期中無休)。



映画も観たくなってしまったので、別の日に『ブラックキス』を観てきた。平日の午後だったので席はガラガラで、ほとんど一人客。

「ヘンタイ人形アーティスト」の部屋のシーンは、あっという間に終わってしまったけど、映画のカギでもある児嶋作品の印象は強烈だった。でも、ちょっとグロめで、児嶋サコとは傾向が違うような……。

映画自体も2時間を超えるものだったけど、テンポ良く次から次へと話が展開していき、最後まで飽きることなく楽しめた。ホラーとミステリーの要素が強かったけど、警察内の会議など刑事ドラマとしてもキッチリ描かれていたり、主人公の女性二人の友情物語でもあったりして、盛りだくさんの幕の内弁当と言った感じ。あと、映像的に美しいシーンも多かった。歌舞伎町のネオンがあんなに美しいとは!

渋谷Q-AXシネマにて、ロードショー公開中。

ART@AGNES2006

2006-01-29 | アート感想@関東
アート@アグネス2006に行ってきた。

このイベントは、1/27~1/29の3日間、飯田橋にあるアグネスホテルの1~3階を借り切って、客室ごとに現代アートの商業ギャラリーが展示・販売を行うというアートフェア形式のもの。招待状がないと入れないけど、某ギャラリーからDMが届いたので、運良く観ることができた。

参加しているギャラリーは、私が良く覗いているところばかり。そのため、部屋に入るたびに顔見知りのスタッフと顔をあわせることになり、ちょっと不思議な気分。でも、実際にギャラリー巡りをする手間と時間を考えると、とっても楽で効率的だった。また、ホテルの客室やバスルームに作品が展示されているので、持ち帰ったら思っていたより大きかったという失敗も少なそう。

私が今回初めて観た作品で、特に印象に残った作品は以下のとおり(訪問順)。

ミヅマアートギャラリー加藤愛のドローイング
青山|目黒:田中功起の映像《バケツとボール》
カイカイキキ村上隆の「Inochi」くんのCMっぽい映像
東京画廊劉力国/リュウ・リゴーの白磁の足
山本現代西尾康之の幽霊画

それから、展示施設を持たないユミコチバアソシエイツの存在を知ったのも、今回の収穫だった。

長倉威彦「未構築」@東陽町

2006-01-28 | 建築
東陽町にある竹中工務店東京本店に行ってきた。エントランスロビーにある名和晃平の《Air Cell》などの作品を観たのち、1階の一角に設けられたギャラリーへ。

TAKEHIKO NAGAKURA 未構築

建築家でもあり、CGアーチストでもある長倉威彦の個展。展覧会タイトルの「未構築」は、近代建築の巨匠たちが計画しながらも、諸般の事情により実現しなかったいわくつきの建築をCGで構築・映像化したプロジェクトのこと。リアルな映像のほか、画像と解説のパネルや、三次元プリンターによる模型等の展示もあり。

今回、私が最も衝撃を受けたのがタトリンの《第三インターナショナルのためのモニュメント》。ロシア革命直後に計画されたこのモニュメントは、エッフェル塔を超える400メートル級のタワーで、共産主義を喧伝するラジオ局などを内包するもの。どぎついくらいの真っ赤な色と、斜め上に力強く伸びた二重らせん構造は、当時のロシア・アバンギャルドを象徴するかのようで、ハッキリ言って異様。この異形の建築が長年の風雪に耐えた姿となり、現代のサンクト・ペテルブルグにそびえ立つ光景は、昔のロシアが目指した崇高な理想と、それに伴った巨大な暴力が眠る墓標のようでもあった。

ロシアの圧倒的な赤い象徴と同じくらい印象的だったのが、テラーニ+リンゲーリの《ダンテウム》。これは、イタリアの独裁者ムッソリーニが依頼したもので、ダンテの『神曲』に登場する地獄、煉獄、天国の3つの空間を体験できる建築。なかでもガラスの柱が林立する「天国」は、この世のものとは思えないほど(CGだからこの世のものじゃないけど)美しい空間だった。

このほか、ル・コルビュジェのソビエト連邦人民会堂コンペ案《ソビエト宮》や、モダンすぎるという理由で信徒が建設を阻止したアアルトの《アルトステッテンの境界》などもあり。

GALLERY A4(エー・クワッド)(東陽町)にて、2月28日まで(日・祝休館)。

金沢健一展@銀座

2006-01-27 | アート感想@関東
会社帰りに銀座へ寄り道。

life/art'05 Part3 金沢健一

5人の作家によるリレー個展の3番目。
Part1の記事→INAX・資生堂@銀座
Part2の記事→銀座・京橋ギャラリー巡り

大きい方の部屋の中央に、鉄板のカケラが無造作に集められている。これまでの《音のかけら》シリーズは、鉄板に切れ目が入っていても、バラバラではなかったので、ちょっとビックリ。でも、鉄板のカケラのなかには、半分に切ったスーパーボールの上に置かれているのもあって、これをバチで叩くと良い音が響く。いろんな音がするのが楽しくて、ついつい叩きまくってしまった。

同じ部屋の壁には、カケラを切り出した残りの部分がモザイク模様になっている鉄板《音のぬけがら》が立てかけられている。抜け殻といっても、光と影の効果もあって凛とした美しい姿を見せてくれた。以上二つの部分でインスタレーション《音のかけら―森から》を構成(たぶん)。

このほか映像作品が2点。こちらも派手ではないけど、観ごたえのある作品だった。

木曜・金曜の17時~18時と、日曜の15時~16時には、作家本人によるサウンド・パフォーマンスもあり。私が行ったときには既に終わっていてたけど、ご本人の姿を拝見することができて満足。

さて、もう一つのお楽しみの○○だけど、2つ追加されて6つになっていた。1つはすぐに見つかったけど、もう1つはスタッフの方にヒントをもらってようやく発見。素直な探し方をするのがコツか?

資生堂ギャラリー(銀座)にて、2月12日まで(月曜休廊)。

名和晃平展@谷中

2006-01-25 | アート感想@関東
外出ついでに、フラフラと谷中のギャラリーへ。

名和晃平 ―GUSH―

私にとって名和晃平といえば、ガラスビーズやプリズムシートのイメージが強かったけど、いきなりその先入観は良い意味で裏切られた。ギャラリーに入ると、少々グロテスクな形をした薄緑色の巨大作品《Scum》が私の前に立ちはだかって大迫力。さすがにこれにはビックリ。

《Scum》の下をくぐって、ようやく他の作品が目に入ってくる。そのなかでも、パンチングメタル(細かい穴が無数にあいた金属板)から黒色のグルーを搾り出したような《Exudation#1》が、思わず触りたくなる質感で印象的だった。特に、横から観ると面白い!

また、大阪で観た《A.B.D.》シリーズに通じるドローイング作品《Gush》シリーズも、描かれた形・色ともに面白い作品で、ますます今後の活躍が楽しみになった。

スカイ・ザ・バスハウス(最寄り駅:日暮里、根津)にて、2月25日まで(日・月・祝休廊)。

タッチ・アート展@川越

2006-01-22 | アート感想@関東
蔵造りの街並みで有名な小江戸川越に行ってきた。美術館も蔵造り風なのにはビックリ(写真)。

タッチ、アート!体感する美術展

五感を使って楽しめる作品を集めたグループ展。「美術をかたくるしく考えないで!まずは感じてみて!」という気持ちが、ひしひしと伝わってくるような意欲的な企画。

写真にも少し写っているけど、美術館のエントランスに展示してある作品は、松井紫朗の《Air Drops》。二つの巨大な青いバルーンが下向きに膨らんでいて、よく見ると二つのバルーンがつながっているのがわかる。2階に上って風船の裏側を覗くのも面白い。

同じく松井紫朗の《Aqua-lung, Channel》は、金魚が泳ぐ水槽の側面に、パイプ状の張り出しが付いた作品。張り出し部分に金魚が入ると、ルーペで見たように金魚が大きく見える……はずの作品なんだけど、金魚に嫌われたせいか、私の前ではそこに入ってくれなかった。残念。

そして地下1階の展示室に移動。階段の脇やエレベータの中は、徳田憲樹の《Soap Project》の世界。円形にくりぬかれた石鹸がガラスや鏡に貼り付けられていて、とっても良い香りがした。

展示室で最初に目に入ってくるのは、高田洋一の和紙と竹で作られた3つの作品。非常に軽いこれらの作品は、観客が周りを歩いたときに起こる風でゆらゆらと揺れる。なかでも、茶室のような空間の《森の光》は、中に入ると和紙の天井が揺れ、天井や壁の穴から入る光が交錯する幻想的な作品だった。

今回、私が最も気に入ったのが原田和男の《シデロ イホス》シリーズ。金属でできたおもちゃのような物体は、叩いたり転がしたりして音を出す楽器のような作品。結局、時間がたつのを忘れそうになるくらい楽しんでしまった。でも、金属の棒を弦に見立て、弓で擦って音を出す楽器は、弓がつるつる滑ってあまり良い音が出なかった。松脂があれば良かったかも(笑)。

このほか、小原馨光島貴之の触って楽しめる作品もあって、まさしく五感を総動員する展覧会だった。

川越市立美術館にて、3月26日まで(月曜、1/27、2/27、3/24休館)。

銀座、神楽坂ギャラリー巡り

2006-01-21 | アート感想@関東
続いて銀座へ。


國安孝昌展 ―静かに行く、遠く帰る―

前回、銀座に行ったときは見逃したんだけど、sayakaさんのブログ(→ArtsLog: 國安孝昌展)を読んで面白そうだったので早速行ってきた。

エレベータが8階に着いてドアが開くと、数え切れないほどのレンガと木が部屋を覆い尽くすように積み上げられていて圧巻。この作品は、ギャラリー全体を使ったインスタレーション《静かに行く、遠く帰る》。作品の隙間から奥へ奥へと入っていくと、銀座の中心にいることを忘れてしまいそうだった。

また、木がとぐろを巻いたような《往く鳥の御座》は、どこかで見たようなモチーフだなあ……と思って調べてみたら、松代城山(新潟県)で観た《棚守る竜神の御座》(越後妻有アートトリエンナーレ2000恒久設置作品)も國安孝昌の作品だった。あの作品も、ついさっきまで竜が座っていたかのようにパワー溢れる作品だったなあ。

ギャラリーなつかにて、2月4日まで(日曜休廊)


続いて、神楽坂に移動。雪で足元が滑りそうだったけど、やっとの思いで急坂を下りる。


田中偉一郎個展「クラシック・カラオケ 2006」

新しくオープンしたばかりのギャラリー。しかも、こけら落としに「ノーメッセージ、ノーミーニング」の田中偉一郎を持ってくるとはスゴイ!

ギャラリーの受付の壁にかかっていたのは、東急百貨店の紙袋を使った作品《東急本店》。紙袋にはマジックで大きく「東急本店」と書かれていたけど、その横のフリガナに思わず笑ってしまった。渋谷での位置関係を知っていれば10倍楽しめる作品。

そして奥の部屋には、本物のカラオケセットを使った映像インスタレーション《クラシック・カラオケ》。まず、ホワイトキューブの空間に、カラオケセットという組み合わせがなんとも異様。画面の映像も、本物のカラオケそっくり。しかし、流れる音楽は『ウィリアム・テル序曲』や『春の声』など、クラシックの超有名曲で、歌詞は「ペローン」とか「ニャニャニャン」とか無意味なモノ。これで「作詞:田中偉一郎、作曲:P.I.チャイコフスキー」などと表示されるのには思わず笑ってしまった。本当は歌いたかったけど、他のお客さんもいたのでグッと我慢。

Yuka Sasahara Galleryにて、2月18日まで(日・月・祝休廊)。


あるく 時間のあしあと 秋山さやか展

自身の足跡を、地図などに刺繍で表現する秋山さやかの個展。

海外での個展開催までの一部始終を、絵日記のように刺繍と文章で表現した作品が良かった。次から次へとトラブルに巻き込まれながらも、前向きにがんばっていく作家の姿勢が印象的だった。

高橋コレクションにて、3月11日まで(2/11を除く金・土のみ開場)。


中川トラヲ「日々の手入れ」

木の板に山などを描いた絵画が10点ほど。あえて木目を強調した表現がモチーフと一体になっていて効果的だった。なお、第一生命南ギャラリー(有楽町)でも個展開催中。
中川トラヲ展 妄想の賜物

児玉画廊|東京にて、2月18日まで(日・月・祝休廊)。


あと、以前観た山本現代の「奇想の庭」展に、西尾康之の彫刻が1点追加になっていた。こちらもお忘れなく!

アートジャム@丸ビル

2006-01-21 | アート感想@関東
今日の関東は朝から雪で、東京駅もすっかり雪化粧(写真)。こんな日も展覧会巡りをする私って一体……。

アミューズアートジャムエキシビジョン in 東京 2006

関西の公募系アートイベント「アミューズアートジャム 2005 in 京都」の受賞者11名による展覧会。992組の中から選ばれただけあって、どの作品もレベルが高い。

私が最も気に入ったのは、審査員特別賞のひらたたかひろによる映像作品。日常的な風景をコンピュータで加工し、不思議で面白い映像を作り上げていた。5分程度の映像が4本あったけど、最も印象に残ったのが《The Trains》。画面を山手線(内回り)の電車が横切ると、それを追いかけるように次から次へと同じ方向の電車が横切っていく。電車は次第に短くなっていき、最後には薄っぺらい形になってしまう。そして、三・三・七拍子をしたかと思うと、外回り電車と湘南新宿ラインを巻き込んで「かえるの歌」の輪唱が始まる。この文章を読んでもどんな映像だか想像できないかもしれないけど、だまされたと思って実物を観てほしい。

グランプリの大西康明の作品も良かった。この作品は京橋で観た《呼吸星雲》と同様に、巨大なビニール袋が膨らんだりしぼんだりする作品。蓄光シールの水玉は少ないけれど、代わりに水玉から光るヒモが垂れ下がっていて、このヒモが成長しているように見えるのが面白かった。

このほか、準グランプリの岩本愛子による、トランプのクイーンをマネキンでリアルに表現した作品が不気味で印象に残った。

丸ビル1Fマルキューブにて、明日(1/22)まで、11時~21時。

「アートと話す/アートを話す」ほか@初台

2006-01-19 | アート感想@関東
初台にある東京オペラシティ アートギャラリーに行ってきた。


アートと話す/アートを話す バウハウスからコンテンポラリー:ダイムラー・クライスラー・アート・コレクション

ダイムラー・クライスラー・アート・コレクションのうち、バウハウスの巨匠から若手まで、約50人の作家による約100点の作品を展示。作品を観るのが楽しくなるワークブックを、無料で貸し出してくれるのも嬉しい。

この展覧会で私が最も気に入ったのは、ジョン・M・アームレーダーの《してはいけない》。チラシにも写真が載っているこの作品は、工業製品を並べたインスタレーション。どこかで見たような便器があるなあ、と思って近づいてみると……!!思わず笑ってしまった。理由を知りたい方は、作品目録の「素材・技法」欄をご覧あれ。

自動車メーカーのコレクションだけあって、クルマに関係した作品が多い。そんな中で私が一番気に入ったのは、カースティン・モッシャーの映像作品《カーメン》シリーズ。ほふく前進をする兵士のオモチャに、クルマの模型がかぶせてあって、クルマがノコノコ歩いているような姿がとってもユーモラス。このクルマが焚き火に突っ込んだり、本物のクルマに轢かれたりするのもシュールで面白い。あと、この作品のスペルは《Carmen》だけど、どうやらビゼーのオペラとは関係ないみたい。

このほかの作品では、ゲルヴァルト・ロッケンシャウプの《6つのアニメーション》や、ダニエル・ビュレンの《正方形とダンス》が良かった。

東京オペラシティ アートギャラリー(3Fギャラリー1&2)にて、
3月26日まで、月曜休館(2/20開、2/12休館)。


project N24 小林 浩

単色のグラデーションでぬいぐるみをリアルに描いたアクリル絵画。グラデーションは地図の等高線のように1色ずつシャープに塗り分けられていて、それぞれの色がこんもりと盛り上がっている。近くでは何の絵かわからないけど、絵から徐々に離れていったとき、急にリアルなぬいぐるみが浮かび上がってくる感覚が面白い。この作家は、写真をコンピュータ処理したイメージを、アクリル絵具でキャンバスに写し取っているとのこと。

東京オペラシティ アートギャラリー(4Fコリドール)にて、
3月26日まで、月曜休館(2/20開、2/12休館)。


ついでにオペラシティの近くにあるギャラリーへ。ケンジタキギャラリーの展示が良かった。


小柳裕 新作展

「VOCA展2004」で奨励賞を受賞した、77年生まれの作家の個展。「VOCA展」に出展したものと同じ《エーテル》シリーズの油彩が10点ほど。団地、分譲住宅、踏切、公園といった、どこにでもあるような風景が多少ピンボケ気味に描かれていて、観ていて何だか懐かしい。この年代の都市出身者にとっては、このような風景が原風景なのかも。あと、画面の四隅が丸くなっている作品は、昔のテレビを観ているような感覚。

ケンジタキギャラリー(初台)にて、2月18日まで、日・月・祝休廊。

銀座・京橋ギャラリー巡り

2006-01-13 | アート感想@関東
この日は銀座・京橋地区のギャラリー巡り。
とりわけ印象に残ったのは下記のとおり。


銅金裕司 beauty music 美容音楽

以前CET04で観た、サイエンスとアートを融合させた作品を発表している銅金裕司の個展。

ちょっと暗めのギャラリーに入ると、中央にカーテンで囲まれた空間があって、その中で作品を体験する。椅子に座り、腕輪(アース用)と手袋を身につけ、頬に両手を当てると、ゆったりとした心地よい音が流れ出す。これは、生体電位の変化を音楽に変換したものとのこと。机の上には鏡もあるので、容姿に自身のある方は、自分の顔を見ながらうっとりするのも良いかも(笑)。

このほか、バラの生花から精油の抽出実験もあり。

art space kimura ASK?(京橋)にて、1月21日まで(日祝休廊)。


高橋靖史展 ―3D人体系―

9階でエレベータを降りると、まず白い皿を重ねて作ったような巨大な物体が目を引く。つぶれたような形になっているけど、《Torso》というタイトルからどうやらこれは人体らしい。

展示室に入ると、壁一面に赤いバラのようなモノが密生しているようで圧巻。この《Graft '06》は真っ赤なシャツを巻いたものを壁に貼り付けたもので、シャツの間から無数の枝がこちらに向かって伸びている。

圧倒的な赤い壁の前には、ダンボールを重ねて作った女性の人体《Selma》が立っている。ダンボールがすべて同じ向きで重ねてあるので、正面に立つと奥の赤い壁が透けて見え、人体が消失していくような感じがした。

このほか、人体の表面を石膏でかたどり、10センチほどの正方形に分割して壁に並べた作品《Woman II》なども印象的だった。

INAX GALLERY 2(京橋)にて、1月28日まで(日祝休廊)。


life/art'05 Part2 田中信行

5人の作家によるリレー個展の2番目。
Part1の記事→INAX・資生堂@銀座

漆で塗られた曲面の作品が3点、床に置かれたり床から立ち上がったりしている。曲面の有機的な形態と、漆塗りの平滑な表面の組み合わせがなんとも魅力的だった。

あと、このリレー個展のもう一つの楽しみである○○○○の○○は、1つ増えて4つになっていた。次回は5つかな?

資生堂ギャラリー(銀座)にて、1月22日まで(月曜休廊)。

スイス現代美術展@千葉市美

2006-01-09 | アート感想@関東
埼玉県立近代美術館から、京浜東北線→武蔵野線→総武線→バスと乗り継いで、千葉市美術館へ。

スイス現代美術展 リアルワールド―現実世界

「ダイナミック・スイス」(日本におけるスイス年)関連イベントのひとつとして企画された展覧会。5人(組)のスイス人作家がそれぞれ一部屋ずつ使用し、大作中心の展示を行っていた。

私が最も気に入った作品は、ウーゴ・ロンディノーネの《スリープ》。大きな部屋の正面と右側の壁の前に、白く塗られた木製の壁が立っていて、そこにはさまざまなサイズの写真が飾られている。そこには海辺を歩く若い男性と女性の姿が写っているけど、二人が一緒に写っている写真は一枚もない。露出過剰気味の白っぽい背景と、壁に仕込まれたスピーカーから流れる憂鬱な音楽が、すれ違う男女の心理を象徴しているようで、ストーリーを想像せずにはいられない作品だった。

このほか、演劇の映像を、その演劇に使用した舞台セットから観る、フレデリック・モゼール&フィリップ・シュヴィンガーの《抑留区域》や、リヒターのモノクローム絵画みたいだと思って近づいてみたら、フレームに灰色の軍用防水布が張られていただけだったファブリス・シージの《グレーのモノクローム》が印象的だった。

千葉市美術館にて、2月26日まで(月曜休館)。

遊びの芸術@埼玉近美

2006-01-09 | アート感想@関東
北浦和公園内にある埼玉県立近代美術館に行ってきた。この美術館は、屋内外に多くの作品が点在していて、なかでもコインロッカーの一つをLEDが占拠する宮島達男の《Number of Time in Coin-locker》や、西野康造による公園の噴水内にある巨大サックス《風の中へ》が私のお気に入り。これらの作品マップは、常設展の解説カードのところで入手可能。

木村直道+遊びの美術

遊びの精神と美術の関わりに焦点をあてた2部構成の展覧会。第1部では、埼玉ゆかりの彫刻家、木村直道のユーモアあふれる作品を展示。第2部では、江戸から現代まで、国内外の美術家10人の作品を展示。非常に意欲的な企画で、観ごたえのある展覧会だった。

木村直道の作品は、スクラップを組み合わせた彫刻(スカルプチャー)で、作家自ら「スクラプチャー」と命名したもの。見方によって、角度によって物の価値を転換させた(会場内の解説より引用)作品は、約70点のどれもが遊び心に溢れていて、見ていて楽しいものばかり。しかし、こんな楽しい作品を作ってきた作家が49歳の若さで自ら命を絶ったことを知り、ちょっとショック……。

第2部に入ると、マルセル・デュシャンハンス・アルプ元永定正立石大河亞(タイガー立石)歌川国芳山東京伝と古今東西のビッグネームの作品のオンパレード。なかでも江戸時代の二人の作品が充実していて、観ごたえがあった。

続いて、田中偉一郎山口晃藤崎凡子による私好みの現代アート作品が並ぶ。

田中偉一郎の作品は六本木で観た作品が中心で、《ハト命名》や《こけしいきいき》の映像作品に再び見入る。初めて観た映像付インスタレーション《ニュー・スポーツ》も、テンポが良くて面白い。また、持ち帰り可能な《もうじき作品集 vol.1~6》からも、この作家の豊富なアイディアが垣間見れて良かった。

山口晃の作品は、三越で観たものが多かったけど、中目黒で観た《歌謡ショウ圖》は、やはり半分が鏡に映ったものだった。藤崎凡子の作品は、月の形をした風船を屋外で散歩する写真・映像《つきのさんぽ》シリーズなど。これもなかなか。

最後はエリヴィン・ブルムの体験型作品。私はちょっと遠慮したけど、勇気のある人はぜひ体験して欲しい。

埼玉県立近代美術館にて、2月5日まで(月曜休館)。

常設展

モネからデルヴォーまでの西洋近代の名画、速水御舟らの日本画、駒井哲郎の版画などの充実したコレクション。なかでも、関根伸夫の初期作品から関連資料までを並べた[アーティスト・プロジェクト 関根伸夫「位相―大地」が生まれるまで]が良かった。当時の写真から7分の映像を構成した[映像版《位相―大地》]は必見!

今回の展示は1月29日まで(月曜休館)。

われらの時代@水戸芸

2006-01-04 | アート感想@関東
「文化センター入口」でバスを待っていたら、ちょうど偕楽園行きのバスが到着。おかげで水戸芸最寄の「泉町一丁目」へ一本で行けた。我ながら運が良い。

水戸芸術館屋外では、DROPSという光モノ作品の展示があったけど、昼間だったので楽しめなかった。点灯時間は17:00~22:30、1月15日まで。

われらの時代

複数の委員によって推薦された作家25人のグループ展。メンバーは若手作家と地元作家が中心。

今回、最も印象に残ったのが雨宮庸介によるインスタレーション《THE WORLD》。壁で仕切られた小部屋に入ると、巨大なテディ・ベアのオブジェが目に入ってくる。熊をよく見ると、頭の部分が割れていて、そこから新しい頭が脱皮しているようでちょっと不気味。部屋の中央付近にはドーナツ型のテーブルがあり、そこにはリンゴ等が並ぶ。このリンゴ、本物と「つくりもの」が混ざっているらしいんだけど、まったく判別できず。凄い!奥の壁には鏡を模した楕円形のスクリーンがあって、部屋の中で行われたパフォーマンス映像が左右反転して上映されている。つまり、この部屋で過去に起こった「事件」を、鏡を通して見ることができて、なんだか不思議な感覚だった。

同じ作家による、熱で溶けたような本物そっくりのリンゴ《truth》や、「世界」という文字を書いた本物そっくりのバナナ《世界(world)》も印象的だった。

伊藤東彦の《布目蓮文トルソー花器》など7点は、陶による布目の花器に、ハスやケシなどの花を描いたトルソー(胴体だけの彫像)。まるで刺青が彫られた女性の体のように見えて、なんとも艶めかしい。この作家は伝統工芸界では有名な方らしいけど、伝統工芸展にこの作品を出品したところ、選外になっってしまったとのこと。なんとも面白いエピソード!

このほか、不敵な笑みを浮かべる少女をしっかりと描いた櫻井りえこの《昏星(blind star)》など7点の油彩や、妖しげな魅力を放つ戸田和子の《Dappi》など10点の人形が特に印象に残った。

水戸芸術館現代美術センターにて、2月5日まで(月曜休館、ただし1/9開館、1/10休館)。

また、茨城県立県民文化センター|展示棟で開催されるダイアローグ2006展 23人による現代美術の「対話」にも櫻井りえこら9人が出展するので、そちらもどうぞ。会期は1月9日から15日まで。

現代中国の美術展@茨城近美

2006-01-04 | アート感想@関東
水戸へ行ってきた。今年初の展覧会めぐり。

水戸駅北口8番乗り場からバスに乗り、文化センター入口で下車。水戸はバスの本数が多くて便利。バス停の目と鼻の先にあるのが、茨城県近代美術館(写真)。

現代中国の美術展

もともと水戸芸が目当てで、こっちはついでだったけど、質・量ともにレベルが高い展覧会でビックリ!はっきり言って、水戸芸よりもこっちの方が良かった。

この展覧会では、中国最大の公募展「全国美術展」の受賞作品の中から、日本側主催美術館が厳選した95点の作品を展示。予算の都合で絵画作品のみだけど、数万点の中から選ばれただけあって、完成度のきわめて高い作品ばかり。

しかも、モチーフ・技法ともに作家の個性が強く出ていて、ただ眺めているだけでも十分に刺激的な作品ばかり。近年中国では、国際展で活躍する「反体制側」の作家の実力を、国が認めるようになってきているらしいので、それも影響しているのかも。

出展作品は、中国画、油彩画、版画、水彩画、漆画、年画、連環画、漫画と多彩。なかでも日本画とほぼ同じ技法を用いる中国画に印象的な作品が多かった。

王申勇/ワン・シェンヨンの《パンダ》は、中国的な表現で描かれた木に、西洋的な写実表現で描かれた5頭のパンダが戯れるのを描いた作品。パンダの毛の一本一本までが丁寧に描かていれ、毛のモコモコ感がとにかく可愛らしかった。

何暁雲/フー・シァオユンの《質朴と華麗》は、都会らしいオシャレな格好の女性が行きかう街の中で、軍服姿の女性2人がキリリと歩く作品。現代中国を象徴したモチーフと、遠くからでは真っ白に見えてしまうくらい淡い色使いが印象的だった。

このほか中国画では、中国初の有人宇宙船「神舟」をマンガのような立体感で描いた王利/ワン・リーの《日月星辰》や、農村の女性・牛・犬を写実的に描いた王宓/ワン・ミーの《納湖湖畔》が特に印象に残った。

油彩画では冷軍/ロン・ジュンの《モナリザ―微笑のデザイン》が凄まじかった。皮膚から透けて見える血管までを徹底した写実で描いたこの作品は、写真よりもリアルな存在感があり、本物の女性に見つめられているような感覚を覚えた。印刷だとこの凄みは伝わってこないので、ぜひ本物を観てほしい!

茨城県近代美術館にて、2月5日まで(月曜休館、ただし1/9開館、1/10休館)。

その後、新潟市美術館(4/7~5/14)、日中友好会館美術館(東京、5/20~7/2)、福岡アジア美術館(9/16~10/29)に巡回予定。