現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

食と現代美術2、ほか

2006-02-26 | アート感想@関東
雨の中、横浜のBankARTに行ってきた。まずは、馬車道駅前のBankART1929へ。

食と現代美術 part2 - 美食同源

(ブログで知り合った方に招待券をいただきました。ありがとうございます。)

去年のpart1に引き続き、2回目の展覧会。

1階では、BankART Marketが開催中。個性的な屋台がひしめくこのフロアは、まさにマーケットそのもの。食べ物・飲み物のほか、ちょっとしたグッズなども売っていた。数ある屋台のなかで最もインパクトがあったのは、過激な活動で知られる画家増山麗奈の屋台。信じられないものを売っていて(しかも、製造直売!?)、さすがの私もこれにはビックリ。

3階は食をテーマにした作品展示。ここでも田中偉一郎は異才を発揮していた。あえて作品タイトルは伏せるけど、このセンスは只者じゃない。このほか、トラフの《エッグ座布団》が、見た目と質感にギャップあって面白かった。

地下1階は「現代美術に現れる食のイコン」の展示。ふむふむ。

続いて、徒歩3~4分のBankART NYKに移動。

1階はホール全体を使った折元立身のインスタレーション《TATSUMI ORIMOTO Bread Variation》。約7000個のパンを使った展示は圧巻だった。でも、会期中にカビが生えたりしないか心配。

NYKの2階も食をテーマにした作品展示。入口のところでは、ガラスケースに入った須田悦弘の《するめ》と《雑草》がお出迎え。このスルメ、やっぱり木彫りなんだろうなあ。

この階の一番奥のスペースでは、水戸芸術館で観た雨宮庸介の《THE WORLD》が展示されていた。展示の内容は水戸芸のとほぼ同じだけど、配置が変わっていて、映像も現地のものになっていた。

このほか、謝琳の砂糖でできたウェディングケーキのようなタワー群《untitled》も印象的だった。

BankART1929およびNYKにて、3月14日まで(会期中無休)。


同じくNYKの2階では、もう一つの展覧会が開催中だった。

エレクトリカル・ファンタジスタ 2006

入口で靴を脱いで、フワフワのクッションの上を歩いて作品を観るのは面白かったけど、なんとなく前日に観たメディア芸術祭と印象が重なる作品ばかり。

児玉幸子の《モルフォタワー》が磁性流体でできているのを知り、ようやくその原理を理解。道理で液体がトゲトゲになるわけだ。

////// fur ////の《PainStation》は、負けた方が熱・電気ショックなどの罰を左手に受ける対戦ゲーム。ケガは「自己責任」らしいけど、勇気ある方はぜひプレイして欲しい。

BankARTNYKにて、3月14日まで(会期中無休)。

文化庁メディア芸術祭

2006-02-25 | アート感想@関東
この日は朝からギャラリー巡り。でも、ブログに書きたくなるほどの収穫は無し……。

疲労困憊になりながらも、メディアアートに一縷の望みを託してみる。場所は恵比寿ガーデンプレイス内の東京都写真美術館。そう、年に一度のメディアアートの祭典である。

文化庁メディア芸術祭

館内に入って、まず人の多さに驚く。下手をすると観客よりも監視員の方が多い現代アート展ばかり観ている私は、それだけでぐったり。入場無料なのに加え、ゲーム・アニメ・マンガも扱っているから当然といえば当然の混雑。といっても、印象派とかピカソ展の混雑と比べると随分マシ。

1階ではシンポジウムが開催されていたようだけど、時間がないので地下1階へ。この階は、歴代受賞者の作品を展示する「デバイスアート展」や、最新のデジタルメディア技術と研究を紹介する「先端技術ショーケース」などの展示。なかでも、クワクボリョウタ児玉幸子明和電機などの作品が展示されていた「デバイスアート展」が観ごたえあった。

エレベータに乗って3階へ移動。この階はエンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の受賞作品展。エンターテインメント部門とは要するにゲーム部門のことで、実際に遊ぶことができる。もちろん、マンガも自由に読むことが可能。お好きな方にはたまらないフロアかも。

最後に階段で2階へ。お目当てのアート部門だったけど、ヘトヘトに疲れていたせいか、積極的に楽しむことができず残念。でも、大賞を獲得したアルバロ・カシネリの《クロノス・プロジェクター》は、今後の展開次第では面白いことになりそうな予感。この作品は、弾力性のあるスクリーンに静止画が映っていて、そのスクリーンを手で押し込むと、凹んだ量に比例してその部分だけ時間が経過していくというもの。つまり、空を押し込むとそこだけ夕暮れになって、さらに押し込むとそこだけ真っ暗になる。時間を自由自在に操れるような感覚が面白かった。

東京都写真美術館にて、3月5日まで(会期中無休)。

イベント情報2件

2006-02-23 | アート情報その他
以下の2つのイベントは面白そうだけど、予定が入っていてちょっと行けなさそう。ご参考までに。

日本|美術|映画 アートドキュメンタリー 1930's~2000's横浜美術館レクチャーホール

2月25日・26日、3月4日・5日の4日間で、アートドキュメンタリー映画37作品を上映するイベント。

なかでも、2月26日(日)19時~20時20分に上映されるプログラム「現代アーティストとその仕事」が面白そう。プログラムの内容は『森村泰昌 女優家の仕事』と『ピュ~ぴる 愛の生まれ変わり』の2作品で、今回初公開となる『ピュ~ぴる 愛の生まれ変わり』は、横トリでのパフォーマンス記録。


12時間美術館パナソニックセンター

お台場に3月4日・5日の計12時間だけオープンする美術館。会田誠高嶺格照屋勇賢らの作品展示のほか、映像上映、ワークショップ、トーク、ライブなど。

始動

2006-02-22 | Weblog
先日、私が参加しているアマチュアオーケストラの演奏会が無事終了しました。聴きに来てくださった皆様、どうもありがとうございます。

ブログは少し休んでしまいましたが、今週末あたりから再び展覧会巡りを開始いたしますので、これからもよろしくお願いいたします。

銀座・京橋ギャラリー巡り

2006-02-16 | アート感想@関東
この日は京橋・銀座のギャラリー巡り。そのうち印象に残ったのは以下のとおり。

大和由佳展 ―地表の鳥―

カーペットを空を飛ぶ鳥のカタチに切り抜き、そこに貝粉や墨粉などを埋め込んでつくられたインスタレーション。足元に飛ぶ鳥がいるのは不思議な感覚で、天地が逆転したようにも、影が落ちているようにもみえる。その場ではそれほど感じなかったけど、あとから不思議で緊張感のある世界が気になってくる作品だった。

INAX GALLERY 2(京橋)にて、2月25日まで(日・祝休廊)。


野田凪展 “HANPANDA コンテンポラリーアート展”

1階には、右半分がパンダ、左半分が他の動物の「ハンパンダ」がずらりと並ぶ。一体だけならカワイイけど、これだけの数が並ぶと異様な光景。なかでも鹿のハンパンダの剥製壁掛けが印象的だった。一方、地下1階は、商業デザイナーとしての作品の展示。

ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて、2月28日まで(日・祝休館)。

また、ギンザ・コマツ 1F アートスペースでも作品展示中(3月22日まで)。


life/art'05 Part4 中村政人

5人の作家によるリレー個展の4番目。
Part1の記事→INAX・資生堂@銀座
Part2の記事→銀座・京橋ギャラリー巡り
Part3の記事→金沢健一展@銀座

ギャラリーに入ると、どう見ても展覧会の準備中。会期を間違えたかな?と思い、受付の人に聞いてみると……なるほど納得。また会期の後半に再訪しようっと。

あと、例の○○は1個増えて7つになっていた。うち1個は別の場所に移動。今回はわりと素直かも。

資生堂ギャラリー(銀座)にて、3月5日まで(月曜休廊)。

倉本麻弓展@新川

2006-02-14 | アート感想@関東
この日は茅場町界隈のギャラリー巡り。そのうち一つが私にとって大ヒット!

倉本麻弓「夢のまちの病院・学校」

作家本人の独特な夢の世界を、箱庭のような作品で再現している倉本麻弓の個展。今回の出展は、“夢のまち”の病院と学校での出来事を扱った新作20点。

ギャラリーの壁からは小さな棚がいくつも飛び出ていて、そこに数センチから20センチ角の小さな箱が置かれている。箱の側面には覗き穴があって、そこから作家の夢の世界を覗き見るのが今回の新作。

夢の世界の出来事なだけあって、「槍で自分の体を貫通させる大会」や「サバミソ入りおにぎり(のり付き)に群がる人々」といった、現実では考えられない世界が次々と展開される。紙でできた手づくり感漂う人・モノと、ものによってはかなり強烈な出来事との組み合わせが絶妙で、次から次へと夢中になって箱を覗いてしまった。

このほか、映像作家の茂木薫により映像化された夢の世界もあり。でも、実写よりも模型の方が面白いかも。

Gallery Jin(最寄り駅:茅場町)にて、3月11日まで(日・月・祝休廊)。

MOTアニュアル2006ほか

2006-02-12 | アート感想@関東
東京都現代美術館(MOT)に行ってきた。

MOTアニュアル2006
No Border 「日本画」から/「日本画」へ


毎年、年度末に開催される企画展「MOTアニュアル」。去年は女性作家にスポットを当てたものだったけど、今年はカッコつきの「日本画」。MOTの企画だけあって、従来の日本画の概念規定には収まらない作品ばかり。

出品作家は、松井冬子篠塚聖哉町田久美長沢明吉田有紀三瀬夏之介天明屋尚の7名。日本画の公募展で活躍しつつも、そちらで受け入れられないモチーフを現代美術のフィールドで描く作家から、岩絵具や膠などを一切使わずに「日本画の精神」だけをよりどころとする作家までの多彩な顔ぶれ。なかでも特に印象に残ったのは、松井冬子町田久美の作品。

松井冬子は、芸大大学院で日本画を専攻していて、公募展でも活躍しているという、いわば生粋の日本画家。そんな彼女が現代美術のフィールドで描くのは、幽霊画など、現代の日本画の世界ではほとんど描かれることのないモチーフ。完璧に近いテクニックと精密な線で描いた幽霊や、腹を開いて子宮を見せびらかすかのように横たわる女性の視線を観ていると、身も凍るような恐ろしさを感じた。

町田久美の作品は、雲肌麻紙に墨で線を描き、そのごく一部に顔料で彩色したもの。少しきわどいモチーフを、大胆な構図と漫画に通じるようなシャープなラインで描いた作品からは、絶妙なバランスで立ったような緊張感を感じた。大作も良かったけど、ほぼA3サイズの小品群が特に印象的だった。しかも、そのほとんどが高橋コレクションの所蔵。さすがは目のつけどころが違う。

転換期の作法
ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術


社会主義体制崩壊後、「民主化」「自由化」などの転換期にある中東欧諸国の現代アートにスポットを当てた展覧会。日本ではあまり知られていない10人と1グループの作家たちの作品を展示。

私とは価値観や感性が違いすぎるせいか、???と思うだけの作品が多かった。映像作品(ドキュメンタリーっぽいものが多い)を全部観れば3時間以上になるので、手続きをすれば1回だけ再入場できるそうだけど、とてもそこまでじっくり観ようという気にはならず、あっというまに観終わってしまった……(汗)。

そんななかでも私が気に入った作品は、赤いソファベッドに小さな穴がいくつもあって、そこから小さな声が聞こえてくるイロナ・ネーメトの《多機能な女性》と、ビニール袋に入ったカップめんがスナック菓子が勝手に動くクリシュトフ・キンテラの《もううんざり》。特に後者は、タイトルのような心境になりそうだった私を、ぐるぐる回るネギが癒してくれた。

MOTコレクション あなたのいるところ/コラージュの世界

いわゆる常設展。以前は東京都美術館から移管された作品から年代順に……といった構成だったけど、最近はテーマ別にコレクションを構成したものになっていて、以前よりも楽しめる展示になっている。

今回、最も印象に残った作品は、クリスチャン・ボルタンスキーの《死んだスイス人の資料》。ビスケット缶に貼られた630人の写真が、暗くて広い展示室に浮かび上がるのを見ていると、ホロコーストのできごとが決して歴史の本の中だけの話ではないことを実感させられるようだった。

最後に定番の宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》でシメ。やっぱりこの作品を観ないと、MOTに来た気がしないなあ。

東京都現代美術館(最寄り駅:清澄白河or木場)にて、いずれの展覧会も3月26日まで(月曜休館)。

直島、スタンダード展開催決定!

2006-02-10 | アート情報その他
噂には聞いていたけど、直島で企画展「NAOSHIMA STANDARD」が開催されるとのこと。
開催期間: 2006年10月7日(土)~12月24日(日)、2007年2月24日(土)~4月15日(日)
会 場: 香川県直島および直島諸島
参加予定アーティスト:
 上原三千代、大竹伸朗、小沢剛、川俣正、草間彌生、
 アントニー・ゴームリー、SANAA、デイヴィッド・シルヴィアン、
 杉本博司、須田悦弘、千住博、三宅信太郎、宮本隆司
ニュースソースはこちら→あのスタンダード展が10月開催決定!(プレスリリース)

年末に行ったばかりだけど、また行かなくては!
直島旅行記(全6回)

東京・ベルリン展@森美

2006-02-05 | アート感想@関東
六本木ヒルズに行ってきた。写真は展望台から見た東京タワーと東京湾。

東京―ベルリン/ベルリン―東京展

19世紀末から繰り広げられてきた、東京とベルリンの文化・芸術的交流の軌跡をたどる展覧会。美術・建築・写真・デザイン・演劇など約500点の作品・資料を、年代ごとに分けた11のセクションで展示。これだけの量を一点ずつ丹念に観ると時間的にも体力的にも辛そうだったので、戦後の3セクションをじっくり鑑賞。

9. 復興の時代1945-1950年代

実験工房の写真作品や、岡本太郎河原温の絵画など、国内のコレクションが中心の展示。どこかで観た作品ばかりだったけど、なかなか豪華なラインアップ。

10. フルクサス、ポップアートと新表現主義―1960年代の前衛芸術

先日亡くなったナムジュン・パイクのパフォーマンス写真や、ヨーゼフ・ボイスとのパフォーマンス映像が印象的だった。このほか、草間彌生タイガー立石横尾忠則の作品もこのセクション。

11. ベルリンの今―壁崩壊後の現代美術

このセクションの展示が私にとって最も面白かった(予想どおり)。今回はドイツの現代アートばかりだったけど、この展覧会がベルリンに巡回する際は、日本の現代アートにも焦点が当てられるとのこと。私としてはその方が良かったかも。でも、いくつか印象に残る作品があった。

キャンディス・ブレイツの《キング(M・ジャクソンの肖像)》は、16面の縦長スクリーンを横一列に並べた映像作品。それぞれの画面では、一般公募で選ばれた16人のファンが、アルバム「スリラー」の音楽にあわせて歌ったり、踊ったりしている。歌手になりきってノリノリで踊っている人がいる一方で、ほとんど直立不動で歌っている人がいるのが観ていて面白い。でも、様々な人種・性別の人たちが息をピッタリあわせて歌っているのが、(私の推測だけど)別々に撮影したものを重ねたものだと気づいたとき、ちょっと不気味なものを感じてしまった。また、曲間の時間のすごし方も、まさに十人十色(十六人十六色?)なのでお見逃しなく。

マルティン・リープシャーの《フィルハーモニー1》は、オーケストラの演奏会が行われているホールを撮影した360度のパノラマ写真。そこには奏者・観客など無数の人が写っているけど、それら全員が作家本人の自作自演というのがなんとも奇妙な光景。真剣な表情の奏者たちと、かなり行儀の悪い観客たち(もちろん全て作家本人)という対比も面白い。あと、弦楽器の構え方が比較的サマになっていたのも、個人的にポイントが高かった。

このほか、本展のために制作した壁画に旧作絵画を組み合わせたフランツ・アッカーマンの《ゴールデン・トゥリー》や、かつて社会主義体制の象徴であったが、アスベスト除去工事のために廃墟となった「共和国宮殿」を扱ったフランク・ティールニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニの作品が印象に残った。

森美術館にて、5月7日まで(会期中無休)。