現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

長倉威彦「未構築」@東陽町

2006-01-28 | 建築
東陽町にある竹中工務店東京本店に行ってきた。エントランスロビーにある名和晃平の《Air Cell》などの作品を観たのち、1階の一角に設けられたギャラリーへ。

TAKEHIKO NAGAKURA 未構築

建築家でもあり、CGアーチストでもある長倉威彦の個展。展覧会タイトルの「未構築」は、近代建築の巨匠たちが計画しながらも、諸般の事情により実現しなかったいわくつきの建築をCGで構築・映像化したプロジェクトのこと。リアルな映像のほか、画像と解説のパネルや、三次元プリンターによる模型等の展示もあり。

今回、私が最も衝撃を受けたのがタトリンの《第三インターナショナルのためのモニュメント》。ロシア革命直後に計画されたこのモニュメントは、エッフェル塔を超える400メートル級のタワーで、共産主義を喧伝するラジオ局などを内包するもの。どぎついくらいの真っ赤な色と、斜め上に力強く伸びた二重らせん構造は、当時のロシア・アバンギャルドを象徴するかのようで、ハッキリ言って異様。この異形の建築が長年の風雪に耐えた姿となり、現代のサンクト・ペテルブルグにそびえ立つ光景は、昔のロシアが目指した崇高な理想と、それに伴った巨大な暴力が眠る墓標のようでもあった。

ロシアの圧倒的な赤い象徴と同じくらい印象的だったのが、テラーニ+リンゲーリの《ダンテウム》。これは、イタリアの独裁者ムッソリーニが依頼したもので、ダンテの『神曲』に登場する地獄、煉獄、天国の3つの空間を体験できる建築。なかでもガラスの柱が林立する「天国」は、この世のものとは思えないほど(CGだからこの世のものじゃないけど)美しい空間だった。

このほか、ル・コルビュジェのソビエト連邦人民会堂コンペ案《ソビエト宮》や、モダンすぎるという理由で信徒が建設を阻止したアアルトの《アルトステッテンの境界》などもあり。

GALLERY A4(エー・クワッド)(東陽町)にて、2月28日まで(日・祝休館)。