現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

カルティエ財団展@MOT

2006-04-23 | アート感想@関東
木場公園北端のMOTに行ってきた。

カルティエ現代美術財団コレクション展

カルティエ現代美術財団(パリ)の世界で初めての大規模なコレクション展。質・量はもちろん、作品サイズまでハイレベルな展覧会だった。企画展示室の全フロアを、一つの展覧会で使用するのは久しぶりかも。

1階の展示で特に印象に残ったのは次の3点。ライザ・ルーの《裏庭》は、実物大の裏庭を模した立体作品だけど、花や草の表面が全てビーズでできていてキラキラと輝いている。よくもまあ、これだけのビーズを組み合わせたもんだとしばし唖然……。ロンミュエクの《イン・ベッド》は、ベッドに横たわる巨大な女性像。部屋に入った瞬間、驚きのあまり声を出しそうになってしまった。生まれたばかりの赤ちゃんにとって、母親はこれくらいの大きさとのこと。リチャード・アーシュワーガーの《クエスチョン・マーク/3つのピリオド》は、“...?”をそのまま立体化した作品。そのまんまの感想だけど、見ているこっちまで“...?”って気分になった。

2階の小展示室では、美術界のシンデレラ・ガール松井えり菜の油彩、《宇宙☆ユニヴァース》と《えびちり大好き!》を展示。まだ学生さんなんだけど、ビッグネームの作品に負けないくらいの存在感で、財団がGEISAIで即買したのも分かるような気がした。GEISAIで観たときは、作家がオルゴールのネジを巻いてくれたけど、さすがに今回それはないみたい。

3階の展示で特に印象に残ったのは次の3点。トニー・アウスラーの《ミラー・メイズ(死んだ目が生きている)》は、1.8mの球体に眼の映像を投影したもの。この球が展示室にゴロゴロと10個転がっていて、観客はその間を歩いて抜ける。ちょっと不気味な空間だった。デニス・オッペンハイムの《テーブル・ピース》は、長さ18mの細長いテーブルの両端に2体の人形が座っていて、お互いなにやらワケの分からないことをわめいている。コミュニケーションについて考えさせられる作品。アルタヴァスト・ベレシャンの映像《我々の世紀》は、ロケット打ち上げの記録映像を編集した作品。カットが次々と切り替わり、打ち上げへの期待とともに、不安な気持ちもかき立てられていく、そして……。

地下の展示で特に印象に残ったのは次の2点。ウィリアム・ケントリッジの《ステレオスコープ》は、木炭画で人間の孤独を淡々と描いたアニメーション。物語は良く分からなかったけど、なぜだと胸がじーんと熱くなった。サラ・ジーの《立ち上がるものは全て収斂する》は、ガラクタ(?)をツル植物が伸びるように展示したインスタレーション。MOTの巨大な吹き抜け空間に、ものすごく栄える作品だった。

東京都現代美術館(最寄り駅:清澄白河)にて、7月2日まで(月曜休館)。

神楽坂・谷中

2006-04-22 | アート感想@関東
この日はギャラリー巡り。まずは神楽坂へ。

束芋「台所にて」

6月3日からは原美術館での個展も予定されていて、今後が楽しみな若手作家の一人、束芋。今回の展示は、模型入りの映像作品《にっぽんのちっちゃい台所》と、同じモチーフの大きなドローイングが数点。シュールでブラックな和風アニメーションは、何度観ても面白い。ドローイング作品は、日本初公開とのこと。

高橋コレクションにて、6月10日まで(金・土のみ開廊、ただし祝日は休廊)。


立石大河亞 大河亞の富士山の宇宙

絵本・漫画・イラスト・絵画の世界を自在に行き来し、1998年に亡くなった立石大河亞(タイガー立石)。マンガ風のコマ割と、荒唐無稽なストーリー、そしてイラスト的な画風は、とても物故作家の作品とは思えなかった。若手作家を中心に扱うギャラリーがなぜ?って最初は思ったけど、作品を観て納得。

山本現代にて、5月20日まで(日・月・祝休廊)。


トロビョロン・ロッドランド Fantasies Are Facts

写真やビデオ作品で、海外では高い評価を得ているノルウェーの作家。写真もヒネリが効いてて面白かったけど、何といっても映像《132 BPM》が良かった。写真のように断片的なシーンが次々と切り替わりつつも、一貫して1分間に132拍のテンポでリズムを刻む映像には、引きずり込まれるような魅力があった。

児玉画廊|東京にて、5月27日まで(日・月・祝休廊)。


山元勝仁 “INNER LAYER SHOW”

紙に色鮮やかな色鉛筆で描いた模様を切り取り、壁やパネルに立体的に貼り付けた作品。パネルを全て埋め尽くした作品もあったけど、あえて余白を残した作品にセンスを感じた。

Yuka Sasahara Galleryにて、5月20日まで(日・月・祝休廊)。


続いて、谷中に移動。

森万里子展 トムナフーリ

ギャラリーの奥は少し暗くなっていて、中央に3メートルほどの白い物体が立っている。この物体の中で、様々な色をした淡い光が静かに広がっては消えていく。この光は、超新星爆発(星の死・誕生)によって地球に降り注ぐ「ニュートリノ」をシミュレートしているとのこと。なかなか幻想的な光景だった。

SCAI THE BATHHOUSEにて、6月3日まで(日・月・祝休廊)。

また、SCAI X SCAI(六本木)でも、森万里子の写真展「Standing Stone」を開催中。こちらは5月20日まで(木・金・土開廊、ただし祝日は休廊)。

フンデルトヴァッサー展@京都近美

2006-04-16 | 建築
京都に行ってきた。

フンデルトヴァッサー展

オーストリアを代表する美術家フンデルトヴァッサー(1928-2000)の回顧展。鮮やかな色彩と渦巻くような絵画も良かったけど、数点あった建築プロジェクトの模型・写真が特に印象に残った。

なかでも、うねるような丘の下に建物がもぐりこみ、丘状の屋根の上が森や牧草地になった《ブルマウ温泉村、ローリング・ヒルズ》や、芝草の屋上が実現可能なことを立証しようとした《高層建築の芝草地の家》など、当時は奇抜なアイディアだったかもしれないけど、屋上緑化が普及し始めた現代から見ると、その先見性に驚くばかり。

日本にも、ピーター・ペリカンが全体を設計し、フンデルトヴァッサーが外観を設計した《MOP舞洲焼却工場 大阪舞州島のプロジェクト》があるので、こちらもいつか見学したいなあ。

最後に、フンデルトヴァッサーのドキュメンタリー映像を見たけど、屋外に出て裸でスケッチしたり、停泊した船の上に住んでいたりと、その作品に負けないくらい個性的な人生を送っていて、むしろこっちの方が印象に残ってしまった(汗)。

京都国立近代美術館にて、5月21日まで(月曜休館、5/1開)。

人間の未来へ@水戸芸

2006-04-09 | アート感想@関東
水戸へ行ってきた。

人間の未来へ|ダークサイドからの逃走

4人の報道写真家のドキュメント写真と、9人のアーティストによる作品を組み合わせることにより、人間の内面に潜むダークサイドから距離を置き、他者への共感を促すことを試みた意欲的な展覧会。

今回最も印象に残ったのは、橋本公の《1945-1998》。1月を1秒に縮めたタイムスケールで、プロジェクターで投影された世界地図の上に、核実験が行われた場所を音と光で示した作品。通常、この類の作品は、メッセージ性が強すぎて鼻につくことが多いんだけど、事実を淡々と、しかもテンポ良く伝えていたので、最後まで見届けることができた。

マイケル・ライトの《100の太陽》という作品は、アメリカ軍の原水爆実験のドキュメント写真を再構成したもの。青空や夕暮れに浮かぶキノコ雲は、先入観抜きで見ると非常に美しい。その光景を無邪気に眺める軍人・科学者の写真もあり。

このほか、ギャラリー小柳で観たアントニー・ゴームリーの金属ブロックの作品3点や、天井から舞い降りるように展示されたスゥ・ドーホーの《落下傘兵 III》、絶滅した人間を100年後に発掘したという設定のオノ・ヨーコの《絶滅に向かった種族2319-2322》が印象に残った。

水戸芸術館現代美術ギャラリーにて、5月7日まで(月曜休館)。

クリテリオム67 本城直季

ビーチやスキー場を空から撮影した《play room》シリーズが10点ほど。写真の上下がピンボケになっているため、模型を見ているような錯角が面白い。レンズに対して、フィルムを傾けて撮影するとこうなるらしい。こういう写真、撮ってみたいなあ。

水戸芸術館現代美術ギャラリーにて、5月7日まで(月曜休館)。

CHIKAKU@向ヶ丘遊園

2006-04-08 | アート感想@関東
小田急の向ヶ丘遊園からてくてく歩き、生田緑地の中にある美術館へ。

CHIKAKU/四次元との対話
―岡本太郎からはじまる日本の現代美術


オーストリアとスペインで開催された「日本の知覚」展をもとにした、日本での帰国展。それまで考古学の資料に過ぎなかった縄文土器を、はじめて美術的に評価した岡本太郎。その岡本が「四次元」と呼んだ日本人の呪術的感覚を切り口に、岡本を含む15人の作家たちの作品で構成された展覧会。

とにかく豪華なメンバーによる展覧会だった。草間彌生やなぎみわ須田悦弘小谷元彦など、ベテランから若手まで個性的な顔ぶれがそろう。それらに加え、森山大道中平卓馬杉本博と日本写真史をリードしてきた写真家も出展。これら3人の写真と並んで、岡本太郎の写真も展示されていたけど、写真界の巨匠たちと並べても全く見劣りしない存在感はさすが。

今回最も印象に残った作品は、エントランスホール中央に吊るされていた森脇裕之の《Lake Awareness》。この作品は電子基盤をすり鉢状に組み合わせた作品で、手を近づけるとLEDが青色から白色に変化し、鈴虫のような音が鳴るというもの。作品の表面に沿って手を動かせば光の軌跡が残るし、近づけた手を動かさずにいると光が作品全体にわーっと広がっていく。この感覚が面白くて、夢中になって遊んでしまった。それと、すり鉢の中央に入って、光に包まれることも可能。

このほか、伊藤高志による、無人の体育館で撮影した700枚の作品を再構成した映像作品《SPACY》が印象的だった。ただ、小谷元彦は、《ベレニス》が電気系統の故障のため見られず、《スケルトン》だけだったのが残念。あと、須田悦弘は2点出展しているけど、下手をすると両方とも見落としそうなので注意!

川崎市岡本太郎美術館にて、6月25日まで(月曜休館)。

石渡誠展@海岸通り

2006-04-08 | アート感想@関東
キリンアートアワード2003で優秀賞を受賞し、まるびぃの開館記念展でも話題になった「真空パック」の新作を体験してきた。

石渡誠展 VACUUM PACKING! : HEARTBEAT

前作は電話ボックス型だったけど、新作は正五角形が組み合わさった正十二面体。この中に入ってゴム膜で真空パックにされるんだけど、それぞれの面にスピーカーがついていて、そこから心臓の鼓動が聞こえてくるという作品。

真空パック体験は初めてでちょっと怖かったけど、やってみるとなかなか面白い感覚だった。心臓の鼓動が聞こえるなか、だんだんとゴムの膜が迫ってきて、完全に密封されてしまうと、細胞の一つに同化してしまったような感じがした。

あと、他の人が真空パックになるのを見るのもなかなか面白い。できれば2人以上で行って写真を撮りあうのが良いかも。

maru galleryにて、5月5日まで(日・月休廊、水・土のみ作品体験可)。

HPでは徒歩・タクシーでのアクセスしか紹介してないけど、田町~品川を結ぶバス(田99系統)の五色橋バス停で降りてすぐ目の前。ただし、1時間に1~2本しかないのでかなり不便かも。

あと、天井の高いギャラリーからは、レインボーブリッジと「ゆりかもめ」のループが目の前に見えて、この眺めもオススメ。

(追記)
ゴールデンウィーク5月2日,3日,4日,5日 も開催中!
5月5日(金)サウンドイベント 21:00-23:00

タカノ綾展@渋谷

2006-04-08 | アート感想@関東
最近、大ブレイク中のタカノ綾の個展に行ってきた。

「都会犬(。v・)/」
タカノ綾 ソロ エキシビション


日本のマンガやSF小説の世界観に、ほんの少しエロティシズムが加わった幻想的な絵画が会場を埋め尽くしていた。展示会場は、「幼年期」「思春期」「エロスの部屋」「占い師のお告げの部屋」「世界の旅」「宇宙の部屋」に分かれていて、「ある女の子の人生の軌跡」を表しているとのこと。

なかでも印象的だったのは、「エロスの部屋」に展示されていた絵画《パチンコ》を元にしたアニメーション作品。田舎から東京に出てきた(?)女の子と、パチンコのチープでポップなノリが見事に融合していた。あと、人間が乗れるくらい巨大な○の○○○○○にもビックリ!まさに絵画から飛び出してきたかのよう。

作家の感性に共感できる方は是非!

パルコミュージアム(渋谷)にて、4月24日まで(無休)。

舞い降りた桜@原美

2006-04-02 | アート感想@関東
続いて、品川へ移動。

舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション

25年の歴史を持つドイツ銀行コレクションのうちから、現代美術作家約30名による約150点の作品を選りすぐった展覧会。この25年というのは、ちょうど原美術館の歴史と同じらしい。

とにかく豪華なラインアップだった。例を挙げると、カラ・ウォーカーの切り絵、ゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティング、ヴォルフガング・ティルマンスのピンボケ写真。やなぎみわの映像インスタレーション、トーマス・ルフの星の写真……などなど。それから、「ポップアート」の語源になったといわれるリチャード・ハミルトンの《一体何が昨日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしたか》もあり。

今回、私のツボに最もハマった作品は、アンドレアス・スロミンスキーの《液状咳止め薬の輸送システム》。よくもまあ、これだけバカバカしい作品を大真面目に作れるもんだ。ぜひ、タイトルを確認のうえで観てほしい。

また、気鋭の女性建築家ザハ・ハディドの会場デザインも見もの。特に、中庭に設置された《『舞い降りた桜』展のためのインスタレーション》は、巨大で圧巻。でも、カフェからの眺めを妨げているかも……。

原美術館(御殿山)にて、5月21日まで(月曜休館)。

藤田嗣治展@竹橋

2006-04-02 | アート感想@関東
この日は久々に美術館のハシゴ。まずは竹橋へ。

生誕120年 藤田嗣治展

エコール・ド・パリの代表的画家としてフランスで活躍した藤田嗣治(レオナール・フジタ)の全画業を紹介する展覧会。話題の展覧会だけあって、早めの時間から相当混雑していた。でも、ゴッホ展や北斎展と比べるとずいぶんマシ。

さて、今回の私のお目当ては、裸婦でも猫でも宗教画でもなく、「戦争画」。ガンダム展などで観た会田誠の「戦争画RETURNS」シリーズの元ネタ(?)を観たいというのがその理由。

出展されていた戦争画は、《シンガポール最後の日(ブキ・テマ高地)》、《アッツ島玉砕》、《神兵の救出到る》、《血戦ガダルカナル》、《サイパン島同胞臣節を全うす》の5点。この展示室だけは、戦時中の異様な高揚感が充満していて、他の展示室とは全く異質の空間になっていた。

なかでも《アッツ島玉砕》は圧巻だった。大画面を埋め尽くすかのように日米両軍の兵士が入り乱れ、殺し合うその光景は、狂気と暴力がもたらすカタルシスだけではなく、古典絵画のようにしっかりとした画面構成のためか、まるで崇高な宗教画のようにも見え、思わず手を合わせそうになってしまった(汗)。

戦争画以外では、南米時代に描いた濃い色使いで肉感的なタッチの作品が、藤田の意外な一面を見せられたようで、特に印象に残った。

東京国立近代美術館(竹橋)にて、5月21日まで(月曜休館、ただし4/3と5/1は開館)。

その後、京都国立近代美術館(5/30~7/23)、広島県立美術館(8/9~10/9)に巡回。