現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

池松江美ほか@京橋

2006-03-27 | アート感想@関東
この日は銀座・京橋のギャラリー巡り。といっても、月曜だったのでギャラリーはほとんどお休み……。オープンしていた数少ないギャラリーのうち、特に印象に残った展覧会は以下の1件。

αMプロジェクト vol.8
うらうらら×小泉明郎×池松江美(辛酸なめ子)展
「セクシーポリティクス」


セクシーでポリティックな活動を続ける若手3人のグループ展。どの作家の作品も強烈だったけど、私がもっとも気に入ったのは、池松江美(辛酸なめ子)の「セレブ」をネタにした作品群。

金髪のウィッグをかぶり、セレブファッションに身を包んだ作家本人の姿は、セレブそのもの……の表情なんだけど、妙なイタイタしさを感じてしまう。レッドカーペットのウォーキングマシーン上を歩きながら、工事現場や立ち食いそば屋などの映像を見て優越感を味わう《セレブ養成マシーン》は、あまりのベタベタぶりに思わず苦笑してしまう作品。このセンス、好きだなあ。

このほか、うらうららのテラコッタによる立体作品や、小泉明郎の一人芝居の映像も刺激的だった。とにかく濃い展覧会と言えるかも。

art space kimura ASK?(京橋)にて、4月1日まで。


映画『マイ・アーキテクト』

2006-03-18 | 建築
建築関係ブログで話題の映画を観てきた。

マイ・アーキテクト ~ ルイス・カーン[建築界最後の巨匠]を探して

ルイス・カーンの愛人の息子である映画監督のナサニエルが、父の遺した建築と父の仕事に係わった人物を訪ね、ナサニエルが11歳のときに73歳で謎の死を遂げた父の実像に迫っていくドキュメンタリー。

スチールやガラスを多用した未来的な建築がもてはやされた時代に、愚直に建築の永遠性・精神性を追及したルイス・カーン。彼の建築を撮った美しい映像はもちろんのこと、頑固で不器用な天才肌の建築家を巡る「人間ドラマ」としても楽しめる映画だった。また、「建築とは何か」について、いろいろと教えられる映画でもあった。

なかでも、最後の「バングラディシュ国会議事堂」のシーンが素晴らしかった。当時、世界で最も貧しい国の一つであったバングラディシュに、彼の最も偉大な建築(と民主主義の精神)を遺し、その完成を見ることなくこの世を去ったルイス・カーン。技術的にも経済的にも厳しい状況の下、人力でコンクリートを運び、20年の歳月をかけその建築を完成させ、今でもその「世界最高の国会議事堂」を誇りに思っているバングラディシュ国民。そして、深い精神性を感じさせる建築の美しい映像……。観ていて胸が熱くなり、自然と涙がこぼれ落ちた。

建築に携わっている人、建築を学んでいる人、建築に興味がある人にとっては、観て損のない映画かも。ただ、それ以外の人には……。

Q-AXシネマ(渋谷)にて上映中(期間はマイ・アーキテクトHPのNEWS参照)。

写美@恵比寿、GEISAI

2006-03-12 | アート感想@関東
まずは恵比寿へ。

私のいる場所―新進作家展Vol.4 ゼロ年代の写真論

ゼロ年代(2000年以降)に頭角をあらわしてきた作家(現代写真家、写真を用いる現代美術作家)の作品を集めたグループ展。会場は3階・2階・地下1階の3つに別れていて、1会場だけ観覧することも可能。でも、どうせなら全部観たほうが良いかも。

3階(パート1)は、「私のなかの私」と題した展示。このパートでは、塩田千春の《親戚の顔》が最も印象的だった。壁で囲まれた小さな空間には、A3サイズにコピーされた多数の親戚たち(?)の顔写真が、四方の壁を覆い尽くすように整然と貼られている。空間の中央には、焼け残った家の残骸があり、そのなかでぽつんと裸電球が光っている。何らかの「事件」を暗示しているように不気味で、重苦しい空間だった。また、エリナ・ブロテルスの《ニューペインティング》シリーズのセルフポートレイトは、古典絵画の構図・色彩等にならった作品だけど、かえってそれが新鮮に思えた。

2階(パート2)は、「社会のなかの私」と題した展示。このパートで私が最も気に入ったのは、ジャクリーヌ・ハシンクの2作品。まず、《パーソナル・コーヒーカップス,USA ネットスケープ - 288コーヒーカップス》は、某ネット企業社員のマグカップを1つずつ撮影したもの。湯呑み文化の日本のオフィスとは違って、色とりどりで様々なデザインのカップが楽しい。自社のロゴ入りカップが比較的多かったけど、寿司屋の湯呑みなど、和風なものもチラホラ。それから、《女性の権力の座:女王蜂》は、世界でも有数の大企業の女性経営者に着目し、その会社の会議室と自宅のリビングの写真を並べたもの。世界最大のIT企業の地区GMなど、日本人女性経営者の名前もあったけど、海外の女性経営者と比べて自宅は少し庶民的?

地下1階(パート3)は、「日常への冒険」と題した展示。アーティスト・ユニットセカンドプラネットの作品も悪くなかったけど、何と言ってもみうらじゅんの作品が凄まじく強烈で、笑いすぎてお腹が痛くなってしまった。手書きのタイトルも脱力感全開だし、奥の部屋のスライドも画面切り替えのテンポが良く、最後まで目が釘付け。

東京都写真美術館(恵比寿)にて、4月23日まで(月曜休館)。


続いて、お台場の東京ビッグサイトへ移動。

GEISAI#9

相変わらずの玉石混合っぷりだけど、前回よりもレベルが高かったような印象。大雑把に分けて、アート系・フリマ系・お祭り系の3種類のブースがあったけど、アート系でも完成度の高いブースは、何かしら賞をもらっていることが多かった。美術館に出しても遜色ない作品もいくつか。

急遽、ピンチヒッターで審査員になった会田誠だけど、本人が気に入った作品のほかに、「最低最悪の作品」にも個人賞を与えていたのが会田誠らしくて笑ってしまった。ちなみに、シミだらけで汚らしいボロボロの布団を、ただブースに敷いただけという作品。

あと、入り口近くにパフォーミングアートのブースが並んでいて、白A山中カメラなどのパフォーマンスをお手軽に楽しめたのも良かった。

東向島、谷中

2006-03-11 | アート感想@関東
この日もいくつか回ったけど、特に印象に残ったのは下記の2件。

東武線東向島駅で降り、工場を改装したプロジェクトスペースへ。

藤原靖子 個展

ダジャレをベースにした作品を発表してきた藤原靖子の久々の個展。最近、Aランチで作品を観たけど、作家ファイルによると、新作は佐倉で観た展覧会以来と1年半ぶりみたい。

入ってすぐの広いスペースでは、ブログとSNS(ミクシィ等のこと)をモチーフにした作品を展示。衣装とそれを着たモデルの写真によって、ネットの文章から個人情報が筒抜けになることを表現した作品なんだと思うけど、ブログやSNSにどっぷりの私にはイマイチピンとこなかった。でも、ブログやSNSから距離のある方は、こんな風に感じるのかも。

続いて、奥の展示スペースへ。ここではダジャレをベースにしたものを中心に、新旧の作品を展示。ブログっぽいデザインの展示方法が面白い。今回、最も私のツボにハマった作品が《SWITCH》。押した瞬間に「やられた!」と思った。これは必ず2回以上試すべし!あと、《スケッチ(2005年2月画)》がイラスト風で可愛かった。

さらに奥のスペースは、「ポストオフィス」をモチーフにした参加型インスタレーション(39@RT関連企画)。あえて作品名や詳細は伏せておくけど、時計の針の動きに注目!こういう細部へのセンスがスゴイ。

現代美術製作所(最寄り駅:東向島)にて、3月19日まで(無休)。


東武・京成と乗り継いで日暮里へ。牛田駅(東武)と京成関屋駅が乗換駅なのは知っていたけど、まさかこんなに近いとは!墓地を横切り、銭湯を改装したギャラリーへ。

宮島達男展「FRAGILE」

現代アートのギャラリーとは思えないくらい、お客さんが入れ替わり立ち替わり入ってきてビックリ。でも、玄関のところでどうしていいか分からず引き返すお客さんもいて思わず苦笑。

今回は、新作《Counter Fragile》シリーズを中心に展示。この作品のために開発された、赤色LEDによる小さなデジタルカウンターは、これまでの大型作品とは違って、小さく儚い命をあらわしているかのようだった。この「小さきものたち」がワイヤーフレーム等で立体的に配置され、まるで星団のように美しく輝いていた。

スカイ・ザ・バスハウス(最寄り駅:日暮里、根津)にて、4月8日まで(日・月・祝休廊)。

銀座・京橋ギャラリー巡り

2006-03-09 | アート感想@関東
会社帰りにギャラリー巡り。特に印象に残ったのは以下の2つ。


life/art'05 Part5 須田悦弘

5人の作家によるリレー個展の最終回。
Part1の記事→INAX・資生堂@銀座
Part2の記事→銀座・京橋ギャラリー巡り
Part3の記事→金沢健一展@銀座
Part4の記事→銀座・京橋ギャラリー巡り

空間の広がりを意識させられるような展示だった。内容については、あえて詳しく書かないけど、一言で表現すれば「7+1」。この「+1」は、一目では作品だと分からないものだったけど、なかなかニクいモチーフだった。

資生堂ギャラリー(銀座)にて、3月26日まで(月曜休廊)。


αMプロジェクト Vol.7 田中偉一郎×増岡巽展 「夢のマイホーム」

ノーメッセージ・ノーミーニングの田中偉一郎と、民博(大阪)で《空き缶ハウス》を発表した(記事1記事2)元建築業のホームレス増岡巽による、「マイホーム」がテーマの二人展。

田中偉一郎の作品は《花に服》シリーズなど、既発表作が中心。《光るゴミ》は必ずバケツを覗くべし。一方、増岡巽の《空き缶ハウス》は、民博で発表したものの3分の1くらいの規模。私が行ったときは建築中だったけど、週末には完成したものが見られそう。

art space kimura ASK?(京橋)にて、3月18日まで(日祝休廊)。

もうひとつの楽園@まるびぃ

2006-03-04 | アート感想@遠征
片町から徒歩で移動し、金沢21世紀美術館へ。実に5回目のまるびぃ。

もうひとつの楽園

欧米のアートやデザインという概念に収まりきらない日本の「工芸」について、その現代的価値を問いかける展覧会。出展作品のほとんどは「アート」作品なんだけど、多様な素材が用いた、工芸的な質感を持つ作品ばかりが集められている。

今回、最も印象に残ったのは、隈研吾のディレクション、岩井俊雄原研哉深澤直人のコラボレーションにより、「茶室」を現代的に解釈した《T-room プロジェクト》。

最初に“yoritsuki”(寄り付き)として、深澤直人の《ISHI》が置かれている。これは河原の石を21倍に拡大したイスだけど、座りたくなるような形をしていて思わず休んでしまった。

続いて“chumon”(中門)をくぐり、原研哉の《TSUKUBAI(蹲踞)》を観る。「蹲踞」は茶客が手を洗う鉢のことだけど、ここでは、天井から降りてきた水玉が掛樋を転がり、最後にはすり鉢状の大皿の中をぐるっと回って、中央の四角い穴から下に落ちる。水玉の動きが面白くて、しばらく目が釘付けになってしまった。

そしていよいよ隈研吾の《t-room》へ。白い風船状の物体がつながったカマクラようなもので、息をするようにモコモコ動いている。中に入ると、岩井俊雄による《LEDライティング&サウンド》が幻想的な雰囲気を一層盛り上げていた。でも、この茶室の本尊とも言える《t-server》のあまりにも現代的な姿に思わず絶句……。

このほか、ギャラリーの壁を鏡のようにツルツルになるまで磨き上げた嵯峨篤の《cube on white / white on cube》や、村山留里子による高い天井の展示室にそびえ立つ巨大パッチワーク《Unthitled》が印象に残った。

3月5日まで(会期終了)。


今回、ようやくミュージアムリンク・パスのスタンプが揃い、オリジナルのトートバッグとマグカップ(写真)をゲット。無料、しかも割引付きとは思えないほど豪華な賞品だった(それ以上に交通費がかかっているのは置いといて……)。

小松弥助@金沢片町

2006-03-04 | 食べ歩き
金沢に行ってきた。久々の遠征。

この日のランチは、アパホテル金沢片町1階の寿司屋、小松弥助。ビジネスホテルに入っている小さな和食屋さんといった店構えだったけど、外見と内容のギャップがスゴイ。

この道50年(?)のご主人による繊細な技が込められた寿司は、それぞれが美しい小皿で1貫ずつ出てくる(ただし、テーブル席では数貫まとめて)。一口サイズに握られたシャリは、口の中に入れるとほどけるような食感で、まさに技の賜物。ネタも隠し包丁が細かく入っていて、新鮮な素材をますます引き立てている。

なかでも感動的だったのは、最初に出てきたイカ。鮮やかな手つきで3枚に下ろされたかと思うと、あっという間にイカソーメンに姿を変える。これをシャリと握ってから、ゴマと塩でほんのり味をつけて出来上がり。普段食べているイカとは同じ生き物とは思えないような上品な味に、思わず言葉を失ってしまった。

ウニも素晴らしかった。てっきり軍艦で出てくるかと思ったら、深めの器にシャリ、その上にヅケ・山かけ・ウニというカタチで出てきた。「昆布だけを食べて育った利尻のウニ」の繊細な風味を楽しめるように、あえて海苔を使っていないのかも。

値段もなかなかのものだったけど、新鮮なネタと熟練の技の結晶を味わえたのに加え、ご主人のトークと包丁さばきを間近で楽しめて大満足!

Aランチ@六本木

2006-03-02 | アート感想@関東
六本木で面白そうな展覧会(?)があったので行ってきた。

Aランチ

レストラン形式で現代アートを楽しむ展覧会。観客は、メニューから作品をオーダーして、席でじっくり作品を楽しむことができる。つまり、そのときだけ作品のオーナーになれるということ。オーナーシップ料(鑑賞料)は、1作品目が300円で、2作品目以降は100円。もちろん、気に入った作品を購入することもできる。

いくつか作品を観たけど、私のイチオシは藤原靖子の《sepia》。下面もじっくり見せてもらえたし、お持ち帰り可能な特別メニューも付いていてトクした気分。また、同じ作家の《HELMET》は、実際にかぶることも可能。このほか、もとみやかをる八木良太の作品が、Aランチならではの楽しみ方ができて良かった。

週末は混雑が予想されるので、時間に余裕を持って行ったほうがいいかも(去年は行列ができたらしい)。

アクシスギャラリーアネックスにて、3月10日まで。