茫庵

万書きつらね

占術 - 何を根拠に判断するのか 1

2011年12月31日 16時06分14秒 | 占術

占術 - 何を根拠に判断するのか 1

 世に占術への誤解偏見多く、
 通説常識、必ずしも眞實ならず。

 占術の徒にも世に迎合し、
 自らの術を貶め、笑い者となり
 財を為す者、あるいは名を得る者多し。

 是れ、両ながら悪しき様にて
 いずれ占術の真価を滅せざるを得ず。

 余、此の學の未来を憂ひ、茲に此の術、
 聊かでも眞實への扉を残すべく
 記(しる)さんと欲す。

 願わくば俗説迷信を廃し、
 俗を改むるに一助たらん。
 

 これより占術のしくみについていくつか紹介していきます。
 今回は私の知っている占術全体の紹介です。

1.術数
  私が研究している占術の事を中国では「术数(shùshù)」といい、他に命(mìn)、相(xiàng)、卜(bǔ )があります。 日本で人気の星占いや四柱推命など、生年月日時を入力として主体の性質と行く末を推察する學を命といい、相は手相、面相、印相、堪輿、家 相、しぐさ、筆跡など観た目からそこに秘められた本質を探る學、卜は易、タロット、花占いなど、結果の良し悪しを占う學です。

2.卜
 私が専門とするのは卜、中でも梅花易数(MéiHuāYìShù) と云われるものです。宋の邵雍(Zì YáoFū 1011 - 1077)が創始者といわれています。 日本にも梅花心易として伝わり、江戸時代には指南書が出版されたりしています。卜に類する占術としては、易のほかに、六壬、奇門遁甲、タロット、ルーンな どがあります。志を遂げんとする人が、その成否を尋ねる、というのが卜のスタンスです。 従って、日本人にありがちな「AとBのどちらを選んだらより吉運か」という怠惰で無責任な質問の答えは出せません。まず意思を固めてから天に是非を問う、という気概がなければ意味がありません。

3.命
  本稿でおもはこの命、なかでも日本では四柱推命として知られる、命理學(もしくは八字、子平)を中心に取り上げます。命のカテゴリには中国占術でも占星術 (七政四餘)、紫微斗数、西洋でも占星術、数秘術やタロットの応用技術なども入ると思われますが、共通しているのは生年月日時を元に、人の性質や才能、一 生を通じてたどる運勢を判断することです。歴史的には東西を問わず、是等はむしろ天下国家を論じるもので、個人の運勢を観る様になったのは後世になってか らの事です。

4.卜と命のハイブリッド
 日頃よく目にする占術として、卜と命の両方の性質を持ったものに九星気学、および陽宅が あります。これは主体になる人の生年月日時から命宮などその本人の特質を決定するタイプを特定し、そのタイプの得意とする日時や方位を割り出して、具体的 な行動の結果、どう運気の上下に影響するかを論じる學です。九星気学は奇門遁甲が日本に伝来した後簡略化され、ねじ曲げられた物で迷信にすぎない、という 論もありますが、ここではその真偽は特に追求しません。ただ、命理に比べると、内容的にいかにも古臭く、前時代的に見えます。

5.相
 物の形から内に秘められた眞實を推察する學で、人相(面相)、手相、家相、筆相、印相など、相と名のつくものの総称になります。筆相(筆跡占い)など近代では行動心理学を用いて重厚な論理武装をしているものもあります。最近日本でも定着して人気を博している偽物の風水も、 元々は地理風水といって、古代中国の地政学の一種でした。都市計画を立てるのに、地形の良し悪しを判断する學として発展したものです。また、都市発展の重 要な要素のひとつとして考えられていた、先祖を祀る土地、墓地の建設等もこれで判断していたようです。個人の住居や間取りなど、小さな物を判断するのは本 来の風水の目的ではありません。こちらはむしろ家相学の範疇とするところですね。日本の風水の流行りを見ていると、何千人分もの食事を一気に作る様な工場 と器具を使い、たった一人分の昼食をスタッフそ総がかりで一所懸命こしらえている、という風に見えて大変滑稽です。日本の読者ってこういうのを有難がるん です。ま、人好き好きですのでそういう人を見かけても、私は何も云いませんが。

5.血液型(要注意)
 上記のどれにも当たらな い、ついでに言えば占いではないものに、血液型診断があります。血液型診断は、日本では占いの一種として人気ですが、世界的には必ずしもそうではなく、ナ チスの劣等血液型(Bのことです)撲滅論など、差別の道具として使われた暗黒の歴史があり、他の占術と違って、個人の生物学的遺伝情報をそのまま能力判断 や運勢に結びつける、という点が人権主義者からは攻撃の的にもなっていて、うっかり外国人に血液型など尋ねようものなら、気味の悪い奴だというレッテルを 貼られる、といいます。こういう理由により、私は血液型を占術の範疇には入れない事にしています。


占術全体のしくみと位置づけ

 基本的に、占術とは以下の特徴を持った問題解決ツールだ、と私は考えています。

 1.決まった論理体系とシンボリズムを持つ
 2.決まった手順を踏めば必ず答えが出る
 3.科学ではない

1.決まった論理体系とシンボリズムを持つ
 どんな占術にも「學」といえる論理的な体系と、何をどう解釈するかを定めたシンボリズムが付属しています。問題に対してそのシンボルを選定し、選定されたシンボルを現実に合わせて解釈する、というのがつまるところ占術がやっている事になります。

2.決まった手順を踏めば必ず答えが出る
 占術には必ずその占術の答えを出すための手順が決められています。手順が誤っていたらその答えも取るに足らないものでしかない、というのは他の事でも当然ですね。何かするのに決められた手順を守らないのでは、正しい結果が期待出来るはずがありません。占術でも同様です。

3.科学ではない
 占術を科学に結びつけようとする信者がたまにいます。しかし、占術は科学たり得ません。理由は明白で、まず実験が出来ないこと、そして結果についても客 観的に仮説を証明する事が出来ないものを扱う、という理由に依ります。「占いは統計だ」という人もいますが、これも間違った見解です。理由は同様で、統計 学上有意のサンプルとするには、ターゲットはその占術とは無縁で、置かれた状況も一切そういう情報が無い環境でなければなりません。でないと、例えば獅子 座生まれの人は、時間経過の中で、ついつい流通している獅子座のイメージを取り込んで、それっぽく振る舞ってしまう、といった事があるからです。これを以 て獅子座の行動結果の統計データとして扱うのは甚だ不公平といえます。他の類似の場合も同様です。もし統計をとるなら全くその占術の情報がない処でやらな ければ意味がありません。
 占術は個々のケースについて独自の方法と理論で答えを追求するためのものなので、別に科学たる必要もありません。むしろ科学には出来ない事を扱うので同列で比較する事にも意味がありません。


 以上、簡単ですが、占術の種類としくみ、そして一般に誤解されやすい点について紹介しました。次回からは、実際に占術がどのように機能して答えを出していくか、占者はどういう気概でこれを運用していくべきかを論じます。

 



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