学校から帰るとその手紙が机の上に
きちんとおかれていた。
「アスハルトの道は
安全だから誰だって歩きます。
危険がないから誰だって歩きます。
でもうしろを振りかえってみれば、
その安全な道には自分の足あとなんか
一つだって残っていやしない。
海の砂浜は歩きにくい。
歩きにくいけれども、うしろをふりかえれば、
自分の足あとが一つ一つ残っている。
そんな人生を母さんは選びました。
あなたも決して
アスハルトの道など歩くような
つまらぬ人生を送らないで下さい。」
遠藤周作『影に対して―母をめぐる物語―』
きちんとおかれていた。
「アスハルトの道は
安全だから誰だって歩きます。
危険がないから誰だって歩きます。
でもうしろを振りかえってみれば、
その安全な道には自分の足あとなんか
一つだって残っていやしない。
海の砂浜は歩きにくい。
歩きにくいけれども、うしろをふりかえれば、
自分の足あとが一つ一つ残っている。
そんな人生を母さんは選びました。
あなたも決して
アスハルトの道など歩くような
つまらぬ人生を送らないで下さい。」
遠藤周作『影に対して―母をめぐる物語―』