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Hei!(「ヘイ」って読んで「やあ」って意味)~義務教育世界一の秘密

義務教育世界一の国の教師養成の実態を探る旅。フィンランドの魅力もリポート!その他,教育のこと気にとめた風景など徒然に。

図画工作科に対する子どもの目

2006-04-28 10:38:16 | Weblog
ベネッセ未来教育センターが小学5・6年生約1200人を対象に行った調査で,「一番苦手な教科」と「成績が良いと一番うれしい教科」が重なるという結果があった。

それによると,男子が最も苦手な教科は国語(23%),2位が算数(16%)。女子は1位が算数(42%)2位が社会(21%)だった。

一方,「成績が良いと一番うれしい教科」は,男子1位が算数(29%),国語(22%)。女子1位は算数(44%),2位が社会(12%)という結果。男女とも苦手意識のある教科ほど達成感が得られやすい傾向があったようだ。

また「一番得意な教科」は,男子が体育(38%),女子が音楽(19%)。「一番楽しい教科」は男女とも1位は体育,2位は図工だった。

結果を分析した東京成徳大の深谷昌志氏は「算数を一番楽しい教科と感じているのは全体のたった7%。苦手だが成績が良いとうれしいというのは,子どもたちが算数を基本教科として見ていることの表れだろう」と話している。では楽しい教科2位としての図工はどうなんだろう?予想してみて。
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同じくベネッセで樋田ら(1997,2002)が行った調査では,小学校における「好きな教科」として,図画工作科は1996年で第1位(86.5%),2001年でも第1位(83.6%)だった。ところが,「がんばって勉強したい科目(教科)」の第1位にあがっているのは1996年(54.3%),2001年(50.9%)ともに算数科であり,図画工作科は1996年で第6位(32.2%),2001年で第6位(25.9%)だった。

これらの数値からは,図画工作科の授業は楽しいものの,がんばるという気持ちを持つような学習内容ではないと小学生に受け止められていることが示唆される。

「がんばって勉強したい教科」のうち,実技系の科目(教科)としては,体育科(1996年45.7%,2001年41.0%)や家庭科(1996年39.8%,2001年40.4%)が上位だが,これらは,競ったりこれまで未体験であったことを体験したり生活に生かせるようになったりすることによって,自分自身の成長や変化を確かめられやすい学習内容を持つものではないか。

現在の小学校図画工作科では,文化遺産として整理・系統化された学習内容を教え込むことよりも,むしろ児童の思いや感じ方を大切にし,試行錯誤を通して学習することができるようにするのが主眼となっている。造形遊びなどがその典型と言えるだろう。

しかしながら,そのため,教師がどのように指導して良いのか分からず,無指導・放任になりがちであることも,一方ではしばしば問題点として指摘される。これは,児童にとってみれば,自分の好きに活動することは出来るので楽しいけれど,自分自身がどのように成長しているのかがよく分からないという実態にもつながり,そのことが上記のような数値として現れている可能性がある。

これらの原因として,図画工作科において基礎・基本をどのようなものとして位置づけるかが,教員に曖昧にしか理解されていない実態を挙げることが出来る。基礎・基本の定着を行うことが,図画工作科の学習に対して児童が充実感を感じ生涯にわたって美術を愛好し続けるために大きな鍵になるように思われる。

そして,基礎・基本の定着を行う最大の鍵は,教師の質にこそある。(2004.9記)
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