goo blog サービス終了のお知らせ 

京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間「京の浮かれ時間」

2017-03-25 09:23:48 | 時計修理

3月25日土曜日。北野さんの天神市へ向かうバスはいっぱいの乗客を乗せていました。
明日は上賀茂神社の手作り市の開催日。
第四日曜日には満席になるバス、明日まで我慢の一日違いのがら空き上賀茂神社行46系統に乗って工房入りです。
天神市は熟年カップル、上賀茂神社の手作り市は若いカップルが似合います。

のんびりした車窓からの風景が土曜日でした。
大きなコントラバスを背負ったお父さんの横に可愛いお嬢さん、3メートルほど後ろにバイオリンケースを抱えたお母さん 横にぴったり寄り沿った男の子の4人家族。この時間帯ならコンサートのゲネプロは10時くらいから始まりか?
昔の我が家の風景を思い出します。
そのうち娘が大きくなるとチョコレートパフェで釣ってもついてこないようになります。「今の内やで~」と心の中で声をかけた。

最近のチェロのケースも軽く安くなりました。
私のフランス製のケースは重くて高かった。
スコアやら衣装を合わせると20キロくらいになる。靴はかさばるのでコンサート用のまま、移動中のカジュアルな服装が合わないのが恥ずかしい。

先日、工房にきた女性から大阪朝日会館(現フェスティバルホール)ハイフェッツの演奏会の話を聞いた。
 五嶋 龍君の演奏会の話題からいきなり時間がハイフェッツ演奏会があった大正時代に飛ぶのが面白い。
他人とのことは言えません。
つい先日まで五嶋みどりさんの事をみどりちゃんと呼んでいた。
「みどりちゃんのドイツケイテン演奏会のバッハはすごかったね~。」というと「気やすく呼ばんといて!」と娘から注意される。記憶はカーネギーホールの初々しい演奏会の記憶のままなのだ。

「なごり雪」の浮かれすぎた時間のまま40年以上続いている仲間たちもぼちぼち京都にもどって来る桜の季節。
「今年の宴会は京大の近所の岡崎にしてくれへん?」「京大の近所より立命館の平野神社がよろしいのでは?」一年一度のお花見宴会のので宴会場選びは毎年もめます。

写真は大人の高級時計。
10代の女性にはちょっと似合わない?女性は30歳から美しさが際立ちます。
やはり浮かれた年齢に高級時計は似合わないでしょう。30才になるまで待つ時計があってもいいと思う。
「浮かれ猫 奇妙に焦れて 戻りけり」一茶。
浮かれ猫だったオヤジたちはお花見デートで街に出てもモテない。あっさりフラれてやりきれない気分で三々五々いつもの通りみんな揃って浮かない顔で力餅食堂で夕食を食べた。

当時はセイコーファイブと一緒。
グランドセイコーの復刻版が出るようだ。残念ながらせめてキャリバーはスプリングドライブとは別に6146にして欲しかったね!

明日は上賀茂神社の手作り市!
私もちょっと浮かれて出かけます。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時計師の京都時間「風の時間」

2017-03-24 09:19:45 | 時計修理

3月24日金曜日。明日の25日は天満宮菜種祭。北野天満宮では天神市の開催日。なぜかひきたてコーヒーがおいしい。
ふーむ今夜はまっすぐ家に帰る日。どうせ四条かいわいは週末の宴会ラッシュなので稼ぎ時か?
雨の日に行くからありがたがられる時計師なのだ。
ちゃんと空気を読んで今日は自宅に引き込もりますね~。

この季節に時計師と同じように嫌われるのが京の風。「こんな時に吹かにゃ~ええのに‼来にゃ~ええのに!」とやきもきさせる無粋な風と時計師です。
鴨川べりにずらっとならんだカップル達を吹き飛ばすような強い風が吹くころ。やっとたどり着いたお店に無粋な時計師ジジーは迷惑なのだ。

「花散らしの風」も京の名物か?
今月3月30日が旧暦弥生の三日「ひな祭り」
京のひな祭りには御所の桃の花も咲いて猫も人も恋の季節。
「たんぽぽのあたまはりつつ猫の恋」一茶。

写真はブルガリ・BーZERO。
意外とお花見に似合う時計。このドレスウオッチはさりげなくおしゃれを主張していながらタフな時計です。
ウラブタは3本のネジ止め。リューズが服に引っかかって壊れる事もない。
裏のボタンで時刻合わせをするので洗濯機でまわしても水は入らない。(試さないでください!)
定期的な電池交換をこまめにやることでず~と使えるモデル。
梅まつり、ひな祭り、桜祭りもこれ一本で大丈夫!自信をもって春風に乗ってお出かけしましょ。
風に押されてちょっと遠出。嵐山の夕焼け、大原の里のタンポポ見物もいいころか?

工房の庭にも黄色いタンポポの花が咲きました。
時計師オヤジは大器晩成と言いながらいつまで待っても花は咲きませんね~!
タンポポの花が偉く見える朝のひと時でした。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時計師の京都時間「京のお別れ時間」

2017-03-23 09:32:49 | 時計修理

3月23日木曜日。お彼岸の明け。
京都の公立小学校では卒業式の日。いよいよお別れの日です。
私達は別れべた世代だ!いつまでも思い出を引っ張ってくよくよしている人がなんと多い事か!
40数年前の別れを思い出して酒の肴にしている猛者もいる。

改装前の古い京都駅の二階で食べたお別れカレーライスのシーンを思い出すと涙が出てくるという。
「あそこのカレーはまずかったにゃ~!」同じようになけなしのお金で食べた悔しい思い出に一緒に涙を流す時計師なのだ。
とにかく昔の京都駅周辺でおいしいものは新福菜館のそばとエビスビールだけ!
駅で食べてはいけない。
「だから四条まで出てゆっくり食べようやと言うたのに~!」嫁さんと必ずひどい喧嘩になる時代でした。そのトラウマのおかげで京都駅では今でも空気までもまずい!

表があれば裏もあるのが京都。
表向きは悲しい顔でお別れを言う、裏に回ると縁切りができてさっぱりした爽快感がある二面性が京都人の特徴でしょう。
パンパンと手をたたいて「お別れ~お別れ~次の学生さんたちおいでやす!」なのだ。

今日はお別れの日。ビックリするのはゆとり世代は夢で泣いた後のような実にさっぱりとしたお別れのシーンがくり広げられるのが特徴でうらやましいと仲間の講師が言う。
この世代は運動だけでなく恋愛も競争がないのかね~。とちょっと寂しい。

今日はお彼岸の明け。昨日まで持ち込まれる遺品時計修理はなにかと大変でした。
何気ない時計なのに修理が終わるとどっと疲れて腕が上がらなくなるもの、触ると突然動き出してお客さんをびっくりさせるなど気を抜けない時計が多い。
おかげで昨日は定休日にかかわらず普段通りの営業時間になってしまいました。

数百万円のダイヤいっぱい取り巻きティファニーの修理依頼はお断り。リスクが高く、ダイヤ一つでもぽろっと落ちたら数万円の弁償になるので見送りさせていただく。

写真はエルメス。
このモデルを受ける場合プラスティック防水パッキンの在庫が必要になります。
準備万端でお迎えしないといけません。電池交換1000円、10分と10年くらいの時間の時計です。
「門の草芽出すやいなやむしらるる」一茶。
むしられてもむしられても踏みつけられても目を出した挙句あっさりお別れを言われたことがある時計師なのだ。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時計師の京都時間「京から虫の知らせ」

2017-03-21 09:29:26 | 時計修理

3月21日火曜日。下弦の月。
今週23日から30日までスイス・バーゼルフェアーが開催されます。毎年この時期に大嵐が吹きまくるスイス嫌いを育てる絶好のタイミングで開催される博覧会。
それにもかかわらず日本人がツアーを組んでいくほどのお祭りです。

「なぜ時計は高いの?」という永遠の命題。この手の質問にうんざりしますが丁寧にお答えしてきた。
例えばロレックス。この会社は年間生産本数はあらかじめ決めている。売れるからと言って急きょ増産しない。
ウインブルドン大会の高額スポンサー費用など世界的な大会に対してのボランティアやその他製造コストをのぞいた最終利益はすべて福祉団体に寄付される。
メンテナンス期間は生産終了後20年。(日本は7年)つまり部品、材料などの仕掛品在庫保有の経費が製品に加算される。

「どうせくだらん宝石がたくさんついているので高いんじゃろ~!時計はカシオで十分じゃ~」と売り場でぼったくりじゃ~と騒ぐアメリカ人のオヤジさんには教えてやりたい。アメリカ人は時計と食事にはお金をかけない。

例えばカルティエ。写真のようなダイア取り巻きの高級品。
ケースはホワイトゴールド、イエローゴールドと18金です。
24金の純金では強度が足りないので他の銅、銀など金属を混ぜる。銀を入れるとホワイトゴールドになる。銅ならピンクゴールドなどその分量で輝きが違ってきます。

 ケースをインゴットから削って曲線を出していくので強度が高くなります。その堅い金属に粒のそろったダイアをはめ込んでいく。ダイアは接着材は使えないので埋め込んでいく。

「時計に使われるダイアの一粒一粒は価値がないのだ。」と宝飾業界の中途半端なプロが言う。一つ一つ粒をそろえる技術が理解されないのが悔しいので百貨店、専門店にいってそれぞれのメーカーのダイアを見てほしい。
この手の職人さんたちの年収は代々300万円程度。農家の仕事を抱えているので決して人件費は高くない。

例えばオメガ。
スイス・ビール州にあるオリンピックの歴代オフィシャルメーカー。
数十億かかるオリンピックの費用負担だけでよく潰れないものです。
元々製品はコストパフォーマンスが高い。いわゆる製造コストの割に安い!
ところが修理費用は普通にかかるのでびっくりするユーザーとのトラブルが絶えない傾向がある。スピードマスターの修理に5万円もするか~!と悲しい争いは避けられない。
ケチな国民性で有名なドイツ人が使う時計。メルケルさんもご愛用!決して高くないのだ。

例えばセイコー、シチズンの国産勢。
いまや国内メーカー90%以上製造地域が中国、東南アジアなのに高い!
長野や岩手の生産地か中国製なのかユーザーには判りにくくはっきりしていない。
量販店では明らかにチャイナケースと書いてあるのに日本製とPOPに書いてあるのも異常。
まして使いすてのソーラー・電波時計なのに高い。

毎週のようにユーザーはソーラー時計を勘違いして電池交換に持ってくる。時計は高級品のイメージがあるので引き出しにしまい込むので使うときには止まっている。これをおバカとののしるか?
わざわざ足を引きずってまで工房へ来てくれる高齢者の皆さんに申し訳ないし、悲しい。

今週はバーゼルフェアー。
時計は高価なアイテムでした。人は生涯3本を購入し壊れると最低2回は修理に出す。
そんな時代があった。
今日はお彼岸。お彼岸が明ける23日からバーゼルフェアの始まり。
この期間工房には遺品の時計が持ち込まれます。どれ一つとっても思い出を引っ張り出すのに無駄な時計はないのだと思う。

「たらの芽のとげだらけでも喰われけり」一茶。
私も今年で62歳。
「とげ」だらけで文句ばっかり言っていた私に給料を払ってくれた上司に感謝のお彼岸なのだ。











コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時計師の京都時間「19時29分の時間」

2017-03-20 09:39:56 | 時計修理

3月20日春分の日。雀が巣造りを始める日。
正確な春分時刻が19時29分。今年は20日が春分の日になりました。

今週末の土日は山科髄心院で「はねず踊り」の開催日。
うすべにの紅梅の色を「はねず色」と呼ぶのはここから来ている。この日本独特の色彩はヨーロッパの時計デザイナーがうらやむ色だそうです。
ただ深草少将と小野小町の悲恋伝説なので悲しい「もののあわれ色」なのだ。紅梅を見るとなぜかしんみりとしてくる。
京都のいけずな春先お天気の中で牛車に揺られて99日通っただけでも偉い!
最後の詰めが甘かったか?
山科から来た道をむなしく深草へ戻った99日間が浮かばれ素寸前に倒れた!
昨日の日大三校のようです。

時計の修理も最後に難関な箇所が来る。
写真のショパール。修理技術2級クラスは絶対に避ける時計です。最後に裏蓋を閉めるところが山。途中でもうんざりするほど危険な場面を過ぎて最後にガラスを割ってしまうのだ。

もう一枚はカルティエ。ウラブタ止めネジにご注意くだされ。1,2ミリのドライバーを使うとケース自体を削ってしまう。1,1ミリまで幅を落として作業開始。
また、電池交換の際に電池カバーとネジを飛ばさないようにサグリ棒を研いでおくことを忘れないようにします。
現在初級者技術者でもいつかはこのモデルにチャレンジする機会が来るでしょう。失敗したら素直にお客様へ謝る勇気が必要です。神様から試される時間なのだ。
辛い思い出はいくらでも引き出しに残っています。

京都はチシャのちょっと辛いサラダがおいしい季節になりました。
「からし菜も淋しき花の咲きにけり」一茶。
今日は学生さんたちの引っ越しのピーク。
つらいお別れの涙はからし菜のせいにして元気に出発しましょう~!





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする