池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつくフーテン上がり昭和男の記録

夢と人格

2021-08-27 12:01:35 | 日記
 また長い夢を見た。バーのカウンターで、会ったこともないママさんと思い出話に花を咲かせている。周囲で客が始終入れ替わり、そのたびに赤城原にいろいろなことを教えてくれる・・・

 目が覚める。
 土曜日である。さすがに今日はネクタイを締める必要がない。救われた気分だ。もっと寝たいが、脳は完全に覚醒している。赤城原はベッドに横たわったまま、天井を見つめた。
 会社に行かなくなって一週間が経つ。しかし、まだ成実には話していない。事情を説明するのは簡単である。しかし、成実がどんな反応を示すのか、予測がつかない。だから躊躇している。
 理絵は、離婚を言い出すはずだと言う。それは、外に男を作っているためだ。だからちゃんと調べてからにした方がいい。
 しかし、それについては、赤城原はすでに三年前に決断を下していた。

 その頃、赤城原と成実は中央線沿線の借家住まいだった。理絵が大学に進学して以来、二人だけの暮らしが続いていた。
突然、赤城原は、成実が浮気をしているのではないかという疑念にとりつかれた。ある日を境に、成実の周囲で男の匂いがするようになった。なぜそう感じるようになったか、と正面切って質問されても困る。感覚的なものだ。ましてや、相手は誰なのかと問われれば、答えに窮するしかない。
ただ、まったく根拠のない疑いとも言えないだろう。どちらかと言えば出不精だった成実が、頻繁に土日に外出するようになった。本人は、静岡の田舎からクラスメートが上京したとか、展覧会があるといった理由をつけるが、もちろんそれは確かめようがない。
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