10月15日は、『言葉と物』を書いた哲学者、ミシェル・フーコーが生まれた日(1926年)だが、「神は死んだ」と言った哲学者、フリードリヒ・ニーチェの誕生日でもある。
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは、1844年、現在のドイツのリュッケンで生まれた。父親は元教師でルター派の牧師だった。
フリードリヒは20歳の年にボン大学へ入学した。神学と古典文献学を修めた彼は、25歳の年にバーゼル大学の古典文献学の教授となった。
28歳で『悲劇の誕生』を出版。ニーチェはこの処女作で、明るい夢的な「アポロ的なもの」と、妖しい陶酔的な「ディオニュソス(バッカス)的なもの」という対照的な概念を提議した。
35歳のとき、偏頭痛や胃痛や、ほかのけがや病気の後遺症が重なって、体調をくずしたニーチェは大学を退職し、以後は在野の学者として著述生活を送った。
1883年、イタリアのジェノヴァに近いラパロの入り江にニーチェは滞在していた。その土地で彼は午前と午後に散歩するのを日課にしていたが、散歩の途中でとつぜん『ツァラトゥストラ』第一部の全体の構想が心に浮かんだ。
ニーチェはとりつかれたように机に向かい、それから10日間で『ツァラトゥストラはかく語りき』の第一部を一気に書き上げた。
『ツァラトゥストラ』は、ツァラトゥストラ(ゾロアスター)を主人公とした物語で、山で修行していたツァラトゥストラが、山から下りてきて、各地を旅しながら、人々に生きる思想を説いてまわる。
ツァラトゥストラは「神は死んだ」とつぶやき、神のいない時代である現代では、人生は価値のないものとなり、人はニヒリズム(虚無主義)に陥る、と説く。それが永遠に繰り返されるのが「永劫回帰」であり、それが人間の運命である。これを克服するには、
「よし、人生とはこういうものか。ならばもう一度生きてみよう」
と運命を積極的に受け入れ、それに挑む能動的ニヒリズムの態度が必要で、こうして人間であることを克服した者を「超人」と呼ぶ、と。
この書物は世界に強烈な衝撃をもって走り、人類の思想と文学に多大な影響を与えた。
1889年のはじめ、44歳のニーチェは、イタリアのトリノに滞在していて、街の広場で馬車ひきが馬を殴っているのを見て憤慨した。彼は馬車ひきを怒鳴り、逆上して倒れ、病院へ運ばれた。彼は発狂し、それきり、生涯正気にもどらなかった。
1900年8月、ニーチェは肺炎のため、ヴァイマールで没した。55歳だった。
永劫回帰、ニヒリズムの克服、超人、ラクダ・獅子・小児の精神の三様などなど、ニーチェの思想にはとてもお世話になった。
ニーチェの文章は、直観的、断定的で、およそ古典文献学の教授だったとは思われない論理的飛躍の連続である。でも、そこがニーチェのニーチェたるゆえんで、彼の魅力である。また、ニーチェは自分を天才だと完全に信じきって疑わない。いつも自信たっぷりの書きぶりで、読んでいて楽しい。その辺の新興宗教の教祖などふき飛んでしまいそうなうぬぼれぶりで、人間、これくらいの自信をもって生きたいものである。
(2017年10月15日)
●おすすめの電子書籍!
『思想家たちの生と生の解釈』(金原義明)
古今東西の思想家のとらえた「生」の実像に迫る哲学評論。ブッダ、道元、ルター、デカルト、カント、ニーチェ、ベルクソン、ウィトゲンシュタイン、フーコー、スウェーデンボルグ、シュタイナー、オーロビンド、クリシュナムルティ、マキャヴェリ、ルソー、マックス・ヴェーバー、トインビー、ブローデル、丸山眞男などなど。生、死、霊魂、世界、存在、認識などについて考えていきます。わたしたちはなぜ生きているのか。生きることに意味はあるのか。人生の根本問題をさぐる究極の思想書。
●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは、1844年、現在のドイツのリュッケンで生まれた。父親は元教師でルター派の牧師だった。
フリードリヒは20歳の年にボン大学へ入学した。神学と古典文献学を修めた彼は、25歳の年にバーゼル大学の古典文献学の教授となった。
28歳で『悲劇の誕生』を出版。ニーチェはこの処女作で、明るい夢的な「アポロ的なもの」と、妖しい陶酔的な「ディオニュソス(バッカス)的なもの」という対照的な概念を提議した。
35歳のとき、偏頭痛や胃痛や、ほかのけがや病気の後遺症が重なって、体調をくずしたニーチェは大学を退職し、以後は在野の学者として著述生活を送った。
1883年、イタリアのジェノヴァに近いラパロの入り江にニーチェは滞在していた。その土地で彼は午前と午後に散歩するのを日課にしていたが、散歩の途中でとつぜん『ツァラトゥストラ』第一部の全体の構想が心に浮かんだ。
ニーチェはとりつかれたように机に向かい、それから10日間で『ツァラトゥストラはかく語りき』の第一部を一気に書き上げた。
『ツァラトゥストラ』は、ツァラトゥストラ(ゾロアスター)を主人公とした物語で、山で修行していたツァラトゥストラが、山から下りてきて、各地を旅しながら、人々に生きる思想を説いてまわる。
ツァラトゥストラは「神は死んだ」とつぶやき、神のいない時代である現代では、人生は価値のないものとなり、人はニヒリズム(虚無主義)に陥る、と説く。それが永遠に繰り返されるのが「永劫回帰」であり、それが人間の運命である。これを克服するには、
「よし、人生とはこういうものか。ならばもう一度生きてみよう」
と運命を積極的に受け入れ、それに挑む能動的ニヒリズムの態度が必要で、こうして人間であることを克服した者を「超人」と呼ぶ、と。
この書物は世界に強烈な衝撃をもって走り、人類の思想と文学に多大な影響を与えた。
1889年のはじめ、44歳のニーチェは、イタリアのトリノに滞在していて、街の広場で馬車ひきが馬を殴っているのを見て憤慨した。彼は馬車ひきを怒鳴り、逆上して倒れ、病院へ運ばれた。彼は発狂し、それきり、生涯正気にもどらなかった。
1900年8月、ニーチェは肺炎のため、ヴァイマールで没した。55歳だった。
永劫回帰、ニヒリズムの克服、超人、ラクダ・獅子・小児の精神の三様などなど、ニーチェの思想にはとてもお世話になった。
ニーチェの文章は、直観的、断定的で、およそ古典文献学の教授だったとは思われない論理的飛躍の連続である。でも、そこがニーチェのニーチェたるゆえんで、彼の魅力である。また、ニーチェは自分を天才だと完全に信じきって疑わない。いつも自信たっぷりの書きぶりで、読んでいて楽しい。その辺の新興宗教の教祖などふき飛んでしまいそうなうぬぼれぶりで、人間、これくらいの自信をもって生きたいものである。
(2017年10月15日)
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