2月7日は、侵略の日なのかもしれない。1964年のこの日は、英国のザ・ビートルズが米国のJFK空港に到着し、アメリカ侵略を開始したまさにその日であり、翌1965年のこの日には、その仕返しというわけでもあるまいが、今度はアメリカ軍が北ベトナムに爆撃をはじめた、いわゆる北爆開始の日でもあるからだ。
侵略云々はさておき、この日はまた、英国の国民的作家、チャールズ・ディケンズの誕生日でもある。
ディケンズといえば、米国のマーク・トウェイン、日本の夏目漱石にあたる英国の国民的作家。ポンド紙幣に肖像が刷られたこともあるそうだ。
自分は、ディケンズ作品を数えるほどしか読んでいないけれど、あらすじを知っている作品はけっこうあって、この極東の無学な自分ですらそうであることを考え合わせてみると、あらためてその偉大さに驚くのである。
チャールズ・ディケンズは、1812年に、イングランドのポーツマスで生まれた。
父親は海軍の事務員で、チャールズは8人きょうだいの2番目だった。
貧しい家系を助けるため、ディケンズは子どものころから工場へ働きにでた。その後、法律事務所に奉公にいき、速記を勉強して、記者になった。
雑誌の記者をしながら、エッセイや小説を書きだし、雑誌の編集長の仕事のかたわら、小説も精力的に発表した。
こうした幼少時から作家になるまでの職業遍歴は、彼の自伝的な代表作『デイヴィッド・コパフィールド』に反映されている。
そのほか、『オリヴァー・トゥイスト』『クリスマス・キャロル』『二都物語』『大いなる遺産』など、世界的に知られる名作を書き、その多くが繰り返し映画化、テレビ化されつづけている。また、執筆のかたわら、朗読会も精力的にこなした。
1870年6月、ケント州の自宅で、脳卒中により没。58歳だった。
ディケンズは、なかなかタフな人で、雑誌の編集をしながら書いたり、朗読会に走りまわりながら書いたりしたにもかかわらず、作品の量が多い。
たくさんある作品の味わいもさまざまで、たとえば『二都物語』のような歴史・悲恋ものや、世界最初の推理小説といわれる『バーナビー・ラッジ』もあって、いちがいにはいえないけれど、自分にとっては、やはり『オリヴァー・トゥイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』といった、社会の底辺にいる、貧しい弱者の視点に立ったヒューマニズムの作家である。
この辺の性質が、トルストイをして、シェイクスピアなんかより、ディケンズのほうがずっといいといわせるゆえんなのだとも思う。
007シリーズを書いたイアン・フレミングは、エッセイのなかでこういっている。
「お金のために書くことが、昔は立派な仕事だったからである。バルザックもそうしたし、ディケンズもそうした。実際、ディケンズなどは、自分の作品を朗読することが、書くことより余計に金になるということがわかると、多少書くことの方を見捨てたものである」(井上一夫訳「スリラー小説作法」『007号/ベルリン脱出』)
あのマーク・トウェインも、借金を返済するために世界中を朗読してまわった。日本の現代作家たちも、講演やテレビ、ラジオへの出演などに生活の糧を求めている人はすくなくない。
そういう意味でも、ディケンズは、作家らしい作家だった、まさに「作家の中の作家」といえるのではないだろうか。
(2013年2月7日)
●おすすめの電子書籍!
『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句』(越智道雄選、金原義明著)
「デイヴィッド・コパフィールド」「風と共に去りぬ」から「ハリー・ポッター」まで、英語の名作の名文句(英文)を解説、英語ワンポイン・レッスンを添えた新読書ガイド。
www.papirow.com
侵略云々はさておき、この日はまた、英国の国民的作家、チャールズ・ディケンズの誕生日でもある。
ディケンズといえば、米国のマーク・トウェイン、日本の夏目漱石にあたる英国の国民的作家。ポンド紙幣に肖像が刷られたこともあるそうだ。
自分は、ディケンズ作品を数えるほどしか読んでいないけれど、あらすじを知っている作品はけっこうあって、この極東の無学な自分ですらそうであることを考え合わせてみると、あらためてその偉大さに驚くのである。
チャールズ・ディケンズは、1812年に、イングランドのポーツマスで生まれた。
父親は海軍の事務員で、チャールズは8人きょうだいの2番目だった。
貧しい家系を助けるため、ディケンズは子どものころから工場へ働きにでた。その後、法律事務所に奉公にいき、速記を勉強して、記者になった。
雑誌の記者をしながら、エッセイや小説を書きだし、雑誌の編集長の仕事のかたわら、小説も精力的に発表した。
こうした幼少時から作家になるまでの職業遍歴は、彼の自伝的な代表作『デイヴィッド・コパフィールド』に反映されている。
そのほか、『オリヴァー・トゥイスト』『クリスマス・キャロル』『二都物語』『大いなる遺産』など、世界的に知られる名作を書き、その多くが繰り返し映画化、テレビ化されつづけている。また、執筆のかたわら、朗読会も精力的にこなした。
1870年6月、ケント州の自宅で、脳卒中により没。58歳だった。
ディケンズは、なかなかタフな人で、雑誌の編集をしながら書いたり、朗読会に走りまわりながら書いたりしたにもかかわらず、作品の量が多い。
たくさんある作品の味わいもさまざまで、たとえば『二都物語』のような歴史・悲恋ものや、世界最初の推理小説といわれる『バーナビー・ラッジ』もあって、いちがいにはいえないけれど、自分にとっては、やはり『オリヴァー・トゥイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』といった、社会の底辺にいる、貧しい弱者の視点に立ったヒューマニズムの作家である。
この辺の性質が、トルストイをして、シェイクスピアなんかより、ディケンズのほうがずっといいといわせるゆえんなのだとも思う。
007シリーズを書いたイアン・フレミングは、エッセイのなかでこういっている。
「お金のために書くことが、昔は立派な仕事だったからである。バルザックもそうしたし、ディケンズもそうした。実際、ディケンズなどは、自分の作品を朗読することが、書くことより余計に金になるということがわかると、多少書くことの方を見捨てたものである」(井上一夫訳「スリラー小説作法」『007号/ベルリン脱出』)
あのマーク・トウェインも、借金を返済するために世界中を朗読してまわった。日本の現代作家たちも、講演やテレビ、ラジオへの出演などに生活の糧を求めている人はすくなくない。
そういう意味でも、ディケンズは、作家らしい作家だった、まさに「作家の中の作家」といえるのではないだろうか。
(2013年2月7日)
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