3月2日は、映画「慕情」の名女優、ジェニファー・ジョーンズが生まれた日(1919年)だが、作家ジョン・アーヴィングの誕生日でもある。
ジョン・ウィンズロー・アーヴィングは、1942年、米国ニューハンプシャー州エクセターで生まれた。幼くして両親が別れたため、母親の実家で育てられた。ジョンの実の父親は、第二次大戦中は空軍のパイロットをしていて、ビルマ上空で撃墜され、生還した経歴の持ち主だったが、ジョンはこの父親には会ったことがない。
6歳のとき、母親が再婚。再婚相手の姓から、彼はアーヴィング姓を名乗ることになった。
13歳のころからレスリングをはじめ、ハイスクール時代はレスリング部主将として活躍した。レスリング選手としてピッツバーグ大学に入学したが、間もなく選手生活に見切りをつけ、大学を退学した。
21歳のとき、ウィーン大学に留学し、バイクでヨーロッパ各地を旅行。
23歳のとき、アイオワ大学の創作教室に参加し、講師をしていた『スローターハウス5』の作者カート・ヴォネガットのもとで創作を学んだ。
26歳のとき、処女長編『熊を放つ』を発表。このデビュー作と、2作目『ウォーターメソッドマン』、3作目『158ポンドの結婚』までは、ランダムハウス社から発行されたが、出版社がプロモーションをしないことにアーヴィングは不満をもっていた。
そこで4冊目の長編『ガープの世界』は、よりしっかりしたマーケティングをすると約束したダットン社から発売された。『ガープの世界』はベストセラーとなり、I believe in Garp(私はガープの存在を信じる)というキャッチコピーの入ったTシャツが流行するなど、アメリカでは社会現象となった。
一躍、世界的作家となったアーヴィングは、『ホテル・ニューハンプシャー』『サイダーハウス・ルール』などを書いていて、作品の多くが映画化されている。
ジェイムズ・ジョイスの実験的な方法論を批判し、物語性こそ大事だと主張する作家アーヴィングは、「早くノーベル賞をとらないかしら」と期待する作家のひとりである。
アーヴィングが書いた小説は、フェリーニの映画に通じるものがある。
人間の行動がとても自由で、生き生きとしている。それぞれの人物の運命は、意外な展開を見せ、とてもおもしろい。
皮肉で、悲惨だったりするが、ユーモラスなおかしみもあって、ちょっと悲しくもある。
現実の人間の人生を、もっとおもしろいものとしてとらえ直してみよう、そんな作者の懐が感じられる。
「おもしろき とこもなき世を おもしろく」
高杉晋作の境地である。
『ガープの世界』の原題は、The World According to Garp (ガープによれば、世界は) で、ガープという主人公もさることながら、ガープの母親がまたおもしろい人で、なつかしい。こういう、小説中の人物がなつかしくなる作品を書く、現代ではすくなくなってしまった作家、それがアーヴィングである。
(2019年3月2日)
●おすすめの電子書籍!
『ここだけは原文で読みたい! 名作英語の名文句』(越智道雄選、金原義明著)
「ガープの世界」「風と共に去りぬ」から「ハリー・ポッター」まで、英語の名作の名文句(英文)をピックアップして解説。英語ワンポイン・レッスンを添えた新読書ガイド。
●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com
ジョン・ウィンズロー・アーヴィングは、1942年、米国ニューハンプシャー州エクセターで生まれた。幼くして両親が別れたため、母親の実家で育てられた。ジョンの実の父親は、第二次大戦中は空軍のパイロットをしていて、ビルマ上空で撃墜され、生還した経歴の持ち主だったが、ジョンはこの父親には会ったことがない。
6歳のとき、母親が再婚。再婚相手の姓から、彼はアーヴィング姓を名乗ることになった。
13歳のころからレスリングをはじめ、ハイスクール時代はレスリング部主将として活躍した。レスリング選手としてピッツバーグ大学に入学したが、間もなく選手生活に見切りをつけ、大学を退学した。
21歳のとき、ウィーン大学に留学し、バイクでヨーロッパ各地を旅行。
23歳のとき、アイオワ大学の創作教室に参加し、講師をしていた『スローターハウス5』の作者カート・ヴォネガットのもとで創作を学んだ。
26歳のとき、処女長編『熊を放つ』を発表。このデビュー作と、2作目『ウォーターメソッドマン』、3作目『158ポンドの結婚』までは、ランダムハウス社から発行されたが、出版社がプロモーションをしないことにアーヴィングは不満をもっていた。
そこで4冊目の長編『ガープの世界』は、よりしっかりしたマーケティングをすると約束したダットン社から発売された。『ガープの世界』はベストセラーとなり、I believe in Garp(私はガープの存在を信じる)というキャッチコピーの入ったTシャツが流行するなど、アメリカでは社会現象となった。
一躍、世界的作家となったアーヴィングは、『ホテル・ニューハンプシャー』『サイダーハウス・ルール』などを書いていて、作品の多くが映画化されている。
ジェイムズ・ジョイスの実験的な方法論を批判し、物語性こそ大事だと主張する作家アーヴィングは、「早くノーベル賞をとらないかしら」と期待する作家のひとりである。
アーヴィングが書いた小説は、フェリーニの映画に通じるものがある。
人間の行動がとても自由で、生き生きとしている。それぞれの人物の運命は、意外な展開を見せ、とてもおもしろい。
皮肉で、悲惨だったりするが、ユーモラスなおかしみもあって、ちょっと悲しくもある。
現実の人間の人生を、もっとおもしろいものとしてとらえ直してみよう、そんな作者の懐が感じられる。
「おもしろき とこもなき世を おもしろく」
高杉晋作の境地である。
『ガープの世界』の原題は、The World According to Garp (ガープによれば、世界は) で、ガープという主人公もさることながら、ガープの母親がまたおもしろい人で、なつかしい。こういう、小説中の人物がなつかしくなる作品を書く、現代ではすくなくなってしまった作家、それがアーヴィングである。
(2019年3月2日)
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