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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

1月10日・現役! ロッド・スチュワート

2014-01-10 | 音楽
1月10日は、ロシアの映画監督、エイゼンシュテインが生まれた日(1898年)だが、英国出身のロック・スター、ロッド・スチュワートの誕生日でもある。
自分がはじめてロッド・スチュワートを見たのは子どものころ。彼の英国公演のテレビ番組だった。ブロンドの長髪、ピンクのジャケットというド派手な衣裳の歌手が、しきりにお尻を振っていて、その振り方がかわいかった。
「つぎの曲は、マスコミの記者に捧げます」
と言って「もう話したくない(I Don't Want to Talk About It)」を歌った。
ひと通り演目を終え、ロッドはいったんそでへ下がり、再登場してきた。抱えてきたサッカーボールを客席にけりこんで、
「あと3分あるなら『セイリング(Sailing)』をやろう」
独特のしゃがれ声で彼がアンコール曲を歌いはじめると、客席は波のようにゆっくりと揺れだした。いい曲だった。

ロデリック・デイヴィッド・スチュワートは、第二次大戦中の1945年、英国イングランドのロンドンで生まれた。父親は以前スコットランドのエディンバラで大工の棟梁だった人で、ロンドンで新聞販売店を経営していた。ロッド(ロデリック)は5人きょうだいのいちばん下で、上に兄2人、姉2人がいた。すぐ上が8歳も年が離れていた末っ子の彼は「おとぎ話みたいに幸せ(fantastically happy)」と思いだすくらいに甘やかされて育った。
サッカーと音楽に熱中していた彼は、14歳のとき、父親にギターを買ってもらった。
15歳で学校をやめ、印刷屋で働いたり、父親の店で新聞売りをしたりした後、サッカー選手を目指し、ロンドンのサッカーチームの入団テストを受けに行ったこともあったが、結局音楽の道を目指した。そして、19歳のころには、歌手のコンサート・ツアーやレコーディングに、コーラスやブルースハープで参加するようになっていた。
いくつかのバンドの結成、解散を経験した後、23歳で、名ギタリスト、ジェフ・ベック率いるジェフ・ベック・グループに参加。ヒット曲を出し、ハスキーボイスのロック・ボーカリストとして一躍名をあげた。
24歳のとき、フェイセズのヴォーカリストとなった。フェイセズは英米でヒットを飛ばし、ロッドが29歳のとき、来日公演を果たしている。
30歳のとき、フェイセズが解散。ロッドはソロとなり、活動の拠点を英国から米国へ移した。このとき発表したアルバムが「アトランティック・クロッシング(大西洋を渡る)」だった。この作品の大ヒットにより、ロッドは世界的スターとなった。
以後、「明日へのキック・オフ」「スーパースターはブロンドがお好き」などのアルバムを発表。34歳で来日したときの日本人のフィーバーぶりはものすごかった。武道館公演など、観客がなかなか入りきらず、開演が大幅に遅れた。2013年、68歳で発表したアルバム「タイム」が全英でナンバー・ワンに輝くなど、いまなお最前線で活躍する現役ロック・ヴォーカリストである。

歌手の西城秀樹がかつてラジオ番組で語ったところによると、以前彼がマイクスタンドを派手に動かしながら歌ったあのステージ・パフォーマンスはロッドをまねしたのだそうだ。ロッドが来日したとき、西城は先輩のかまやつひろしといっしょにコンサートをみにいった。そして、ロッドのマイクスタンドを軽々と操る動作に驚いた。
「かまやつさん、あのマイクスタンド、何でできてるのかな?」
かまやつはステージ前まで行き、手でマイクスタンドを握ってもどってきた。
「わかった。あれはアルミ製だよ」
当時はステージ用のマイクスタンドはみな安定のよい、重たいものだった。
それで、西城秀樹はアルミ製のマイクスタンドを特注し、使いだしたのだった。

自分はときどき「胸につのる思い(You're In My Heart)」など、ロッドのバラードをむしょうに聴きたくなる。あの切ない声はほんとうに魅力的で、後を引く。
(2014年1月10日)



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『1月生まれについて』(ぱぴろう)
エイゼンシュテイン、デヴィッド・ボウイ、スタンダール、モーツァルト、村上春樹、三島由紀夫、盛田昭夫、夏目漱石、ビートたけし(北野武)、ちばてつやなど1月誕生の31人の人物評論。人気ブログの元となった、より詳しく、深いオリジナル原稿版。1月生まれの教科書。
http://www.meikyosha.com


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