5月14日は、フィールズ賞を提唱したカナダ出身の数学者、ジョン・フィールズが生まれた日(1863年)だが、社会事業家、ロバート・オーウェンの誕生日でもある。
自分は学生時代からコミュニティーについて勉強していて、ロバート・オーウェンのことはよく知っていた。彼は、当時もいまも、自分がもっとも尊敬する人物のひとりである。
ロバート・オーウェンは、1771年、英国、北ウェールズのニュータウンで生まれた。父親は馬具・金物商だった。
彼は10歳のとき、スタンフォードの呉服屋へ丁稚奉公に出た。それをふりだしに、オーウェンは、服問屋勤め、紡績工場の共同経営者などをへて、28歳のころには、ニューラナークにある大工場の共同経営者となった。やがてそこの単独経営権を手にした。すると、彼は工場労働者の給料を上げ、職場の環境と住居環境を整備し、子どもたちのために学校を造り、修学前の幼児のための学校も用意した。そうして、彼のニューラナークは業績がよく、労働環境もよいという、世界の工場経営のお手本となった。無一文からスタートしたオーウェンは、大富豪となった。
オーウェンは、54歳のとき、資産を投じて、米国インディアナ州で「ニュー・ハーモニー」というコミュニティーをはじめた。適度な労働と余裕のある人間らしい暮らし、教育と娯楽、そして教養にあふれた人たちとの社交など、人間が理想とする生活の要素が、ひとつコミュニティーのなかにそろっている。そんなオーウェン流のユートピアの実現だった(金原義明『コミュニティー 世界の共同生活体』参照)。
オーウェンは、1858年11月、故郷のニュータウンで没した。87歳だった。
自分は、オーウェンについて書かれた日本語の本はだいたい読んでいるつもりである。
オーウェンの時代には、現代とは比べ物にならないくらい、労働者をすこしでも長く安くこき使おうとする経営者が多かった。経営者たちは、大人は言うに及ばず、子どもでも一日十時間以上働かせて平気でいた。国もそれを放置していた。また、企業を立ち上げたら、さっさと高く売って手を引く、そういう資本家も、現代同様に多かった。
けれども、オーウェンは、そうした金儲け主義を嫌い、労働者がよい環境で労働、生活してこそ、生産性は上がるし、生産性が上がれば、労働者の環境はもっとよくなる、という信念を曲げなかった。そうして、昨今の「ブラック企業」「派遣切り」「サービス残業」「社員使い捨て」など、採算のために人間を切り捨てる効率主義とは、まったく正反対をゆく経営で、みごと大成功を収めた。そうして得た富を、さらに社会のために使った。
オーウェンほどえらい人はなかなかいない、という気がする。
彼が目指した社会的理想、要するに、
「人間が人間を使い捨てにしない、みんなが人間らしい暮らしをする社会」
その実現のために、自分もなんらかの形で、わずかでも力になりたいと思う。
(2013年5月14日)
●ぱぴろうの電子書籍!
『コミュニティー 世界の共同生活体』
ドキュメント。ツイン・オークス、ガナスなど、世界各国にある共同生活体「コミュニティー」を具体的に説明、紹介。
www.papirow.com
自分は学生時代からコミュニティーについて勉強していて、ロバート・オーウェンのことはよく知っていた。彼は、当時もいまも、自分がもっとも尊敬する人物のひとりである。
ロバート・オーウェンは、1771年、英国、北ウェールズのニュータウンで生まれた。父親は馬具・金物商だった。
彼は10歳のとき、スタンフォードの呉服屋へ丁稚奉公に出た。それをふりだしに、オーウェンは、服問屋勤め、紡績工場の共同経営者などをへて、28歳のころには、ニューラナークにある大工場の共同経営者となった。やがてそこの単独経営権を手にした。すると、彼は工場労働者の給料を上げ、職場の環境と住居環境を整備し、子どもたちのために学校を造り、修学前の幼児のための学校も用意した。そうして、彼のニューラナークは業績がよく、労働環境もよいという、世界の工場経営のお手本となった。無一文からスタートしたオーウェンは、大富豪となった。
オーウェンは、54歳のとき、資産を投じて、米国インディアナ州で「ニュー・ハーモニー」というコミュニティーをはじめた。適度な労働と余裕のある人間らしい暮らし、教育と娯楽、そして教養にあふれた人たちとの社交など、人間が理想とする生活の要素が、ひとつコミュニティーのなかにそろっている。そんなオーウェン流のユートピアの実現だった(金原義明『コミュニティー 世界の共同生活体』参照)。
オーウェンは、1858年11月、故郷のニュータウンで没した。87歳だった。
自分は、オーウェンについて書かれた日本語の本はだいたい読んでいるつもりである。
オーウェンの時代には、現代とは比べ物にならないくらい、労働者をすこしでも長く安くこき使おうとする経営者が多かった。経営者たちは、大人は言うに及ばず、子どもでも一日十時間以上働かせて平気でいた。国もそれを放置していた。また、企業を立ち上げたら、さっさと高く売って手を引く、そういう資本家も、現代同様に多かった。
けれども、オーウェンは、そうした金儲け主義を嫌い、労働者がよい環境で労働、生活してこそ、生産性は上がるし、生産性が上がれば、労働者の環境はもっとよくなる、という信念を曲げなかった。そうして、昨今の「ブラック企業」「派遣切り」「サービス残業」「社員使い捨て」など、採算のために人間を切り捨てる効率主義とは、まったく正反対をゆく経営で、みごと大成功を収めた。そうして得た富を、さらに社会のために使った。
オーウェンほどえらい人はなかなかいない、という気がする。
彼が目指した社会的理想、要するに、
「人間が人間を使い捨てにしない、みんなが人間らしい暮らしをする社会」
その実現のために、自分もなんらかの形で、わずかでも力になりたいと思う。
(2013年5月14日)
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