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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

4月1日・マズローの説

2021-04-01 | 科学
エイプリル・フールの4月1日は、映画監督、若松孝二が生まれた日(1936年)だが、心理学者アブラハム・マズローの誕生日でもある。

アブラハム・ハロルド・マズローは、1908年、米国ニューヨーク市で生まれた。両親は帝政ロシアの迫害から逃れてきたユダヤ人移民で、アブラハムは7人きょうだいのいちばん上だった。貧しい環境ながら教育を尊ぶ両親のもとで育ったアブラハムは、読書好き、勉強熱心な少年として成長した。
彼はニューヨーク市立大学で法律を学んだ後、ウィスコンシン大学へ移り、心理学を修め、22歳で同大を卒業。26歳で心理学の博士号をとり、ニューヨーク市立大学で教授を務めた後、マサチューセッツ州のブランダイス大学で61歳まで教鞭をとった。
自尊心、自己実現、創造性など、当時としては斬新な人間性心理学の研究を進め、画期的な活躍をした。ヒューマニスティック心理学会を設立し、アメリカ心理学会の会長を務めた後、1970年6月に、カリフォルニア州メンローパークで心臓発作のため没した。62歳だった。

「マズローの欲求階層説」は有名である。これは人間の欲求をピラミッド型の5階層に分けて理解しようとする考え方である。

彼の考えによれば、ピラミッドのいちばん底の層、つまり人間のベースとなる欲求としてまず生理的欲求が横たわっている。これは、呼吸、食べること、睡眠など、これがないと生きていられないという人間の生存を支える欲求である。

二段め。生理的欲求の層の上にくるのは、安全の欲求である。これは身の安全、健康、財産の安全、収入などを指していて、生理的欲求が満足された人間は、つぎにこの安全がほしくなる、というのである。

その上、三段階めの層には、愛と所属の欲求がのっかってくる。ここには友情、家族、肉体関係があてはまる。

四段階めに人間が目指すものは、自尊心の欲求である。この第四層には、自尊心のほか、自信、他者への尊敬の念や、他社から尊敬されることが入ってくる。

以上が満たされた人間が、さらに求める五層め、ピラミッドの頂点にあるのが、自己実現の欲求で、道徳、創造、偏見の克服、現実の受容などがこの段階になる。

このように、人間は生理的欲求からはじまり、ある欲求が満たされると、さらに上の欲求を満たそうとするという考え方で、また、人間はある欲求が満たされた状態に慣れてくると、それにありがたみを感じなくなってくるものらしい。

なるほど、一般論としてはその通りかもしれない。
ただ、これは万人にあてはまるわけではなく、たとえば、ある時期のペスタロッチ、ゴッホ、ゴーギャンは下の四層の欲求を無視していきなり最上層の自己実現だけをつかもうとした。例外もあるということだ。いまの自分がどの欲求を感じるかを考えると、自己理解に役立つ。
マズローの欲求階層説は、根拠が希薄だとして批判もあるが、この安定感のあるピラミッド型の発想は独創的で理解しやすい。秀逸である。
(2021年4月1日)



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