1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5月25日・ソニア・リキエルの傘

2020-05-25 | ビジネス
5月25日は、米国の思想家、エマーソンが生まれた日(1803年)だが、ファッション・デザイナー、ソニア・リキエルの誕生日でもある。人呼んで「ニットの女王」である。

ソニア・リキエルは、1930年、仏国のパリ郊外の町 ヌイイで生まれた。ユダヤ系の家系で、父親はルーマニア人、母親はロシア人だった。ソニアは5人姉妹の長女だった。
17歳のとき、パリの布地屋のショーウィンドウを飾る仕事についた彼女は、知り合った高級ブティックのオーナーと23歳で結婚。
33歳で妊娠しているとき、彼女は自分に合うセーターがないのを不満に思い、夫の店と取り引きのあるヴェニスの衣裳工房に頼んで、自分がデザインした妊婦用の服を作ってもらった。それがデザイナー、ソニア・リキエルの出発点となった。
リキエルははじめ、夫のブランドから、後に自分のブランドとして、妊婦用のセーター、子ども用のセーター、男性用のセーターなどを作った。ふだん着だったニットを、ファッショナブルな服の素材へと変え、「ニットの女王」と呼ばれた。ニット以外の素材の衣服を作った彼女はやがて、香水や傘などの分野にも進出した。
彼女は、衣服の表面に縫い目を見せるようにしたはじめてのデザイナーとされ、また、セーターに文字をプリントしたはじめてのデザイナーとも言われる。
1983年、フランスの芸術文化勲章を受勲し、晩年はパーキンソン病を患った後、2016年8月、パリの自宅で没した。86歳だった。

その昔、ソニア・リキエルの折りたたみ傘をもらって、一時期使っていた。
黒い折りたたみ傘を開くと、外側の端がぐるりと白、赤、青、緑、黄など、色とりどりに色分けされて美しかった。気に入って使っていたのだけれど、どこかへ出先の傘立てに置いて用足しをしているあいだに、誰かにもっていかれてしまい、それきりになった。
傘は天下のまわりもの。気に入っている傘にかぎってよく盗まれる気がする。やっぱり、もっていく人も、せっかく失敬するのなら、きれいなものを、と、いちおう選んでいるのかしら。
ソニア・リキエルというと、ニットでなく、あのカラフルな傘を思いだす。
妊婦やふだん着の女性にもお洒落の楽しみを。日常のちょっとしたものにカラフルな楽しさを。そういう仕事をした人である。
(2020年5月25日)



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